約 44,311 件
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/859.html
慧音6 8スレ目 369 トランシーバーの副産物のような良く分からない状態のまま 俺は結局慧音の家に泊まることになった、まぁ何度かお世話になったこともあったし それほど構えてもいなかったわけだが そして夕食を食べ終え俺が今までのように毛布を借りようとしたとき 事件は起きた 「今日は同じ部屋に寝るぞ」 「……は?」 「だ、だから今日はここで一緒に…」 「本気か?慧音」 「だからさっき夜寝るときに何か話そうっていったじゃないか」 「ああ、そういうことか」 俺はかな~りアダルティなことを想像していたが単純にそれだけらしい 「ほ、ほら布団敷くから手伝え」 そう言って襖を開けて布団を取り出そうとしていた 「ん、これなんだ?」 襖から布団と一緒に何か転がり出てきた 「人形かこれ?」 それは人間の男をかたどった、なんていうか愛嬌のある人形だった しかしかなり良くできたものであることは俺でも分かった 「っ!!」 慧音は俺が掲げた人形を奪い取ろうとした 俺はそのまま渡しても良かったがなんとなく避けてしまった 「なんつーか、どっかで見たことある顔だな、コレ」 どうにもこの間抜け面には見覚えがあるんだよな なんか毎日顔を合わせてるような 「それは○○だ…」 「ああ~、俺かどうりで……ってマジ!?」 慧音は頷いた 「うあ~よく見ると確かに俺だな」 そう思うとさっきまでの間抜け面が急に凛々しく見えるような気もしたが 気のせいだった 「でもなんで俺の人形なんか?」 慧音は俯いたまま答えない なんか俺はいやな予感がした、なんとなく人形から連想する嫌なものが よぎった 「あのさ、これもしかしてアリスが作ったとか?」 「ああ…この前作ってもらったんだ」 と、ここまで聞いて俺は既に土下座していた 「すいませんでした!!」 「は?○○何をやって…」 慧音が何か言ってるが土下座続行 「すまん!つーかマジでそんなに怒ってるとは思わなかった!」 「いやだから…何を言っているんだお前は?」 「何って、慧音に謝罪をだな」 「謝罪って、何かしたのか?」 「いやだって俺の人形に釘刺すくらい怒ってるんだろ?」 「何の話だ?」 「だからアリスに俺の人形作らせたって…」 「作らせたが別に釘を刺すためじゃないぞ」 「マジで?」 「ああ」 俺は頭をあげて土下座を解除した 「はぁ~よかった、なんだよ、まぎらわしいぞ慧音」 「勝手にお前が勘違いしたんだろ」 慧音は呆れたように言った、そして 「で?○○、さっき謝ってたのは何故だ?また何かしたのか?」 「……」 「何をしたんだ?」 妙に怖い笑顔が近づいてくる 「黙秘権とかはなしか?」 「却下だ」 その後説教は一時間以上続いた 「はぁ~お前にはほとほと呆れてものが言えん」 「一時間以上説教してたが…」 「何か言ったか?」 「何にも言ってないゼ!」 「…声が裏返ってるが、まあいいさっさと寝るぞ」 そう言って布団を敷き始めた 俺も自分の分をやろうとしたが、少し疑問が残っていたので 聞いてみた 「なぁ、慧音結局あの人形はなんに使うんだ?」 「……」 「何に使うんだ?」 妙に紅くなっている慧音に追求した 「黙秘権とかはないのか?」 「却下だ」 夜はまだ始まったばかりだ 8スレ目 381・382 今日は七月八日七夕の翌日である、普通ならもう七夕は終わり 飾り付けられた笹もしまわれるたり焼かれたりするのだが、俺は笹をもって慧音を訪ねていた 「というわけで慧音七夕をやろう」 「何がどういうわけでそうなったかは知らんが、七夕は昨日やっただろ」 「昨日やったが寺子屋の子供たちとやったからすげえ忙しくて ぜんぜんゆっくりできなかったし、第一メチャクチャ雨降ってて星も見れなかっただろ」 昨日はそれこそバケツをひっくり返したという表現がぴったりの天気だった 「まあそれはそうだが」 「だろ?というわけで飾りつけ手伝ってくれ」 「しょうがないな全く」 そんな感じで俺たちは二度目の七夕をすることになったんだが 「なあ慧音は願い事は何書くんだ?」 「ん?ああ昨日書いたからもういらないだろ」 「そうか?せっかくもう一度やるんだからまた書こうぜ せっかくあまった短冊もらってきてるし」 そう言いながら俺は慧音に短冊を渡した 「願い事なんて欲張るとろくな事にならんと思うが…」 「まあ願うだけならタダだし、書くだけ書こうぜ 短冊がない笹も味気ないだろ」 慧音は呆れたような顔をしながらも短冊を受け取り 願い事を書き始めた 二人とも願い事を書き終え飾ろうとしたのだが 「○○はなんて書いたんだ?」 そう言って慧音がこちらの短冊を覗き込んできた 俺はとっさに短冊を隠して 「慧音こそなんて書いたんだ?」 と聞き返した 「私か?私は無病息災だ」 「なんつーか、慧音らしいというか普通だな、というか慧音って もともと病気になりにくいんじゃなかったっけ?」 「そうだが、私の近くにすごく無茶というかバカなことばかりするやつがいてな そいつの分も含めてだ」 「ふーん、誰だそれ?妹紅か?でもあいつ慧音よりも丈夫だろ?」 「お前自覚がないのか?」 「何が?」 「はぁ…もういい。それで結局お前はなんて書いたんだ?」 「それは教えられないな」 「私が教えたんだから、教えろ…っというか飾るんだから結局見るだろ」 そう言って俺から短冊を奪い取った 「ちょ…おい!」 「ん?二枚重なってるのか?○○願い事は欲張るとろくなことがないとさっき言っただろ」 「いや、それはどっちにしようか迷っているんだよ」 「何だ?そんなに願い事が多いのかお前は…」 そう言って慧音は笑っていたが願い事を読んで固まった 「どうした?慧音」 「この願い事はどういうことだ?」 すごく静かな声でそう言いながら俺が書いた短冊を示した そこには俺の二つの願いが書かれていた 一枚には 『このまま幻想郷で楽しい日々がおくれますように』 もう一枚には 『いつか自分の世界に帰れますように』 「まだ迷っていたのか…」 「まぁな、やっぱあっちの世界に未練がないとは言い切れないしな」 「そうか…」 慧音はそういうと俺の短冊を笹に飾りつけようとした 俺が帰れますようにと書いたほうをだ 「慧音何を…」 「明日神社に連れて行ってやる、うまくいけばお前の世界帰ることが できるかもしれない」 「は!?ちょっと待ていきなり何言ってんだよ」 「だから帰りたいんだろう!」 「いやだからまだ迷ってるんだよ!」 俺自身まだ踏ん切りがついていなかった、幻想郷に生きるにしても 元の世界に帰るにしても 「ならちょうどいい機会だ、今決めるといい」 「待てよ!いきなりそんなこと言われても…」 「どうせいつかは決めることだ」 「それはそうだが…」 いきなりのことに頭がついていかない 俺は黙り、慧音も黙って俺の答えを待っていた 少しの間沈黙が続き、俺は口を開いた 「ひとつだけ質問してもいいか?」 「…何だ?」 「俺が幻想郷に残った場合、慧音は傍にいてくれるのか?」 「は!?何を言って…」 「だから幻想郷に残った場合傍にいてくれるのか!」 俺はずっと迷っていた原因を慧音に聞いた 慧音は驚きながらも俺の目をまっすぐに見て 「…ああ、いいぞ。傍にいてやるとも」 と答えてくれた 「そうか」 なら迷いはなくなった 「慧音…俺はここに残るよ」 そう言いながら慧音の腕を引いて強引に抱きしめた 結構長い間そうしていたのだが、短冊吊るす途中だったので 作業を再開した 「なあさっきの短冊貸してくれ」 「ん?こっちを吊るすんだろ?」 そういって俺が幻想郷に残ると書いたほうの短冊を掲げる 「ああ、だけど少し書き直さないと」 「書き直す?」 「ああ」 そう答えながら俺は受け取った短冊に少しだけ書き加えた 『このまま幻想郷で慧音と楽しい日々がおくれますように』 8スレ目 384-385,388,392,394,404,412,421 384 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 01 22 18 ID ujTdlG1w0 慧音が溢れちゃいそう!なんて嬉しい悲鳴。 385 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 01 36 33 ID ujTdlG1w0 分が抜けた。慧音分ね。 …どんな状況なんだ。 388 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 12 12 49 ID OVenZwtI0 385 ちび慧音がポコポコと涌いて溢れるとか 392 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 15 33 27 ID 0.UsN4d2O 388 チビけーねがポコポコ腕振り回して「◯◯のバカー!バカー!」している、に見えた ちょっと吊ってくる 394 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 19 55 08 ID 0ixxGnI60 392 満月の時はきもけーねになって 新月になったら幼女になるんだな 404 :名前が無い程度の能力:2007/07/10(火) 01 23 30 ID Weh6KDSQO 394 つまり、いつもはしっかり者で姐御肌な慧音先生で 満月時は愛しの人に角を見られるのを恐れる奥手なきもけーねで 新月時は純粋無垢の好奇心旺盛なょぅじょけぃねでFA? 412 :名前が無い程度の能力:2007/07/10(火) 15 22 12 ID mAhjnMjg0 404 つまりはこういうことか! 通常時慧音場合 慧「ほら、いつまで寝てる気だもう朝日はとうに昇ってるぞ」 ○「ん~~?ああ、慧音かおそよう」 慧「まったく……朝飯はできてるから早く食うぞ この後私は寺子屋に行かないといけないんだからな」 ○「先に食ってればいいじゃん」 慧「ま、○○と一緒に食べたかったんだ////」 ○「慧音……ありがとな」 慧「ほ、ほら早く食べるぞ」 ○「ん、いただきます」 きむけーねの場合 慧「………………なあ○○」 ○「ん?どうした慧音」 慧「いや、なんでもない」 ○「そうか」 慧「………………………………」 ギュゥ 慧「ま、○○!?」 ○「安心しろ俺はずっと慧音と共に在るから」 慧「……ありがとう○○」 ○「ありがとうを言うのはこっちのほうだよ」 ようじょけーねの場合 慧「○○!○○!」 ○「あ?どうした慧音」 慧「○○はわたしのことすきか!?」 ○「ああ、大好きだぞ」 慧「そうか!ならちゅーして!」 ○「ちゅ、ちゅーは大きくなってからだ」 慧「むぅ~、ならおよめさんにして!」 ○「それも大きくなってからな!」 慧「○○はだめだめっていうー○○はわたしのこときらいなの?」 ○「それはないまずない絶対ない」 慧「そっかー、じゃあ愛してる?」 ○「ああ、愛してるぞ」 慧「じゃあ抱っこして」 ○「それならいいよ」 慧「わーい!」 421 :名前が無い程度の能力:2007/07/11(水) 09 46 54 ID pUWIVUG6O 412に続いてみる 新月の夜 慧「ねー◯◯!◯◯!」 ◯「おぅ、どうした慧音。」 慧「けっこん、てなーに?」 ◯「んーそうだな。愛し合う二人がずーっと一緒にいること、かな。」 慧「そうなんだ!じゃーわたしも◯◯とけっこんするー!」 ◯「それはうれしいな。慧音、俺の嫁さんになってくれるかい?」 慧「うん!」 そして次の日 慧「ま、◯◯!あのな、昨日言っていたことはな、なんというか幼体での無垢な願望というか日頃心に留めているというか 私も白無垢着てみたいなーとかそういうものではなくてだな、言葉のあや…ではなくて いやお前と結婚するのがイヤな訳ではない!」 ◯「ときに落ち着け慧音(ニヤニヤ)」←確信犯 そんなやり取りが月一でやっとるそうな 8スレ目 475 「なぁ慧音、ホッケーマスクの殺人鬼知ってるよな?この間教えたもんな」 「それがどうした○○、確かに今日は13日の金曜日だが幻想郷にあんな妖怪はいないぞ」 「いや、適役は目の前に、後はマチェットとホッケーマスクで完璧」 ごすっ! 「額が!額が割れた!!」 「デリカシーが無い奴、だからもてないんだ」 「いいジャマイカ!せっかく13日なんだぞ!?不吉なんだぞ!?」 「いやいや、それは喜ぶべき事じゃ無い」 「・・・仕方ない、殺人鬼に追っかけまわされるよりベットでギシアンしてるカップルのほうがいいな」 「ぎしあん?なんだそれは?」 「気にするな、覚えなくて言い単語だ、ほんとにやるとほんとに出そうだな」 「?さっきからわけのわからないことばかり」 「慧音!俺とギシアン、じゃ無かった、不吉な夜のデートをしよう!」 「で、デート!?私と○○で?夜の人気の無い森へ?」 「うむ、山のほうに行って月でも眺めようか」 「結構冷えるな、もう一枚羽織ってくればよかった」 「だから言ったろ?ほら、これ着とけよ」 そう言って○○は慧音に自分の上着を着せる 「す、すまない・・・暖かいな」 思った以上に明るい、夜だが妖怪の気配も無い 「・・・こんな暗がりに連れ込んでどうするつもりだ?」 「どうした慧音、襲って欲しいか?」 「ば、ばか!そんなことは・・・そんなことは」 「襲っちまうぞ~」 「そ、そこまで言うなら・・・私は」 そう言って慧音は頬を赤らめつつ服を脱g 8スレ目 525 慧「なあ○○、ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?」 ○「聞きたい事ってなぁに?けーねーちゃん?」 慧「その・・・だな、妹紅と私どっちが好きだ?」 ○「んー、もこたん!」 慧「っ!?・・・なんでだ?」 ○「お菓子くれるからー!」 慧「そうかではもう一度聞こうか 妹紅と私どっちが好きだ?」←お菓子をあげつつ ○「けーねーちゃん!」 慧「そうかもっとお菓子をあげよう」 ○「わーい♪けーねーちゃん大好きー!」 ~その夜~ 妹「ねえ慧音」 慧「ん?なんだ妹紅」 妹「昼間の見てたんだけどさ、情けなくない?お菓子で釣るなんて」 慧「も、妹紅もやってるだろう!?」 妹「私は下心ないし」 慧「むぅ・・・分かってる、みなまで言うな でも!それでも!○○に大好きと呼ばれたいんだ!!」 妹(・・・今度永遠亭にでも連れて行こうかな) 8スレ目 545 いつもどおりの午後、そろそろ日も暮れてきて そろそろ慧音のところに夕飯をたかりに行こうとしていた時 その闖入者は現れた 「うぉわ~~~~~!」 ドカドカーーーン!!! 「どうした!?○○」 この間約3秒、その3秒の間に 俺が悲鳴あげる ↓ 慧音が悲鳴を聞きつける ↓ 壁吹っ飛ぶ ↓ 慧音登場 という事態が起きた 「どうしたんだ!?○○」 驚いていて言葉を失っている俺にもう一度聞いてきた 「……あ、ああ、ちょっと驚いただけだ」 「そうか?あの悲鳴は尋常じゃなかったが…」 「まぁ、どちらかというと今の慧音の登場に驚いたんだが……」 いくら隣に住んでるからって壁ぶっ壊して飛んでくるとは思わなかった 「お前が何か困ったら助けてやると、前に言っただろう?」 と自慢げに言った 「確かにそんなことを言ってたな」 俺は幻想郷に来たときに慧音に助けられてから慧音の家に 居候させてもらっていたが、ある事情から隣に自分の家を作り 住むことになった、そのときに慧音は反対したのだが結局は俺の意見を尊重してくれた その時に 『何か困ったことがあったらすぐに呼ぶこと』 と言う条件を出していた。 まぁこんな風に壁ぶち抜いて登場するとは思ってもみなかったが 「で、結局何があったんだ?」 「ああ、そいつだ」 そう言いながら俺は壁に張り付いている奴を指差した 「そいつってこのムカデか?」 「……そうだ」 「○○は虫が苦手だったか?」 「いや基本的には大丈夫なんだが、ムカデだけはちょっとな……」 子供の頃に刺されてから軽くトラウマだ 「そうか、まぁなんにせよ、お前に別状がなくてよかった」 慧音は壁にあいた穴にムカデを追い出しながら言った 「しかしな慧音、壁をぶち壊すのはどうかと思うぞ」 「し、しかたないだろう……○○の悲鳴が聞こえた時には もう飛び出してしまっていたんだから」 「それでお前の家の壁も俺の家の壁もぶち抜いて来たと」 「そ、そうだ」 まぁ俺が悲鳴挙げたのは事実だしな 「とりあえず、ありがとな慧音」 「あ、ああどういたしまして」 「だけど次からは玄関から入ってくれ」 「……わかった」 「とにかく壁をふさぐぞ、このままじゃ風邪を引くし、ムカデがまた入ってきても困る」 「ああ、そうだな」 そしてとりあえず応急処置として壁をふさごうとしたのが 「なぁ○○」 「何だ?」 「この穴そのままにしておかないか?そうすればすぐにこっちにこれるし」 「却下だ」 「ならもういっそのこと渡り廊下のようにしてだな……」 「却下」 「……」 その後なぜか機嫌の悪くなった慧音に夕食を作ってもらうのに 二時間かかってしまった 8スレ目 567 「というわけで妹紅からのラブレターを渡してきたんだ」 「ふーーん、●●も苦労するな」 あの二人は顔合わせると喧嘩してしまうみたいだしな 「まあ、今回一緒に祭りに行く事でうまくいけばいいんだが」 「大丈夫だろ?あいつらなんだかんだで両想いだと思うし」 「確かにな、全く早く素直になればいいものを」 「……慧音が言うのかそれを」 「わ、私はいつも素直だぞ」 「ほう、そうかそうか」 「な、なんだその言い方は」 俺は鞄の中から一冊の本を取り出した 「何だそれは?」 「これはだな、俺の日記帳だ」 「は?」 「俺は物忘れしやすいからな、結構細かく書いてるんだ、コレ」 「ほ、ほうそうなのか」 明らかに動揺している 「コレによるとだな、慧音が結構素直じゃなかったことが書かれてるんだ」 「……」 「例えばだな、俺が妹紅やらチルノやらの相手してて不機嫌だった時に 素直にどこかに連れて行け言えなかった事とか」 「あ、あれはだな」 「例えばチルノについたご飯粒取ってやったときに自分も取ってほしくて わざとご飯粒くっつけてたこととか」 「……気づいてたのか?」 「いや気づくだろ、あんだけ大量にくっつけてれば」 「なら取ってくれても良かったじゃないか!」 「いやどんだけ増えてくか気になってな」 確か最終的にはかなりの量になってたな、まぁスルーしたが 「…○○、お前というやつは」 慧音が非難の目を向けてくるがかまわず続ける 「その日は確か夜になって膝に……」 「ちょっと待て、分かったからもうやめろ!」 さすがに聞いてられなくなったのか慧音が俺の口をふさごうとした 俺はそのまま慧音の背中に手を回して目をまっすぐに見て言った 「じゃあ、今日は素直になってもらおうかな?」 「な、何!?」 「さっきの手紙の話を俺にしたことから推測して、何か言いたいことがあるんだろ?」 何が言いたいのか俺は大体分かっていたがあえて問いただした 「…っ!」 「慧音は素直なんだろ?」 そう俺が言うと慧音は顔を真っ赤にしながら 「……×月×日の夏祭り一緒に行こう」 と小さな声で言った 「了解した、金魚すくいでも射的でも何でも付き合うぞ」 俺がそう答えると慧音はうれしそうに頷いた 8スレ目 579 「あーマジで冷たくて気持ちいい」 「ちゃんと約束は守ってよ」 七夕も終わりだんだんと夏が本気を出してきた今日この頃 俺はあまりの暑さにチルノを捕まえてきて縁側にいた 今度また遊びに付き合うということで涼をとらせてもらっていた 「わかってるって、蛙の沼でも湖でも付き合うよ」 実際この季節にチルノと行動を共にするのはこっちからお願いしたい まぁ冬はマジで死にかけるが 「あとまたアレ持ってきてよ」 「アレってこの前の弁当か?」 「そう!」 「ああ、それなら慧音に頼まないと無理だ」 「じゃあ、頼んでよ」 「頼んでみるけど、保障はできないな」 「え~~!?」 「まぁ無理な時は俺が作ってやるよ」 「○○が!?」 チルノがすごく意外な顔をした 「自炊してたし結構料理は得意だぞ、まぁ今は慧音が作ってくれるし めんどくさいからやらんがな」 「ふ~ん」 「あーーっと、これは慧音には言うなよ、なら食事を作るの手伝えって なっちまうからな」 そんな風に冗談めかして言うと 「そうだな、今度からは○○に食事を作ってもらおう」 部屋の中からすごく聞き覚えのある声が聞こえた 俺は振り向かずに、いや振り向けずに 「あ~~慧音、帰ってたのか?」 「ああついさっきな、全くお前というやつは……」 「あははは……」 「○○、明日から一週間は食事当番だ」 「うわ、まじか?」 「もちろんだ」 「……はぁ、めんどくせぇな」 「なんか言ったか?」 「なんも言ってないぜ?」 「何で疑問系なんだ……」 はぁ、なんかすげぇ墓穴掘ったな、なんかまた暑くなってきた気がする 「なぁチルノ?」 「なに?」 「ちょっと失礼」 そう言ってチルノを持ち上げて膝に乗っける 「わ!?」 「ああ、やっぱこうしたほうが涼しいな」 「な、○○何やってるんだ!?」 慧音があわてたような声を出す 「ん?こっちのほうが涼しいぞ」 「そ、そうじゃなくてだな」 「別にチルノも構わないだろ?」 「ん、別にいいよ。びっくりしたけど」 「だってさ」 「うぅ~……」 なんか納得いかないことでもあるのか慧音は不満げの顔をする 「どうしたよ?」 「なんでもない…」 ここで俺はなんとなく何が不満なのか気づいた 「ああ、そういうことか!」 「っ!」 俺がそういうと何故か慧音は紅くなった 「慧音も涼みたいんだろ?」 「は?」 「ほらほら、遠慮するな」 そう言って俺は慧音を縁側に手招きする 「お前は鋭いんだか、鈍いんだか……」 「は?」 「いやもういい、じゃあ遠慮しないぞ」 と、なんか引っかかるようなことを言いながらこっちに来る 「あの~慧音さん?」 「何だ?」 「何で慧音さんまで膝に座りやがるデスか?」 「遠慮しなくていいんだろ?」 「そうは言ったがな、しかし……」 「……だめか?」 そんなことを言いながらこっちを上目遣いに見てきた この時点で 「……だめじゃねえよ」 と答えるしか俺には選択肢はなかった その日はなんかチルノが近くにいるのに物凄い暑い日だった 8スレ目 629 「今帰ったぞ。…聞いてくれ○○、この暑さのせいなのか皆少しおかしいんだ。 なにが、とは言わないが……○○? いないのか…?」 「……………………」←床に突っ伏してる 「○○…っ! おい、返事をしろ○○! ……くそっ、熱中症か!?」 「……………………」←面白そうなので無視を決め込む 「永琳に連絡して……いや、それよりも身体を冷やす方が先か……!」 「……………………(汗」←ちょっと展開がおかしいぞ 「ええと、熱中症のときは服を脱がせて腋の下を冷やすんだったな」 「……………………(汗(汗」←やばい、やばいぞ。何かがやばいっ! 「……ちょっと待て……。ここのよりも風呂場のほうが冷たいんじゃないか……?」 「……………………(汗(汗(汗」←何でそんな展開になるっ! 「うん、よし。○○……私が助けるからな…………」←○○を担いで風呂場へ入ってゆく 「……………………(汗(汗(汗(汗」←誰かー! たーすーけーてー! 「あーーーーーーーーーーーーー!!!!」 その数分後、○○の悲鳴が夏の空に飲み込まれていったそうな。 「ったく、悪ふざけが過ぎる!」 それを聞きながら慧音氏は濡れた服を着替えたそうな。 9スレ目 493 「○○どの~ご在宅か~?」 響く声、一人の少女が家の中に呼びかける、返事はない 「鍵もあいているじゃ無いか・・・もしかして裏か」 勝手に家に上がる、しかし靴は持っていくらしい 家の中を真っ直ぐ進むと裏口、其処で靴を履き、扉を開けた 「ん?ああ、先生でしたか」 「やはり裏にいたか、探したぞ、数分」 「ははは、すいません」 桶、のようなものを洗う男、どうやらこの家の主のようだ 「何か掃除か?」 「ええ、こいつらの家ですよ」 そう言って男が指差したのは色とりどりの綺麗な、金魚 「おお、あんなに黒かったのにずいぶん綺麗になったものだな」 「今年は色変わりが早かったですから、もう完全に色が変わってますよ」 「・・・綺麗だな」 「ありがとうございます・・・その子達も喜ぶでしょう」 掃除を終えたのか桶を壁に立てかけ、群れた手を拭いた 「それで・・・今日は何か用ですか?」 「い、いや、金魚たちがどうなったか気になって・・・身に来ただけ・・・だ」 男は嬉しそうに笑った、少女も、笑った 「ん?この金魚背びれがないぞ?顔も何か違う?」 「ああ、それはランチュウといって・・・・・・」 それから男の金魚話が続いた、長くなったのでカットカット 「なるほど・・・そうなのか、じゃあこの種類は・・・」 金魚の勉強、変な話だが彼女にとってこの話は面白いらしい 何処で生まれ、どうやって改良され、そしてこれからは ぶっちゃけ染色体がどうの色素変異がどうのってのは全然わからないが、先生はそっちの方が詳しいみたいだ 「先生、日が暮れてしまいます」 夕焼けに染まる風景、全て等しくなるように、暗闇の前触れに 「ああ・・・その・・・また来ても良いかな」 「はい、先生が来るのを心待ちにしています」 「そ、そういうのじゃなくて!き、金魚に、金魚に会いに!金魚を見に来るんだぞ?」 「ふふ、そういうことにしておきます」 「だ、だからだな、そういうのじゃなくて!」 夕焼けは短い、故に美しいのだろう 彼女と話す時間は夕焼けのように短いかもしれない、でも 「お、綺麗だねぇ」 夕焼けの中、金魚だけは自らの色を持ったまま、輝いていた 11スレ目 336 「おや、○○」 「ありゃ、慧音さん」 甘味処で、ばったりと彼と遭遇してしまった 「こんなところで会うとは奇遇だな」 「そうですね、先生が餡蜜を食べるのは驚きですよ」 「何を言う、私とて一応女子だぞ、甘味を欲するときもある」 私が甘いものを食べるのは以外、か・・・正直あまり嬉しくはないな 私だって甘いものは好きだ、妹紅は「慧音は甘いもの喰っても胸にいくからいいよね」なんて言うが・・・ 「俺は授業してる先生も餡蜜食べてる先生も可愛いと思いますよ」 「!げほげほ、そ、そういう冗談は止めてくれ」 いきなりへんなことを言うものだから粒餡の粒が気道に入ったじゃないか だいたい以前から何かとつけて可愛いとか綺麗とか、心にも無いお世辞ばかり 私はそんなによい女ではない、それは自分が一番解っている 「冗談じゃ無いのになぁ・・・お、餡蜜」 私の餡蜜のすぐ後に彼のものも運ばれてくる 私は彼の戯言を聞き流してしらたまを食べた、幽霊に似ていると思った そういえばあの娘の傍らの幽霊もなかなかどうして美味そうだな・・・ 「あ、美味し・・・」 なかなかいい餡子を使ってあるな、やはりあんこは粒餡だな、皮の風味と触感が・・・ にやにやとこちらを覗く○○が目に入った 「・・・なんだ?にやにやして」 「いや、慧音さんが凄く幸せそうにしてるから、女の子らしいなぁ、なんて思ってました」 「なっ!そ、そういうことは・・・なあ○○、私も一応女だ、そんな事ばかり言われるとその・・・勘違いや期待をしてしまう」 「いや・・・はぁ、鈍いにも程がありますよ、それとも俺はそんなに軽薄に見えますか?」 互いに全然食べれていない、私も彼も半分ほどで止まってしまっている いつの間にか話すほうが主になって 「先生、右向いて」 「え?あ、うん」 いきなり右を向いてと言う指示、意図は解らないがとりあえず従ってみた 「えい」 頬に柔らかい感触、すぐに解った だって彼の顔がこんなにも近くにあるのだから 「な、な、ななななな」 机をこえて、私の頬にその・・・ちゅうを 「・・・流石にいきなり唇はだめかなぁと思って」 「(いきなりの出来事に処理落ち)」 「慧音さん、俺の気持ちわかってくれますか?」 「い、いや、解らない・・・ちゃんとこっちに」 自分でも何を言ってるかわからない、ただ客観的に暴走してるなぁなんて思っていた 「んっ、んーぷぁっ」 「・・・慧音さんの唇・・・餡子の味がしますよ」 「はは、それは君のも同じだ」 「・・・時に先生、時と場所と時間、さて、ここは何処でしょう」 「え・・・アッー!」 ほとんどの客が私たちを見ていた そんなことにも気付かないほど油断、いや、彼ばかり見ていたということか 「~ッ!」 「慧音ッ!」 恥ずかしすぎる 席を立って店の外に逃げ出そうとしたのだが、彼に手をつかまれ、阻まれた 「まだ餡蜜が残っています、もったいないです」 「え、あ・・・そ、そうだな」 他の客の視線とざわざわという話し声 店を出るまで恥ずかしくて顔から火が出そうだった 「慧音・・・俺は帰るけど・・・ええと・・・また明日」 「あ、ああ・・・ま、また明日!」 帰路に着く彼を見送って、私も帰ることにした 帰ったら妹紅に冷やかされるだろう、私の頬は自分で解るぐらいに緩みっぱなしだ また明日、この一言がこんなにも嬉しいとは思わなかった、きっと私は有頂天と言う奴なんだ 「あ、さっき餡蜜屋で・・・」 小さい声だったがしっかりと聞こえた、聞こえた私は思い出して悶えた …狭い世界だ、そういうこともあるさ・・・きっと噂が広まるのは早いだろうなぁ・・・天狗が好きそうなネタだなぁ しかしあの恥ずかしい出来事を消してしまいたいとは思わなかった、だって恥ずかしい以上に嬉しくて素敵な出来事もあったのだから 11スレ目 483 「おい、○○。起きろ、朝だぞ」 ゆさゆさと揺さぶられる感覚。 「んー……あと5分だけお願いします」 「……」 「あと…5…f…Zzz……」 「あくまでも起きないつもりか。ならば……」 頭を両手で包まれる感触。 撫でるような力加減に眠り心地も最高潮。 しかし甘かった。 俺はコイツの特技を、すっかり忘れていたんだ。 「てい」 ごす、という音と共に額に襲い来る激痛。 お星様が見えたのは気のせいじゃない。 「ッ!!!!」 「起きたか。そろそろ朝御飯の支度も仕上がる。 着替えたら来るといい」 涙目で額を抑えている俺とは対称的に、慧音の顔は涼やかなまま。 くるりと踵を返すと、彼女はそのまま台所へと向かっていった。 まだ少しジンジンと痛む額をさすりながら思う。 里の寺子屋では宿題を忘れる子どもたちには正義の鉄額が見舞われるという噂だが。 ……正直あの威力は勘弁願いたい。 枕元に置いてあった懐中時計を開けて時間を確認する。 ……嗚呼、結構ギリギリじゃないか。 意識を一息で切り替え、仕事着に手を伸ばす。 冬の冷え込みも本格化しつつある今日この頃。 本当なら布団の中でゴロゴロしていたいのだが、そんな事をやった日にはこの家から追い出されかねない。 いそいそと着替えを済ませ、井戸水をくみ上げて顔を洗う。 凍りつくような冷たさが、僅かに残っていた眠気をキレイに消し去ってくれた。 手ぬぐいで水気を拭いながら、居間へと歩き出す。 程無くして味噌汁や焼き魚等といった典型的な朝ごはんの匂いが漂ってきた。 ちらりと台所を覗けば彼女が鼻歌交じりで味噌汁の味見をしている。 普段のお堅いイメージとは随分かけ離れたものではあるのだが…… (多分知ってるのは俺だけなんだよなー……) もうちょっと愛想よくすれば男衆からは絶大な支持を得られるだろうに、という所まで考えて (ああ、でもそうすると独り占めできねーや。却下) 思い浮かんだ情景を手で振り払う。 ご丁寧に毎朝玄関に放り投げこまれている(どこから入れに来るんだろうか)新聞を開きつつ、ご飯の完成を待つ。 「何々……今日は外界では"クリスマスイブ"とよばれる聖夜であり……」 ゴシップ感溢れる新聞から要点だけ抜き出すと ・今日は年に一度の特別な日(の前夜) ・本来はどこかの国の聖人様がどうたら ・今となっては恋人たちの祝宴の日だったり ・子どもたちには赤い洋服を着たサンタさんが贈り物を ・特別な人にプレゼントなどいかがでしょうか ・取材情報は私、射命丸 文まで。 ……ということらしい。 「……はぁ」 溜息と共に新聞を閉じる。 何を隠そう、このクリスマスという知識を持ち出したのは俺だからだ。 スキマ妖怪の紫に頼んで一度外界をブラついた時……確か十年くらい前のこの時期だったか。 やたらと華やいだ祭のような雰囲気が気になり、外界の蔵書を読み漁り…… 「持ち帰った知識をあの烏天狗に教えるべきではなかったかな」 もう一度、溜息をつく。 本来あのブン屋にはそういった大衆的な事の他にも、クリスマスの歴史や伝承なども伝えていたハズなのだが。 ここはもうさすが、と感心する所なんだろうか? 「どうした、朝から疲れた顔をして」 そうこうしている内に、鍋やら櫃を台車に載せて慧音がやってきた。 「ああ……アレみりゃわかるよ。俺の数少ない汚点かな」 苦笑いをしながらよそわれた茶碗を受け取り、顎をしゃくる。 新聞のめぼしい場所は読み漁ってしまったので慧音の所に放ってある。 「クリスマス……か。確か下界の聖人の生誕日だったか?」 「さすがだな。昔一度話しただけだったハズだが」 「私を甘く見ないでくれ……というのは冗談だがな。 紅魔館の連中はお前が伝聞するよりも前から似たような事をやっていたよ。 もっとも、昨今持て囃されるようなものではなく、随分と厳かなものだったが」 「へぇ……確かあそこの領主は外界の貴族の血を引いてるとかって話だしなぁ。それの繋がりかね」 「ま、それはさておき、メシだメシ」 「ああ、そうだな。教える側が遅刻するようでは面目が立たんぞ、○○」 「わーってるよ……いただきます」 「いただきます」 「……となるから、この掛算を使うわけだ。わかったかー?」 「はーい!」 「それじゃあ、こことここと……この問題やっとけ。 解けた奴は休憩しててよし。ただし、あんまり騒ぐなよ?」 生徒たちに課題を適当に与えた後、廊下に出る。 少し前から、"その日の最後の授業"を俺が受け持つことになっていた。 それを知ってか知らずか、子供達は比較的真面目に取り込んでくれている。 「慧音ー、そろそろ終わりにするから帰る支度を……」 カラカラ、と控え室の戸を開け「うわっ!?」 ……見なかったことにしよう。 カラカラ、と戸を閉めようと「待て、待ってくれ!」 控え室に強引に連れ込まれた。 「……で」 「……」 「これは一体どういう了見なのかな慧音さん」 「こ、これは……クリスマスだし」 控え室のイスに座って一対一で面と向かって座る。嗚呼、何だか尋問みたいだ。 俺の目の前でしおらしくなっている慧音は……何故か真っ赤な服にヒゲと帽子をつけていた。 まさか慧音がこんなマネをするとは思ってもみなかった。 「……その、子供達が、喜ぶと思って……」 恥ずかしそうに俯いたまま、指をもじもじとする慧音。 「そういうことなら俺にも少しくらい相談をしてくれたっていいじゃないか」 俺だって教師の一人なんだぞ、と頬を膨らませる。 「す、すまない。話そうとは思っていたのだが……○○はこんな格好をするの、嫌だと思ってな」 「ああ……なんだ。そういう事か」 確かに俺はそういう面倒事は嫌いだが…… 「子供達の為ならやぶさかではない。……ということで」 「何だ?」 「その服一式を寄越せ。俺も着る」 「ほ、本当か!?」 「男に二言はないんだぜ?」 「そうか……よし、待ってろ。もしもの事を思って二人分用意して……」 いそいそと荷物を漁る慧音の顔は、とても嬉しそうだった。 「それじゃ、いくぞ」 「ああ」 子供達のいる教室への戸を勢いよく開ける。 「いい子にしているかな!? 子供達」 「おじさん……誰?」 「私かい? 私は"サンタクロース"というんだ。 いい子にしている子供達に年に一度、プレゼントをあげているんだよ」 ……ちなみに喋っているのは俺。声色を変えてしまえばどうとでもなるものである。 さすがに慧音が声を変えてもバレるので、彼女は俺の後ろで黙っている。 「プレゼント?」 「そうさ。今日は頑張って勉強している君たちにプレゼントだ。ほれ」 慧音があらかじめ用意していた袋から、菓子の詰まった小袋を取り出す。 子供達一人一人に手渡しをしていく。 反応はそれぞれ異なるが、皆嬉しそうだ。 「ありがとう、サンタさん!」 「ほっほ。これからもいい子でいるんだぞ?」 「はーい!」 「それから、○○先生と慧音先生からの伝言だ。 今日はもう終わりにしていいとさ。気をつけて帰るようにな」 「いいの!?」 「ああ。また明日、だそうだ」 わー、と歓声を上げながら、出ていく子供達を見送る。 両手には大事そうに小袋を抱えていた。 「……行ったみたいだな」 「そうだな。でも良かったのか? まだ授業も途中だったろうに」 「構わないさ。これくらいなら明日にでも取り戻せる」 「それならいいのだが……と、そうだ」 控え室に戻り、更に荷物をごそごそと漁る慧音。 「コレは○○の分だ」 ふわ、と首にかけられたモノ。 もこもこしていて、あたたかい。 「マフラー……か。これ、お前が?」 「何だ、私が編み物をするのは意外か?」 「いや、ありがとう、大事に使わせて貰うよ。しかし……困ったな」 「どうした?」 「折角いいものを貰ったのに、俺からお前に渡すものが……」 「渡すものが?」 「ないわけでも、ない」 右手にいつも嵌めていた指輪を、外す。 「それは……」 「指輪だよ」 「大事なモノなんじゃないのか?」 「大事だよ……だからこそ、意味があるのさ」 かちり、と音を立てて、二つに分離した。 「これ、俺の両親が使っていた結婚指輪なんだ。 ちょっと古びているのがアレだが……片方は、お前に嵌めてほしい」 す、と慧音に差し出す。 「え……」 予想外だったのか、困惑気味の顔。 「駄目か?」 「とんでもない! ……その、私なんかで、いいのか?」 「ああ。慧音だからこそ、受け取ってもらいたい」 「…本当に?」 「……まったく」 まだうろたえ気味の慧音の身体を抱きよせ、唇を重ねる。 驚きに目を見開き、顔を赤く染めながらも、彼女は抵抗をしなかった。 「んっ……」 「……これでもまだ、不安かな?」 「い、いや。ただ……もう少し、私を後押しさせる言葉をくれないか」 「……一緒に居て欲しい」 「まだ足りないよ」 「好きだ」 「まだだ」 「……愛してる」 「私もだ……」 再び、口づけを交わす。 「不束者だが……よろしくお願いするよ、○○」
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/866.html
慧音13 幻想郷には、時折外来人が流れてくる。 神社から帰るものも居れば、そのまま住み着く者も居る。 その青年も、そういう者の一人だった。 里の片隅に住処を構え、里の者に教えを請い、守護者に助けられながら、何とか生活の基盤を作ろうとしているところだった。 「やあ、頑張ってるみたいだな」 「ああ、慧音先生。こんにちは」 ちょうど家に入ろうとしていた彼に声をかけた慧音は、軽く手を振った。 「先生はいいよ。寺子屋に通っていた者達がそう呼ぶだけだから」 「では、慧音さん」 青年はそう、はにかんだように笑う。その言葉に軽く微笑み返して、慧音は用件を告げた。 「その、前に稗田の資料を見たいと言っていたと思うが」 「ああ、はい」 「話が通ったよ。明日訪ねていくといい。私の紹介だと言えば通してくれる」 「本当ですか!」 嬉しそうに、彼は喜色を表した。慧音も嬉しくなって、頬を綻ばせる。 「貴方はここに来てまだ日が浅いからね。いろいろと学んでおくといい。外と違って危険なこともあるから」 「ありがとうございます」 「喜んでもらえて嬉しいよ。では、私はこれで」 「はい、また。本当にありがとうございます」 軽く手を振って、慧音は彼の家の前から離れた。 彼が頭を下げて見送るのを見ながら、彼の姿が見えなくなるところまで来て、一つ息を付く。 「……はあ、まだ、緊張する」 慧音は胸に手を当て、そう呟いた。 「……私はそんな初々しい慧音を初めてみるよ」 慧音の家の縁側で茶をすすりながら、呆れたように妹紅が呟いた。 「な、何だか気恥ずかしくて」 「……慧音はそういうの慣れてると思ってたんだけどなあ」 「慣れてるってどういうことだ、妹紅」 むっとした慧音に、妹紅は呆れ顔で言う。 「だって、よく告白されてたりしたろ? 里の子供とかにさ」 「あれは子供だし、小さな頃から見ているからそういう感覚はないよ」 慧音は妹紅の言わんとするところを察して、軽く頷く。 「おかしいのは、重々承知しているんだ。普段通りに接せられればいいのにな」 「……うん」 妹紅はただ頷いた。言葉にしがたい部分であるのは、彼女にもよくわかっていたから。 「まあでも、慧音が恋とはねえ」 「こ、恋、って」 「そういうことだろう?」 くすくすと微笑う妹紅に、慧音は少しだけ苦笑を見せた。 「だが、私は半獣だ。寿命も在り方も、違う」 「それはそうだけれどね」 妹紅も、少しだけ哀しく笑った。それはわかっている。妹紅の方がもっと痛いほどにわかっている。 それでも、恋するということはどうしようもないのでは、とも、思う。 完全に悟れているわけでも、理解ができているわけでもないが。 「……まあ、それはさておき、だ。とりあえず、その挙動不審をどうにかしないとね」 「そんなにおかしいのか、私は」 妹紅の冗談めかした言葉に、慧音はため息混じりで応じた。 翌日、稗田の屋敷を訪ねる青年の姿があった。 「おや、ようこそ。慧音先生のご紹介の方ですね」 「はい、初めまして」 彼は名乗りを上げて、阿求に一礼する。阿求も礼を返して、口を開いた。 「幻想郷縁起について聞きたいと伺っておりますが」 「はい、やっぱり、こちらの風習や歴史に、興味がありますので」 彼は熱心に言葉を紡いだ。阿求は頷き、幻想郷縁起を取り出す。 「この度の幻想郷縁起は広く読んでいただこうと、いろんな方に見ていただいているのです」 「これが……」 「ええ、是非感想など。それと、外界のことも教えていただけると」 「僕にわかることでしたら」 嬉々として、彼はその申し出を受けた。 しばらく、縁起を眺めながら話をする。彼は熱心に、質問し、また自身の知る限りのことについて答えた。 「中々面白いですね、外の話というのも。ああ、喉が渇いたでしょう。よろしければどうぞ」 「あ、ありがとうございます」 勧められた紅茶を口にする彼に、阿求がふと尋ねた。 「ところで、慧音先生に憧れていらっしゃるので?」 「っ!?」 むせかえって、彼はごほごほと咳をする。 「どうしてそう思うんですか」 「貴方の態度が正に表しているかと。それに、先程慧音先生の項を熱心に読んでおられたようでしたから」 くすくすと笑う阿求に、彼は頭をかいた。 「……ただの憧れですよ。尊敬する人です」 「ええ、そうですね。尊敬できる方です」 彼は動揺を隠すように、幻想郷縁起に目を走らせる。人間の欄もあるんだなと、どうでもいいことに思考を巡らせた。 帰り際に、また話を、ということになった。 「今度は先生も来られるときにどうぞ。教材もこちらのものを使っていますし、勉強になりますよ」 「ああ、はい、お願いします」 「こちらこそ、外界のことをまた教えてくださいな。それでは」 「はい、それでは」 一礼して、彼は稗田家を辞した。日は少し傾き始めているが、夕刻と言うにはまだ少し早かった。 「……うん、お礼は言いに行かなきゃな」 小さく呟いて、彼は里の中に足を進めた。 結局、団子を幾つか買って、彼は慧音の家の前までやってきた。 (どうしよう、訪ねるのは変かな。でもお礼も言いたいし、けど……) うんうんと悩みながら門の前をうろうろする。端から見れば十分不審者だ。 「おい、何やって……って、お前か」 「ああ、妹紅さん」 「何やってるんだこんなところで。怪しいぞ」 「ああ、うん、ええと、慧音さんにお礼のお菓子持ってきたんですけど」 入るに入れず、門の前をうろうろしていたことを妹紅に告げる。 「なんだ、それなら普通に訪ねればいいじゃない」 「ああいや、妹紅さんが訪ねてきたのならお任せして帰ろうかと……」 「お前が渡さないと意味ないだろう。ほら行くよ。慧音ー!」 彼が止める間もなく、妹紅が門を開けながら家の中に呼びかける。 「どうした、妹紅……と、貴方も来ていたのか」 「ああ、ええと、はい」 「お礼の菓子だってさ。何のなの?」 「稗田の家への紹介だよ。幻想郷縁起の」 「ああ、なるほど、前に言ってた奴か」 テンポの良い会話に入れず、彼はどう切り出したものか、と悩む。 「ああ、放ってしまってすまない。お礼なんて良かったのに」 「いえ、やっぱり。その、助かりましたし楽しかったですから」 「それは良かった」 慧音の笑みに、顔が熱くなる。少し口ごもりながら、彼は包みを差し出した。 「あ、その、では僕は」 「折角来たんだ、お茶でも一緒に」 「え、でも」 「いいじゃないか。どうせなら今日の話も聞かせてよ」 妹紅に言われて、彼は少し悩み、では、と頷いた。 「お、お邪魔します」 「堅くならなくていいよ。では、お茶を煎れてこよう。今日は天気もいいし、縁側で待っててくれ」 慧音はそう言って、奥に入っていった。 「へえ、じゃあ、外じゃ書生だったんだ」 「とはいえ、専門職にはまだ遠かったですけどね」 茶を口に運びながら、青年は妹紅の言葉に頷いた。 「だが、確かに民俗学なら幻想郷はうってつけだな」 「まったくです。帰る気をなくしてしまうくらいに」 彼は笑って、慧音の言葉に頷いた。 「生きるための仕事、というのは今までにない経験で大変ですが、それでもやりがいはありますし」 ず、とまた一口茶を口にする。 「失われたものがたくさんあるこの郷は、やっぱり僕にとって非常に魅力的です」 「楽しそうだな」 「ええ、楽しいのだと思います。今日の稗田さんのお話も、とても面白かった」 「熱心で何よりだ。いいことだと思うよ」 そう、慧音は微笑む。彼は、いやそんな、と言いながら、照れたように頭をかいた。 「そんなに勉強が好きなら、いっそ慧音の寺子屋手伝ってやればいいのに」 妹紅が団子に手を伸ばしながら呟く。 「あ、いえ、そんな、僕なんて」 「無理は言えないよ、妹紅。まあ、確かに学問に造形の深い貴方に手伝ってもらえると楽かもしれないけれど」 「そんな、僕はそこまでは」 「ほら、慧音もこう言ってることだしさ」 「……少し、考えさせてください。えと、その、頑張ってみたいとは思うんですけど」 「うん、返事はすぐでなくていいよ」 慧音の言葉に頷いて、彼は考えるように湯呑みに視線を落とした。 本心では、とても嬉しい。だがそれに甘えていいのかどうかがわからないし、仕事のこともある。 「無理はしなくていいんだぞ」 心配そうな慧音に、彼は首を振った。 「いえ、そういうわけではないんです。やってみたいとは思うので」 「じゃあ、見込みは有りってことだな」 「こら、妹紅」 楽しそうな妹紅を、慧音が軽く窘める。 仲いいなあ、と思いながら、彼は自分が持ってきた団子を一つ、口に放った。 里の子供達とも仲良くなったり、里の者達にも少しずつ受け入れられて、青年は幻想郷に馴染んできていた。 日々懸命に生き、働き、糧を得て――そして、ほんの少しの時間でも、想いを寄せる人と会話をする。 そんな生活が、何となく続いていくのだと思っていた。 続いていけばいいと思っていた。 そう、思っていたのだ。 そんなある日のこと、だった。 「ああ、どうも」 「足りない薬はありますか?」 「今は大丈夫だよ。ご苦労様」 薬を売りに来た鈴仙に、慧音はそう労いの言葉をかけた。 「お茶でも飲んで行くか?」 「いえ、遅くなると師匠に怒られますので」 鈴仙はそう微笑って辞した。そして、ピン、と耳を立てる。 「どうした?」 「ああ、いえ、ちょっと。竹林に誰か人が入ったような」 「そういえば、さっき彼が向かっていたな……」 慧音はあの青年が竹林の方に歩いていくのを見たことを思い出した。 筍の季節だと里人と話をしていたから、掘りにでも行ったのだろうか。 「……え、今竹林に変な妖怪が出るって話があるんですけど」 大丈夫かな、と鈴仙は何となく呟いた言葉に、慧音はさっと顔色を変えて尋ねる。 「どんな妖怪なんだ?」 「大きな犬のようなものと。だからうちの妖怪兎も外に出ないようにって……あ、ちょっと!」 聞くが早いか、慧音は走り出した。竹林に行く前に、せめて妹紅に声をかけてくれていれはいいが、そうでもなければ―― 「慧音、どうしたんだい、そんなに息を切らして」 「も、妹紅、こっちに、彼は来てないか」 「うん? ああ、あいつ? 来てないけど、どうしたの?」 「竹林に入ったらしい」 妹紅の表情が険しくなった。妖怪の話は既に聞いているのだろう。 「わかった、私も探す」 「すまない」 「ああ、やっと追いついた」 こちらも息を切らしながら、鈴仙が現れる。あまりの様子が気にかかったらしい。 「何も言わずに走っていくんだもの」 「……ちょうどいい、慧音、こいつにも手伝ってもらおうよ」 「へ?」 首を傾げる鈴仙に、妹紅は軽く口の端だけで笑ってみせた。 「ああ……くそ」 悪態が口を付いて出る。言われていたじゃないか。里の外は危険だって。 近い場所にある竹林も、妖怪が出るって聞いてたじゃないか。 抉られた左足が熱いのに、泣きじゃくりたいほどの痛みもあったはずなのに、もう何故か遠い。 顔も痛みから来る涙で濡れているはずなのに、もうよくわからない。 何故なのか、なんて、わかりきっている。 「しぬ、んだなあ……」 今度竹で何か作ってみようかと、子供達と話しただけのこと。ついでに筍でも探してみようか。そんな軽い気持ちだった。 もう少し、自分の居る場所について、深く知っておくべきだったのだ。今言ってもどうしようもないことだが。 出会った大きな犬のような妖怪は、何も言わずこちらに襲い掛かってきた。必死に転げまわって逃げたが―― ちらりと、左足を見る。真っ赤だった。どれだけ血が流れたのだろう。確実に肉も抉られたはずだが。 (仕方ないか。これでもけっこう、がんばった方だろう) 恐怖は、不思議ともうなかった。死ぬ瞬間なんてこんなものなのだろうか。それとも、もう狂ってしまったのだろうか。 どっちでもいいか。彼は呟く。ゆっくりと近付いてくる大犬の姿に、軽く目を閉じた。後は食われるだけなのだろう。 忠告をきちんと聞かなかった、いや理解していなかった、自分のミスである他ない。 ああでも、叶うなら。 「……もう、いちど」 あいたかったなあ、という言葉は、もう声にすらならなかった。 一瞬、閉じた視界に光が差した気がして、彼は薄く目を開けた。おかしいな。もうそろそろ食われても良さそうなのに。 霞む視界の中、大犬が光に包まれたのが見えた。何が起こっているのだろうか。 「――――――!」 ああ、声が聞こえる。自分を呼ぶ声。幻聴だろうか。 もう微かにしか見えない目でも、はっきりとわかる姿。 綺麗な銀の髪が揺れている。間違えようもない。何かを必死で叫びながら、こちらに近付いてくる。 死ぬ間際の幻かな。 それでもいい、と思った。それでも構わなかった。 死ぬ直前に見れたのが、何より恋した女性の姿、だなんて。 ――ああ、なんて、しあわせなのだろう。 ───────── 目の前が明るかった。 死んだのかな。 確かに死んだら彼岸に行くんだっけ。そう彼は思い出していた。 まだ会ったことはないけれど、死神がいて彼岸に運んでくれるんだったか。 そういうことよりも、もっと危機回避を覚えておくべきだったな。 「ああ、気が付いたのね」 「…………え?」 薄ぼんやりとした光の中で、見覚えのある薬師の姿が見えた。 「……八意、先生」 言葉は掠れていた。二、三度咳をして、少しいがらっぽい喉を整える。 「ええ、そうよ。運が良かったわね。貴方、普通なら死んでたわよ」 「……身体、あまり痛くない、ですが」 「痛み止めが効いているだけ。また痛むわよ」 そう言った後、永琳は鈴仙を呼んだ。程なく現れた鈴仙は、目覚めた彼を見て目を丸くする。 「師匠お呼びで……あ、目が覚めたんですか」 「ええ、ついさっき」 「最初見たときはもう駄目かと思ったんですけど」 「貴女の応急処置が最適だったのもあるわ。よくやったわね、ウドンゲ」 永琳に褒められて、鈴仙は微かに頬を綻ばせた。彼は横になったまま、鈴仙に礼を言う。 「ありがとうございます」 「私も連れて行かれただけだもの。お礼はあの二人に言うことね」 「あの二人」 「慧音さんと妹紅よ」 その言葉に、青年は驚いた表情になる。では、あのときの姿は幻覚ではなかったということか。 「では、お二人にも、お礼を言わないと」 「はいはい、動こうとしないの。後にしなさい。まだ休んでいた方がいいわ」 「けれど」 「いいから休みなさい。まだ安定したわけではないのだから」 永琳に言われて、彼は無理に起き上がろうとしていたのを諦める。諦めると、不意に眠気が襲ってきた。 「すみません、先生、少し、眠いので」 「ええ、休んでいなさい。説明は落ち着いたらしてあげる」 「ありがとう、ございます……」 そう呟き、鈴仙に何やら指示する永琳の声を遠くに聞きながら、彼は再び深い眠りに落ちていった。 次に目が覚めたのは、身体を襲った痛みのためだった。 「ぐ、うう、うっ……!」 正確には、左脚。大きく抉られた場所が、悲鳴を上げそうなほどに痛んだ。 「……大丈夫か! 今、永琳殿を呼んでくるから……!」 「う、あ……!? 慧音、さん……?」 痛みを一瞬忘れそうな程に、茫然となる。どうして、ここにいるのだろうか。 「いいから、無理は……!」 「はいはい、落ち着いて。痛み止めが切れたのね」 いつの間にやら来ていた永琳が、てきぱきと処置をする。 すぐに痛みが引くと言うことはなかったが、鋭い痛みが少し鈍い、我慢できないことはない程度には治まった。 「ありがとうございます、先生」 「いいえ」 「すまない、取り乱して」 慧音が謝罪し、それにも永琳は首を振る。そして、上体を起こした彼に向き直った。 「だいぶ落ち着いてきたようだから、貴方の状況について説明したいのだけど、いいかしら」 「はい、お願いします」 「……私も、いてよろしいか」 「僕は構いませんが」 「私も構わないわよ。一度説明はしているのだけど」 慧音は、感謝する、と頭を下げた。彼は首を傾げる。一度聞いたのなら、一緒に聞く理由は特にないと思ったのだ。 だがまあ、断る理由もないし、こんな状況で不謹慎だが、姿を見ていられるのは嬉しい。 命が助かった途端にこれだ。我ながら浅ましいと思う。 「では、始めるわね。まず、貴方の怪我について。左脚に大きな裂傷――というより、抉られた傷があります」 「それは、何となく感じてます」 「幸い、大きな血管には傷が付いていなかったから、そちらの問題はありません。ただ……」 「ただ?」 「左足が不自由になるのは避けられません。杖などの補助具を使えば、日常生活上の歩行などは出来ます」 永琳の言葉に頷いて、彼は口を開く。 「日常生活は、となると、仕事などにはやはり」 「そうね。激しい動きはもう無理だと考えて良いです。そもそも、筋繊維から欠損しているから」 「……なるほど、これは困った」 彼は苦笑した。命が助かっても、これでは現在の日々の生業に支障を来す。 事務屋のような作業なら出来るだろうが、仕事を見つけるまでが大変そうだ。 「それだけではないわ。これは幸か不幸か――なのだけど」 「まだ、何か?」 永琳は、少しだけ慧音の方を気にした。慧音は正座をしたまま、膝の上で拳を握りしめている。 「……貴方に、呪がかかっているの」 「呪? 呪い、ですか?」 「ええ。幻想郷縁起を見たなら知っていると思うけど、半獣――獣人が里にも結構いるのは知ってるわね?」 「ああ、はい。先天的の人と後天的の人がいると」 幻想郷縁起の説明通りのことも、里で目にしたこともある。意外にいるものだ、と思ったりもしたのだが。 「貴方の呪は、獣人となるもの。例の妖怪の呪いね」 「……はい? ああ確かに、呪いでそうなるという例もあると聞きましたけど」 「ならば話は早いわね。そういうことなの。そして皮肉なことに、獣人になったことで、貴方はあの出血にも関わらず生き延びたのよ」 低く唸って、彼は腕を組む。あまりに多くのことがありすぎて、一度に整理するのは難しかった。 「……ああ、うん、すみません、困ってます」 「まあ、そうでしょうね」 「……まず治療費からどうしようかなと」 「……随分と現実的なところから来たわね」 それはそれでありがたいけれど、と少しだけ呆れた調子で永琳は応じる。 「いや、現実的なとこからいかないと、後どうしようもないことだらけなんで。生活とかも」 「……それ、なんだが」 今まで黙っていた慧音が、そっと口を開いた。 「……もしよければ、私が面倒みたいと、思う」 「え?」 「あら、いいの?」 永琳が意外そうな声を上げる。 「獣人は、最初何が起こるかわからないし、それに関しては私に一日の長がある。仕事も、一先ずは私の寺子屋を手伝ってもらえばいい」 「……それは、願ってもない、ですけど」 「今回のこと、私の監督不行き届きもある。貴方が気に病むところではない」 慧音はきっぱりと言い、彼と永琳を交互に見つめた。 「どうだろう、病状的に何か不都合はあるだろうか」 「私としては問題はないわね。というより、むしろ好都合。彼を退院させるにしても、一人暮らしのところに戻すのは不安が残るから」 「ならば、後は貴方だけだ。私が引き取ろうと思う」 真剣な瞳に、彼は目を伏せた。一緒にいられるということに、一瞬でも心が躍った自分が、あまりに矮小に感じたのだった。 「……僕に、否応はありません。ただ、申し訳ない思いだけがありますが」 「それは気にするところではないよ。では、そういうことで」 「ええ。まだしばらく入院は必要だから、その辺りの打ち合わせは好きにしてくれていいわ」 永琳はそう言って、一つ頷く。 「そうね、退院後について貴女にも説明することにしましょう」 「お願いする。それでは、私は一度失礼しよう。診察もあるだろうし、私の方も準備をしなければならないから」 慧音は一つ頭を下げ、病室を出ていった。 「……何だか、いろいろと申し訳ない気分で一杯です」 「いいじゃない、甘えてしまえば。いずれどうなるかは別としても、貴方にはとりあえず頼れる者が必要よ」 永遠亭もいつも看ていてあげれるわけでなし、と永琳は一つ息をつく。 「……そうですね。ああ、妹紅さんにもお礼を言わないと」 「後で言えばいいんじゃないかしら。ここに来てるし」 「あれ、こちらにいらっしゃってるんですか」 「姫と遊んでるわよ。ほら、聞こえてくるでしょう」 そう耳を傾けた彼の耳に、遠く爆音が聞こえてきた。 「妹紅」 輝夜と一晩弾幕勝負をしていた妹紅に、慧音が声をかけた。 勝負自体は今日もイーブンのようだ。というより決着はつくのだろうか。 「慧音、どうなった」 「私が引き取ることになった」 「ん、そうかい」 少し焦げた服を払いながら、妹紅が頷く。彼女はそれでいいと思っていた。 だが、慧音は顔を伏せて、低い声で言う。 「……妹紅、私は浅ましいな」 「そんなことはないさ」 「いや、浅ましいよ。私は、これを口実に……」 「慧音、自分を責めるんじゃない」 妹紅は少し強い調子で言葉を紡ぐ。 「あいつは生き延びた。生き延びた以上、どうにか生きなきゃならない。ただ、今のあいつにそれは困難だ」 「……うん」 「慧音はそれを手助けしたいんだろう。それは間違っちゃいない」 「……ありがとう、妹紅」 慧音は妹紅の肩に額をつける。妹紅は宥めるように、慧音の背をぽんぽんと軽く叩いてやった。 退院の日、松葉杖をもらって、彼は竹林を一歩一歩歩いていた。 「むう、これは中々歩きにくい」 「そもそも道もあまり良くはないしね。ほら、気を付けて」 「大丈夫か」 妹紅が先導し、慧音が傍らにつく。 「すみません。大丈夫です。少しは慣れないといけませんしね」 「最初から無理はしないことだ。そもそも入院で体力も落ちているのだから」 慧音の言葉に、彼はすまなそうに頷いた。 「はい。けれど早く、松葉杖から卒業はしたいですね」 「それ不便そうだもんなあ」 「腕が使えないので。きちんとリハビリしていけば、普通の杖で歩ける程度にはなると先生も言ってましたし」 頑張りますよ、と軽く微笑う。 「振れる限りの仕事は振るように、と私も言われているからな」 「過保護は駄目だよ、慧音」 「わかっているさ」 妹紅の茶化しに、慧音も軽く微笑む。 「しかし、短い期間によくそこまで回復できたなあ」 「ああ、それは半分人間じゃなくなったからとか。まだ変身もしていないので、ピンときていませんけど」 「そっか。まあそうだよな」 妹紅は何となく頷き、少し慧音を気にする。慧音もその視線に気が付いたのか、大丈夫だ、と頷いた。 「とりあえず、日々気を付けておくことだな。何が契機になるかわからないし」 「はい。お、っと」 窪みに足を取られて、彼は転びかける。それを、さっと慧音が支えた。 「気を付けて」 「はい、ありがとうございます」 「息がぴったりなことで。さあ、里に着くよ」 妹紅は微かに笑ったような声で、視線を先に向けた。 荷物自体は既に慧音の家に運び込まれていて、青年は一室を間借りすることになった。 とはいえ、いろいろなものは共有することになる。 食事や洗濯や風呂一つでばたばたしつつも、何とか共同生活の形は取っていこうとしていた。 「勢いで始めた面もあることは否定はしないが、大変なものだな、誰かと暮らすというのは」 「まったくですね。いろいろと大変です」 「いちいち騒いでるからだと思うんだけどなあ」 そう呟く妹紅に、騒いでいるつもりはない、と二人の声が重なる。 重なったことに少し気まずそうな表情を交わして、二人は茶を飲んだ。 「まあ、寺子屋周りには周知も出来てきてるし、少しは慣れたか?」 「まだ何日も経ってませんから、まだ全然です」 「それでも、子供達とは仲が良かったからな、受け入れは早かったよ」 慧音がそう、安堵の息を吐く。寺子屋の仕事を手伝い始めた彼の手際は良いものだった。 「ま、何にせよ少しずつだろうね。焦ってもどうにもならないさ」 「妹紅さんに言われると重みがありますねえ」 「ふふふ、そうだろう。少しは見直すと良い」 「仲が良いな」 慧音が呆れのような微妙な想いを含んだ呟きを漏らすと、妹紅が軽く笑った。 「慧音とこいつ程じゃないと思うんだけどなあ」 「……そうかな」 「……僕を見ないでくださいよ。どうコメントすれば良いやら」 困惑する彼の様子が少し子供っぽくて、慧音と妹紅は笑いだした。ひとしきり笑って、妹紅は、さて、と立ち上がる。 「私はそろそろ帰るよ」 「待て妹紅。夕飯を一緒にしていくんだ」 「いやいいよ」 「いいえ、慧音さんに聞きましたよ。たまに夕飯をサボるとか」 「そういうことだ。三人前作るぞ」 「了解です」 「……本当に息ぴったりなことで」 呆れながらも、妹紅は大人しく座りなおした。 妹紅は知っている。二人がまだ、二人きりであるということに慣れていないと言うことを。 それが故に、妹紅を引き留めることが多いのだ。いや、体調の心配も普通にされてはいるのだが。 「……ま、これからどうなるか、だよねえ」 そう妹紅は、楽しそうに呟く。何だかんだと、一番楽しんでいるのは彼女なのであった。 そうこうしているうちに、退院して数日が経った。その、夕方。 「遅くなったな」 こつ、こつ、と松葉杖をつきながら、彼は慧音の家へと向かっていた。 「今日は満月だっけ。慧音さんは仕事に行くだろうから、部屋で大人しくしてるかな」 帰る頃には月がもう昇る頃だろうか。もう少し早く帰るつもりだったのだが、慣れない足故か、まだ時間を読み間違える。 「……はは、慣れないとな。一生これなんだし」 生き延びた以上は、生きていく責任がある。いろいろな人に借りも出来た。それを全部返すまでは、少なくとも生きなければ。 辺りはもう暗い。山の端に夕焼けの残滓がまだ残っているからこそ、辛うじて道が見える程度。 急がなければ。そう思った彼は、何とも言えない違和感に立ち止まる。 「……あれ?」 何だか、身体がおかしい、気が、する。 訝る彼の腕から松葉杖が滑り落ちて、地面と乾いた音を立てた。 「さて、仕事に行くかな」 満月を見上げて、慧音は呟いた。その姿は、双角と尾が生えた、半獣のもの。 「……遅いな。まあ、里から帰ってくるだけだからもうそろそろだろうけれど……」 そういえば、彼にこの姿を見せたこともなかった。帰ってくる前に出かけても良いが、やはり説明はしておいた方が良いだろう。 そう思い、門を開けた慧音の視界に、人の大きさほどもある、銀灰色の大犬が入ってきた。 それだけでも警戒には十分であったが――問題は、その大犬が咥えているものだった。 「それ、は」 彼の松葉杖と、着ていた服。それを半ば引きずるように咥えて、大犬は近付いてくる。 「貴様、その持ち主をどうした……!?」 身構えた慧音に、大犬はきょとんとしたように数度瞬きし、やがて気が付いたように咥えていたものを離して叫んだ。 「慧音殿! 私です!」 その声に聞き覚えがあった慧音は、自身の記憶とすり合わせ、出てきた結論に声を上げた。 「……え? ……まさか」 「その、まさかです。帰ってくる途中に、急にこの姿に」 大犬は丁寧に言葉を紡ぎ、くるりと慧音の前で一つ回った。左足に、肉が抉れた形の大きな裂傷がある。 「……そうか、満月か、貴方も」 「そのようです。ああ、慧音殿はそのお姿なのですね。初めて拝見します」 「そうだな。その、貴方は少し話し方が堅いようだが」 「そうでしょうか。私としては変わったつもりではないのですが」 大犬の姿の彼は一つ首を傾げ、ああ、と呟いて、服と杖を再び咥えようとした。 「ああ、私が持とう」 「申し訳ありません。この姿ですとどうも持ち難くて……随分地面にも擦ってしまいました」 「何、洗濯すれば問題もないだろう。しかし、そうか、完全に獣の姿になってしまうのか……」 後天性だからと、人の形に近いものになるのだと思いこんでいた慧音は、自分の思いこみを反省した。 「視点も違いますし、随分と身体も軽くて不思議な感覚です」 「ふむ……うん、とりあえず私と一緒に行こう。一人では不都合も多いだろうし。少し待っていてくれ」 「はい」 慧音は門の前に彼を残し、部屋に彼の服と松葉杖を置いた。洗濯は後程しようと決める。 「……目の当たりにすると、やはり感じるものだな」 小さく呟いて、慧音は深く息を付いた。そして、彼の元に戻る。 彼は門の前で、大人しくお座りして待っていた。 「待たせたな」 「いいえ」 首を振る彼の頭を一つ撫でて、慧音は竹林に向かって歩きだした。 「妹紅」 「あれ、慧音珍しい、仕事は……って、何、そいつ」 竹林を散歩でもしていたのか、ふらふらと歩いていた妹紅は、慧音に呼びかけられて振り返り、大犬の姿を見て表情を険しくした。 「彼だよ、妹紅」 「こんばんは、妹紅殿。この姿で失礼いたします」 「……え、何で犬なの?」 「そういう型の変身のようだ。妹紅、頼みがあるんだが」 「はいよ、何?」 「私の仕事の間、彼を見ていてほしい。早めに終わらせるつもりだが」 何かあってはいけないから、と言う慧音に、妹紅は頷いた。 「いいよ、いってらっしゃい、慧音」 「いってらっしゃいませ、慧音殿」 「すぐ戻る」 そう、彼の頭を撫でて、慧音は竹林の中に飛び立った。その背中を見送って、妹紅は近くの岩に腰を下ろす。 「……ちょっと嬉しい? 頭撫でられて」 「……そのような顔をしていましたでしょうか」 「いや、尻尾がさ」 ぶんぶん、と勢い良く振られている尻尾を見て、妹紅は少し呆れを見せる。 「これは、失礼」 「いや、いいよ。うん、まだ戸惑ってる。私も、慧音もきっとね」 「私も、かなり戸惑っています」 「落ち着いているように見えるけどなあ」 「いいえ。戸惑っていますし、怖がっています」 「怖い? 何が?」 彼は妹紅の隣に伏せをして、ぽつりと呟く。 「……ただでさえ、慧音殿の迷惑になっているというのに、いざ変身したらしたでこの有様。お嫌いになったかと」 「慧音が? まさか」 妹紅は一笑に付した。慧音が彼を大事にしているのは、見ていればわかること。肝心の本人に伝わっていないようだが。 「……此処に来るまで、ずっと何やら思い悩まれているご様子でした」 「……誤解のないように言っておくけどさ。慧音は、お前を邪魔だなんて思ってないからな」 「……そうでしょうか」 「ただ、責任を感じているんだよ。お前を助けられなかった、獣人にしてしまった。慧音はそれを自分の所為だと思ってるだけ」 「そんなことはないのに」 「そうだとしても。お前がどれだけそう思ってもだよ」 彼はしばらく顔を伏せ、目を伏せて、再び呟く。 「これは私の軽挙が招いただけのこと。慧音殿には、何の咎もない。それでも――あの方は、人間が好きだから、か」 「…………うん、そうだね」 妹紅は曖昧に応えた。慧音の想いは、慧音自身が伝えなければならないことだから。 そう思って、ふと、彼女は気になっていたことを尋ねることにする。 「……ところで、お前は慧音のことどう思ってるんだ」 「どう、とは?」 「何というかその、異性としてとか何とか」 「ああ、はい。好きです」 さらっと返ってきて、妹紅は逆に面食らう。 「……もの凄くあっさり言われたよ。普段のお前だったら絶対言わないだろうに」 「少し気が大きくなっていると言いますか、それで割とさらりと」 ただ、ぴこぴこぴこぴこ、と耳が忙しなく動いているので、幾許かの照れはあるらしい。 「……秘密ですよ」 「それはわかってる。へえ、でもそうなんだ」 にやにやする妹紅から目を逸らして、彼は落ち込んだようにぼそぼそと言葉を紡ぐ。 「だから、今の自分があまりにも浅ましく狡い存在に思えてならないのです。この身体を理由として、側にいるようで」 「……そこは気にしなくて良いと思うよ。それに、告白して受けてもらえるかどうかは別な話なわけだし」 「痛いところを突きますな、妹紅殿は」 彼は気分を変えるように笑った。少しすっきりしたような笑いだった。 「お待たせ」 「お帰り、慧音。早かったね」 妹紅が岩から立ち上がり、慧音を迎える。伏せていた彼も身体を起こした。 「何か変わりは?」 「特にはありません」 「急に暴れることもないし、大人しいよ」 妹紅の言葉に軽く頭を下げ、彼は、しかし、と呟いた。 「永遠亭で変身せず良かった。驚かせていたでしょう」 「あのふわふわもこもこ達かー。驚くだろうな」 「他人の心配する辺りが本当に貴方らしいよ」 慧音は微笑んで、彼の頭を撫でた。嬉しそうに、彼はクウと鳴く。 「幻想郷というのは不可思議なものですね」 「ああ。だから、もう外では有り得ないものがここに有る」 「私もまた、そういうものとなったと。なるほど、これは肚が決まって丁度良い」 「……いいのか、それで」 慧音の静かな問いに、彼は頷いた。 「どのみち、悩んでいたところでした。今ならまだ外に帰れなくはない。だが此処にもいたい。その迷いに片が付きました」 「いいの? 随分強制的だけど」 「良いのです。此処には私が帰りたくないと思うものに溢れていた。学ぶもの、求めるもの――まだ、いろいろと」 妹紅の言葉に返した彼は、言おうとした言葉を途中で誤魔化すように打ち切った。それが何か察して、妹紅は笑みを浮かべる。 「そうかそうかー。なら、いいきっかけだったのかな」 「かもしれませぬ。まあそれでも、慣れていかねばならぬことは多いですが」 冗談めかした口調で、彼はそう頷いた。 「……慣れねばならないことがあるなら、私にその手伝いは出来そうだな」 「あまりご迷惑をおかけしても、と思いますが」 「そんなことはないよ。私に出来ることがあれば」 「……ありがとうございます、慧音殿」 深く一礼し、彼は慧音の隣に並ぶ。二人の遠慮と想いをただ一人知る妹紅は、やれやれと言わんばかりに肩を竦めた。 ふと見上げた天では、美しい満月がもう傾き始めている。これからどうなるかなど、誰にもわかることではなかった。 かくして翌朝。 「うわああっ!?」 「ど、どうした!?」 彼の叫び声に、慧音は料理の手を止めて彼の部屋に急いだ。 昨晩、毛皮が暖かいのでこれでいい、と適当に床に寝ていたのは確認して休んだのだが、何かあったのか。 そう思った慧音が彼の部屋の戸に手をかけた瞬間、彼の叫ぶような声が再び聞こえた。 「ま、待ってください! 開けないで!」 「ど、どうしたんだ……?」 「す、すみません、大きな声を出して。すぐに行きますから」 そう言って数分もしないうちに、彼は部屋から出てきた。くしゅ、と小さくくしゃみをする。 「大丈夫か? どうした?」 「いえ、起きたら裸で床に転がっていて吃驚したんです。昨晩、僕何しました……?」 心底不安そうに尋ねられて、慧音は理解する。彼は獣人になっていた時間の記憶がないのだ。 「……とりあえず、朝餉を食べながら説明しよう。もう陽も高いし」 「…………はい」 「心配しなくても、変なことはしていないよ。それより、風邪を引いていないか?」 「大丈夫、だと思いますけど」 「気を付けておこうか。貴方は大丈夫でないときに大丈夫ということがあるから」 慧音はそう、悪戯っぽく微笑った。 「ということで、今日はこれから永遠亭に行こうかと思ってな」 「了解、案内するよ」 慧音の言葉に、妹紅は軽く頷いた。 「本当に覚えてないんだな」 「ええ、全く。お酒飲んで記憶飛ばしたときの感じに似ています」 「なるほど、わかりやすい」 妹紅は笑って、その笑いを納め、真剣な声で尋ねた。 「……ということは、お前はやっぱりもう、外には帰れないよ」 「妹紅!」 「ああ、そうですねえ」 妹紅の言葉に、彼は微かに笑った。 「まあ、悩んでいましたし、これで肚が決まって丁度良いかと。僕の学びたいものはここにたくさんありますし」 「……貴方は」 「? 慧音さん、どうしました?」 驚いた慧音に首を傾げている彼の背をどんどんと叩いて、妹紅は再び笑う。 「あはは、やっぱり同じなんだ。うん、安心した」 「え、昨日僕何言ったんですか」 「今と全く同じこと言ってたよ。あはは、うん、なら大丈夫だ」 「こら、妹紅」 笑い続ける妹紅を諫めて、だが慧音もほっとしたように微笑んだ。 「大丈夫だ、貴方の中身があまりにも変わらないことにほっとしただけだから」 「僕は僕ですよ。ああでも、酒中別人、みたいでなくて良かったと僕も思いますが」 「あ、ちょっと別人っぽくはあったよ。喋り方とか」 「僕何をどう言ってたんでしょうか……?」 不安そうな彼に応えず、妹紅は慧音に笑いかけた。 「ひとまず安心だね、慧音」 「うん。けれど、足の調子も看てもらうこともあるし、永遠亭に向かおうか」 「そうだね、さ、行こうか」 妹紅は笑顔のまま歩き出す。彼女も安心していた。 彼の想いが変わらないということは、昨晩話した慧音への想いも変わらないということだ。 まだまだ前途は多難だろうが、それでもきっと何とかなるだろう。 「楽しそうだな、妹紅」 「そうでもないよ。ただ、生きてれば何とかなるんだろうなって思ってるだけ」 「それはそうですね。生きているということは、本当に大事なことだなあと、死にかけたからか本当にひしひしと」 彼はそう頷く。そして、少し苦笑気味に微笑った。 「これからどうなるか、は、まだわからないですけど」 「……そうだな。出来る限りのことは、していくけれど」 「しばらく、お世話になります」 それがいつまでなるのか、いつまで続くのか。その不安はずっと付きまとうのだろうと、慧音も彼も思っていた。 「……まあ、なるようになるもんさ」 きっと悪くない方にね、と、二人の思いを誰よりも知っている妹紅は、小さく呟いた。 ちなみにこの後すぐ、永遠亭周りの人妖もまた、二人が相思でかつ互いに気が付いてないということ知ることになる。 これからどうなるか、という不安をはらみながら、この二人の共同生活はここから本格的に幕を開けた。 とはいえ、不安を抱いているのは当事者の二人だけで。 周りは、計らずとも相思の関係であると知った以上、その関係を楽しむことに決めた。 主にみんな酒の肴として。 想いはおずおずと、だが、少しずつ手を伸ばしていこうとしている。 それを拒む負い目が消えれば、すぐに手を掴めるだろう。 そしてそれは、きっと遠くない先のこと。 Megalith 2011/04/04, 2011/04/17 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/orz1414/pages/320.html
「おい、○○。起きろ、朝だぞ」 ゆさゆさと揺さぶられる感覚。 「んー……あと5分だけお願いします」 「……」 「あと…5…f…Zzz……」 「あくまでも起きないつもりか。ならば……」 頭を両手で包まれる感触。 撫でるような力加減に眠り心地も最高潮。 しかし甘かった。 俺はコイツの特技を、すっかり忘れていたんだ。 「てい」 ごす、という音と共に額に襲い来る激痛。 お星様が見えたのは気のせいじゃない。 「ッ!!!!」 「起きたか。そろそろ朝御飯の支度も仕上がる。 着替えたら来るといい」 涙目で額を抑えている俺とは対称的に、慧音の顔は涼やかなまま。 くるりと踵を返すと、彼女はそのまま台所へと向かっていった。 まだ少しジンジンと痛む額をさすりながら思う。 里の寺子屋では宿題を忘れる子どもたちには正義の鉄額が見舞われるという噂だが。 ……正直あの威力は勘弁願いたい。 枕元に置いてあった懐中時計を開けて時間を確認する。 ……嗚呼、結構ギリギリじゃないか。 意識を一息で切り替え、仕事着に手を伸ばす。 冬の冷え込みも本格化しつつある今日この頃。 本当なら布団の中でゴロゴロしていたいのだが、そんな事をやった日にはこの家から追い出されかねない。 いそいそと着替えを済ませ、井戸水をくみ上げて顔を洗う。 凍りつくような冷たさが、僅かに残っていた眠気をキレイに消し去ってくれた。 手ぬぐいで水気を拭いながら、居間へと歩き出す。 程無くして味噌汁や焼き魚等といった典型的な朝ごはんの匂いが漂ってきた。 ちらりと台所を覗けば彼女が鼻歌交じりで味噌汁の味見をしている。 普段のお堅いイメージとは随分かけ離れたものではあるのだが…… (多分知ってるのは俺だけなんだよなー……) もうちょっと愛想よくすれば男衆からは絶大な支持を得られるだろうに、という所まで考えて (ああ、でもそうすると独り占めできねーや。却下) 思い浮かんだ情景を手で振り払う。 ご丁寧に毎朝玄関に放り投げこまれている(どこから入れに来るんだろうか)新聞を開きつつ、ご飯の完成を待つ。 「何々……今日は外界では"クリスマスイブ"とよばれる聖夜であり……」 ゴシップ感溢れる新聞から要点だけ抜き出すと ・今日は年に一度の特別な日(の前夜) ・本来はどこかの国の聖人様がどうたら ・今となっては恋人たちの祝宴の日だったり ・子どもたちには赤い洋服を着たサンタさんが贈り物を ・特別な人にプレゼントなどいかがでしょうか ・取材情報は私、射命丸 文まで。 ……ということらしい。 「……はぁ」 溜息と共に新聞を閉じる。 何を隠そう、このクリスマスという知識を持ち出したのは俺だからだ。 スキマ妖怪の紫に頼んで一度外界をブラついた時……確か十年くらい前のこの時期だったか。 やたらと華やいだ祭のような雰囲気が気になり、外界の蔵書を読み漁り…… 「持ち帰った知識をあの烏天狗に教えるべきではなかったかな」 もう一度、溜息をつく。 本来あのブン屋にはそういった大衆的な事の他にも、クリスマスの歴史や伝承なども伝えていたハズなのだが。 ここはもうさすが、と感心する所なんだろうか? 「どうした、朝から疲れた顔をして」 そうこうしている内に、鍋やら櫃を台車に載せて慧音がやってきた。 「ああ……アレみりゃわかるよ。俺の数少ない汚点かな」 苦笑いをしながらよそわれた茶碗を受け取り、顎をしゃくる。 新聞のめぼしい場所は読み漁ってしまったので慧音の所に放ってある。 「クリスマス……か。確か下界の聖人の生誕日だったか?」 「さすがだな。昔一度話しただけだったハズだが」 「私を甘く見ないでくれ……というのは冗談だがな。 紅魔館の連中はお前が伝聞するよりも前から似たような事をやっていたよ。 もっとも、昨今持て囃されるようなものではなく、随分と厳かなものだったが」 「へぇ……確かあそこの領主は外界の貴族の血を引いてるとかって話だしなぁ。それの繋がりかね」 「ま、それはさておき、メシだメシ」 「ああ、そうだな。教える側が遅刻するようでは面目が立たんぞ、○○」 「わーってるよ……いただきます」 「いただきます」 「……となるから、この掛算を使うわけだ。わかったかー?」 「はーい!」 「それじゃあ、こことここと……この問題やっとけ。 解けた奴は休憩しててよし。ただし、あんまり騒ぐなよ?」 生徒たちに課題を適当に与えた後、廊下に出る。 少し前から、"その日の最後の授業"を俺が受け持つことになっていた。 それを知ってか知らずか、子供達は比較的真面目に取り込んでくれている。 「慧音ー、そろそろ終わりにするから帰る支度を……」 カラカラ、と控え室の戸を開け「うわっ!?」 ……見なかったことにしよう。 カラカラ、と戸を閉めようと「待て、待ってくれ!」 控え室に強引に連れ込まれた。 「……で」 「……」 「これは一体どういう了見なのかな慧音さん」 「こ、これは……クリスマスだし」 控え室のイスに座って一対一で面と向かって座る。嗚呼、何だか尋問みたいだ。 俺の目の前でしおらしくなっている慧音は……何故か真っ赤な服にヒゲと帽子をつけていた。 まさか慧音がこんなマネをするとは思ってもみなかった。 「……その、子供達が、喜ぶと思って……」 恥ずかしそうに俯いたまま、指をもじもじとする慧音。 「そういうことなら俺にも少しくらい相談をしてくれたっていいじゃないか」 俺だって教師の一人なんだぞ、と頬を膨らませる。 「す、すまない。話そうとは思っていたのだが……○○はこんな格好をするの、嫌だと思ってな」 「ああ……なんだ。そういう事か」 確かに俺はそういう面倒事は嫌いだが…… 「子供達の為ならやぶさかではない。……ということで」 「何だ?」 「その服一式を寄越せ。俺も着る」 「ほ、本当か!?」 「男に二言はないんだぜ?」 「そうか……よし、待ってろ。もしもの事を思って二人分用意して……」 いそいそと荷物を漁る慧音の顔は、とても嬉しそうだった。 「それじゃ、いくぞ」 「ああ」 子供達のいる教室への戸を勢いよく開ける。 「いい子にしているかな!? 子供達」 「おじさん……誰?」 「私かい? 私は"サンタクロース"というんだ。 いい子にしている子供達に年に一度、プレゼントをあげているんだよ」 ……ちなみに喋っているのは俺。声色を変えてしまえばどうとでもなるものである。 さすがに慧音が声を変えてもバレるので、彼女は俺の後ろで黙っている。 「プレゼント?」 「そうさ。今日は頑張って勉強している君たちにプレゼントだ。ほれ」 慧音があらかじめ用意していた袋から、菓子の詰まった小袋を取り出す。 子供達一人一人に手渡しをしていく。 反応はそれぞれ異なるが、皆嬉しそうだ。 「ありがとう、サンタさん!」 「ほっほ。これからもいい子でいるんだぞ?」 「はーい!」 「それから、○○先生と慧音先生からの伝言だ。 今日はもう終わりにしていいとさ。気をつけて帰るようにな」 「いいの!?」 「ああ。また明日、だそうだ」 わー、と歓声を上げながら、出ていく子供達を見送る。 両手には大事そうに小袋を抱えていた。 「……行ったみたいだな」 「そうだな。でも良かったのか? まだ授業も途中だったろうに」 「構わないさ。これくらいなら明日にでも取り戻せる」 「それならいいのだが……と、そうだ」 控え室に戻り、更に荷物をごそごそと漁る慧音。 「コレは○○の分だ」 ふわ、と首にかけられたモノ。 もこもこしていて、あたたかい。 「マフラー……か。これ、お前が?」 「何だ、私が編み物をするのは意外か?」 「いや、ありがとう、大事に使わせて貰うよ。しかし……困ったな」 「どうした?」 「折角いいものを貰ったのに、俺からお前に渡すものが……」 「渡すものが?」 「ないわけでも、ない」 右手にいつも嵌めていた指輪を、外す。 「それは……」 「指輪だよ」 「大事なモノなんじゃないのか?」 「大事だよ……だからこそ、意味があるのさ」 かちり、と音を立てて、二つに分離した。 「これ、俺の両親が使っていた結婚指輪なんだ。 ちょっと古びているのがアレだが……片方は、お前に嵌めてほしい」 す、と慧音に差し出す。 「え……」 予想外だったのか、困惑気味の顔。 「駄目か?」 「とんでもない! ……その、私なんかで、いいのか?」 「ああ。慧音だからこそ、受け取ってもらいたい」 「…本当に?」 「……まったく」 まだうろたえ気味の慧音の身体を抱きよせ、唇を重ねる。 驚きに目を見開き、顔を赤く染めながらも、彼女は抵抗をしなかった。 「んっ……」 「……これでもまだ、不安かな?」 「い、いや。ただ……もう少し、私を後押しさせる言葉をくれないか」 「……一緒に居て欲しい」 「まだ足りないよ」 「好きだ」 「まだだ」 「……愛してる」 「私もだ……」 再び、口づけを交わす。 「不束者だが……よろしくお願いするよ、○○」 11スレ目 483 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○、起きろ、朝だぞ。」 聞き慣れた声に反応して目をあけると、そこには 既に着替えを終えた慧音が、布団の横に座る形で こちらを見下ろしている。 「ん……おはよ。」 寝起きで動かすのも億劫だったその口でなんとか答える。、 「おはよう。」 慧音は笑顔で答えてくれる。 が 「………Zzz」 再度夢の中にダイヴする俺。(現在の心境→ 睡眠欲>けーねスマイル) 「この状況で二度寝するな!」 先ほどまでの極上スマイルから一変、 否応なしに布団を引っぺがされ、起床を余儀なくされてしまった そんな朝 「疲れが抜けていないのか?」 寺子屋に慧音を送る道中、そんな事を聞かれる。 「…分かる?」 「ああ。目の下にカラスよろしく黒いクマができているし、足取り もおぼつかない。さらにあくびを1分間に6回も連発されれば、分から ない方がおかしいだろ。」 誇張表現が目立ったが、とりあえず俺はそこまでひどい様のようだ 「寝ているときのいびきもすごい音量だ。近所迷惑になるんじゃ ないかと思えるぞ。」 「なぁに、ギシアン時の慧音の嬌声の音量には勝てんよ。」 「っ/////!!」 頭突きをくらって俺の脳はすっかり覚醒した。 そして慧音は俺を置いて、すたすたと足早に寺子屋に行ってしまった 俺も仕事場に行こう…… ちなみに俺の仕事場は力が全てを物語る場所で、常時ガタイのいい あんちゃん達でいっぱいである。 元々運動神経が鈍く部屋からほとんど出ない俺は、3日坊主どころか 3分で逃げ出したくなった程だ。 その代わりに給金は高い。里の中で数ある仕事の中でも、上位に入る くらいの収入が得られる。 なぜそんな場所で働くことにしたかというと、だ。 「よ、お疲れ。」 仕事が終わって寺子屋から出てきた慧音に声をかける。 「先に帰っていてもよかったのに。」 今朝の事をひきずっているのか、いつもと違ってそっけない 「そう言うなって。ところでさ、ちょっと付き合ってくれよ」 「……?」 不審な顔をしつつも俺に着いてきてくれる慧音。徹頭徹尾ご立腹 というわけでもなさそうだ 俺は慧音を人通りの少ない裏路地に連れて行く 「何故わざわざこんな人通りの少ない所で?」 慧音は平常を保とうとしている。が、動揺しているのは手に取るように 分かる。まぁ、これからすることを考えたら無理も無いか。 「人に見られたら恥ずかしいからな。」 慧音は小声で「な…まぁ…○○がどうしてもというなら…////」 とか言っているように聞こえたが、無視してポケットから箱を 取り出す。 「ん。」 そして渡す 「私に…?」 慧音は中の指輪を見て驚く。そして、これ以上の幸福があるのか ってくらいに喜んでくれた あんなむさ苦しいところで働き始めたのは…… 慧音の誕生日にプロポーズするためさ 10スレ目 474 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○○さんの事好きですよね? 「あはは、やっぱり皆にはお見通しと言うわけか」 あれだけ露骨だと誰でも解ると思いますよ・・・当事者を除けば 「いやぁ、それは恥ずかしいな、少し自重しよう」 告白をして恋仲に成ろうとかは考えないのですか? 「確かに彼なら、好きでなくとも断る理由が無ければそういう関係にはなってくれるだろう、だがそれでは意味が無い」 と、言いますと? 「むしろ彼が私に惚れるぐらいではないと意味が無い、私は彼に夢中だからな、見事なまでの両想いが達成されるわけだ」 ではその思いを伝える予定はないと 「私からは、な・・・彼から言ってくれば私もだ、と応えるつもりだよ」 待ち続ける、という事ですか 「いや、待つと言うより無理矢理待ち合わせまでこじつけると言うか・・・惚れてくれるのを待つのではなく惚れさせるのだからな」 その間に他の女性に取られたらどうするつもりですか? 「それは私に魅力がないということだ・・・諦めるしかないのだろう」 結構あっさりですね 上白沢慧音さんの事好きですよね? 「ああ、その通り、俺は慧音を愛してる」 その想いを伝えるつもりはないのですか? 「今のところ無いな、慧音の方から恋仲になりたいというような告白があれば喜んで応じるが」 つまりいつまでも受身の姿勢で待つと? 「ああ、アイツが俺に惚れて向こうから告白してくるのを待つさ」 ・・・ホントに似たもの同士というか・・・同類ですね 「ん?何の話だ?」 話を戻しますが、慧音から告白してくれば見事なまでに両想い達成されるとか考えてます? 「おお、お前サトリか何かか?まさにそうだよ、いや恥ずかしいなこりゃ」 そうですか・・・最後に一つ、○○さんは断る理由が無ければ女性を拒まないと聞きましたが 「あー・・・確かにそうだ、断る理由が無ければな」 ではここで私が貴方を求めたとして・・・応えてくれますか? 「うむむ・・・残念だが、今の俺には断る理由ができてしまっている」 慧音さんですか・・・ 「ああ、今はあいつの事以外は考えられないからなぁ」 そうですか・・・それでは取材にご協力いただきありがとうございました 「おお、気を付けて帰れよ天狗娘」 後日この事が記事になるのだがそれはまた別の話 11スレ目 263 ─────────────────────────────────────────────────────────── 12月26日 外の世界ではクリスマスの後日。 しかし元々和色が強い(と思ってる)幻想郷ではクリスマスなんてどこ吹く風。 一部ではずいぶん騒がしかったり荒れたりしていそうではあったが俺の回りもどこ吹く風。 ……だと思う。俺だけ集まりに呼ばれてないわけではないと思う。 みんな正月の方に力入れるんだろ、きっと。 そんなことを考えながら日課の乾布摩擦。 あばばばば、寒い。 体も心も。 「本当は俺以外の里の方々で宴会でもしてたんだったりしてー」 ゴシゴシ 「まじで」 ゴシゴシゴシ 「うそだと言ってよ、ブアァーヌィー!」 ゴシゴシゴシゴシ 「バーニィ誰やねん」 ゴシゴシゴシゴシゴシ 「あぁ、もう、あまりの寒さと寂しさに一人二役なんてやってしまった。 こんなのだから俺って避けられてる(気がする)んだよ、俺のバカ!バカ!」 「おはよう○○、楽しそうだな」 はっ、この声は! 独り言を言ってる間に接近しているのに気づかなかったとは、不覚。 振り向きざまに気をつけの姿勢、そしてお辞儀 「おはようございます!きゃいっ、上白沢先生!」 噛んだ。 「今日も精が出るな、元気でよろしい」 「ありがとうございます!いってらっしゃいませ!」 ……あぁ、今日も先生とお話しちゃったぁ♪ 何を隠そう乾布摩擦を始めた理由はこんな邪な理由なんだよぉー! 家の前に出て乾布摩擦をしていれば寺小屋に行く先生の進行ルート上に重なるわけだ。 我ながら完璧な作戦だ。 「あぁ、幸せってこういうのかぁ」 「いやいや、違うよ、それを感じるのは速すぎるよ音速とかそんなレベルじゃないよ」 「いやいやいや、俺は今幻想郷で一番しあわ…せぶしゅっ!」 一人ごちてる間に大分体が冷えてしまったようだ。 今日はもう先生も通り過ぎたことだし、また布団に入って寝ちゃえ。 思うが速いかすでに俺の体は家の中、寝室に向かってスキップ。 脱ぐ必要はないけど布団にルパンダーイブ! 「ほあああ!バカ、冷たい!」 すっかり自分の体温も抜け、冷え切った布団からあっという間に出てくる。 うぅ、外より布団の中に入るほうが寒いとは思わなかった。 もう今日はいいや、すっかり目が覚めてしまった。 そうだな、日も昇りきった頃に出かけようか。 里の人に先生と会話したことを自慢しに行くのだニョホホホ。 11スレ目 516 ─────────────────────────────────────────────────────────── 慧音先生と個人授業 先生は分からなくなったとき詳しく教えてくれるけど それ以外のときは後ろに立って勉強姿を見ている あぁ、先生に見られてる、ハァハァ そんな時、答えの間違いを指摘され後ろから 慧音「ん、ここは違うぞ。」 その時、先生の豊満な胸が私の顔のすぐ隣に… 先生は問題の説明に夢中 そ~っと、手を伸ばす。 指先が胸の先端に軽く触れた瞬間 慧音「お、お前!何やってるんだ、勉強中だぞ!」 顔を紅く染めながら怒っている先生、かぁぃぃ。 慧音「悪い子にはお仕置きだ!尻を出せ!」 え?まさか、掘ってくれるの? うっほほ~い。やったぁぁ。 と、思ったら 慧音「悪い子にはお尻ぺんぺんだ!」 そ、そんなぁ。掘ってもらえると思ったのにぃ。 パ~ン、パ~ン・・・ 「せ、先生、こんなの嫌です。」 慧音「嫌じゃない!勉強中に変なことしようとした罰だ!」 「ち、違うんです。私…は。」 慧音「何が違うと言うんだ?」 「わた、私は、先生に、ほ、掘って、ほ、ほ、」 慧音「何だ?ハッキリ言ってみろ。」 「わ、私は先生に…ほ、掘って…もらいたい…。」 先生の手が止まった 慧音「え…あ…お、お前、な、な、ん、あ…。」 顔が真っ赤になって言葉につまってる。 慧音「‥‥‥ん、ん~…。」 後ろを向いて落ち着こうとしてるが目に見えて余計に慌てている 慧音「ん…う、お、お前の気持ちも、わ、分からんで…も、って私は何を言ってるんだぁ! あ、うぅ、そ、それに、今日は、まん、満月じゃ、って、あわわわわわぁ…。」 そうとうパニックになってる。 慧音「お、落ち着け、落ち着け、せ…せいと、生徒の前では、生徒としての、あぁ違うぅ。 せ、先生としての門限…じゃなくて威厳を見せ付け…は言いすぎか、見せなくては。」 慧音「と、とにかくだ。今日の、べ、勉強は、あ…う…お、終わりだ! つ、次は、満月、満月満月。満月の日にでも、あ、う、う、う、うわああぁぁん。教師失格だぁぁ!」 泣きながら帰ってしまった…。 あぁ、掘ってもらえなかったけど あんな先生もかあぃぃなぁ。 次はちゃんと満月の日に教えてもらわないとね。 11スレ目 597 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○「慧音、俺の為に、毎日味噌汁を作ってはくれないだろうか?」 慧「……馬鹿者。味噌汁などとうの昔から毎日作ってやっているだろうに」 ○「ああ、それもそうか。それじゃあちょっと訂正だな。 共に生きるという歴史を、慧音と作っていきたい。これまでも、これからも、ずっとだ」 11スレ目 667 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「好きだ」と言うことは実に容易い事だと思うんだ。 ”友愛”と取れるからね。人間は往々にして大事な局面でさえも、 こうした打算を無意識下でしていることが多いんだ。本人さえ気づかぬ内に、ね。 「愛している」「ありがとう」という言葉も、心さえ込めていなければ気軽に言える。 ただ、その二つの言葉を、本心から面と向かって伝えるのは、 とても難しく……そして勇気がいることなんだ。 だから敢えて、今ここで言うよ。 慧音、君の事を愛している。 今までありがとう。そして、これからもよろしく。 11スレ目 999 ─────────────────────────────────────────────────────────── 1000への掛け橋を俺と埋めよう、慧音 12スレ目 999 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「はら・・・へったorz」 そもそも財布さえ落さなければこんな状況にはならなかったんだ しかも家と倉庫の鍵まで入ってる財布・・・釣り道具すら手に入らない 嗚呼、流石に山に入って木の実を拾うのも限界だよなぁ・・・ 「チクショウ、こんなことなら知り合いの一人や二人作っとくんだった」 地面に跪いて今までの後悔やらざんげやら、これからどうしようかと言う脳内会議を頑張っていると 「おっさんがへんなことしてるー」 「小銭でも落としたんじゃねーの?」 「ちげーよ、彼女に振られて落ち込んでるんだよー」 何処からとも泣く子供の大群が現れ、一定の距離を保ちつつ俺をおちょくってきやがる まぁそこの所俺は大人なので冷静に、気にも留めないわけだがね 「きっと「この豚めを踏んでください!!」とか言ったんだなー」 「そりゃふられるよねー」 「くそがきゃぁぁぁぁ黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって!!俺は資本主義の豚か?ああ?」 「きゃーっ!おじさんがキレたー!」 「おい其処のガキ、残念ながら俺には振られるような女どころか顔見知りの人間すらいないんだよ糞ッ!いや、俺だって好きで引きこもってたわけじゃねぇんだぞ! ちまちまと地味な仕事して!魚とって食いつないで!やっと俺もこのワケワカラン世界になじめたかなーとか思った矢先に財布落としてこの有様だ、わかるかコラ 外もここも!結局は金かチクショウ!外だったら日払いのバイトして何とかなったかもしらねーのによ、嗚呼、何で俺はこんな所で空腹に苦しんでいるのだろうか」 いつの間にかガキどもはひとりも居ない、ああ、また一人ぼっちか 話したら余計腹減った、糞、やっぱりいいことなんか何もないじゃ無いか 「成☆敗!」 ごずっ! 前頭部に激しい痛み、突然の出来事に瞬間的にパニックになる しかし至近距離前方に姿を確認した瞬間、反射的に飛びのいた ぶぉんと風を切る音がした、頭突き? ちょっとまて、頭突きで風きり音ってどういうことだよおいおい 「貴様が不審者か、成程・・・見るからに悪人面だ」 「うるせぇ!生まれつきこんな顔なんだよっ!」 「・・・そんな顔の赤ん坊は怖いぞ?」 「ああそうだね!俺も今そう思ったよ!」 俺の目の前にいる、女性 薄い青の長い髪が、ふわりと風に舞っている 既に向こうは構えている やるつもりらしい 正直頭突きは勘弁願いたい、だがどう見ても細身の女 其処まで強そうには見えんが・・・ 素早い踏み込み、そしてジャブ だが俺はちゃんと見ている まずジャブをサイドにかわして― 首の横を過ぎたはずの拳、だがそれは違う 左肩を引っ張られる感覚、そう、既に肩をつかまれた 「なっ!?」 拳打ではない、それは肩を掴む為の偽装 「しまっ」 また頭突きか!? 目をつぶって衝撃に備えたのがいけなかった、俺は目を開いているべきだったのだ 腹部を貫いたのは、彼女の膝 腹が減りすぎて腹が痛いのだ、其処に膝蹴り・・・もう死ねるぜ、これは 踏鞴を踏みつつ、彼女との距離をとった どう見ても細身の(ry ああ、けしからん乳だ よく見れば実にケシカラン乳がステップを踏むたびに揺れ(ry 嗚呼、何でか知らんが余計に腹が減った 俺をどう見れば不審者に見えるんだって話だ 長身イケメンまっちょー、三拍子揃って文句のつけようもないじゃ無いか 「・・・君、大丈夫か?」 「大丈夫なわけねぇだろ馬鹿女、こっちの言い分も聞かずにいきなり膝蹴りかますとはいい感じに頭いかれてんのか?」 「随分口が悪い奴だな、そういう口の悪さが誤解を生む原因でもあるんじゃないか?」 おいおい、俺に非があるってのか?だいたいなんだこの女は、いきなり出てきて頭突き膝蹴り説教 そもそも俺は何でこんなことしてるんだ?何でこんなにいらいらしてるんだっけ? 「おい、顔色が悪いぞ?大丈夫か?」 だから大丈夫じゃないって言ってんだろ、ああそうだった、俺お腹減ってるんだった 「なぁあんた、今までの事全部水に流して仲良くしようじゃ無いか、俺は腹が減ってしょうがないんだ」 「・・・まぁ・・・うん、一食ぐらいでいいなら、昼餉の残りぐらいはあるかも知れないが」 「何でもいい、出来れば米とかそういったものが食いたい、栄養価が高そうで腹にたまるもの」 「・・・解った、ついて来てくれ」 ホイホイついてきてよかったのかい?私はノンケだって構わずに食っちまうような女なんだぜ? 「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!?」 「はっ!??・・・夢か」 「飯を食いながら夢が見れるのか、器用な奴だな」 俺の前には夢にまで見たご飯 4杯目のご飯と3杯目のお味噌汁 残り物が少なかったので彼女がわざわざ作ってくれたのだ 「むぐむぐ・・・・んぐんぐ・・・ぷはぁ、ご馳走様でした」 「随分腹が減っていたようだな」 「はい、ここ3日ほど何も口にしておらず・・・本当に助かりました・・・ええと」 「慧音、だ」 「慧音さん、本当にありがとうございます」 俺はなるだけ感謝の気持ちが届くようにと、頭を下げた 彼女はそれを見て、狐につままれたような奇妙な顔をする 「・・・なんだか、さっきと随分キャラが変わっているぞ、君はご飯を食べると性格が変わるのか?」 「ははは、先ほどは無礼なことばかり、失礼しました・・・空腹で気が立ってまして」 また頭を下げた、彼女は優しそうに笑っていた 嗚呼、なんていい女性だ 飯、しかもこんな綺麗な女の人の手作りのご飯、HAHAHA笑いが止まらんよ もう頭突きとか膝蹴りとかもう忘れるわ、あれはこれでチャラですよ 「・・・君の、名前は?」 「え、あ、私は○○と言います」 「そうか、○○・・・そんなに気を張って話さなくてもいい、楽にしてくれ」 「・・・そうか、じゃあお言葉に甘えるよ、ええと・・・慧音さん」 「慧音で構わない、私も○○と呼ばせてもらう」 「解った・・・慧音、貴方にゃほんとに感謝してる、ありがとう」 一宿一般の恩とは言うが、まさにそれだ、頭突き等分差し引いても大きな仮だ 仮、否、これは恩だ なんと言うか、食べさせてもらったこともなんだが、ちょろっとでも話をしてくれた事が、嬉しかった 「もう、行くのか?」 「はい、お金がなくても鍵さえ見付かれば何とかなりますから、いざとなったらどうにかして家に入りますよ」 空はオレンジ色に染まりだしていた カラスも雀も、森へ帰っていく 俺も、家に帰らなきゃいけない 「それじゃあ・・・また、縁があったら」 「・・・○○、なんなら家に来てくれて構わないぞ」 「え、いや、ええと・・・そ、そうですね、どうしても入れなさそうなら、お世話になるかもです」 とりあえず、別れた 腹が膨れてまともな思考、こんな時間に魔法使いは動いてくれないだろう それに、あんまり彼女に頼りすぎるのもよくない、依存しそうで怖かった 「さて」 とりあえずドアを蹴ってみる、悲しいかな硬い音がするだけだ 裏に回って窓を蹴ってみた、三日前に試したとおり、ヒビすら入らない 「こんな家、買うんじゃなかった」 この世界に来た時の全財産で買った家 妖怪の侵入を防ぐ結界つき♪とかいうから買ったのに 人まで入れないんじゃ意味ねーよorz はぁ、怪しい狐女から買ったのは間違いだったな 「・・・野宿できそうな所を探さなきゃな」 なるべく明るくて、人気が多くて、里の真ん中 さほど寒くないし、大丈夫だろう いい場所を探して日の暮れた里をふらふらと、うろついていた そして 「やぁ、おかえり」 後ろから、声をかけられた 「慧、音・・・」 「やぁ、その様子だと駄目だった見たいだな」 「あはは、無駄に頑丈な家でね・・・」 「・・・・家に来るか?」 「いや、遠慮しとくよ」 「・・・居候も居るし、今更遠慮しなくていい、それよりも君を野宿させることの方が気になってしょうがなくてな」 「・・・そんな言われると、お言葉に甘えたくなっちゃいますよ?」 「ああ、好きにしてくれ、無理にとは言わんが・・・君さえよければ、泊まっていけないか」 思い込みかもしれない、ただ通りがかっただけかもしれない もしかしたら、もしかしたら俺を探していてくれたのかもしれないなんて、期待をしてしまう それでも、今は、なんでもいいから、嬉しい 「それじゃあ・・・帰ろうか」 「そう、ですね・・・それじゃあ・・・お世話になります」 財布をなくしたせいでとんでもない目にあった 野宿したり空腹に苦しんだり、木の実を拾いに入った山で妖怪に追いかけられたり 子供におちょくられて頭突きで膝蹴りだったり でも、無くしたおかげで、知り合いが、増えるのなら、あんな目にあったことも、悪くないかもしれないと、思える 自分でもよく解らない展開になっているとは思うが、このよく解らん世界なら、何が起こっても不思議はない、そう自然に受け入れられそうだ 「居候が一人居るんだがな・・・まぁちょっとぶっきらぼうな所もあるが基本はいい奴なんだ」 「はぁ・・・?」 「まぁアレだ、喧嘩とかしないように頼むぞ」 「・・・?」 「おや、帰ってるみたいだな」 玄関にちょっと乱れた靴を見つけた それは先客がいると言う事か、先ほど言ってった居候とはこの靴の主なのか 靴を、もう一度見た 小さい、慧音とそう違わないサイズ・・・女か 両手に花か、うふふ、ふひひ 「慧音ーお腹すい・・・た」 部屋に入った瞬間、タバコのにおい 縁側で胡坐をかいて座っている少女は、タバコを咥えている なんか色々と抱いていたイメージが崩れたと言うかなんと言うか 「あんた、誰?」 「あ、ああ俺は、○○だ、今晩はお世話になる」 「・・・そういうわけだ妹紅、仲良くするんだぞ」 あ、見るからに不機嫌そうだ なんと言うか仲良く出来るか不安になる奴だなぁ 「ふぅん・・・慧音、コイツとどういう関係?」 俺と慧音を交互に見て、ワケワカランことをぬかしやがった 「どういう?いや・・・なんと言うべきか・・・なぁ?」 確かに、どういう中かと問われたら、凄く返答に困る 俺が財布を落とした所から話を始めねばならん 「ええと・・・鍵が無くて家に入れないんだ、困っている所を慧音が助けてくれたと言うわけだ」 我ながら色々と断片的で何がなんだか まぁ言いたい事は伝わったはずだ、はずだ 「・・・まぁいいや」 ふぅう、とタバコの煙を大きくはいた 家の外に向かって煙を吐くのは彼女なりの気遣いなのか 彼女、ええと・・・もこうって言ってたか もこうはタバコに火をつけると・・・あ? 「あれ・・・?」 「んーどうし・・・ああ、これか」 もこうは人差し指を立てて そこに、火が点った 慧音は困ったようにうなだれ、妹紅はニヤニヤと、哂っている 「○○、あれはだな、その」 「へぇ、便利な能力だな」 発火能力か、ライター要らずってのはいいなぁ 俺もああいう役立つ力があればなぁ、野宿とか楽になるなぁ 「・・・驚かないね」 「幻想郷に来てから、だいぶ驚きなれたみたいでね、それ位じゃ驚かないぜ」 「・・・」 宴会でとっておきの手品の反応がわるかった、そんな感じの落ち込みかた・・・いや、不貞腐れてるのか 「ほ、ほら、早く夕餉にしような!妹紅、手伝ってくれ!」 飯も食い終わり、特にやることも無いのんびりとした時間が 「ねぇ・・・ええと」 妹紅が俺に話しかけてきたのだが悲しいかなまだ名前を覚えられていないらしい 「○○だ、妹紅」 「あ、ああ・・・○○、あんた外の人間?」 「そうだ」 「こっちに来てどれ位?」 「半年ぐらいだな」 「こっちの住人は怖くない?」 「別に、変な力を持ってようが見た目は人間だろ」 そこで慧音がくすりと、笑った 「あ、いや、すまない・・・なるほど、性質より見かけか」 中身は簡単には知りえない、ならば外を見るしかない 何となく、外見でわかるもんだ 取繕ったカタチと、そうでないカタチは 「何となく解る、二人とも完全な人間じゃ無いことぐらいは」 「・・・」 「・・・結構鋭いね、まぁ変り者じゃなきゃこんな所には流れつかないか」 へんな奴に変り者扱いされてしまった、軽く傷つくぜ 「その、○○は、私たちがまともな人間じゃ無いと解っていて・・・」 「そもそもまともな人間ってなんだろうな」 「うわ、めんどくさいなんちゃって哲学見たいな事言い出したよこいつ」 妹紅がぎゃあぎゃあと五月蝿いが、せっかくなので放っておく 「ここって、幻想郷ってよ、そういうことひっくるめて何だかんだで共存できるすばらすぃー場所なんだって、へんな巫女が言ってた そもそも、慧音や妹紅を見て、悪い奴には見えんし、怖くも無い・・・だから俺はここにいる」 そもそも人間じゃ無いからって怖がってたらここじゃ生きていけないだろう 相手の本性がぼんやり解る程度の能力 自らが変だと、周りが普通で俺が変、そう思っていた だが幻想郷に来て、自分より変な奴しかいないことが、可笑しくて 「まだ出会ったばかりで、よく解らない事ばかりだけど・・・俺は二人を信用する」 「○○・・・・・・わ、私は、風呂にはいってくるなっ」 どたばたと、騒がしく入浴宣言をして、慧音がいってしまった 妹紅と、二人きりになった 「・・・あんたさ・・・いま慧音フラグ立ったよね」 「・・・ふらぐ?」 「あー・・・いや、わかんないならいいんだけど」 ふらぐ?フラグ?フラッグ?フロッグ? 俺がフラグについて脳内会議を開いていると 「・・・慧音は、半獣人だ」 「・・・それが、どうかしたのか?」 「もし、慧音の違う姿を見たとしても、怖がったりしないで欲しいな・・・なんてね」 最後に付け足した呟きが、あんたなら大丈夫か、と聞こえた気がした たしかに、慧音の言った通りだ ぶっきらぼうだけど、やさしい、いい奴 妹紅、か・・・仲良く出来るか不安だったが、杞憂だったみたいだ 「でもさ、今日あったばかりの俺に、何でそんな助言をくれるんだ?これからも濃い付き合いになるとは」 「勘だ、あんたは慧音と仲良くなれるさ」 「長年の勘ってやつか」 「まぁね、長く生きてると、少しはね」 俺の知らないぐらいの時間を、彼女は生きてきたのだろう 彼女の瞳の奥が、あまりに深くて 俺はまともに見る事が、出来なかった 「ふぅ、少し・・・逆上せてしまったな」 逃げるように風呂に入ったのだが・・・色々とぐるぐると考えていたら 「みず・・・」 頭がボーっとする、こういうときは表で涼むと気持ちいいんだが・・・この間そうやって風邪を引いたからなぁ 「うぉ!?」 「え?あ、○○・・・えと・・・喉が渇いたのか?」 「え、あ、ああ・・・まぁうん、そんなところだ」 正直、ドキッとしてしまった うっすらとピンク色に染まった肌、いまだ少しばかりぬれたままの長い髪 風呂上りで暑いのか、着くずした服装、そのせいで見える谷間とか、谷間とか 「君もボーっとしてるな」 ボーっとしていた○○ 声をかけたとたんに私のほうから、体ごと視線を変えてしまう 「?」 「な、なんでもない」 何かワルイコトでもしてしまったか?それとも 「なぁ○○、妖怪は・・・怖いか?」 恐らくまだのぼせているのだろう、柄にも無く、へんなことを聞いてしまう でも、彼はきっと、私の望む答えをくれるのだと、期待してしまう 「・・・そうだな、妖怪人間問わず、俺に害をなすのが怖いな、妖怪でも友好的なら、怖くない」 ほら、彼はこういう人間だ あってまだ一日経っていないのに、私は、彼が 「ふぁ・・・あー・・・もう寝るな、おやすみ」 「お、お休み○○・・・」 反射的に、手が出そうになった、待ってと、言ってしまいそうになった 「・・・なんだろうな、これは」 自らの内に湧いた、未知の感情、不思議な心地よさとじれったさ 「・・・私はこんなに惚れっぽかったのか?」 なんだかよく解らないが、一目ぼれという奴なのだろうか いや、二目惚れぐらいか? 「人は人を、いつの間にか好きになる・・・か」 湯上りで幸いした、もしかしたら私は赤くなってるかも知れないから 私は、一杯の水を飲み、ほてった感情を、醒ました 「・・・はぁ」 深い、溜息をついてしまった 慧音の家に世話になってもう4日 財布も鍵も見付からず、家を買った狐女を捜して徘徊するが、まったく見付からない 俺の能力なんてハッタリを見破る程度の能力だしなぁ、使えねぇ 「・・・まだ飼える訳にも行かないし・・・どうしたもんか」 昼間のあそこには、居辛かった 妹紅は早々に何処かへ出かけて行ったし、慧音は学校(?)にいってしまったし 流石にあの家に一人だけ居るのは、何か嫌な違和感を感じてしまった 「・・・誰かのとこで時間が潰せたらなぁ」 そんな知人がいないから慧音の所でお世話になってるのにね、可笑しな話しだははは 嫌な考えはおいといて、どうしようか 「倉庫なら、壊しても大丈夫だろ・・・そもそも壊れるのか?」 俺は自分の家に戻り、釣具やらなんやらが入った倉庫の前に、立っている 「すぅぅぅぅううう」 大きく息を吸って、吐くと同時に、渾身の中段前蹴りをっ!! ば、馬鹿な!?俺の前蹴りが・・・効かない!? 「は、はは、手加減してやればいい気になりおって、あまり調子に乗るなよ、小僧(倉庫」 半歩ほど、倉庫に近づいて、構えた 「我が真の力!しっかりとその目に刻むがいい!!」 ぐるん、ぶぉん、がしゃーん 俺の渾身後ろ回し蹴り アルミ?薄い金属性のトビラは90度近く曲がって、見事に、破壊に成功した 「は、ははは!見たか我が力を!・・・・・・なんか予想以上にやっちゃったZE」 真っ昼間から倉庫相手に何やってるんだ俺は 我に帰ったとたん、凄く虚しくなった 「まったく君は、昼間から何をやってる」 こ、この声は! 「慧音・・・いつから其処に?」 「あまり調子に乗るなよ小僧、ぐらいから居たんだが・・・やはり気付いてなかったんだな」 ぐはっ!そんなに前から・・・orz もうだめだ、穴があったら入れtじゃなかった入りたい 「えっと・・・昼飯は食べたのか?」 「え?ああ、そういえば忘れてたな」 「そ、そうか・・・こいつが無駄にならずにすみそうだ」 「?」 慧音は右手に持った風呂敷に包まれた何かを高く上げて、俺に見せ付けた しかし俺はそれがなんだかさっぱり解らない 慧音は痺れを切らして、自らの口でその何か、の正体を 「べ、弁当だ!君が腹を減らしているのではないかと思って、その・・・」 ぐは、こ、これは なんと言う破壊力! 頬を染めてもじもじ+手作りの弁当=神をも凌駕する破壊力 ここで注目して欲しいのがこのうつむき加減だ! 完全に伏せてしまうのではなく、潤んだ目や赤い頬、また、耳までよく見えるベストな傾き加減だ! 作者の私見を言わせて貰うなら、これは恐らく自然に生み出された、究極の美であると言えよう 普段はお姐さん系の性格にも拘らず、ここぞと言うときにか弱い女の子に戻る、それによって生ずる威力は筆舌に尽くしがたい 「○○?」 「はっ!?い、今なんか変なナレーションが!??」 「・・・もしかして、食べたくないか?」 「何言ってる、食べたくてうずうずしてるんだぜ!(即答」 「そ、そうか・・・えと、じゃあ食べよう」 とりあえず座れるような場所を探して、玄関の段差に座る事にした ・・・重箱? 2段の重箱?いや、上の段は二つに分かれて・・・ああなるほど、それがご飯ね ってことは下の段が、おかずか 卵焼きを一つ、食べてみた ~青年食事中~ こ、これは、シャッキリポンとry 口の中に残るほのかな甘味とry 舌触りはまさに官能的なry ~青年食事中~ 「・・ぷはぁ、ごちそーさま・・・美味かった」 「うむ、お粗末さまだ・・・いやぁ、アレだけ気持ちよく食べてもらうと、作った方としても嬉しいよ」 ただ食べただけなのだが、そう言ってもらえるとまぁ悪い気はしない しかし・・・料理が美味いと言うのはイイコトだな 料理が出来ない女の子は嫌い?と聞かれたら嫌いとはいえないがね むしろ下手でも一生懸命作ってくれるところに意味があるのではないかと つまり料理の上手下手は関係なく誰が為に作ろうとするかが重要なのではなかろうか 「○○、君はボーっとする癖があるようだな」 「え、いや、そんなことは無いぜ、うむ」 俺がほうけている間に片付けてしまったらしく、もって来た時のような風呂敷包みになっていた 「・・・この後さ、時間ある?」 「あ・・・すまない、午後からも少し授業があるんだ」 「いやちょっと聞いただけだ、別に用があったわけじゃ無い」 「そ、そうか・・・じゃあ私は行くよ」 「・・・ああ、いってらっしゃい、頑張れよー」 彼女は少し歩いていって、突然に振り返った 夜までには帰ってくるんだぞ、と 俺はそれに対して、手を上げて、解ったと告げた 「・・・帰ってこい、か」 慧音が行ってから少したって、一つ言葉を、零した 慧音は俺が今日も帰るものだと思っている 俺もそれをありがたく思って、今日もあの家に世話になるのだろう でもあそこは俺の家じゃ無い あくまでも彼女、慧音の家だ 「帰るべき、場所か・・・」 一週間近く誰も立ち入っていない家を、見た 前までは当たり前のようにここに帰っていたのに、今では 「・・・はぁ、めんどくせえ」 倉庫から釣り道具やらなんやらを引っ張り出して 時間をつぶす事に・・・したんだが 「おーまた釣れた、あんたって釣り巧いんだね」 なぜか隣に座るヤンキー、あらため妹紅 「・・・」 「もう8匹目だ、あと一匹で一人3匹食べれるじゃん」 いや、コイツが竹林にいると知ってれば、近くの川まで来なかったんだ ちょっと足を伸ばして湖まで行ったんだ 「・・・お前、見てて楽しいか?」 「ん?楽しいよ」 ・・・初日とあまりに違うコイツの態度、馴れ馴れしげふんげふん、フレンドルィーな態度に、少し戸惑いつつも 「ほら、お前もやってみろよ」 「え?いや・・・わかんない」 こいつは釣りもしたこと無いのか しょうがないのでとりあえず 「餌はついてるから、ほら、竿持って」 とりあえず竿を持たせた だがほんとに何も知らないらしく、と言うか今まで横で見たただろ 「ほら、こうやって、下からゆっくりと、振り込みたいに」 「こ、こう?あ、おお・・・」 ぎこちないながらも何とか投げる事が出来たようだ 伸べ竿でこんなに苦戦する奴は始めてみたぜ 「あのウキをよく見て、沈んだら引っ張ってやれば」 「あっ・・・」 「?・・・あ、わ、悪い」 いつの間にか、と言うか最初からか 妹紅の腕を握って、いや、そういうつもりは無くただ純粋に教えようと思ってだなry 気にしてなかったのに、そういう態度を、とられると・・・余計に気になってしまうじゃ無いか 「・・・慧音の次は私のフラグ立てるつもりかって・・・」 「え?」 「な、なんでもないっ!」 なんなんだよまったく、ドイツもコイツもフランスもオランダもイタリアもセネガルも 「・・・妹紅、竿を立ててみろ」 「え?こ、こう?」 何も理解せず、ただ言われたまま竿を立てた妹紅 「う、わ!○○!?」 予想通り、上手く魚が掛かったようだ 「竿を高く上げて、手前に寄せろ」 竿が三日月のように曲がり、その引きは妹紅の手へと伝わっている、はずだ 「んー・・・よし、外れたぞ」 岸に引っ張りあげられた魚、針を外して妹紅に見せてやった 「・・・はは、人生で初めて魚を釣ったよ」 「お前長生きなんじゃないのかよ・・・釣りって、楽しいだろ?」 「うんっ!」 ああ、こいつの笑った顔、凄く可愛いんだな いつもしかめっ面でいるけど、やっぱ可愛いなぁ、女の子なんだなぁ やべ、妹ができたみたいな気持ちだ 釣った魚を手にはしゃぐを妹紅を眺めていて、妙な気分に陥った俺だった 「お、二人ともお帰り」 家に入ると慧音が出迎えてくれた 今から料理をしようというところだったのか、髪を後ろに束ねていた 「あ」 「ん?・・・あ・・・へ、変か?」 「いや・・・似合ってるな」 いかん、また変な方向に話しが行こうとしている いつもの爽やかな感じの髪もいいんだが、サッパリした今の髪も、なかなかどうして ごすっ いきなり妹紅に足を踏まれた 「づぁっ、てめ「慧音!魚を釣ってきたから、料理するなら手伝うよ!」 「あ、ああ」 「もう腸は出してあるから」 妹紅は慧音の背中を押して、急ぐように台所へと行ってしまった トビラ一枚向こうでは楽しそうな会話も聞こえて 「・・・今日は、疲れた」 でも、楽しかったな 慧音と昼飯を食べて、妹紅と釣りをして 「いかん、なんか馴染みはじめてるな・・・」 彼女たちがそういう性質なのもあるだろうが、俺もまたそれに甘んじている所もある 「・・・はぁ」 色々な思いを込めて、大きな溜息を吐いた 「びくとも、しないな」 俺はまた、俺の家にいた 相変わらず、なんと頑丈な事か 蹴っても叩いてもびくともしない 「長所だが短所だな」 冷蔵庫の中身が心配すぎる、出かけ際に机に置いた牛乳が怖い ・・・ちょっと開けたくなくなった 「○○」 「ん、慧音か」 またここで、昼飯を食べる 変な習慣になっていた 彼女も家で食べればいいのに、ここにきて、俺と飯を食う 彼女がなぜそうするのか、なぜ俺がそれを嬉しく思っているのか 「なぁ○○、この後は暇か?」 「・・・俺は今お前にその質問をしようとした」 聞く前に聞かれるとは、少し驚いた しかし彼女の方から聞くということは、午後からは時間が有るんだろうな 「えと・・・暇なんだな?」 「ああ、暇だな」 「そう、か・・・だったら私に付き合ってくれ」 ほう、何処へ行こうと言うのか 買い物?荷物もち はて、この狭い世界じゃ皆目見当つかない 「買い物と・・・ちょっと人に会うだけだ」 「うん、これもいいな」 「・・・慧音さん、これはどういうことでしょう」 俺は今、服屋に居る 何でか知らんが、慧音は俺に色々な服をあてて、うんうんと 「こっちはどうだ?あー、何か違うな」 「慧音・・・なぜ俺が服を買う必要がある」 「何故って・・・お前が服を持たないからだ」 「いや、家には入れれば」 「入れる見込みが無いからこうして」 「金ないし」 「出してやる、食費にしか使わないからな、貯えはあるぞ」 ま、まてっ!衣食住、これ全てを彼女にゆだねると言うのか!? 否!断じて否!踏み越えてはならない最後の一線だ!そこまでさせてしまったら、俺は・・・俺は・・・ 唯の、ヒモじゃ無いかっ! 「そ、そうだ!俺用事を思い出してぐはげふっ」 慧音のレバーブローが、俺の横っ腹を貫いた 「・・・さぁ服を え ら ぼ う か 」 ~青年試着中~ 「ありがとーございましたー」 結局三着ほど、買わされ、買ってもらわされた 「もうお嫁にいけないめそめそ」 「何を言ってるんだ君は」 呆れたように、かのじょは 「ほら、まだ後一つ用事があるんだ」 俺の手を引いて、歩き出した これじゃあまるで、カップルのデートだ ぐは、恥ずかしすぎる、そんなの恥ずかしすぎる! ああ、慧音の手柔らかくて小さくて・・・しまった!変に意識したら 「・・・○○の手は、大きいな」 はにかんで、楽しそうに、笑った 俺はそこで、諦めた せっかくなのだから、この状況を存分に、楽しんだって罰は当たるまい 「慧音」 「ん?どうした」 「これじゃあまるで、俺たち・・・カップルみたいだな」 慧音は一瞬固まって、ぼんと音を立てて赤くなった 「ばばばばばばばばばかなここことをいって」 「手、離そうか?」 「なっ・・・・は、離さないで、くれ」 耳まで真っ赤にして、消え入るような声で、そう言った 俺はこの場で抱きしめてしまいたかったけど、人通りも多かったので、頑張って我慢した 「と、言うわけだ」 「・・・まぁ解ったが」 「なら、頼んだぞ、私はここで待ってるからな」 「・・・」 がらがら 「おじゃましまーす・・・」 小声で一応断りを入れて、屋敷に入った 慧音の言うとおりならば、ここに 「・・・どなたですか?」 「ああ、えっと・・・慧音の知り合い」 「ああ、先生の・・・それで、どういった御用で?」 かくかく しかじか 「ええとつまり、求聞史紀の内容が気に食わないので書き直せと」 「ええ、頭突きがどうのとか、角がどうのとかキモくないとかなんか言ってたけど・・・」 「あはは、どうやら噂で伝わってしまったようですね」 「ええと・・・」 「阿求と申します、稗田阿求」 「俺は○○、外から流れついたんだ」 彼女、稗田阿求と名乗った まだ10ぐらいの子供、だが大人びて・・・と言うより生き急ぐ様な 俺の能力ゆえか、彼女は長くないんだなぁと、感じてしまった 「貴方もこれに載せましょうか?異能を持った人間も載せてますよ」 見透かされて、と言うよりも、勘だな 今俺が少しだけ見せた驚きを、阿求は見逃さなかったらしい カマかけられるとは、俺の力も役立たずな 「・・・表で慧音が待ってるからね、もう行くよ」 「先生には検討だけはしてあげます、って伝えてください」 このまま話しつづければ茶でも出てきそうな気配なので、早々に退散する事にした 阿求ちゃんは、俺に 「○○さん、最後に一つ」 「・・・なんだい?」 「慧音先生とは、どういったご関係でしょうか?」 意図が、掴めない 最初に知り合いと名乗ったそれとは全く違う意味の、関係だろう だが俺には、明確にそれを指し示す事の出来る言葉を、持ち合わせていない 「・・・居候と、家主、ってところか、な?」 「・・・ふふ、また近いうちにきてくださいね、また同じ質問をしますから」 「?ああ、次はゆっくりと、お話でもしようか」 最後の、同じ質問を、と言う意味がまったく、解らない 彼女はいったい何を伝えようと言うのか 今の俺では、理解しようが無い 「お、お帰り○○」 「ああ」 入り口近くで、ぼうっと空を眺めていた 彼女は一人でいるときに何を考えていたのだろう 「どうだった?」 「検討だけはしておくとさ」 「そう、か・・・まぁ仕方無い」 慧音は俺に向かって、手を差し出した 帰ろう、と 今度は、その手を躊躇い無く握る事が、できた どういう、関係 財布をなくした事がきっかけで、家に入れず、ふらふらしていた所を 彼女、慧音に、世話になって、今・・・俺たちの関係、か 「なぁ慧音」 「・・・なんだ?」 「俺さ、お前の家で生活し始めて、変な違和感を感じてたんだ」 「・・・」 「だけどさ、今は・・・お前の所が帰る家になって、それもやっぱり違和感があって、なんで俺がここに居るのかなぁって」 人付き合いは苦手だった 彼女の所も、3日もすれば居心地が悪くなって出て行くんだと、考えてた 俺は所詮根無し草みたいな奴で なのになぜかそこは、居心地がよくて 「俺は、お前と一緒にいたいと、思っちまった、あの家から、お前の居る家から出て行きたくないな、何て思っちまった」 「○、○・・・それって」 「・・・お前が、好きなんだよ・・・これからも一緒にいたいんだ・・・慧音」 繋がっていた手、引き寄せて、抱きしめた 彼女の身体は、頼りないほどに軽く、柔らかかった 「私は、お前が・・・いつか出て行くんじゃないかと、出て行ったまま帰ってこないんじゃないかと、怖かった」 「・・・君が許すなら、ずっと傍に居る、いなくならない」 「・・・これからは毎日、君にお帰りなさいが言えるな」 「ははっ、そうだな、いってらっしゃいは俺が言わなきゃならないかな」 「このままヒモになるつもりか?」 「いやぁ流石にそれは・・・働くから安心してくれ」 きょろきょろと、周りに人が居ないのを確認して 「慧音」 「あ、んっ、んんっ・・・ぷぁっ」 唇を、重ねた ただ触れる程度のキス しかし、想いを伝えるには、十分だと、思う それからしばらく 正確に言えば日が暮れるまで 抱き合ったまま、お互いのぬくもりを感じていた 「お腹すいた・・・慧音も○○も帰ってこない・・・お腹、す、いt(バタッ」 次の次の日ぐらい 「やぁ、遊びに来たよ」 「思ったよりお早いお越しですね、○○さん」 稗田家、縁側 今日はゆっくりと話が出来ますねと、彼女・・・阿求は言った 外の話を聞きたかったらしく、熱心にメモを取ったりしていた 「・・・そろそろ、帰るとするよ」 縁側から腰を上げ、玄関に向かって歩き出すと 「・・・ところで・・・先生とは、どういう関係なのでしょうか?」 正直、彼女は未来予知でもできるのではないかと思ってしまった 心でも読めるのか、それとも勘がいいのか 「・・・慧音と俺は・・・そうだな、恋人・・・だな」 「そうですか・・・幸せそうですね、それはとてもいいことです」 それではまたきてください、そう言っていた、俺はもう歩き出していたので、そこまでしか聞き取れなかった きっと彼女は、あの質問の、正しい解答を知っていたのかも、しれない そして俺は、あの質問を、答える義務があった 「運命ってのは、信じないんだがな」 でも、落としてしまった鍵と、出会ってしまった俺と、慧音 そして 「恋人、か」 俺は彼女の声が効きたくなったので、ゆっくりと、歩いて帰ることにした 夕日が全てをオレンジ色に染めて まるで、彼女に誘われたときのようだ 「私の家に、泊まらないか?」 心臓が、止まるかと思った 「けい、ね?」 夕日を背に、彼女は であったときの、再演のように 「まだ一月ほどしか経っていないのにな、出会った日は、こんな夕焼けだったなと、思い出していた」 俺は、慧音より少し、先に行き 手を、差し出した 「帰ろうか」 「・・・ああ」 慧音は俺の手をにぎり、俺も握り返した 夕日に染まった道、二人で並び、ゆっくりと、歩いていった end 13スレ目 417、432、477、489 うpろだ989,993,996,998 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ここにいたか○○」 「慧音先生どうしたんですか?明日はお休みのはずでしたが……」 「いや、用事というわけではないんだが……」 「?」 「その……だな、わ、私とデートしないか?」 「デートですか……へっ!?お、俺と慧音先生がですか!?」 (コクリ) 「え、えーとですね……」 「わ、私じゃダメか……?」 「そんなことないです!行きましょうデート!」 「そ、そうか!嬉しいぞ○○!」 「で、どこに行きましょうか」 「いい場所を知っているんだがそこでいいかな?」 「あっ、はい!」 ~霧の湖~ 「涼しいですね慧音先生」 「ここは夏でも涼しいからな」 「……」 「……あのだな、○○一つお願いがあるんだがいいか?」 「何でしょう?」 「ふ、二人っきりのときは……その……慧音でいいぞ」 「慧音先生」 「むぅ」 「冗談ですよ慧音」 「ふふっ、嬉しいな名前で呼ばれると」 「……んっ寝てしまったのか」 「起きたか○○」 「慧音、顔が近いです……ってひざまくらですか」 「よっかかられた状態では辛そうだったからな、だからこの状態にしたが……ダメだったか?」 「いや、十分楽な姿勢ですよ慧音」 「そうだ耳掃除をしてやろう」 「あ、ありがとうです」 カリカリカリカリカリカリ 「なかなかたまっているな、教室は埃っぽいか?」 「掃除はしてるんですけどね」 「ほらっ左が終わったぞ、右を向いてくれ」 モフッ 「……」 カリカリカリカリカリカリ 「よし、終わったぞ○○」 「……」 「どうした○○?」 「いや、なんかこの気持ち懐かしいと思ってな……」 「そうか……」 「……慧音、もうすこしこうしてていいか?」 「ああ、いいぞ」 「……私が眠ってしまったか」 「……すーすー……」 「○○め、いつのまにか私がひざまくらされているではないか」 「う~ん慧音……」 「私が出てくる夢か、いったいどんな夢を見ているのだろうな……」 「慧音……好きだ~……」 「なっ、何だって!?」 「……むぅ……ん、また寝てしまったか」 「ま、○○!今言ったことは本当か!?」 「何か言いましたか俺?」 「いや、覚えてないならいい。はぁ……」 「慧音のことが好きって言っただけですよ」 「!? あ、あのな○○、そういうことは簡単に……」 「慧音だから言うんです、他の人になんか言いませんよ」 「そ、そうか……ありがとう○○、私もお前のことが好きだぞ」 「ありがとう慧音」 「その……さっきのはプロポーズということでいいんだな?」 「ああ、いつか言おうと思ってたし」 「ふふ、いつの間に敬語じゃなくなったな」 「先生だったからな、敬語を使う癖ができてるんだよ、きっと」 「だったから?」 「今は俺の愛する奥さんだろ?」 「う、うむ、そうだな」 「だったら慧音もそんな堅苦しい言葉遣いしなくてもいいんだ」 「そうか……○○、これからもよろしくな」 「ああ、よろしくな」 うpろだ1095 ─────────────────────────────────────────────────────────── 上白沢塾弐千八年度一学期期末試験 1、次の空欄に入る言葉を書き込みなさい。 ①、慧音先生の好きな人は( )である。 ②、慧音先生は○○を( )しています。 ③、○○と慧音先生は( )しあっています。 ④、二人は( )です。 ⑤、時々妹紅は( )になります。 ○○「何これ・・・」 慧音「おお○○、百点を取ったのはお前だけだぞ、おめでとう」 ○○「間違いなく皆呆れて何も書いてない筈だし俺も書いてない」 慧音「○○の答えなら空欄でも正解なのさ」 ○○「はぁ・・・大体解答欄に当て嵌まる様な関係はほとんど無いだろう? 俺も慧音が好きだけど、こういう行き過ぎた嘘は・・・」 慧音「大丈夫だ○○」 ○○「?」 慧音「今から事実にする」 ○○「や、ちょ、待って・・・ ていうか満月なんだからせめて掘るとかで許してアッー!」 17スレ目 137 ─────────────────────────────────────────────────────────── 静かな夜。空に浮かぶは満月。 里外れに向かう、数人の人影があった。 その彼らの前に、現れた影が一つ。 「待たれよ」 中心に居た人物を護るように前に出た人間達に構わず、ソレは口を開いた。 「此処より先は危険なり。今宵は満月。妖共が騒ぐ夜。引き返されよ」 だが、それを口にするその姿もまた、異形。 銀灰の体毛を持った、大柄な成人男性の大きさほどもある一匹の大犬であった。 ざわめいた人間達を押し留めるように、中心に居た人物――少女が前に進み出た。 「どうも、こんばんは」 「これは、阿求殿。どうなされました」 「慧音さんにお尋ねしたいことが在りまして」 「ああ、幻想郷縁起についてでありますか」 阿求の前までやってきて丁寧に座り、犬――彼、と言うべきか――は応じた。 「ええ、ご案内願えますか?」 「……ふむ、生業のことでありますしな」 「ありがとうございます。手土産がないわけでもありませんから」 「承知いたしました、我が主のところまでお送りいたしましょう。では、どうぞ」 今度は伏せの状態になり、阿求に乗るよう視線で告げる。 「それでは、失礼致します」 「あ、阿求様!?」 「大丈夫です。では、みなさんは先に帰られてください」 横座りで大犬の背に乗った阿求に告げられ、稗田の家人達は慌てる。 「し、しかし」 「帰りは私と慧音殿で必ず送り届けます。御安心を」 一見妖怪にしか見えないその姿に言われて家人達は戸惑ったようだが、くすくすと阿求が微笑って見せた。 「大丈夫です。二刻もかかりませんから」 「は、ですがならば、せめてこちらで待たせていただきたい」 「それでは、もう少し里に近いところでお待ちください」 彼は仰々しく頭を下げると、阿求を背に乗せて歩き出した。 「今宵は、仕事も少ないと申しておりました。幾らかは話を出来るでしょう」 「ありがとうございます。でも不思議ですね、その姿だとそういった喋り方になるのですか」 「私としては変わったつもりでもないのですが、そう受け取られるようです」 ゆっくりと歩きながら、そう言葉を交わす。 「間もなくであります……慧音殿!」 「うん、どうした……ふむ、阿求殿か、どうなされた」 仕事をしていた慧音が、阿求と彼の姿を見つけて近付いてくる。 頭には二本の角。彼女のもう一つの姿、白澤の形であった。 「少しお聞きしたいことがございまして」 「幻想郷縁起について、であるそうです。本日は仕事も些か少ないはずと、こちらまでお連れした次第であります」 恭しいまでの仕草で頭を下げる彼に微苦笑を向けて、慧音はその額を撫でる。 「仔細は承知した。では、少し待っていただいてよいだろうか」 「はい」 彼が姿勢を低くして、阿求が彼の背から降りる。 そして、慧音が歴史を紡ぐ様子を見守っていた。 「さて、失礼した。用とは何だろうか、このような満月の日に」 慧音と阿求が近くの岩に隣合って腰を下ろしたのを見て、彼は何か筒のような者を口に加えて持ってきた。 「慧音殿、その前にこれを」 「ああ、すまないな。阿求殿も如何かな。緑茶だが」 「いただきます」 予備のカップを被せた水筒を受け取り、慧音はカップに注いで阿求に渡した。 「さて、話の腰を折ってしまってすまない」 「いえいえ。話とは、彼のことについてです」 「私ですか?」 「ええ、幻想郷縁起に入れさせていただこうと思いまして」 その言葉に、ふむ、と慧音は形の良い顎に手を当てて少し考えるように苦笑した。 「確かに、それは今夜が相応しいな」 「そして、慧音殿に尋ねるのも。私もまた、半獣でありますから。そして、まだこの世界の理をよく知らない」 「外来人で、半獣……となると、やはり縁起には入れておきたいのです」 阿求はそう言って、慧音の足元に座る彼を改めて見た。よく見れば、彼の左後ろ足に大きな傷痕があるのがわかる。 ここに来て少しした頃、彼は妖怪に襲われ、慧音に助けられたものの左足に大怪我を負った。 そして。 「怪我の治りは悪くなかったのだがな。まさか呪が残るとは」 「しかも、後天性にしては珍しく完全な獣の姿ですからね」 我が家の家人達が恐れておりました、と阿求はくすくす笑う。 「申し訳ありません」 「いえいえ。貴方が獣人であることを知る人は少ないですし」 「一度言っておかねばならないのでしょうが、如何せん、まだ慣れませんで」 「まだ薄ぼんやりとしか物事を覚えていないらしい。まあ、時が経てばそういうこともなくなるのだろうが」 「家人には伝えておきましょう。それに、慧音さんと常に共に居るということが知れれば、警戒されることもないでしょうし」 「な、それは、その」 微かに動揺した慧音に微笑んで、阿求は足元の彼に尋ねる。 「貴方自身も、大人しいようですしね」 「そう取っていただけると幸いです。私はただ、慧音殿の為に在る者ですから」 「こ、こら」 「お熱いことで何よりです」 慌てる慧音と微笑い続ける阿求を交互に眺めて、しかし、と彼は口を開いた。 「呪などというものが、この世に在るとは露とも思いませんでした」 「……此処は幻想郷だから、な」 どこか哀しげな慧音を見上げて、彼は失言をしたと言うように、クウ、と喉を鳴らした。 そう、彼は人間なのである。いや、今となっては半人半獣。満月の夜にのみ、完全な大犬の姿になってしまう。 襲った妖怪が大犬のカタチであったからか。それはもう知る術はないけれど。 「……少し重い話にもなりそうですし、とりあえずはこちらを如何ですか?」 そう阿求が取り出したのは饅頭だった。それを見て、彼がピンと耳を立てる。 「疲れているときには良いでしょう」 「ありがたい」 阿求から二つ受け取って、慧音は尻尾をブンブンと振っている彼の鼻の上に饅頭を乗せた。 彼はじっと待っている。少し微笑って、慧音は、食べていいぞ、と告げた。 嬉しそうにぽんと一つ宙に浮かせ、器用に口の中に放り込む。 「……何だか私、凄いものを見た気がします」 「……いや、何だかつい」 尻尾をパタパタさせて饅頭を味わいながら、首を傾げている彼の姿に、思わず笑みが漏れる。 「そういえば、甘党って言ってましたっけ?」 「ええ、味覚は変わらないようで。今度御礼に何か作って持って参ります」 機嫌の良い彼に、今度は阿求が一つ渡した。礼を言って受け取って、また美味そうに食べ始める。 「少々物堅くなるが、基本的にはいつもの彼と変わらないよ」 「そうですね。行動も、しっかりしてるかと思ったら、やっぱりいつもの様子ですし」 クウ? ともう一度首を傾げた彼に、少女二人は声を出して笑った。 約束通り一刻半の後、無事に阿求を送り届けて、一人と一匹は帰り道を歩いていた。 不意に、彼は何かの匂いに気が付いたように、慧音の方を向く。 「慧音殿、それは?」 「ああ、竹林に落ちていたものだ。わかるか?」 「……教科書ですね。ああ、懐かしい。子供の頃のものと同じだ……」 鼻を鳴らして、彼は慧音が懐から出した本を眺め、目を細めた。 「……帰りたいか?」 「……今となっては、懐かしくはありますが」 首を振る彼の頭に手を乗せて、慧音は哀しそうな瞳で尋ねる。 「……私は、貴方を助けられなかった」 「仕方のないことです。それに貴女が来なければ、とうに僕は殺されていた」 口調が一瞬だけ、いつもの青年のものに戻る。違う、と慧音は首を振った。 「私は、貴方が危険な方に行くのに気が付いたのに、止めなかった。 何故止めなかったのかはわからない。だが、あの時止めていれば」 「慧音殿」 自らを責める慧音に、彼は声をかける。 「それを言うならば、私にも咎がある」 「何を」 「獣人になったと知った時、私を引き取ると言ってくださった時、私は嬉しかった」 目を細めて、彼は告げた。 「貴女の傍に在れるという事が。ずっと一緒に居れる事が。人間でなくなったことよりも、大事だった。 だがそれが、貴女を苦しめているのなら、私はどうしたら良いかと、今考えている」 目を閉じれば浮かんでくる。大犬の妖怪に襲われて、もう駄目だと思った瞬間のこと。 自分の名前を叫びながら、駆けつけてきてくれた慧音の姿。 裂かれた左足の感覚はほとんどもうなくて、血と共に命が抜け落ちるなんてこんなものかと思って。 だから、最期に見れたのが、この方の姿で良かったと、本気で思った。 気が付いたときには永遠亭で、一命は取りとめたが左足の後遺症と獣人の呪いが残ったことを知らされて。 その責任を感じたらしい慧音が、自分を引き取ると、面倒を見ると言ってくれた。 左足が不自由になったことよりも、獣人になってしまったことよりも、ただそのことが大事だったなんて。 本来ならば、口にしてはならないことだったかもしれないけど。 「軽蔑されても仕方が無いのかもしれない、私は――」 「貴方、は」 言葉を遮るように、慧音は地面に膝をついて、彼を抱きしめた。 「……慧音殿、服が汚れます」 彼の言葉に構わず、慧音は心情を告白する。 「貴方は、私を恨まないのか。私は人間の守護者などと言いながら護れなかったのに。 貴方が傷ついたのを奇貨として、貴方を傍に置こうとしているかもしれないというのに。それなのに」 泣きそうな声で、言葉で、彼女は告げ続けた。 「いや、そうに決まっている。私は貴方に傍に居て欲しかったのだ。私はあの時、薬師に貴方を治せるか尋ねなかった。 尋ねなかったのだ! 貴方を人間に戻せたかもしれないのに。私は私のエゴで、何も言わなかったのだ……!」 きつく結んだ目の端から、涙が零れ落ちていた。 生真面目な彼女の事、自分でさえも謀ることができないのだろう。 本来ならば口にせずとも良い言葉だから。真正に誤魔化しておかねばならないのは、彼女自身に対してだから。 この言葉で何よりも傷つくのは、何よりも彼女なのだから―― 肩を震わせる彼女に、彼は少し迷った後、ぺロリと頬を舐めた。 「……っ?」 「……女性の泣き止ませ方も知らない無作法者で申し訳ない。本来なら、手で拭えばよいのだろうけれど」 どこか照れたように頭を巡らせて、それでも、と彼は続けた。 「貴女には、そんな顔をしないで欲しいのです。貴女がつみに思うことは何もない。 いや、むしろこの姿で貴方の傍に居られるなら――これ以上の僥倖はないのです。それを感謝したいほどで」 「貴方は、何を」 慧音の戸惑いに、彼は少し考えた後、意を決したように口を開いた。 「――私は、貴女をお慕いしています。たとえこの姿が、人であっても、獣であっても、妖であっても。 何一つ変わらぬ想いで、貴女の事を全力で、愛しています」 恭しいまでの態度で言われた言葉が、慧音の頭に浸透するまで、少し時間がかかった。 耳まで顔を紅くして、驚いたように彼の顔を見る。 「な、え、あ、何を……」 「上手い言葉を知らないので、こういう言い方しか出来ませんが」 言葉に迷うように、それでも選びながら、彼は言葉を紡ぐ。 「ですが、これが本心です。紛れも無い、この私の」 「……私、も」 さらに強く抱きしめて、慧音が彼に告げる。 「私もだ。私も、貴方のことを想っている。本当だ」 「……嬉しいです、慧音殿。ならば、真正にそうならば、一つお願いを」 「何だ? 何でも――」 「もう、自分を責めるような事はしないでください。貴女が悪い事ではないのですから」 「……努力、しよう」 そう体を離して、少し困ったように微笑んだ表情に、彼も微笑を――犬の形でも辛うじて判る程度に――返した。 「ようやく笑ってくれた。貴女は笑顔の方が素敵ですから」 「む、か、からかうな」 「そのつもりはないのですが。ああ、私も一つ謝っておかねばならないことが」 楽しそうにしていた彼が、すまなそうに鼻を鳴らす。 「……前と同じように、人に戻れば、このときのことはあまり覚えていないと思います」 「そうか……まあ、仕方がないな」 「それでも、想いは同じですから。貴女を慕っているのは、この私もあの私も変わりません」 「そ、そうか」 照れたまま立ち上がって歩き出した慧音の隣に、駆け足で近寄って彼は笑う。 「ええ、そうです。私はいつでも貴女の隣に」 「……ああ、うん。私も、そうしてもらえると、凄く嬉しい」 紅い顔を彼に向けて、慧音は輝くような微笑を、彼に送った。 帰って軽く湯浴みをして――彼は水浴びをしただけだったが――休みに入る。 「ほら、きちんと上掛けを被る」 「面目ありません……」 少し湿った毛皮のまま、彼は慧音が横になっている布団の隣に伏せた。 だが手招きされて、布団の上に伏せなおす。それでも戸惑うように顔を巡らせた。 「……慧音殿、やはり私は向こうで」 「そうやって風邪を引いたのはどこのどいつだ?」 「むう」 少し居心地悪そうにした後、彼は諦めて自分の前足の上に頭を乗せた。 以前、毛皮だからといつものように別室で掛け布団なしで寝ていたところ、朝になって風邪を引く破目になったのだった。 そう考えていると、唐突に、ぽす、と背中に感触があって、彼は顔を上げる。 「……湿ってますよ」 「いや、背中は乾いている。ふかふかだな」 慧音が彼の背中に頬を当てていた。もふもふと気持ち良さそうにしている。 「……暑いでしょうに」 「いや、心地良いぞ。うん、毎回こうしても良いくらいだな」 「……夏は暑いと思いますよ」 「冬はさぞ暖かいだろうな」 少しからかうような言葉をかけた後、慧音は彼の耳元に顔を寄せる。 「……ずっとこうしていてくれるんだな」 「貴女が望んでくれるならば、ずっと」 「……ありがとう」 慧音の言葉に笑んで、彼はもう一度、前足に顔を伏せた。 翌朝、少し陽が高くなった頃。 「ふ、あぁ……おはようございます、慧音さん。すみません、寝坊して」 目をこすりながら、着流しを身につけた一人の青年が台所の方に現れた。 「おはよう。いいさ、まだ慣れてないのだろう」 「はい。満月はこれで……三回目ですか」 左足を少し引き摺りながら、彼は慧音の隣まで近付く。 頭一つ分以上高い彼を見上げて、彼女は頷いた。 「そうだな。少し遅いが、朝餉にしよう。待っていてくれ」 「はい」 嬉しそうに頷いて、円状の卓の傍に彼は腰を下ろす。朝食の膳を用意して、慧音も彼の向かいに座った。 唱和して食べ始めてすぐに、彼が口を開く。 「すみません、例の如く、昨晩のこと、僕あまり覚えてなくて」 「そうか、まあ、それも慣れてくるさ」 「はい……慣れてきて、覚えていられるようになったら、僕も一人前ってことなんですかね」 「……完全に獣人になるのは抵抗があるか?」 少し間を置いて尋ねられた問いに、彼はあっさり、いいえ、と答えた。 「それはそれで。こういう数奇な人生と言うのも楽しそうですし」 それより、と彼は困惑した声で続ける。 「朝起きたとき、どうしてそこに寝ていたかくらいきちんと覚えていないと……服も着てないわけですし」 「ああ、まあ、そうだな」 互いに何となく照れたような気まずい雰囲気の後、ずず、と彼は空気を変えるように味噌汁を啜った。 「それに、朝ご飯を作るのを、満月の度に慧音さんにさせてしまっていては申し訳ないですから」 「それは別に良いのだけどな」 「それでも、ですよ。お世話になっているんですから」 「寺子屋も手伝ってくれているのだから、そこまで気にしなくても良いんだぞ?」 そう言われて、彼は少し照れたように頬をかいた。 「いえ、そもそも甲斐性も何もないですからね。傍に置いてもらえるんなら、出来ることはしたいんですよ」 「……そうか」 慧音もどこか嬉しそうに微笑んで、彼の言葉を受け入れた。 「……昨晩のこと、覚えてないんだったな」 「はい……でも、大事なことを話した気は、してます」 目を細めた彼に、そうだ、と慧音は微笑った。 「だから今度は、覚えているときに聞きたいな」 「はい、努力します。これでも、一生懸命思い出そうとしてるんですよ?」 「ああ、期待している」 微笑んだその表情に、彼は思わず見惚れて、紅くなったことを誤魔化すように、再び朝餉に手を伸ばした。 里では、時折仲の良い二人の姿が見られると言う。 美しい里の守護者と、彼女に寄り添うように歩く片足の悪い青年。 仲睦まじい様子を子供達にからかわれながら、里の者達に微笑ましく見守られながら。 幸せそうな様子を隠すこともなく過ごしていると言う。 そして満月の夜には、竹林にて歴史の神獣とその従者のように傍に伏す大犬の姿が見られるらしい。 らしい、というのは、それを見られる者が限られているから。 それでも、蓬莱人やら天狗やらが伝える様子は、彼女達が良いパートナーであることを窺わせるものがある。 ちなみに、パートナー、が別の単語に変わるのもそう遠くない日のことだろう、とは、二人をよく知る者達の言である。 うpろだ1266 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/tohogyokureiki/pages/159.html
コダマ名 HP 攻撃 防御 速度 合計 属性1 属性2 攻撃属性 弱点 耐性 スキル 必要アイテム ちびけいね 75 80 75 40 270 理 - 理鋼 虫霊闇 闘理 - 慧音カード N慧音 90 110 85 85 370 理 地 理地炎鋼 水樹氷虫霊闇 雷闘毒理岩 知識と歴史の半獣 不偏の霊珠 D慧音 105 95 125 45 370 理 鋼 理鋼炎地 炎地霊闇 毒理無樹氷風岩神鋼然 知識と歴史の半獣 守の霊珠 E慧音 120 110 80 90 400 岩 地 岩地理鋼 水樹氷闘地鋼 雷毒無炎風岩 歴史喰い 奇跡の霊珠 ※青文字は属性一致、赤文字は重複弱点、緑文字は重複耐性、灰色は無効、(括弧内)はスキル効果あり #ref error :画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 #ref error :画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 #ref error :画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 #ref error :画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。 ちびけいね N慧音 D慧音 E慧音 スキル 知識と歴史の半獣 ターン終了時、SLv×20%の確率で相手のスキルを無効化します。 歴史喰い 登場時、相手のスキルをコピーします。 スペル スペル名 属性 威力 消費 詳細 必要銭 ちびけいね N慧音 D慧音 E慧音 幻想天皇 理 80 20 通常攻撃(初期) 3000銭 ○ ○ ○ ○ 幻想郷伝説 理 100 30 通常攻撃 20000銭 ○ ○ ○ ○ 理 120 40 自分の攻撃を20%上げます。 禁呪 - ○ ○ - GHQクライシス 理 120 40 相手の防御を30%下げます。 100000銭 - - ○ - 理 150 50 相手の防御を50%下げます。 禁呪 - - ○ - 旧秘境史 岩 80 20 相手の攻撃を20%下げます。 3000銭 - - - ○ 新幻想史 岩 100 30 自分の攻撃を30%上げます。 20000銭 - - - ○ 岩 120 40 禁呪 - - - ○ ファーストピラミッド 地 80 20 通常攻撃 3000銭 - ○ ○ ○ 邪馬台の国 地 100 30 通常攻撃 20000銭 - ○ ○ ○ 地 120 40 自分の防御を20%上げます。 禁呪 - - ○ - 高天原 地 120 40 自分の攻撃を30%上げます。 100000銭 - ○ - ○ 地 150 50 禁呪 - ○ - - 無何有浄化 地 150 50 与えたダメージの1/6、相手のVPを減少させます。 300000銭 - - - ○ 地 200 50 自分の防御が80%下がります。 禁呪 - - - ○ 三種の神器 剣 鋼 80 20 通常攻撃 3000銭 ○ ○ ○ ○ 三種の神器 玉 鋼 100 30 通常攻撃 20000銭 - ○ ○ ○ 鋼 120 40 自分の防御を20%上げます。 禁呪 - ○ - - 三種の神器 鏡 鋼 120 40 自分の防御を30%上げます。 100000銭 - - ○ - 鋼 150 50 自分の防御を100%上げます。 禁呪 - - ○ - 日出づる国の天子 炎 100 30 自分の攻撃を20%上げます。 20000銭 - ○ ○ - 炎 120 40 禁呪 - ○ ○ - カード効果 アイテム名 装備時効果 契約コダマ 入手(金額) 備考 慧音カード 防御が20増加します。 ちびけいね 小吉印の福袋・アイテムショップ(200000銭) 4-4クリアでショップ追加
https://w.atwiki.jp/orz1414/pages/288.html
■慧音4 紅魔館執事日誌 ○月闇日 注文していた物が今日届いた。 休みはすでに後日とる予定があるので 自分で買いに行く暇がなかったからだ。 配達を頼んだら若い男性が配達にきた。 自分と年が近かったせいか、門番に 「仕事に戻らないとナイフが飛んできますよ。」 とたしなめられるまで話し込んでしまった。 反省 しかし最近のカップルはすごいな、まさか頭を彼女にかじらせて 尚且つコミュニケーションをとるとは、今度メイド長に進言してみようと思う。 ○月こぁ日 今日は湿気が高いため除湿作業に追われていた。 外の世界なら除湿機やらで終わるのだが機械などあるはずもなく 人間である自分には結構辛い作業だ。 紅魔館では主に風魔法による除湿をしているので 魔法の使えない何人かの使用人には魔女特性の魔法石を渡された。 ほどなく作業は完了、本日は何事もなく終了。 と思いきや図書館勤務の男が一人湖までふっとんだ。 ちょうど玄関担当だったので帰ってきた男から話が聞けた。 曰く司書と仲良く仕事をしていた時私の同僚から例の石を借りたらしい。 図書館には除湿は必要ないはずだが?と聞き返したら 「風の魔法はスカートめくりに使うのが男のロマンだろ!」と熱弁された。 実行のあと司書のジャイアントスイングにより ふっとんでしまったらしい。 司書とはすでに結婚しているはずなのに、いまだに バカップルのごとくラブラブな二人を見ていると ため息半分羨ましさがあったのは日誌だけの秘密だ。 しかし湖までふっとんだのにピンピンしているのはなぜだろう? ○月妹日 妹様大暴走。 いつもいっしょにいる家庭教師が風邪で寝込んだことを知ると 「あいつの所に行くー!」 とのこと。 図書館の主人の魔法にて迅速な消火がされたが館はずぶぬれ。 あの妹様にここまで慕われる家庭教師は幸せものだと思う。 そんなことを考えながらずぶぬれになった館を掃除していたら、 メイド長が妹様に拉致られていた。 おそらく慣れない看病のヘルパーとしてつれていったのだろう。 南無 ○月パ日 メイド長が帰ってこなかった。 今日配達された新聞によると、 とある宅配の仕事をしている男が本日誕生日らしい。 接点は知らないがメイド長は顔見知りらしく いつもは着ない私服で出かけていった。 しかし、日付が変わっても帰ってこなかった。 お嬢様曰くほおっておけとのこと。 ○月ッ日 メイド長帰宅。 メイド隊はほっ、と一安心、門番は鼻水たらして抱きつきていた。 私服ではなくいつものメイド服なのと時々 「烏に月人め…。」 と呟いていたは気になったが、清掃部門も一安心だ。 今日は白黒の侵入もなく平和だった。 ○月ド日 メイド長が毎晩屋敷を空けるようになった。 以前の男の家に通い妻をしている。 泊まってくるときもあるので屋敷一同で式の準備をしていた。 もう少し書きたいがまだ作業が残っているのでここで切り上げることにする。 ○月暦日 今日のことはあまり覚えていない。 明日は待ちに待った休暇だ、緊張で仕事に身が入らなかった。 先月までに貯めた三ヶ月分の給料で頼んでいた指輪を 一日中握り締めていたら同僚に笑われてしまった。 司書夫妻には夫婦漫才で激励された。 いまはそんな気遣いがありがたい。 私には幻想郷に迷い込む際、世話になった恩人がいる。 別に日誌書く必要はないのだが、なにかしていないと落ち着かない。 その恩人に告白したのは三ヶ月前だ。 その時は酒でよった勢いなので保留になってしまった。 三ヶ月待つのは辛かったが、指輪くらい甲斐性をみせるのは ちっぽけなプライドである。 だから明日君に言うよ 結婚しよう、慧音 8スレ目 38 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「よしっ!今日の仕事はおわりっと」 昼を少し過ぎたとき俺は慧音に頼まれた寺子屋の教材を まとめる作業を終えた 向こうの世界でそれなりに勉強していただけだが こういった雑用をすることで居候させてもらっているので あっちでの勉強も無駄ではなかったのだと思う 今日は夕方から妹紅が来るので慧音は買出しに行った つまり今は家には俺しかいない 「というわけで今日いつもできないことをゆっくりとさせてもらおう」 俺は押入れから枕を二個を取り出して縁側に向かった 俺は昼寝が好きだ、それこそ『の○太君』のように一日中寝ていることも可能だ 特に縁側で日を浴びながらまどろむのは天国にいるような時間だと思う しかしこっちに来てからあまりできなくなっていた なぜなら慧音がだらしないとか風邪を引くといってさせてくれないのだ もちろんこちらのことを考えて言っているのはよく分かるのだが 昼寝を生きがいにしていた俺にはかなり厳しかった 「慧音はまだ帰ってこないだろうしゆっくり寝れるな」 そう独り言を言っていつものように枕一つおいてもう一個を腕に抱いて眠った 枕を腕に抱くのは昔からの癖だ、慧音にも最初かなり笑われたが こればっかりはどうにもならない まぶたを閉じると暖かな日差しとともにゆっくりと眠気が意識を覆っていった 数時間後 今日は妹紅が来る日だから腕によりをかけて夕食を作ろうと思ったが 少し○○に雑用押し付けすぎたかもしれんな まああいつが好きだというコレも買ってきたし大丈夫か と考えつつ私は家に急いでいた そうこうするうちに家が見えてきたのだが縁側に誰かがいるようだ 「ん、妹紅か?」 近づくと確かに妹紅だった 「早かったんだな、今夕しょ…ん?」 こちらに気づいた妹紅はなにやら指を口元に立てている 「何だどうかしたのか?」 声を小さくして尋ねてみると 妹紅が縁側を指差した そっちを見れば○○が昼寝をしていた 全くいつものことだが少々呆れてしまった 「○○こんなところで寝ると風邪を…」 と私が○○の肩をゆすろうとしたが その手を妹紅に止められた そして妹紅は○○の腕から枕を抜き取り少し離れたところに置いた すると○○は寝たまま手探りで枕を見つけまたそれを大事そうに抱え込み 安心した子供のような顔で眠り続ける なんだか小さな子供のようでかわいく思えた 「おもしろいでしょ?何回やってもこうなるんだ」 妹紅が○○を指差して笑う 「確かにそうだな、まったく○○はどうも子供っぽいとこがあるからな」 私も笑いながらもう一度枕を遠くにおいてみる やはり○○はさっきと同じように手を伸ばし腕の中に抱え込んだ その時私はあることを思いついた 「どうかしたの?慧音」 不自然に動きを止めた私に妹紅が聞いてくる 「い、いやなんでもない。……すまない妹紅、卵を買い忘れてしまったから 買ってきてくれないか?」 「ん、ああいいよ。じゃあちょっと行ってくる」 そう言って村のほうへと向かっていった その姿が見えなくなったのを確認してから私は○○の腕から 枕を奪い部屋の中に放り投げた そして○○の正面に寝そべって目を閉じた 程なくして肩に暖かさを感じそのまま眠ってしまった なんだかすごくいいにおいがして目が覚めた 目を開けるとそこにはなんというか『特盛り』な物体があった そしてその向こうになんか紅い鳥が見えた ここで記憶は途切れた 8スレ目 48 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「じゃ、俺そろそろ行くよ」 「ああ、○○。気をつけて行けよ」 「わかってるって。何時までも慧音は心配性だなぁ。 俺だっていつまでもガキじゃないんだからさ、大丈夫だって」 「…そうだな。今のは私が悪かった、すまない」 「謝るなって。心配してくれる人がいるのは、嬉しいことさ」 「私の役目は終わりだ。早く行ってやれ」 「……ああ。その…慧音、今までありがとな」 「…………早く行け。奥さんが待ってるぞ」 「なんだよ、棘があるなぁ。まさか嫉妬してるとか?」 「ははは、ばれたか。さっさと彼女のところに行ってやれ。 さもないと私は○○を殴りかねん」 「そりゃあ恐ろしい。さっさと退散するよ。……じゃあな!」 「ああ。…………元気でな」 「……おーい、慧音。居るか?」 「…妹紅か。ちょうど暇になったところだ」 「うわ……酒臭いな。どうしたんだ、いきなり酒盛りなんか始めて。 ……いや、ヤケ酒か」 「そういうときもあるさ。放って置いてくれ」 「また…………ダメだったのか」 「……………………」 「何でお前はそう、○○に固執するんだ? 先代のときも、その前も、その前も ダメだったろう?」 「それでも…………」 「どうしてだ。諦めろよ。○○以外にもいい男はごまんといるだろう? 大体、お前を見捨てて他の女に乗り換える男なんざ――」 「それでもっ! 私は!!」 「……………………」 「…………○○が好きなんだ」 「……はぁ、わかったわかった、そう怒るな。なら、また待てばいいさ。 私たちの寿命は長い。100年やそこら、短いもんだ」 「…………妹紅、ありがとう……」 「ああ、もう、泣くな泣くな。今日は飲み明かそう、明日からまた頑張ればいいだろう?」 「『また、100年後、○○に会えると信じて』」 「『今度は、○○と一緒になれるといいな』 ……100年前も同じ台詞言ったのな、私たち」 「もう忘れたさ、そんなこと。……さあ、飲もう! 今日はつぶれるまで飲むぞ!」 「望む所だ。途中で寝るなよ、慧音!」 8スレ目 218 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今日は慧音が昼寝を許してくれた、いつもなら だらしないとか言って寝てると枕を引き抜かれたりするのだが 今日は俺が眠そうにしていると 「そんなに眠いのなら寝ればいいじゃないか…」 となんか不機嫌ながら言ってくれたのでお言葉に甘えて 昼寝させてもらったのだが、なんとなく視線を感じた まぁ別にそんなことが気になって眠れなくなるほど デリケートな人間でもないのでさっさと寝たのだが さっき起きてみたら何か妙に唇に違和感を感じる 鏡を見に行くときにすれ違った慧音の様子もおかしかったし まぁなんとなく察しはついたのだが、ちょっとカマかけてみることにした 俺は居間に戻って慧音に 「なぁ俺が寝てるときになんかしたか?」 と聞いてみたら 「な、何もするわけはないだろう」 そんなふうに動揺を隠そうとしながら答えた 「そっか、なんか鏡見たら口紅がついていたんだが?」 「そんなわけないだろう!ちゃんと化粧は落としてから……あ」 分かりやすいな、いや本当に 「で、落としてから何したんだ?」 「いや…それはその……」 そういって口ごもった 「まぁ、別にいいんだけどさ。そういうのは起きてる時にしてくれ なんか損した気分だ」 「あ、ああ…」 顔がもう真っ赤だった 「とりあえず何回したんだ?」 「い、一回だけだ!」 「そっかじゃあ俺も一回だけ…」 そう言って俺は慧音の口をふさいだ 「いきなり何を!?」 「慧音が一回したんだからコレでおあいこだろ?」 「……回だ」 小さな声で聞き取れなかった 「ん?」 「本当は二回したんだ、だから…」 そう言ってこっちをみつめてくる 「そうか、じゃあもう一回…」 「ん…」 そういってもう一度したのだが その後慧音の『本当にした回数』はどんどん増えていった 8スレ目 269 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「で、コレはいったいなんなんだ?」 慧音が俺が持ってきたモノを指差しながら言った 「コレはトランシーバーっていうモノだ」 「トランシーバー?」 「そう俺の世界の機械、まぁこっちで言う式みたいなもんだよ バイト先で入荷してたから買ってきたんだ」 「お前のバイト先というとあの店か、大丈夫なのか?」 「大丈夫!、というわけではいこれ」 俺はトランシーバーの片方を慧音にわたした 「ん?くれるのか、しかし何に使うんだコレは?」 慧音が珍しそうに見ながら尋ねてくる 「これを使うとだな、なんと遠くにいても会話することができるんだ!」 「何!?」 「だからコレを使えば何か用があったとしてすぐに連絡がつくから いちいち会いに行ったりしなくても済むんだよ」 「…そうか」 「便利だろコレ」 俺はそう言ったがどうも慧音はひっかかることがあるらしい 「便利かもしれないが…私は要らないな」 そう言ってトランシーバーを机に置いた 「ん、何でだ?」 「逆に聞くが○○は私に顔を合わしたくないのか?」 「質問を質問でぇ…じゃなくてそんな訳ないだろう」 「しかしそれを使うと用事を顔を会わさないで済ましてしまうのだろう?」 ここまで聞いて慧音が何を言いたいのかが分かった 「つまり慧音はコレを使うと俺が会いにこなくなるからいやだと?」 「……」 顔を紅くしながら慧音は小さくうなづいた 俺は慧音がとてもかわいく思えて抱きしめた 終わり 「でもさ、夜寝る前とかさ。ちょっと話したりとかもできて便利だと思うんだけどなぁ」 「そ、それなら…わ、私の家に泊まっていけばいい」 「(゚д゚)」 本当に終わり 8スレ目 279 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「い、いやだっ……見るな! 見ないでくれっ!!」 初めて見る彼女の本当の姿。 「……けーね……君は」 妖怪だったのか? 「お願いだから………いやだっ…嫌いにならないでくれっ………おまえに嫌われてしまったら…私はっ……」 いつも凛としていた彼女が、今、俺の目の前でポロポロと涙を流していた。 そして、近くにあった頭から布団を被った。 “人では無いモノ”と化した自分の姿を必死で見られないようにしている。 「いいや、見せてくれ、けーね。」 俺は、彼女が纏っている布団の…彼女の頭の部分だけを優しくはぎ取る。 「ひっ……」 彼女はカタカタと震えていた。 否、怯えている。 俺に『本当の姿を見られて、嫌われてしまう』ということに。 「……」 「……?」 数秒間の沈黙…そして 「すごく、かわいいよ、けーね」 俺は満面の笑みを浮かべて彼女に言った。 それが、俺の素直な感想。 「おまえは…こんな姿の私でも……」 けーねの瞳から、次第に次第に恐怖の感情が消え去っていく。 「愛しているさ。むしろ、惚れなおしているくらいだ。」 彼女の恐怖からくる涙が、一瞬で歓喜の涙にすり替わる。 そして、気づけば、彼女は俺の胸に飛び込んでいた。 「私は……幻想郷一の幸せ者だ」 「……はは、大袈裟だな」 大袈裟なんかじゃないと、けーねは言う。 「私は、もう お前を離したくない……いいや、離さない。」 「ふふ……」 普段の彼女が見せない、もう一つの姿。 「だから、私から、離れないでくれ……」 「もちろんだよ」 それは、人間でない姿と…こんな風に俺に寄りかかってくる姿。 「私は、もう お前なしでは、生きていられないカラダになってしまったから…」 8スレ目 336 ─────────────────────────────────────────────────────────── けーね依存症候群? 「くはははは・・・みぃぃぃたぁぁぁなぁぁぁ」 「……けーね……君は」 牛だったのか? Grave!! 「・・・俺は、もう 君なしでは、生きていられないカラダになってしまったから…」 8スレ目 337 ─────────────────────────────────────────────────────────── トランシーバーの副産物のような良く分からない状態のまま 俺は結局慧音の家に泊まることになった、まぁ何度かお世話になったこともあったし それほど構えてもいなかったわけだが そして夕食を食べ終え俺が今までのように毛布を借りようとしたとき 事件は起きた 「今日は同じ部屋に寝るぞ」 「……は?」 「だ、だから今日はここで一緒に…」 「本気か?慧音」 「だからさっき夜寝るときに何か話そうっていったじゃないか」 「ああ、そういうことか」 俺はかな~りアダルティなことを想像していたが単純にそれだけらしい 「ほ、ほら布団敷くから手伝え」 そう言って襖を開けて布団を取り出そうとしていた 「ん、これなんだ?」 襖から布団と一緒に何か転がり出てきた 「人形かこれ?」 それは人間の男をかたどった、なんていうか愛嬌のある人形だった しかしかなり良くできたものであることは俺でも分かった 「っ!!」 慧音は俺が掲げた人形を奪い取ろうとした 俺はそのまま渡しても良かったがなんとなく避けてしまった 「なんつーか、どっかで見たことある顔だな、コレ」 どうにもこの間抜け面には見覚えがあるんだよな なんか毎日顔を合わせてるような 「それは○○だ…」 「ああ~、俺かどうりで……ってマジ!?」 慧音は頷いた 「うあ~よく見ると確かに俺だな」 そう思うとさっきまでの間抜け面が急に凛々しく見えるような気もしたが 気のせいだった 「でもなんで俺の人形なんか?」 慧音は俯いたまま答えない なんか俺はいやな予感がした、なんとなく人形から連想する嫌なものが よぎった 「あのさ、これもしかしてアリスが作ったとか?」 「ああ…この前作ってもらったんだ」 と、ここまで聞いて俺は既に土下座していた 「すいませんでした!!」 「は?○○何をやって…」 慧音が何か言ってるが土下座続行 「すまん!つーかマジでそんなに怒ってるとは思わなかった!」 「いやだから…何を言っているんだお前は?」 「何って、慧音に謝罪をだな」 「謝罪って、何かしたのか?」 「いやだって俺の人形に釘刺すくらい怒ってるんだろ?」 「何の話だ?」 「だからアリスに俺の人形作らせたって…」 「作らせたが別に釘を刺すためじゃないぞ」 「マジで?」 「ああ」 俺は頭をあげて土下座を解除した 「はぁ~よかった、なんだよ、まぎらわしいぞ慧音」 「勝手にお前が勘違いしたんだろ」 慧音は呆れたように言った、そして 「で?○○、さっき謝ってたのは何故だ?また何かしたのか?」 「……」 「何をしたんだ?」 妙に怖い笑顔が近づいてくる 「黙秘権とかはなしか?」 「却下だ」 その後説教は一時間以上続いた 「はぁ~お前にはほとほと呆れてものが言えん」 「一時間以上説教してたが…」 「何か言ったか?」 「何にも言ってないゼ!」 「…声が裏返ってるが、まあいいさっさと寝るぞ」 そう言って布団を敷き始めた 俺も自分の分をやろうとしたが、少し疑問が残っていたので 聞いてみた 「なぁ、慧音結局あの人形はなんに使うんだ?」 「……」 「何に使うんだ?」 妙に紅くなっている慧音に追求した 「黙秘権とかはないのか?」 「却下だ」 夜はまだ始まったばかりだ 8スレ目 369 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今日は七月八日七夕の翌日である、普通ならもう七夕は終わり 飾り付けられた笹もしまわれるたり焼かれたりするのだが、俺は笹をもって慧音を訪ねていた 「というわけで慧音七夕をやろう」 「何がどういうわけでそうなったかは知らんが、七夕は昨日やっただろ」 「昨日やったが寺子屋の子供たちとやったからすげえ忙しくて ぜんぜんゆっくりできなかったし、第一メチャクチャ雨降ってて星も見れなかっただろ」 昨日はそれこそバケツをひっくり返したという表現がぴったりの天気だった 「まあそれはそうだが」 「だろ?というわけで飾りつけ手伝ってくれ」 「しょうがないな全く」 そんな感じで俺たちは二度目の七夕をすることになったんだが 「なあ慧音は願い事は何書くんだ?」 「ん?ああ昨日書いたからもういらないだろ」 「そうか?せっかくもう一度やるんだからまた書こうぜ せっかくあまった短冊もらってきてるし」 そう言いながら俺は慧音に短冊を渡した 「願い事なんて欲張るとろくな事にならんと思うが…」 「まあ願うだけならタダだし、書くだけ書こうぜ 短冊がない笹も味気ないだろ」 慧音は呆れたような顔をしながらも短冊を受け取り 願い事を書き始めた 二人とも願い事を書き終え飾ろうとしたのだが 「○○はなんて書いたんだ?」 そう言って慧音がこちらの短冊を覗き込んできた 俺はとっさに短冊を隠して 「慧音こそなんて書いたんだ?」 と聞き返した 「私か?私は無病息災だ」 「なんつーか、慧音らしいというか普通だな、というか慧音って もともと病気になりにくいんじゃなかったっけ?」 「そうだが、私の近くにすごく無茶というかバカなことばかりするやつがいてな そいつの分も含めてだ」 「ふーん、誰だそれ?妹紅か?でもあいつ慧音よりも丈夫だろ?」 「お前自覚がないのか?」 「何が?」 「はぁ…もういい。それで結局お前はなんて書いたんだ?」 「それは教えられないな」 「私が教えたんだから、教えろ…っというか飾るんだから結局見るだろ」 そう言って俺から短冊を奪い取った 「ちょ…おい!」 「ん?二枚重なってるのか?○○願い事は欲張るとろくなことがないとさっき言っただろ」 「いや、それはどっちにしようか迷っているんだよ」 「何だ?そんなに願い事が多いのかお前は…」 そう言って慧音は笑っていたが願い事を読んで固まった 「どうした?慧音」 「この願い事はどういうことだ?」 すごく静かな声でそう言いながら俺が書いた短冊を示した そこには俺の二つの願いが書かれていた 一枚には 『このまま幻想郷で楽しい日々がおくれますように』 もう一枚には 『いつか自分の世界に帰れますように』 「まだ迷っていたのか…」 「まぁな、やっぱあっちの世界に未練がないとは言い切れないしな」 「そうか…」 慧音はそういうと俺の短冊を笹に飾りつけようとした 俺が帰れますようにと書いたほうをだ 「慧音何を…」 「明日神社に連れて行ってやる、うまくいけばお前の世界帰ることが できるかもしれない」 「は!?ちょっと待ていきなり何言ってんだよ」 「だから帰りたいんだろう!」 「いやだからまだ迷ってるんだよ!」 俺自身まだ踏ん切りがついていなかった、幻想郷に生きるにしても 元の世界に帰るにしても 「ならちょうどいい機会だ、今決めるといい」 「待てよ!いきなりそんなこと言われても…」 「どうせいつかは決めることだ」 「それはそうだが…」 いきなりのことに頭がついていかない 俺は黙り、慧音も黙って俺の答えを待っていた 少しの間沈黙が続き、俺は口を開いた 「ひとつだけ質問してもいいか?」 「…何だ?」 「俺が幻想郷に残った場合、慧音は傍にいてくれるのか?」 「は!?何を言って…」 「だから幻想郷に残った場合傍にいてくれるのか!」 俺はずっと迷っていた原因を慧音に聞いた 慧音は驚きながらも俺の目をまっすぐに見て 「…ああ、いいぞ。傍にいてやるとも」 と答えてくれた 「そうか」 なら迷いはなくなった 「慧音…俺はここに残るよ」 そう言いながら慧音の腕を引いて強引に抱きしめた 結構長い間そうしていたのだが、短冊吊るす途中だったので 作業を再開した 「なあさっきの短冊貸してくれ」 「ん?こっちを吊るすんだろ?」 そういって俺が幻想郷に残ると書いたほうの短冊を掲げる 「ああ、だけど少し書き直さないと」 「書き直す?」 「ああ」 そう答えながら俺は受け取った短冊に少しだけ書き加えた 『このまま幻想郷で慧音と楽しい日々がおくれますように』 8スレ目 381・382 ─────────────────────────────────────────────────────────── 384 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 01 22 18 ID ujTdlG1w0 慧音が溢れちゃいそう!なんて嬉しい悲鳴。 385 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 01 36 33 ID ujTdlG1w0 分が抜けた。慧音分ね。 …どんな状況なんだ。 388 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 12 12 49 ID OVenZwtI0 385 ちび慧音がポコポコと涌いて溢れるとか 392 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 15 33 27 ID 0.UsN4d2O 388 チビけーねがポコポコ腕振り回して「◯◯のバカー!バカー!」している、に見えた ちょっと吊ってくる 394 :名前が無い程度の能力:2007/07/09(月) 19 55 08 ID 0ixxGnI60 392 満月の時はきもけーねになって 新月になったら幼女になるんだな 404 :名前が無い程度の能力:2007/07/10(火) 01 23 30 ID Weh6KDSQO 394 つまり、いつもはしっかり者で姐御肌な慧音先生で 満月時は愛しの人に角を見られるのを恐れる奥手なきもけーねで 新月時は純粋無垢の好奇心旺盛なょぅじょけぃねでFA? 412 :名前が無い程度の能力:2007/07/10(火) 15 22 12 ID mAhjnMjg0 404 つまりはこういうことか! 通常時慧音場合 慧「ほら、いつまで寝てる気だもう朝日はとうに昇ってるぞ」 ○「ん~~?ああ、慧音かおそよう」 慧「まったく……朝飯はできてるから早く食うぞ この後私は寺子屋に行かないといけないんだからな」 ○「先に食ってればいいじゃん」 慧「ま、○○と一緒に食べたかったんだ////」 ○「慧音……ありがとな」 慧「ほ、ほら早く食べるぞ」 ○「ん、いただきます」 きむけーねの場合 慧「………………なあ○○」 ○「ん?どうした慧音」 慧「いや、なんでもない」 ○「そうか」 慧「………………………………」 ギュゥ 慧「ま、○○!?」 ○「安心しろ俺はずっと慧音と共に在るから」 慧「……ありがとう○○」 ○「ありがとうを言うのはこっちのほうだよ」 ようじょけーねの場合 慧「○○!○○!」 ○「あ?どうした慧音」 慧「○○はわたしのことすきか!?」 ○「ああ、大好きだぞ」 慧「そうか!ならちゅーして!」 ○「ちゅ、ちゅーは大きくなってからだ」 慧「むぅ~、ならおよめさんにして!」 ○「それも大きくなってからな!」 慧「○○はだめだめっていうー○○はわたしのこときらいなの?」 ○「それはないまずない絶対ない」 慧「そっかー、じゃあ愛してる?」 ○「ああ、愛してるぞ」 慧「じゃあ抱っこして」 ○「それならいいよ」 慧「わーい!」 421 :名前が無い程度の能力:2007/07/11(水) 09 46 54 ID pUWIVUG6O 412に続いてみる 新月の夜 慧「ねー◯◯!◯◯!」 ◯「おぅ、どうした慧音。」 慧「けっこん、てなーに?」 ◯「んーそうだな。愛し合う二人がずーっと一緒にいること、かな。」 慧「そうなんだ!じゃーわたしも◯◯とけっこんするー!」 ◯「それはうれしいな。慧音、俺の嫁さんになってくれるかい?」 慧「うん!」 そして次の日 慧「ま、◯◯!あのな、昨日言っていたことはな、なんというか幼体での無垢な願望というか日頃心に留めているというか 私も白無垢着てみたいなーとかそういうものではなくてだな、言葉のあや…ではなくて いやお前と結婚するのがイヤな訳ではない!」 ◯「ときに落ち着け慧音(ニヤニヤ)」←確信犯 そんなやり取りが月一でやっとるそうな 8スレ目 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「なぁ慧音、ホッケーマスクの殺人鬼知ってるよな?この間教えたもんな」 「それがどうした○○、確かに今日は13日の金曜日だが幻想郷にあんな妖怪はいないぞ」 「いや、適役は目の前に、後はマチェットとホッケーマスクで完璧」 ごすっ! 「額が!額が割れた!!」 「デリカシーが無い奴、だからもてないんだ」 「いいジャマイカ!せっかく13日なんだぞ!?不吉なんだぞ!?」 「いやいや、それは喜ぶべき事じゃ無い」 「・・・仕方ない、殺人鬼に追っかけまわされるよりベットでギシアンしてるカップルのほうがいいな」 「ぎしあん?なんだそれは?」 「気にするな、覚えなくて言い単語だ、ほんとにやるとほんとに出そうだな」 「?さっきからわけのわからないことばかり」 「慧音!俺とギシアン、じゃ無かった、不吉な夜のデートをしよう!」 「で、デート!?私と○○で?夜の人気の無い森へ?」 「うむ、山のほうに行って月でも眺めようか」 「結構冷えるな、もう一枚羽織ってくればよかった」 「だから言ったろ?ほら、これ着とけよ」 そう言って○○は慧音に自分の上着を着せる 「す、すまない・・・暖かいな」 思った以上に明るい、夜だが妖怪の気配も無い 「・・・こんな暗がりに連れ込んでどうするつもりだ?」 「どうした慧音、襲って欲しいか?」 「ば、ばか!そんなことは・・・そんなことは」 「襲っちまうぞ~」 「そ、そこまで言うなら・・・私は」 そう言って慧音は頬を赤らめつつ服を脱g 8スレ目 475 ─────────────────────────────────────────────────────────── 慧「なあ○○、ちょっと聞きたいことがあるんだがいいか?」 ○「聞きたい事ってなぁに?けーねーちゃん?」 慧「その・・・だな、妹紅と私どっちが好きだ?」 ○「んー、もこたん!」 慧「っ!?・・・なんでだ?」 ○「お菓子くれるからー!」 慧「そうかではもう一度聞こうか 妹紅と私どっちが好きだ?」←お菓子をあげつつ ○「けーねーちゃん!」 慧「そうかもっとお菓子をあげよう」 ○「わーい♪けーねーちゃん大好きー!」 ~その夜~ 妹「ねえ慧音」 慧「ん?なんだ妹紅」 妹「昼間の見てたんだけどさ、情けなくない?お菓子で釣るなんて」 慧「も、妹紅もやってるだろう!?」 妹「私は下心ないし」 慧「むぅ・・・分かってる、みなまで言うな でも!それでも!○○に大好きと呼ばれたいんだ!!」 妹(・・・今度永遠亭にでも連れて行こうかな) 8スレ目 525 ─────────────────────────────────────────────────────────── いつもどおりの午後、そろそろ日も暮れてきて そろそろ慧音のところに夕飯をたかりに行こうとしていた時 その闖入者は現れた 「うぉわ~~~~~!」 ドカドカーーーン!!! 「どうした!?○○」 この間約3秒、その3秒の間に 俺が悲鳴あげる ↓ 慧音が悲鳴を聞きつける ↓ 壁吹っ飛ぶ ↓ 慧音登場 という事態が起きた 「どうしたんだ!?○○」 驚いていて言葉を失っている俺にもう一度聞いてきた 「……あ、ああ、ちょっと驚いただけだ」 「そうか?あの悲鳴は尋常じゃなかったが…」 「まぁ、どちらかというと今の慧音の登場に驚いたんだが……」 いくら隣に住んでるからって壁ぶっ壊して飛んでくるとは思わなかった 「お前が何か困ったら助けてやると、前に言っただろう?」 と自慢げに言った 「確かにそんなことを言ってたな」 俺は幻想郷に来たときに慧音に助けられてから慧音の家に 居候させてもらっていたが、ある事情から隣に自分の家を作り 住むことになった、そのときに慧音は反対したのだが結局は俺の意見を尊重してくれた その時に 『何か困ったことがあったらすぐに呼ぶこと』 と言う条件を出していた。 まぁこんな風に壁ぶち抜いて登場するとは思ってもみなかったが 「で、結局何があったんだ?」 「ああ、そいつだ」 そう言いながら俺は壁に張り付いている奴を指差した 「そいつってこのムカデか?」 「……そうだ」 「○○は虫が苦手だったか?」 「いや基本的には大丈夫なんだが、ムカデだけはちょっとな……」 子供の頃に刺されてから軽くトラウマだ 「そうか、まぁなんにせよ、お前に別状がなくてよかった」 慧音は壁にあいた穴にムカデを追い出しながら言った 「しかしな慧音、壁をぶち壊すのはどうかと思うぞ」 「し、しかたないだろう……○○の悲鳴が聞こえた時には もう飛び出してしまっていたんだから」 「それでお前の家の壁も俺の家の壁もぶち抜いて来たと」 「そ、そうだ」 まぁ俺が悲鳴挙げたのは事実だしな 「とりあえず、ありがとな慧音」 「あ、ああどういたしまして」 「だけど次からは玄関から入ってくれ」 「……わかった」 「とにかく壁をふさぐぞ、このままじゃ風邪を引くし、ムカデがまた入ってきても困る」 「ああ、そうだな」 そしてとりあえず応急処置として壁をふさごうとしたのが 「なぁ○○」 「何だ?」 「この穴そのままにしておかないか?そうすればすぐにこっちにこれるし」 「却下だ」 「ならもういっそのこと渡り廊下のようにしてだな……」 「却下」 「……」 その後なぜか機嫌の悪くなった慧音に夕食を作ってもらうのに 二時間かかってしまった 8スレ目 545 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「というわけで妹紅からのラブレターを渡してきたんだ」 「ふーーん、●●も苦労するな」 あの二人は顔合わせると喧嘩してしまうみたいだしな 「まあ、今回一緒に祭りに行く事でうまくいけばいいんだが」 「大丈夫だろ?あいつらなんだかんだで両想いだと思うし」 「確かにな、全く早く素直になればいいものを」 「……慧音が言うのかそれを」 「わ、私はいつも素直だぞ」 「ほう、そうかそうか」 「な、なんだその言い方は」 俺は鞄の中から一冊の本を取り出した 「何だそれは?」 「これはだな、俺の日記帳だ」 「は?」 「俺は物忘れしやすいからな、結構細かく書いてるんだ、コレ」 「ほ、ほうそうなのか」 明らかに動揺している 「コレによるとだな、慧音が結構素直じゃなかったことが書かれてるんだ」 「……」 「例えばだな、俺が妹紅やらチルノやらの相手してて不機嫌だった時に 素直にどこかに連れて行け言えなかった事とか」 「あ、あれはだな」 「例えばチルノについたご飯粒取ってやったときに自分も取ってほしくて わざとご飯粒くっつけてたこととか」 「……気づいてたのか?」 「いや気づくだろ、あんだけ大量にくっつけてれば」 「なら取ってくれても良かったじゃないか!」 「いやどんだけ増えてくか気になってな」 確か最終的にはかなりの量になってたな、まぁスルーしたが 「…○○、お前というやつは」 慧音が非難の目を向けてくるがかまわず続ける 「その日は確か夜になって膝に……」 「ちょっと待て、分かったからもうやめろ!」 さすがに聞いてられなくなったのか慧音が俺の口をふさごうとした 俺はそのまま慧音の背中に手を回して目をまっすぐに見て言った 「じゃあ、今日は素直になってもらおうかな?」 「な、何!?」 「さっきの手紙の話を俺にしたことから推測して、何か言いたいことがあるんだろ?」 何が言いたいのか俺は大体分かっていたがあえて問いただした 「…っ!」 「慧音は素直なんだろ?」 そう俺が言うと慧音は顔を真っ赤にしながら 「……×月×日の夏祭り一緒に行こう」 と小さな声で言った 「了解した、金魚すくいでも射的でも何でも付き合うぞ」 俺がそう答えると慧音はうれしそうに頷いた 8スレ目 567 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「あーマジで冷たくて気持ちいい」 「ちゃんと約束は守ってよ」 七夕も終わりだんだんと夏が本気を出してきた今日この頃 俺はあまりの暑さにチルノを捕まえてきて縁側にいた 今度また遊びに付き合うということで涼をとらせてもらっていた 「わかってるって、蛙の沼でも湖でも付き合うよ」 実際この季節にチルノと行動を共にするのはこっちからお願いしたい まぁ冬はマジで死にかけるが 「あとまたアレ持ってきてよ」 「アレってこの前の弁当か?」 「そう!」 「ああ、それなら慧音に頼まないと無理だ」 「じゃあ、頼んでよ」 「頼んでみるけど、保障はできないな」 「え~~!?」 「まぁ無理な時は俺が作ってやるよ」 「○○が!?」 チルノがすごく意外な顔をした 「自炊してたし結構料理は得意だぞ、まぁ今は慧音が作ってくれるし めんどくさいからやらんがな」 「ふ~ん」 「あーーっと、これは慧音には言うなよ、なら食事を作るの手伝えって なっちまうからな」 そんな風に冗談めかして言うと 「そうだな、今度からは○○に食事を作ってもらおう」 部屋の中からすごく聞き覚えのある声が聞こえた 俺は振り向かずに、いや振り向けずに 「あ~~慧音、帰ってたのか?」 「ああついさっきな、全くお前というやつは……」 「あははは……」 「○○、明日から一週間は食事当番だ」 「うわ、まじか?」 「もちろんだ」 「……はぁ、めんどくせぇな」 「なんか言ったか?」 「なんも言ってないぜ?」 「何で疑問系なんだ……」 はぁ、なんかすげぇ墓穴掘ったな、なんかまた暑くなってきた気がする 「なぁチルノ?」 「なに?」 「ちょっと失礼」 そう言ってチルノを持ち上げて膝に乗っける 「わ!?」 「ああ、やっぱこうしたほうが涼しいな」 「な、○○何やってるんだ!?」 慧音があわてたような声を出す 「ん?こっちのほうが涼しいぞ」 「そ、そうじゃなくてだな」 「別にチルノも構わないだろ?」 「ん、別にいいよ。びっくりしたけど」 「だってさ」 「うぅ~……」 なんか納得いかないことでもあるのか慧音は不満げの顔をする 「どうしたよ?」 「なんでもない…」 ここで俺はなんとなく何が不満なのか気づいた 「ああ、そういうことか!」 「っ!」 俺がそういうと何故か慧音は紅くなった 「慧音も涼みたいんだろ?」 「は?」 「ほらほら、遠慮するな」 そう言って俺は慧音を縁側に手招きする 「お前は鋭いんだか、鈍いんだか……」 「は?」 「いやもういい、じゃあ遠慮しないぞ」 と、なんか引っかかるようなことを言いながらこっちに来る 「あの~慧音さん?」 「何だ?」 「何で慧音さんまで膝に座りやがるデスか?」 「遠慮しなくていいんだろ?」 「そうは言ったがな、しかし……」 「……だめか?」 そんなことを言いながらこっちを上目遣いに見てきた この時点で 「……だめじゃねえよ」 と答えるしか俺には選択肢はなかった その日はなんかチルノが近くにいるのに物凄い暑い日だった 8スレ目 579 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「今帰ったぞ。…聞いてくれ○○、この暑さのせいなのか皆少しおかしいんだ。 なにが、とは言わないが……○○? いないのか…?」 「……………………」←床に突っ伏してる 「○○…っ! おい、返事をしろ○○! ……くそっ、熱中症か!?」 「……………………」←面白そうなので無視を決め込む 「永淋に連絡して……いや、それよりも身体を冷やす方が先か……!」 「……………………(汗」←ちょっと展開がおかしいぞ 「ええと、熱中症のときは服を脱がせて腋の下を冷やすんだったな」 「……………………(汗(汗」←やばい、やばいぞ。何かがやばいっ! 「……ちょっと待て……。ここのよりも風呂場のほうが冷たいんじゃないか……?」 「……………………(汗(汗(汗」←何でそんな展開になるっ! 「うん、よし。○○……私が助けるからな…………」←○○を担いで風呂場へ入ってゆく 「……………………(汗(汗(汗(汗」←誰かー! たーすーけーてー! 「あーーーーーーーーーーーーー!!!!」 その数分後、○○の悲鳴が夏の空に飲み込まれていったそうな。 「ったく、悪ふざけが過ぎる!」 それを聞きながら慧音氏は濡れた服を着替えたそうな。 8スレ目 629 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○どの~ご在宅か~?」 響く声、一人の少女が家の中に呼びかける、返事はない 「鍵もあいているじゃ無いか・・・もしかして裏か」 勝手に家に上がる、しかし靴は持っていくらしい 家の中を真っ直ぐ進むと裏口、其処で靴を履き、扉を開けた 「ん?ああ、先生でしたか」 「やはり裏にいたか、探したぞ、数分」 「ははは、すいません」 桶、のようなものを洗う男、どうやらこの家の主のようだ 「何か掃除か?」 「ええ、こいつらの家ですよ」 そう言って男が指差したのは色とりどりの綺麗な、金魚 「おお、あんなに黒かったのにずいぶん綺麗になったものだな」 「今年は色変わりが早かったですから、もう完全に色が変わってますよ」 「・・・綺麗だな」 「ありがとうございます・・・その子達も喜ぶでしょう」 掃除を終えたのか桶を壁に立てかけ、群れた手を拭いた 「それで・・・今日は何か用ですか?」 「い、いや、金魚たちがどうなったか気になって・・・身に来ただけ・・・だ」 男は嬉しそうに笑った、少女も、笑った 「ん?この金魚背びれがないぞ?顔も何か違う?」 「ああ、それはランチュウといって・・・・・・」 それから男の金魚話が続いた、長くなったのでカットカット 「なるほど・・・そうなのか、じゃあこの種類は・・・」 金魚の勉強、変な話だが彼女にとってこの話は面白いらしい 何処で生まれ、どうやって改良され、そしてこれからは ぶっちゃけ染色体がどうの色素変異がどうのってのは全然わからないが、先生はそっちの方が詳しいみたいだ 「先生、日が暮れてしまいます」 夕焼けに染まる風景、全て等しくなるように、暗闇の前触れに 「ああ・・・その・・・また来ても良いかな」 「はい、先生が来るのを心待ちにしています」 「そ、そういうのじゃなくて!き、金魚に、金魚に会いに!金魚を見に来るんだぞ?」 「ふふ、そういうことにしておきます」 「だ、だからだな、そういうのじゃなくて!」 夕焼けは短い、故に美しいのだろう 彼女と話す時間は夕焼けのように短いかもしれない、でも 「お、綺麗だねぇ」 夕焼けの中、金魚だけは自らの色を持ったまま、輝いていた 9スレ目 493 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「おや、○○」 「ありゃ、慧音さん」 甘味処で、ばったりと彼と遭遇してしまった 「こんなところで会うとは奇遇だな」 「そうですね、先生が餡蜜を食べるのは驚きですよ」 「何を言う、私とて一応女子だぞ、甘味を欲するときもある」 私が甘いものを食べるのは以外、か・・・正直あまり嬉しくはないな 私だって甘いものは好きだ、妹紅は「慧音は甘いもの喰っても胸にいくからいいよね」なんて言うが・・・ 「俺は授業してる先生も餡蜜食べてる先生も可愛いと思いますよ」 「!げほげほ、そ、そういう冗談は止めてくれ」 いきなりへんなことを言うものだから粒餡の粒が気道に入ったじゃないか だいたい以前から何かとつけて可愛いとか綺麗とか、心にも無いお世辞ばかり 私はそんなによい女ではない、それは自分が一番解っている 「冗談じゃ無いのになぁ・・・お、餡蜜」 私の餡蜜のすぐ後に彼のものも運ばれてくる 私は彼の戯言を聞き流してしらたまを食べた、幽霊に似ていると思った そういえばあの娘の傍らの幽霊もなかなかどうして美味そうだな・・・ 「あ、美味し・・・」 なかなかいい餡子を使ってあるな、やはりあんこは粒餡だな、皮の風味と触感が・・・ にやにやとこちらを覗く○○が目に入った 「・・・なんだ?にやにやして」 「いや、慧音さんが凄く幸せそうにしてるから、女の子らしいなぁ、なんて思ってました」 「なっ!そ、そういうことは・・・なあ○○、私も一応女だ、そんな事ばかり言われるとその・・・勘違いや期待をしてしまう」 「いや・・・はぁ、鈍いにも程がありますよ、それとも俺はそんなに軽薄に見えますか?」 互いに全然食べれていない、私も彼も半分ほどで止まってしまっている いつの間にか話すほうが主になって 「先生、右向いて」 「え?あ、うん」 いきなり右を向いてと言う指示、意図は解らないがとりあえず従ってみた 「えい」 頬に柔らかい感触、すぐに解った だって彼の顔がこんなにも近くにあるのだから 「な、な、ななななな」 机をこえて、私の頬にその・・・ちゅうを 「・・・流石にいきなり唇はだめかなぁと思って」 「(いきなりの出来事に処理落ち)」 「慧音さん、俺の気持ちわかってくれますか?」 「い、いや、解らない・・・ちゃんとこっちに」 自分でも何を言ってるかわからない、ただ客観的に暴走してるなぁなんて思っていた 「んっ、んーぷぁっ」 「・・・慧音さんの唇・・・餡子の味がしますよ」 「はは、それは君のも同じだ」 「・・・時に先生、時と場所と時間、さて、ここは何処でしょう」 「え・・・アッー!」 ほとんどの客が私たちを見ていた そんなことにも気付かないほど油断、いや、彼ばかり見ていたということか 「~ッ!」 「慧音ッ!」 恥ずかしすぎる 席を立って店の外に逃げ出そうとしたのだが、彼に手をつかまれ、阻まれた 「まだ餡蜜が残っています、もったいないです」 「え、あ・・・そ、そうだな」 他の客の視線とざわざわという話し声 店を出るまで恥ずかしくて顔から火が出そうだった 「慧音・・・俺は帰るけど・・・ええと・・・また明日」 「あ、ああ・・・ま、また明日!」 帰路に着く彼を見送って、私も帰ることにした 帰ったら妹紅に冷やかされるだろう、私の頬は自分で解るぐらいに緩みっぱなしだ また明日、この一言がこんなにも嬉しいとは思わなかった、きっと私は有頂天と言う奴なんだ 「あ、さっき餡蜜屋で・・・」 小さい声だったがしっかりと聞こえた、聞こえた私は思い出して悶えた ・・・狭い世界だ、そういうこともあるさ・・・きっと噂が広まるのは早いだろうなぁ・・・天狗が好きそうなネタだなぁ しかしあの恥ずかしい出来事を消してしまいたいとは思わなかった、だって恥ずかしい以上に嬉しくて素敵な出来事もあったのだから 11スレ目 336 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/orz1414/pages/391.html
神無月も半ば。 壺中の天地、幻想郷に迷い込んでから丁度季節が一巡した。 そろそろ一着だけ持っている厚めの上着が恋しくなって、早めの昼食を済ませた後家に一棹だけある箪笥をひっくり返す。 しかし出てくるのは夏に着たなりの薄着やら、外へ出向く用のしゃんとしたしわの無い和服。 終いには下だけしかない学生服が出てきた。 何処へしまいこんだか、どうやら脳味噌がありかを勝手に消し飛ばしたらしい。 「おい○○、居るか」 今年は諦めようかとそこらに放りっぱなしの服を畳み始めた時、戸を引いた音と共に朝にも聞いた声が玄関先から居間へ届いてきた。 声の元へ向かうと少しへんちくりんな帽子を被っていて銀髪、地は藍色で、胸元には赤いリボンが結ばれた服を着た女性が立っている。 「あれ、慧音さん。何か用ですか?」 「今朝ちょっと言い忘れた事があってな……」 今朝に何か言い忘れたこの人。……正確には人というか、半獣。 名前は上白沢 慧音と言って何かとよくしてもらっており、頭が上がらない。 特に自分が里でも隅の方にあるこの空き家に住めるよう都合を合わせてくれたことには、感謝してもし足りない。 その恩もあって今は時々慧音さんが教鞭を執る寺子屋の手伝いをさせてもらっている。 「今日はまた人手が欲しくてな、もし手が空いているなら……」 「わかりました、準備もありますから先に寺子屋の方に戻っていてください」 「あー、私も手伝おうか? ○○」 少し脇を見てから心配そうに慧音さんが眼鏡をかけている自分の顔を覗きこんだ。 凛々しい顔と澄んだ瞳がとても魅力的で、もう何度も会っているのに未だ緊張する。 「いえ、それよりそろそろ子供達も来る時間でしょうし」 「……そうか、じゃあなるべく早く来てくれ」 慧音さんが玄関から出たのを見送った後、さて身支度と洗面所で色々整えて居間に戻る。 そして無造作に放りだされたままの惨状を見てから、覗き込まれた意味を履き違えた自分が少し恥ずかしくなった。 「すみません、慧音さん」 「いや、もう過ぎたことだ」 とぼとぼ帰路につく慧音さんの顔はいつもの凛々しい表情に戻っていた。 帰り道があまり変わらない自分と慧音さんは、他愛も無いことを話しながら途中で分かれて…… というのが手伝いのあった日の常であり、今は楽しみでもある。 「まったく、マセた子の扱いには困る」 「たまにいるんですよねぇ。あることないことばかり言う子」 「○○もへらへらと笑っていないで否定してくれ、あれではまるで……」 「すみません、口下手なもので」 ――事は一刻ほど前に遡る。 慧音さんが期限を明後日に設けた宿題を三枚ほど出したときだったか。 自分の下に一人の生徒さんがやって来て「慧音先生と仲がいいなら説得して宿題を減らして欲しい」と懇願してきたのだ。 当然それは出来ないと言ったし、慧音さんも自分の為にならないと強く否定した。 しかしどうやらその生徒さんは昼頃に慧音さんが自分の家に来ていたのを見ていたらしい。 「あれってつまり、そういう関係ってことじゃん!!」と教室の他の子全員に言いふらしてしまったのだ。 慧音さんの顔を真っ赤にした必死の弁解も糠に釘で、結局生徒さん全員を帰らせるまでに宿題が二枚に、という事態にまで陥り―― いつの間にか目前に慧音さんの家が迫ってきていた。 一層冷たい風が庭先の立派なイヌマキの木や自分の背中を押すと急に鳥肌が立ってきて、まだ片付けていない服のことが思い出される。 「じゃあ、僕はこれで。また何かあったら」 「ああ、また……あ、その、待ってくれ」 何ですか、と慧音さんの方を振り返るとまた顔が赤色に戻っていた。 「今晩はその、寒いし、一緒に、鍋でも食べないか?」 俯き加減の林檎顔で自分にそう言ってきた慧音さんがいつもとは違う。 可愛いかかっこいいか、と言われると理知的でクールというイメージを慧音さんに対して常に持っていた。 が、この慧音さんには可憐とかそういう言葉の響きがよく似合っている。 嫌か、とさらに追い討ちをかけてきたが、もちろんふいになどするはずも無く。 「じゃあ、まだ家の片づけが残っているんで、それが済んだら」 「やはり手伝ったほうがいいか? アレ」 「いえ、服ぐらいで慧音さんの手を煩わせるわけには。それに夕食の準備もあるでしょうから」 別れ際の一瞬、視界にこちらを見て穏やかな笑みを浮かべる慧音さんが映りこんだ。 ようやく服を全て箪笥にしまいこみ、ついでにと掃除も終わらせた頃には逢魔が時を少し過ぎていた。 帰り道の誘いに乗っていた自分は慧音さんの家にあがらせてもらい、食卓のある部屋へと連れられる。 すでに卓の中心には鍋、その横に茶碗と小さな器がそれぞれ二つ、箸が二膳。そしてポン酢。 鍋の中には骨のついた鶏肉、キャベツ、シメジ、エノキ、星型に切られた人参が少々……と、今宵は水炊きらしい。 「遅かったな。もう冷めてしまいそうだぞ」 「すみません。あ、これ少ないですけど、具に付け足してください」 「悪いな、気を使わせてもらって……○○も大変だろう?」 「でも、食べさせて貰うだけっていうのは何だか気が進まなくて」 「律儀だな、○○は」 「慧音さん……」 一瞬変な間が開いたが、自分の腹に潜む虫の催促の音がそれを閉じてしまった。 さあ座ってくれ、と微笑みながら慧音さんは自分の背中を押し、自分とは九十度の間隔を取り、敷いていた座布団に座る。 慧音さんが手を合わせたのを合図に自分も手を合わせ…… 「「いただきます」」 後片付けの手伝いをした後、久しぶりの満腹に眠気が起きだしたのか。 気づいたころには庭先からの月明かりだけが部屋を照らし、自分は円卓に突っ伏していた。 背中の外側には厚めの毛布、内側には探していたあの上着が乗っかっている。 ふと縁側を見やると藍色の服と銀髪が淡い光に照らし出された後姿が座っていた。 文学とかいった物にはほとほと縁の無い自分では、陳腐な言葉しか浮かばないのがもどかしい。 「慧音……さん?」 「ああ、起きたか」 「どうやら眠っていたみたいで……」 「あんまり熟睡していたようだから、起こすのは気が引けてな」 慧音さんに振り向かれたまま右手でぽんとこちらに来るよう促されたので、誘われるようにして腰を下ろした。 そのまましばらく互いに一言も交わさずただじっと青暗い空に見ていて、そのまま動かない。 あのイヌマキの枝々の間から明け透けにこちらを覗き込む立待月を、自分もまた覗きかえした。 西への傾き加減から見て、おおよそ今の時刻は丑三つ時から大体半刻過ぎたくらいだろうか。 「綺麗、ですね。ここの星は」 「向こうはそうでもないのか」 「自分の元いたところは街の近くで、夜も昼も関係無しですよ。 その街明かり自体を楽しむ、という趣向まであるくらいですから。『百万ドルの夜景』とか」 慧音さんはこちら側に顔を少し傾けたまま、黙って自分の話を聞いていた。 「だから、こんなにもはっきり星が見えるなんて……」 「意外に○○はロマンチストなんだな。あまりそういう顔には見えないが」 「はあ、顔に似合わないですみません」 「冗談だ、冗談」 見るには外の世界でも苦にならない冬の三角形やオリオン座はもちろんのこと、冬の六角形や一角獣座もそうだ。 どの星座も外とは比べものにならない程はっきりと見えて、改めて本来の夜暗というものを感じれる。 また、縁側に寝そべりながら眺めるとその他多数の名も無き星が、夜空の輝かしさをより一層盛り立てているのもわかる。 「慧音さんはまだ寝ないんですか」 「ん、ちょっと寝つけなくてな。それに明日、寺子屋は……いや、今日はないからな」 薄れ行く意識の中、その後の慧音さんの言葉には生返事だけをずっと繰り返した。 最初に感じたのは、妙な暖かさ。 特に顔の左半分がそうで、それと一緒に弾力性のあるどこか懐かしい感触が頭を支えているらしかった。 反対に右半分には……手? 「起きたか」 母性を感じさせるような柔らかい声が真上から落とされて、一瞬で自分の置かれた状況を把握した。 「あの、慧音さ」 「いい。そのままじっとしていろ」 慧音さんの小さくしなやかな右手が頬を撫でる。 時々手を翻して甲で撫でたり、髪の毛を指で梳いたりとまるで人形の様に扱われている感がある。 ……心地良いことには、変わりないのだが。 ふと探していた上着が何故この家にあったのか、という疑問が浮かんだのと同時に慧音さんが口を開いた。 「○○、あの服を探していたんじゃないのか?」 「……どうしてそれを?」 「お前が私の家に二度目に来た時だったか、『お願いします』と言って私に預けただろう。もう忘れたのか」 ああ、そうだった。 慧音さんが偶然上着のほつれを見つけて、直したら返してやると言っていたのを。 自分はあまり気にしなかったのでどうでもよかったのだが、慧音さんがみっともないと言って聞かなかったのを覚えている。 もう半年くらい前の話だろうか……。 「でも直したら返してやるって言っていましたよね。そんなに時間がかかったんですか」 「別に直すのに時間がかかったわけでは……」 慧音さんも忘れていたでしょ、と出任せのつもりが、無言で頬を抓り上げられた。痛い。 「なあ、○○」 なんですか…… 「これからも、寺子屋を手伝ってくれるか」 へぁ…… 「これからも、晩飯を食べに来ないか」 うぃ…… 「……一緒に、ならないか」 はぃ……って 「えええぇぇぇっ!?」 「お前、今まで真面目答えていなかっただろう」と今度はこちらが隙を突かれ、一気に覚醒状態へと引き戻されて跳ね起きた。 それは、そういう意味ですか、と聞くに右手で紅葉でもくれるかと思ったが、例の林檎顔の額で鼻がさいた。色は言わずもがな。 それでは本来的な意味ですか、と聞くに一人者でいるよりも私と一緒では駄目か、と問いを問いで返されて……。 自分には、最初から迷う術がなかった。 「○○せんせい、さようならー」 「今日の宿題は忘れずにね」 「はぁーい」 今日の寺子屋は誰一人寝ずに終え、慧音さんも満足顔が隠しきれていなかった。 だが手伝いに来ているだけで、今でも自分のような者が先生と呼ばれるのは釈然としない。 これならもっとまともに勉強して……いや、それならこの世界には来ていないし、慧音さんとも……か。 生徒さん達を見送ってから教室に戻ると、入ってすぐ右手の机の下に一枚だけ墨のついた紙が落ちていた。 大きさや内容からして多分一昨日に出した宿題だろう。 子供ながらなかなか達者な字で、答えもすべて合っている。 「慧音さん、コレ、誰かが落としたままでしたよ」 「ああ、一枚だけ見つからないと思ったら……。ありがとう」 奥の部屋の机に座っていた慧音さんの横には、すでに採点済みの用紙が置かれてあった。 渡した紙を見てから「これは採点の必要がないな」と聞こえたので、まあ、当たり前だろうと納得していた。 だが気づいたときには大きなバッテンが書かれ、達者な字は見る影もない。 「ちょ、これ全部正解ですよ!?」 「よく見ろ、○○」 慧音さんの指が指し示すところには……何もなく。 はてと思って他の子がやってきた宿題と見比べると、同じ場所には見覚えのある三、四文字程度の字の羅列。 ああ、これは駄目だな。 自分にもその経験があって笑うに笑えない。 「こういうものは、ちゃんと書かないとな」 「そうですね」 「ところで婚姻届の準備はしたか? まあこっちにもあるから、何時でもいいが」 「ええ…… え?」 慧音さんに意味を問いただすよりも早く口を塞がれてしまった。 左手で腰を、右手で後頭部を、そして口で口を捕らえられた自分には何もできず。 客観的には数秒くらいかもしれないが、自分にはいくら経ったのかわからなかった。 「……っはぁ、こっちの準備も、できていなかったみたいだな? ○○」 「……いきなり、過ぎますよ」 「嫌、だったか」 「嫌なわけ、ないです」 自然と両手が慧音さんの両肩に置かれ、すべてを感情に任せようと力を加えた。 その刹那、人生二度目の衝撃を今度は顎にもらい、暫し悶絶。 今はここまでだ、と慧音さんの要望で婚姻するまでは決して交わらないと約束した。 「……しかし、結婚してからは大変だろうな」 「はい? それはどういう」 「……『律義者の子沢山』という言葉があってだな」 「…………け、慧音さん!」 この後、契りを結ぶまで散々生徒さんからの執拗なからかいを受けたのは言うに及ばない―― うpろだ1450 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「けーねせんせー」 「ん?なんだ?」 「けーねせんせーってけっこんしないのー?」 「な!?…な、何を言い出すんだいきなり…」 「だってけーねせんせーびじんだしおかしいよ」 「うーむ、それはだなぁ…まぁ色々とあってな…」 …………………………………………………………………………………………… 「慧音先生、歴史教えてください!」 「よーし、じゃあ歴史の全てを教えてやろう!」 「やったー!」 「…と、こういうわけで反乱が起きて…」 「せんせー? もう習った範囲は終わったよ…?」 「おっと、済まない」(つい熱中してしまった…) 「先生、歴史と関係無い質問しても良いですか?」 「おおう…? なんだ?」 「先生ってどんな男の人が好きー?」 「…!? 何の脈絡もなしに…」 「どんな人ー?」 「そ、そうだな…ありきたりな答えだが、優しい人、とか…」 「優しい人?」 「ま、まぁ今咄嗟に思いつくのはそのくらいだな…」 「わかったー!じゃあ僕、優しい人になる!」 「…へ?」 「それで将来、先生のお婿さんになるー! 先生を幸せにしてあげるんだー!」 「…そうか…まぁ優しい人になりたいって事は良い事だな…」 「先生、顔真っ赤だよ?」 「そ、そういう事は指摘するなっ!」 ―――それから10年後――― 「お、慧音…久しぶりだな…」 「ああ、○○か…また随分と見ない内に大きくなったなぁ、私よりも背が高いじゃないか」 「ま、それだけ時が経ったって事だな… しかし慧音、お前は相変わらず…何というか…綺麗、だな…可愛いし」 「むぅ…いきなりそんなこと言われても困るぞ…///」 「いや、やっぱり慧音は何か魅力的だ…何故か惹き付けられる… あの頃からそうだ…変わらないな…」 「変わってないと言われるのもなんだか複雑だ…」 (もし俺なんかと一緒になっちまったら…俺は…)なでなで 「な、なでられるような年じゃないぞもう…」 「そう言ってるお前が本当に可愛い」ぎゅーっ 「って抱きつくな! …ったく、仕方無いな…」 「見た感じ慧音の反応は面白い」ぐりぐり 「だ、だからやめるんだ…」 「どんな人と一緒になるんだろう、気がかりだ…」 「私は別に…」 (しかし人間である俺は慧音よりもかなり早くに死んでしまう。 愛する人を残したまま死ぬのも、愛する人を先に失うのもつらい… 何故人間の神はこんなにも非情なのだろうか…お陰で慧音に告白しづらいんだよなぁ…) 「ん?どうかしたのか…?」 「…慧音、もし俺が…慧音の事、好きだって言ったら…どうする…?」 「…わかってる、昔からそんな事言ってたのをしっかり覚えているぞ……先生として私も好きだ」 「…だよな、例え俺が本気で愛しt…いや、やめておこう…これで良いんだ… あの頃に比べて俺は大人になった。大人になってしまったからこそ、気づいてしまったのさ… いずれ俺が先に死んでしまって、愛する人を悲しませてしまうのなら…いっそこのままで… …っと、どうやら帰りの乗り物が来たようだ。…じゃあな……まら、会えたら…… …はぁ、何でもない、ぜ…」 (くそ…こんなにも胸が苦しくて辛いのに、成す術がない… でもこれで良かったんだ、これが最善の策なんだ…これで、俺は…) 「あ、ああ…さようなら…またいつか会えるぞ、私はいつでも待ってるぞー」 「…なんで私はあんな事を言ってしまったのだろうか どうして私は… ……また、会えるよな… その時は… …私は待ってるからな、○○…」 しかし○○が慧音のもとを訪れる事はもうなかった。 慧音が○○を捜しに行っても、もうどこにもいなかった。 …………………………………………………………………………………………… 「…という夢を見たんだ、霊夢」 「そう…」 「これは一体なんだろうな、わかるか? 霊夢」 「うーん…もしかしたら、誰かの歩んだ人生なのかも…」 「誰かの歩んだ人生…? まさか前世…とかな」 「かもしれないわね」 「………」 「………」 「…行って来る」 「…お幸せにね」 俺は人里へ辿り着いた。 ある人物――性格に言うと人ではないが――を捜す為に。 そして見つけた、途端に心臓が激しく脈打った。 「はぁ…最近の子供は一体何を考えているんだ…」 向こうはまだこちらに気づいてない。 全身が、早くしろ、早く声をかけろ、と、訴えかけてくる。 「…昔を、思い出したな…」 過呼吸になりそうで、死にそうだ。 俺は、深呼吸をして少し落ち着かせてから慧音に話しかけ… 「あ…」 慧音は俺が話しかける前にこちらに気づいた。 しばらく流れる沈黙…俺の口が自然と動いた。 「久しぶりだな、慧音」 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 慧音はいきなり泣き出した。 俺はあわててかけより、慧音を支える。 「ちょ、慧音!? 大丈夫か…?」 「う…ひっぐ……だ、だいじょうぶじゃない…」 「参ったな…どうしようか…」 「ち、違う!悲しいんじゃないぞ…う、嬉しいんだ…!」 「な…に…?」 「待ってた、ずっと待ってたぞ…!」 ―――そうか。 あの夢は本物だ。 俺はつらくて二度と慧音と顔をあわせられなかった。 だから慧音を訪ねる事はできなかった。 しかし、今度は逆に慧音が訪ねてきた。 俺はほぼ反射的に、身を隠して、逃げたんだ。失踪したんだ。 ――後悔、したんだ。だからあの夢は俺に知らせてくれた。 次はそんな事ないように、と。 今俺の腕の中にある、暖かくて、簡単に壊れてしまいそうな柔らかい身体は寂しさにずっと耐えてきたんだ。 濃い焦がれた相手がいなくなる、という事を、もう慧音は経験したんだ。 俺が幸せにしてやらなくてどうする、今度はずっと一緒にいてやるんだ。 この身が、朽ちるまでな。 慧音が身をすり寄せながら耳元で呟いてきた。 「会いたかったぞっ…!」 ―――――fin. うpろだ1451 ─────────────────────────────────────────────────────────── 時はバレンタイン。 外界では企業戦略の賜物として広まっているイベントなのだが いつのまにやら幻想郷にも浸透しきっていた。 おそらく原因は言うまでもなく、スキマの妖怪だったり、ブン屋の鴉だったり 最近幻想郷にやってきた者達の手によるものだろう。 「おうおう、お熱いこって……ケッ」 里に広がるラブラブいちゃいちゃなムードに辟易しながら、 俺は店の前で箒を履いていた。 営業スマイルを浮かべていたのも、ものの数時間だったわけで、 独り身にとっては今日という日の空気はとても痛いのだった。 「だーっ、止めだ止め。今日は店じまい!」 自棄糞気味に独り言をのたまうと、まだ昼日中だというにも関わらず、俺は自分の店を閉めた。 無駄に器用といわれた手先を生かして小間物屋を開いているわけだが、 どいつもこいつもやってくる客は皆カップルなのである。 あれが似合うよ、これはどうか、ちょっと派手すぎる、等々、 甘々な空間を延々と見せ付けられるのはある種の拷問に等しい。 「……はぁ」 表口に閉店の看板を立てかけたあたりで、盛大にため息をついた。 こんな俺にだって好きな人くらい、一応いるのだ。 ただ、まず振り向いてもらえる事は無いと諦めてはいるのだが。 通りで出会って、少し世間話をして、笑顔が見れればそれでいいのだ。 ただ、今日は少々顔をあわせ辛い。 隣に別の男がいるかもしれない、なんて考えただけで胃がしくしくする。 鬱屈とした思考を振り払うかのように首をぶんぶんと振る。 近頃よくつるむ様になった悪友の顔を思い出す。 あいつもどうせヒマをしているだろうから、独り身同士、酒でも飲むとしよう。 「よし!」 わけもなく気合を入れ、目的地へと向かって歩き始めた。 「で……出来た……!」 作り始めたのは夜明け前だが、既に日は天高く昇っている。 何度も失敗や作り直しを繰り返しながら、ついに完成の時を迎える事が出来た。 自分で言うのも何だけど、かなりいい出来だと思う。 彼もきっと喜んでくれるに違いない。 「先に、こっちを渡しにいくとするかな」 先に出来上がっていた別の小包。 同性に渡すのも少し変かな、と思わないでもないけれど 日頃から付き合いのお礼として渡すのも悪くはないはず。 ひとまず台所を片付けてから、向かうことにした。 「よう」 目的の人物をようやく見つけ、片手を上げながら近寄る。 ったく、毎度毎度わかりにくいんだよこの道。 「なんだ、アンタかい。ふふ、随分湿気たツラしてるじゃないか」 人の面を見るなり指差して笑うとは、随分な奴だ。 「うっせ……今日が何の日か考えりゃわかる事だろ」 「こんな所で暮らしてると、日付の感覚が薄れちゃってねぇ」 昼夜と四季くらいしか区別できないよ、とあっけらかんと言う。 呆れの臭いを交えたため息をついた。 「まあいいや……色々持ってきたんだ。付き合えよ」 提げていた袋を持ち上げ、妹紅に示す。 中身は酒と肴である。 「いいねぇ。真昼間から飲むのも悪かないね。 ま、こっちきて座んなよ」 ぽんぽん、と自分の横を叩いていたが、 俺は一つだけ頷くと、妹紅の正面に座り込んだ。 「なるほど、バレンタインねぇ」 酒の肴として色々話をする過程で、妹紅に今日が何の日かを話して聞かせた。 ラブラブカップルの忌々しさを丹念に交えながら。 「そういえば"こっち"にも入ってきてるんだっけね。 うん、思い出した思い出した」 炙ったするめを齧りながら、妹紅が頷く。 「そんな日にアンタはどうしてこんな所にいるんだい」 「そりゃ何たって独り身だしな。そして絶賛片思い中の俺は、 こうしてここに酒を飲みに来ている訳だ。主にウサ晴らしに」 杯を一気に傾け、透明な液体を再び注ぐ。 「あっはっは、そりゃ難儀なことだね……っと、そうだ」 ごそごそと荷袋を漁る妹紅。 何かを引っ掴むとこっちに投げて寄越した。 受け取ったのは小洒落た感じの―― 「――なんだこりゃ。猪口?」 疑問符を妹紅へと向けると、腹を抱えて笑い始めるところだった。 「バレンタインのチョコが猪口でちょこっとってね。あっはっは!」 自分で言っておいてツボに入ったのか、げらげらと笑っている。 本来なら怒るべきとこなのだろうが、こいつ相手に怒る気にはあまりなれなかった。 「お前の場合は冗談なんだろうが……まあ、ありがとな」 貰った猪口をしばらく眺めてから、ポケットに突っ込む。 笑いすぎて苦しくなったのか、ひくひくと涙目で地面に寝転んでいる妹紅へと手を伸ばす。 「ほら、つかまれよ」 「ああ、ありがと」 二人して苦笑する。 後ろでぱき、と枝が折れる音がしたのはそんな時だった。 なんだ、そういうことか。 昨日まで悩んでいた自分が馬鹿みたいだ。 昼までかかって頑張っていた自分がとても惨めに思えた。 確かに妹紅と彼は普段から仲が良かったけど、 これほどとは思っていなかった。 後ろを向いて全力で走り出す。 手に持っていた包みを、驚いた拍子に落としてしまったが、 今となってはそんなもののことはどうでもよかった。 ただ一刻も早く、あの場から離れたかった。 一目惚れなんて、するんじゃなかった。 「今のは……慧音?」 どうして彼女がこんな所に? 呆気に取られて棒立ちしていると、妹紅が彼女が走り去った方へと歩いて行った。 地面に何かが落ちているのを見つけると拾い上げ、戻ってくる。 「どうやらこれが回答らしいね」 妹紅が手にしていたのは二つの、土に汚れた包み。 「こっちは私ので――」 片方を懐に入れると、もう片方をこっちに投げて寄越した。 「――そっちは多分アンタのだ。受け取りな」 危なげに受け取る。 「彼女が俺に? そんな馬鹿な」 「……この鈍チンが。いいから開けてみな」 妹紅の態度に押され、彼女に悪いと思いながら、封を解く。 中に入っていたのは、チョコレートと、短い手紙。 割れてしまっているが、確かにハート型をしていたチョコレート。 手紙の文面は、彼女らしく実にシンプルに、 俺への想いと、告白の文がしたためられていた。 (……両想い、だった……? いや、そんなまさか) 手紙を手にしたまま呆然としていると、背中に蹴りを入れられた。 いつのまにか後ろに回っていた妹紅が、いつになく優しげな瞳をしていた。 「行ってやんな」 そうだ、今はここで呆けている時じゃない。 「ああ……そうだな。ありがとな、妹紅」 彼女の贈り物を大事にしまいこむと、走り去った方へと向かって全力疾走を始めた。 「ちっくしょ……どこに行ったんだ」 途中までは足跡や枝の折れた形跡を辿って来れたのだが、 山から出てしまってからその跡すらも無くなってしまった。 こうなったら見つけるまで走り回ってやろう。 彼女には幾つか言うべきことがある。 そう決意を固めると、沈み始めた夕日へと向かって速度を上げた。 全力で走って疲れたので、その場へとへたり込んだ。 片想いで終わった事なんて幾らでもあったというのに どうしてか慣れないものだ。 後から後から流れてくる涙をごしごしと乱雑に拭き取る。 立ち上がる気力ももはや出ず、そのまま地べたに座り込むことにした。 「ぜえ……ぜえ……」 慧音を探し始めてそろそろ一刻。 軽く一里四方は探し回った気がするが見あたらない。 だが俺の頭には諦めるなんて文字はハナっから無い。 すっかり上がってしまった息を無理矢理落ち着けると、 再び適当に見当をつけて走り始めた。 里から少し離れた河原近くまで来たところで、 見間違えようもない彼女の背中を見つけた。 「慧音っ」 自分では叫んだつもりなのだが、走り疲れた事もあってか、 若干掠れるような声になってしまった。 それでも彼女には届いたらしく、びくり、と背中が震えた。 のろのろと立ち上がり、再び俺から離れようとする慧音を 今度は後ろから抱きしめることで引き止める。 「やっ……離して!」 「断る」 もぞもぞと抵抗する力が消えたのを確認してから、正面に回る。 「何を勘違いしたのか知らないがな。俺とあいつはそんな仲じゃない」 懐から割れてしまったチョコレートを取り出す。 「あ……」 「これ、ありがとう。あとごめんな、割れちゃってたみたいだ。でも――」 結構なサイズだったのだが、それでも口にまとめて全部放り込む。 いつだったか甘いのがそんなに好きじゃないと言ったのを覚えていてくれたのか、 ほどよい苦味の利いた味が口の中に広がる。 「――うん、美味い」 「嘘は、やめて、くれ」 俯いたまま、搾り出すように放たれた言葉。 「惚れた相手が作ってくれたモノが、不味いなんてことはないだろう?」 そんな戯言を言わせないために、彼女の顎を手で持ち上げ、 「ほら」 口で塞ぐ事でそれを解決した。 「んっ……ぷぁ――」 口の中にまだ少々残っていたチョコレートを、彼女の口へと押し返す。 先程よりも甘みが増したような気のする液体が、二人の口内を満たした。 薄茶色になった唾液の糸を引きながら、彼女から離れる。 「な、美味いだろ?」 「あ、ああ……うん」 対する彼女は顔を真っ赤にし、縮こまってしまったように見えた。 なんだかそれがとても可愛らしく、思わず笑みが零れてしまう。 「なっ……何故笑う!」 「ああいや、ごめんごめん」 顔を真っ赤にしたまま不満そうな顔を浮かべる慧音。 「キスのほうが先になっちゃったけど」 バッと勢いよく頭を下げ、手を差し出す。 「どうか俺と付き合ってください!」 「……ぷっ」 しばらくの間を空け、今度は彼女が笑い出す。 「うん、こちらこそどうか付き合って欲しい」 差し出した手に静かに手が絡められたのを確認してから、顔を上げる。 目に涙を溜めながら微笑む彼女の顔は、とても素敵だった。 「喜んで」 新ろだ317 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「で、この荷物は持っていく方なのか」 「ああ、それは持っていく方だな」 「よしきた……よっと」 大きめの木箱を気合を入れて持ち上げ、表へと運ぶ。 ちなみに運んでいる荷物は、慧音の私物や一部の家財道具。 (何も付き合い始めから同居まで踏み切らなくても……) 外に停めてあった荷車へと降ろし、ため息を一つ。 お互いに想いを伝え合った帰り。 「○○の家で暮らしたい」 という慧音の爆弾発言を、色々あったせいで疲れていた俺が "ついうっかり"承諾してしまったのが事の始まりである。 お互い同じ里で暮らしているのだから、しばらくは泊まりか、 もしくは当分先の事だと考えていたのだが、どうにも彼女の頭の中では違ったらしく、 翌日俺の店までやってきて、引越しの話をされたのだった。 困惑こそしたものの、 「……やはり、だめか?」 などと好きな人に手を組んで上目遣いで見られた日には、 男として断るわけにもいくまい。 (ま、いいか。為せば成る、だ) 二階の窓から俺の姿を見ていたらしい慧音が声をかけてきた。 「重い荷物ばかり持たせてすまないな……疲れたか?」 先の溜息を見られていたのか。 彼女の方へ向き直り、まだまだ元気であることをアピール。 「小間物屋してるとはいえ、これでも男なんだ。 あれくらいならまだなんとかなる」 「はは、頼りにしてるよ」 「おう、まかせとけー」 少女&青年引越し中…… 新ろだ325 ─────────────────────────────────────────────────────────── 前スレ 992のさらに続き。 ホワイトデーネタで? 「ありがとうございました、○○さん」 商品を入れた包みを男に手渡しながらひやかす。 「おう。次に来るのは一年後か?」 「はは、よしてください。それじゃあ」 「ああ、お幸せに」 少し恥ずかしそうに頬を掻きながら、彼は店を出て行った。 硝子戸越しに小さくなっていく背中を、見送る。 入ってきた時のガチガチの緊張は既になく、 その小さな包みを大事そうに握り締めているのが見えた。 その中身は―― 「――婚約指輪、か」 依頼されたからには仕事はこなす。 仕上がりはいい方、だとは思う。彼も喜んでいてくれたようだし。 「しかしなー……」 がしがし、と頭を掻く。 まさか作る時に思い浮かべていた相手が、彼でもなく、話に聞いていた相手でもなく、 今同棲している人物の顔を思い浮かべながら作ったなどと、誰に言えようか。いや言えまい。言うまい。 ――別のを作り直して渡せば良かったか。 そんな思考も一度は過ぎり、いくつか製作を試みたのだが、 結局期日までに作れたもので納得が行くのは、あの一品のみだった。 「黙ってりゃ分からない、か」 既に代金は受け取ってしまっている。 あの様子では渡すのは今日明日といったところだろう。 後は彼の奮闘を祈るのみか。 からんからん、と来客を告げるベルの音で我に返る。 「らっしゃい」 先程までの思考を横へと押しのけ、営業モードに入ることにした。 「……なんじゃこりゃあ」 時は過ぎて、閉店後の作業室。 俺は確か今日売れた分の品物を補充するべく、 いつものように製作に取り掛かっていたはずなのだが。 「落ち着こう。落ち着いて素数を数えよう」 いくら素数を数えた所で、目の前の現実が変わるわけはなく。 そこにあるのは紛う事無き、指輪だった。 ふと脇を見るといつの間にか出来上がっている補填分の品物。 頬をつねってみたが「痛ぅッ」――痛かった。 妖精さんが現れて作業を手伝ってくれたわけではないようだ。 再度作業台に視線を落とす。 指輪。うん、指輪だ。 装飾は控えめだが、そこそこ大きめにカットされた輝石が一粒埋め込まれている。 俗にいうエンゲージリングの形にとてもよく似ている。 注文された品物は既に今朝方渡したはずだが、 何故また俺はこんなものを作っているのだろう。 そんな思考がぐるぐると渦巻き始めた頃、作業室横の――玄関の――戸を開ける音が響いた。 別に隠す必要も無かったはずなのだが、その時の俺は、咄嗟に台から指輪を外し、 ポケットへと押し込んだ。 程なくして作業室の戸も開かれ、同居人が顔を覗かせる。 「なんだ、ここにいたのか。ただいま、○○」 「あ、ああ……おかえり、慧音。お仕事お疲れ様」 「○○も。それよりも帰ってきた時に大きな音がしたけど、どうかしたのか?」 「鑢を落としちまってな、それを拾ってただけさ。大した事じゃない」 ひらひらと手に脇に置いてあった鑢を手にとりアピールする。 「……そうか。椅子から落ちたりしたのかと思ってね」 やや残念そうな顔をする慧音。 しれっと毒を吐くのは付き合う以前からだったが、 同棲するようになってから悪化の一途を辿っている気がしてならない。 「ちょい待て。俺はどれだけドジなんだ」 「頭にかけた眼鏡の事を忘れるくらいにはドジだと思ってるよ」 「なっ……あれは寝ぼけていただけで!」 「ふふ、そうだといいな。それじゃあ私は晩御飯の支度をするよ。 ○○も区切りがついたら二階においで」 「了解了解」 満足そうに一つ頷くと、彼女は階段をとんとんと上がっていった。 新ろだ375 ─────────────────────────────────────────────────────────── 相変わらずその部屋は暗かった。 カーテンはほぼ閉まっており、隙間から僅かに光が差し込むのみであった。 もう時間は昼を少し過ぎたくらいであろうか。にも関わらずこの部屋の主である○○は未だ寝ていた。 部屋の中に響くチャイムにさえも気付かず、起きる素振りさえも見せようとしなかった。 何度も鳴っていたチャイムがはたと途切れた。そして今度はドアを叩いて誰かが叫んでいた。 流石にこの喧騒で目が覚めたのか、寝ぼけ眼をこすりながら玄関へと向かっていった。 何度もあくびをこきながら、ドアに掛かっている鍵を外していく。 扉を開くとそこには長い髪、そして何よりも魅力的過ぎるほどの体付きをした女性が立っていた。 彼女の名前は上白沢慧音、いつも不思議に思われているのだが○○とは男女の関係だ。 予定が合えばだが、こうやって彼の部屋を訪れては洗濯したり料理を作ったりと世話を焼いている。 「やっと出てきたか、どうせ夜更かしでもしていたんだろう」 ○○は少しばつの悪そうな顔になってしまった。どうやら図星だったらしい。 「全く、あれ程早寝早起きを心掛けろと言っているのにお前ときたら」 「あ、あぁ分かったから頼むから玄関先で説教は勘弁してくれ。するにしても中で頼む」 「言いつけを守らないお前が悪いんだろうが、まぁ良い」 そう言うと彼女は部屋の中へと入っていった。 「またこんな脂っこい物やら即席食品ばかりを食べているのか」 入るなりテーブルの上に置かれてあった空の容器を見て彼女がそう言い放った。 「良いだろ、手間要らずで俺みたいなのには必需品だぜ」 「私も忙しい時に食べたりもするが、お前は食べ過ぎだ。体を壊しかねん」 「何だ心配してくれてるのか」 「当たり前だ!私だって時間が無限にある訳じゃない。体を壊してでもみろ、一体誰が看病してくれるんだ?」 冗談で言ったつもりだったが予想外の反応が返って来た。 「それに…好きな人間が苦しんでいる姿なんていうのは見たくも無いんだ」 少し顔を赤らめながら慧音はそう呟いた。 「…心配させるのも悪いし、今度からは回数減らしてみようかな」 「本当はあまり食べないのが一番なんだがな、慣れていけば良いさ」 「ん、そういえば起きたばっかりだから何も食べてないんだ。何か作ってくれないか」 「分かった、何が良い?今ある材料だと作ってやれる物なんて知れてるが」 冷蔵庫の中を覗き使えそうな材料を出すと慧音はそう言った。 「何でも良い、慧音が作ってくれるんなら何だって食べるさ」 「なら生でも構わないな?」 「それはちょっと嫌かな…」 少し笑うと彼女はエプロンを付けて台所で調理を始めた。 あり合わせの材料で一体どんな物が出てくるのかは分からない。 だが彼女の思いが込められているのだきっと美味しいに決まっている。 そう思いながら完成を待つ○○であった。 新ろだ405 ─────────────────────────────────────────────────────────── 23スレ 492の続き。 慧音の背中が踊り場を曲がり、消えたのを確認してから、小さく溜息をつく。 ポケットから取り出した、小さな指輪。 「どうっすかな、コレ……」 見つめるうちにぐるぐると思考が渦巻きだす。 次第に勢力を増した思考の渦は突如分裂を起こし、論争を開始した。 やれ渡せだの、早すぎるだのと、分裂した思考達はやんややんやと大騒ぎ。 シンプルにラ○フカードといきたいところだが、世の中はそんなに甘くない。 どうしたものかと悩んでいるうちに両者(?)の決着はついたようだ。 「……渡しちまうか」 既に現物は出来上がってしまっている。 ここで捨てる、或いは加工しなおすという選択肢を取ろうものなら、 世間の男性諸氏どころか女性からもヘタレの烙印を押されかねない。 「ええい、ままよ」 指輪を再びポケットに……の前に、商品用のケースから一つ適当なものを見繕い、それにしまいこむ。 まるで戦場に赴く兵士のように一つ頷き、俺は決戦場への階段をのぼり始めた。 食卓への扉を開けると、丁度慧音が食器を並べている所だった。 「お、来たのか。そろそろ呼びに行こうと思ってたんだ」 「つまりはナイスタイミングだったということだな」 「そういうことになるな。今、おかずを持ってくるよ」 そう言うとにっこりと笑い、彼女はぱたぱたと台所に戻っていった。 いつもの席に腰を下ろし、ふとある事に気付く。 (あれ、つまり俺は指輪を前に相当な時間固まっていたということか……?) 誰も見ている者がいなかったからよかったものの、傍からみればただの間抜けだ。 がっくりと項垂れる。 次からは気をつけよう、と心に誓いながら。 「ふぅ、食った食った。ごちそうさま」 「ごちそうさま。 ……美味しかったか?」 「決まってるだろ。不味かったらおかわりまでしないさ」 「そうか! 良かった」 胸を撫で下ろすように安堵の息を付く慧音。 新メニューが出る度の恒例行事となったらやり取りだが、 美味いのは本音なので何も隠すことはない。 このやり取りに何も言わないのはただ単に、 彼女のほっとするような顔が見たいがためである。 茶を一息に飲み干す。 ほどよい熱が口腔を通り抜け、萎えかけた決意を奮い立たせてくれた。 「慧音」 「うん? おかわりか」 す、と立ち上がろうとしたが、手で制す。 彼女も察してくれたようで、席に座りなおした。 「"あの日"から一ヶ月だな」 「あ、ああ……うん、そうだな」 あの時の事を思い出したのか、頬を染める慧音。 「今日という日はな、世間一般にはあの日のお礼を、 男がするべき日らしいんだ」 「ホワイトデーという奴だったか」 「ああ、そうだ。そこで俺もお返しを用意したんだ。ほれ」 ポケットから件の箱を取り出し、投げて寄越す。 甲斐性のある男連中ならばここで気の利いた台詞や行動の一つでも取れるのだろうが、 幸か不幸かついぞ先月まで"年齢=彼女いない暦"を打ち立てていた偏屈なのである。 どこからともなくヘタレ、と声が聞こえた気がしたが、聞かなかったことにする。 投げた先を見やるとキャッチし損ねたのか、両の手で箱をわたわたと持て余す慧音の姿があった。 取り立てて何も語らず、彼女が箱を開けるのを静かに見守る。 「これは――」 中身が何であるのか確認するや否や、驚きの表情に染まる慧音。 こっちに期待の視線を向けてくると同時、俺は首ごと顔を逸らした。 「……つい熱中して作業してたら、余計なものまで作っちまってな」 反射的にバレバレの嘘をついてしまった。 呆れられるかと思っていたのだが―― 「くく、あははは」 ――返ってきたのは笑い声。 赤くなっていると自覚している頬を見せるわけにもいかず、そっぽを向いたまま尋ねる。 「っ、何が可笑しい」 ツボにでも入ったのか、一頻り笑い声が響いた後にようやく返事が返ってきた。 「ふふ、そうだな、余計に作られてしまったのなら仕方ないな。 この際だからサイズがピッタリなのも聞かないでおくよ」 不意に視界に彼女の両腕が飛び込んできたかと思うと、後ろから抱きすくめられた。 白く細い腕の先――左手の薬指には、薄く光を弾く指輪が見えた。 新ろだ428 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/861.html
慧音8 13スレ目 417、432、477、489 うpろだ989,993,996,998 「はら・・・へったorz」 そもそも財布さえ落さなければこんな状況にはならなかったんだ しかも家と倉庫の鍵まで入ってる財布・・・釣り道具すら手に入らない 嗚呼、流石に山に入って木の実を拾うのも限界だよなぁ・・・ 「チクショウ、こんなことなら知り合いの一人や二人作っとくんだった」 地面に跪いて今までの後悔やらざんげやら、これからどうしようかと言う脳内会議を頑張っていると 「おっさんがへんなことしてるー」 「小銭でも落としたんじゃねーの?」 「ちげーよ、彼女に振られて落ち込んでるんだよー」 何処からとも泣く子供の大群が現れ、一定の距離を保ちつつ俺をおちょくってきやがる まぁそこの所俺は大人なので冷静に、気にも留めないわけだがね 「きっと「この豚めを踏んでください!!」とか言ったんだなー」 「そりゃふられるよねー」 「くそがきゃぁぁぁぁ黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって!!俺は資本主義の豚か?ああ?」 「きゃーっ!おじさんがキレたー!」 「おい其処のガキ、残念ながら俺には振られるような女どころか顔見知りの人間すらいないんだよ糞ッ!いや、俺だって好きで引きこもってたわけじゃねぇんだぞ! ちまちまと地味な仕事して!魚とって食いつないで!やっと俺もこのワケワカラン世界になじめたかなーとか思った矢先に財布落としてこの有様だ、わかるかコラ 外もここも!結局は金かチクショウ!外だったら日払いのバイトして何とかなったかもしらねーのによ、嗚呼、何で俺はこんな所で空腹に苦しんでいるのだろうか」 いつの間にかガキどもはひとりも居ない、ああ、また一人ぼっちか 話したら余計腹減った、糞、やっぱりいいことなんか何もないじゃ無いか 「成☆敗!」 ごずっ! 前頭部に激しい痛み、突然の出来事に瞬間的にパニックになる しかし至近距離前方に姿を確認した瞬間、反射的に飛びのいた ぶぉんと風を切る音がした、頭突き? ちょっとまて、頭突きで風きり音ってどういうことだよおいおい 「貴様が不審者か、成程・・・見るからに悪人面だ」 「うるせぇ!生まれつきこんな顔なんだよっ!」 「・・・そんな顔の赤ん坊は怖いぞ?」 「ああそうだね!俺も今そう思ったよ!」 俺の目の前にいる、女性 薄い青の長い髪が、ふわりと風に舞っている 既に向こうは構えている やるつもりらしい 正直頭突きは勘弁願いたい、だがどう見ても細身の女 其処まで強そうには見えんが・・・ 素早い踏み込み、そしてジャブ だが俺はちゃんと見ている まずジャブをサイドにかわして― 首の横を過ぎたはずの拳、だがそれは違う 左肩を引っ張られる感覚、そう、既に肩をつかまれた 「なっ!?」 拳打ではない、それは肩を掴む為の偽装 「しまっ」 また頭突きか!? 目をつぶって衝撃に備えたのがいけなかった、俺は目を開いているべきだったのだ 腹部を貫いたのは、彼女の膝 腹が減りすぎて腹が痛いのだ、其処に膝蹴り・・・もう死ねるぜ、これは 踏鞴を踏みつつ、彼女との距離をとった どう見ても細身の(ry ああ、けしからん乳だ よく見れば実にケシカラン乳がステップを踏むたびに揺れ(ry 嗚呼、何でか知らんが余計に腹が減った 俺をどう見れば不審者に見えるんだって話だ 長身イケメンまっちょー、三拍子揃って文句のつけようもないじゃ無いか 「・・・君、大丈夫か?」 「大丈夫なわけねぇだろ馬鹿女、こっちの言い分も聞かずにいきなり膝蹴りかますとはいい感じに頭いかれてんのか?」 「随分口が悪い奴だな、そういう口の悪さが誤解を生む原因でもあるんじゃないか?」 おいおい、俺に非があるってのか?だいたいなんだこの女は、いきなり出てきて頭突き膝蹴り説教 そもそも俺は何でこんなことしてるんだ?何でこんなにいらいらしてるんだっけ? 「おい、顔色が悪いぞ?大丈夫か?」 だから大丈夫じゃないって言ってんだろ、ああそうだった、俺お腹減ってるんだった 「なぁあんた、今までの事全部水に流して仲良くしようじゃ無いか、俺は腹が減ってしょうがないんだ」 「・・・まぁ・・・うん、一食ぐらいでいいなら、昼餉の残りぐらいはあるかも知れないが」 「何でもいい、出来れば米とかそういったものが食いたい、栄養価が高そうで腹にたまるもの」 「・・・解った、ついて来てくれ」 ホイホイついてきてよかったのかい?私はノンケだって構わずに食っちまうような女なんだぜ? 「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!?」 「はっ!??・・・夢か」 「飯を食いながら夢が見れるのか、器用な奴だな」 俺の前には夢にまで見たご飯 4杯目のご飯と3杯目のお味噌汁 残り物が少なかったので彼女がわざわざ作ってくれたのだ 「むぐむぐ・・・・んぐんぐ・・・ぷはぁ、ご馳走様でした」 「随分腹が減っていたようだな」 「はい、ここ3日ほど何も口にしておらず・・・本当に助かりました・・・ええと」 「慧音、だ」 「慧音さん、本当にありがとうございます」 俺はなるだけ感謝の気持ちが届くようにと、頭を下げた 彼女はそれを見て、狐につままれたような奇妙な顔をする 「・・・なんだか、さっきと随分キャラが変わっているぞ、君はご飯を食べると性格が変わるのか?」 「ははは、先ほどは無礼なことばかり、失礼しました・・・空腹で気が立ってまして」 また頭を下げた、彼女は優しそうに笑っていた 嗚呼、なんていい女性だ 飯、しかもこんな綺麗な女の人の手作りのご飯、HAHAHA笑いが止まらんよ もう頭突きとか膝蹴りとかもう忘れるわ、あれはこれでチャラですよ 「・・・君の、名前は?」 「え、あ、私は○○と言います」 「そうか、○○・・・そんなに気を張って話さなくてもいい、楽にしてくれ」 「・・・そうか、じゃあお言葉に甘えるよ、ええと・・・慧音さん」 「慧音で構わない、私も○○と呼ばせてもらう」 「解った・・・慧音、貴方にゃほんとに感謝してる、ありがとう」 一宿一般の恩とは言うが、まさにそれだ、頭突き等分差し引いても大きな仮だ 仮、否、これは恩だ なんと言うか、食べさせてもらったこともなんだが、ちょろっとでも話をしてくれた事が、嬉しかった 「もう、行くのか?」 「はい、お金がなくても鍵さえ見付かれば何とかなりますから、いざとなったらどうにかして家に入りますよ」 空はオレンジ色に染まりだしていた カラスも雀も、森へ帰っていく 俺も、家に帰らなきゃいけない 「それじゃあ・・・また、縁があったら」 「・・・○○、なんなら家に来てくれて構わないぞ」 「え、いや、ええと・・・そ、そうですね、どうしても入れなさそうなら、お世話になるかもです」 とりあえず、別れた 腹が膨れてまともな思考、こんな時間に魔法使いは動いてくれないだろう それに、あんまり彼女に頼りすぎるのもよくない、依存しそうで怖かった 「さて」 とりあえずドアを蹴ってみる、悲しいかな硬い音がするだけだ 裏に回って窓を蹴ってみた、三日前に試したとおり、ヒビすら入らない 「こんな家、買うんじゃなかった」 この世界に来た時の全財産で買った家 妖怪の侵入を防ぐ結界つき♪とかいうから買ったのに 人まで入れないんじゃ意味ねーよorz はぁ、怪しい狐女から買ったのは間違いだったな 「・・・野宿できそうな所を探さなきゃな」 なるべく明るくて、人気が多くて、里の真ん中 さほど寒くないし、大丈夫だろう いい場所を探して日の暮れた里をふらふらと、うろついていた そして 「やぁ、おかえり」 後ろから、声をかけられた 「慧、音・・・」 「やぁ、その様子だと駄目だった見たいだな」 「あはは、無駄に頑丈な家でね・・・」 「・・・・家に来るか?」 「いや、遠慮しとくよ」 「・・・居候も居るし、今更遠慮しなくていい、それよりも君を野宿させることの方が気になってしょうがなくてな」 「・・・そんな言われると、お言葉に甘えたくなっちゃいますよ?」 「ああ、好きにしてくれ、無理にとは言わんが・・・君さえよければ、泊まっていけないか」 思い込みかもしれない、ただ通りがかっただけかもしれない もしかしたら、もしかしたら俺を探していてくれたのかもしれないなんて、期待をしてしまう それでも、今は、なんでもいいから、嬉しい 「それじゃあ・・・帰ろうか」 「そう、ですね・・・それじゃあ・・・お世話になります」 財布をなくしたせいでとんでもない目にあった 野宿したり空腹に苦しんだり、木の実を拾いに入った山で妖怪に追いかけられたり 子供におちょくられて頭突きで膝蹴りだったり でも、無くしたおかげで、知り合いが、増えるのなら、あんな目にあったことも、悪くないかもしれないと、思える 自分でもよく解らない展開になっているとは思うが、このよく解らん世界なら、何が起こっても不思議はない、そう自然に受け入れられそうだ 「居候が一人居るんだがな・・・まぁちょっとぶっきらぼうな所もあるが基本はいい奴なんだ」 「はぁ・・・?」 「まぁアレだ、喧嘩とかしないように頼むぞ」 「・・・?」 「おや、帰ってるみたいだな」 玄関にちょっと乱れた靴を見つけた それは先客がいると言う事か、先ほど言ってった居候とはこの靴の主なのか 靴を、もう一度見た 小さい、慧音とそう違わないサイズ・・・女か 両手に花か、うふふ、ふひひ 「慧音ーお腹すい・・・た」 部屋に入った瞬間、タバコのにおい 縁側で胡坐をかいて座っている少女は、タバコを咥えている なんか色々と抱いていたイメージが崩れたと言うかなんと言うか 「あんた、誰?」 「あ、ああ俺は、○○だ、今晩はお世話になる」 「・・・そういうわけだ妹紅、仲良くするんだぞ」 あ、見るからに不機嫌そうだ なんと言うか仲良く出来るか不安になる奴だなぁ 「ふぅん・・・慧音、コイツとどういう関係?」 俺と慧音を交互に見て、ワケワカランことをぬかしやがった 「どういう?いや・・・なんと言うべきか・・・なぁ?」 確かに、どういう中かと問われたら、凄く返答に困る 俺が財布を落とした所から話を始めねばならん 「ええと・・・鍵が無くて家に入れないんだ、困っている所を慧音が助けてくれたと言うわけだ」 我ながら色々と断片的で何がなんだか まぁ言いたい事は伝わったはずだ、はずだ 「・・・まぁいいや」 ふぅう、とタバコの煙を大きくはいた 家の外に向かって煙を吐くのは彼女なりの気遣いなのか 彼女、ええと・・・もこうって言ってたか もこうはタバコに火をつけると・・・あ? 「あれ・・・?」 「んーどうし・・・ああ、これか」 もこうは人差し指を立てて そこに、火が点った 慧音は困ったようにうなだれ、妹紅はニヤニヤと、哂っている 「○○、あれはだな、その」 「へぇ、便利な能力だな」 発火能力か、ライター要らずってのはいいなぁ 俺もああいう役立つ力があればなぁ、野宿とか楽になるなぁ 「・・・驚かないね」 「幻想郷に来てから、だいぶ驚きなれたみたいでね、それ位じゃ驚かないぜ」 「・・・」 宴会でとっておきの手品の反応がわるかった、そんな感じの落ち込みかた・・・いや、不貞腐れてるのか 「ほ、ほら、早く夕餉にしような!妹紅、手伝ってくれ!」 飯も食い終わり、特にやることも無いのんびりとした時間が 「ねぇ・・・ええと」 妹紅が俺に話しかけてきたのだが悲しいかなまだ名前を覚えられていないらしい 「○○だ、妹紅」 「あ、ああ・・・○○、あんた外の人間?」 「そうだ」 「こっちに来てどれ位?」 「半年ぐらいだな」 「こっちの住人は怖くない?」 「別に、変な力を持ってようが見た目は人間だろ」 そこで慧音がくすりと、笑った 「あ、いや、すまない・・・なるほど、性質より見かけか」 中身は簡単には知りえない、ならば外を見るしかない 何となく、外見でわかるもんだ 取繕ったカタチと、そうでないカタチは 「何となく解る、二人とも完全な人間じゃ無いことぐらいは」 「・・・」 「・・・結構鋭いね、まぁ変り者じゃなきゃこんな所には流れつかないか」 へんな奴に変り者扱いされてしまった、軽く傷つくぜ 「その、○○は、私たちがまともな人間じゃ無いと解っていて・・・」 「そもそもまともな人間ってなんだろうな」 「うわ、めんどくさいなんちゃって哲学見たいな事言い出したよこいつ」 妹紅がぎゃあぎゃあと五月蝿いが、せっかくなので放っておく 「ここって、幻想郷ってよ、そういうことひっくるめて何だかんだで共存できるすばらすぃー場所なんだって、へんな巫女が言ってた そもそも、慧音や妹紅を見て、悪い奴には見えんし、怖くも無い・・・だから俺はここにいる」 そもそも人間じゃ無いからって怖がってたらここじゃ生きていけないだろう 相手の本性がぼんやり解る程度の能力 自らが変だと、周りが普通で俺が変、そう思っていた だが幻想郷に来て、自分より変な奴しかいないことが、可笑しくて 「まだ出会ったばかりで、よく解らない事ばかりだけど・・・俺は二人を信用する」 「○○・・・・・・わ、私は、風呂にはいってくるなっ」 どたばたと、騒がしく入浴宣言をして、慧音がいってしまった 妹紅と、二人きりになった 「・・・あんたさ・・・いま慧音フラグ立ったよね」 「・・・ふらぐ?」 「あー・・・いや、わかんないならいいんだけど」 ふらぐ?フラグ?フラッグ?フロッグ? 俺がフラグについて脳内会議を開いていると 「・・・慧音は、半獣人だ」 「・・・それが、どうかしたのか?」 「もし、慧音の違う姿を見たとしても、怖がったりしないで欲しいな・・・なんてね」 最後に付け足した呟きが、あんたなら大丈夫か、と聞こえた気がした たしかに、慧音の言った通りだ ぶっきらぼうだけど、やさしい、いい奴 妹紅、か・・・仲良く出来るか不安だったが、杞憂だったみたいだ 「でもさ、今日あったばかりの俺に、何でそんな助言をくれるんだ?これからも濃い付き合いになるとは」 「勘だ、あんたは慧音と仲良くなれるさ」 「長年の勘ってやつか」 「まぁね、長く生きてると、少しはね」 俺の知らないぐらいの時間を、彼女は生きてきたのだろう 彼女の瞳の奥が、あまりに深くて 俺はまともに見る事が、出来なかった 「ふぅ、少し・・・逆上せてしまったな」 逃げるように風呂に入ったのだが・・・色々とぐるぐると考えていたら 「みず・・・」 頭がボーっとする、こういうときは表で涼むと気持ちいいんだが・・・この間そうやって風邪を引いたからなぁ 「うぉ!?」 「え?あ、○○・・・えと・・・喉が渇いたのか?」 「え、あ、ああ・・・まぁうん、そんなところだ」 正直、ドキッとしてしまった うっすらとピンク色に染まった肌、いまだ少しばかりぬれたままの長い髪 風呂上りで暑いのか、着くずした服装、そのせいで見える谷間とか、谷間とか 「君もボーっとしてるな」 ボーっとしていた○○ 声をかけたとたんに私のほうから、体ごと視線を変えてしまう 「?」 「な、なんでもない」 何かワルイコトでもしてしまったか?それとも 「なぁ○○、妖怪は・・・怖いか?」 恐らくまだのぼせているのだろう、柄にも無く、へんなことを聞いてしまう でも、彼はきっと、私の望む答えをくれるのだと、期待してしまう 「・・・そうだな、妖怪人間問わず、俺に害をなすのが怖いな、妖怪でも友好的なら、怖くない」 ほら、彼はこういう人間だ あってまだ一日経っていないのに、私は、彼が 「ふぁ・・・あー・・・もう寝るな、おやすみ」 「お、お休み○○・・・」 反射的に、手が出そうになった、待ってと、言ってしまいそうになった 「・・・なんだろうな、これは」 自らの内に湧いた、未知の感情、不思議な心地よさとじれったさ 「・・・私はこんなに惚れっぽかったのか?」 なんだかよく解らないが、一目ぼれという奴なのだろうか いや、二目惚れぐらいか? 「人は人を、いつの間にか好きになる・・・か」 湯上りで幸いした、もしかしたら私は赤くなってるかも知れないから 私は、一杯の水を飲み、ほてった感情を、醒ました 「・・・はぁ」 深い、溜息をついてしまった 慧音の家に世話になってもう4日 財布も鍵も見付からず、家を買った狐女を捜して徘徊するが、まったく見付からない 俺の能力なんてハッタリを見破る程度の能力だしなぁ、使えねぇ 「・・・まだ飼える訳にも行かないし・・・どうしたもんか」 昼間のあそこには、居辛かった 妹紅は早々に何処かへ出かけて行ったし、慧音は学校(?)にいってしまったし 流石にあの家に一人だけ居るのは、何か嫌な違和感を感じてしまった 「・・・誰かのとこで時間が潰せたらなぁ」 そんな知人がいないから慧音の所でお世話になってるのにね、可笑しな話しだははは 嫌な考えはおいといて、どうしようか 「倉庫なら、壊しても大丈夫だろ・・・そもそも壊れるのか?」 俺は自分の家に戻り、釣具やらなんやらが入った倉庫の前に、立っている 「すぅぅぅぅううう」 大きく息を吸って、吐くと同時に、渾身の中段前蹴りをっ!! ば、馬鹿な!?俺の前蹴りが・・・効かない!? 「は、はは、手加減してやればいい気になりおって、あまり調子に乗るなよ、小僧(倉庫」 半歩ほど、倉庫に近づいて、構えた 「我が真の力!しっかりとその目に刻むがいい!!」 ぐるん、ぶぉん、がしゃーん 俺の渾身後ろ回し蹴り アルミ?薄い金属性のトビラは90度近く曲がって、見事に、破壊に成功した 「は、ははは!見たか我が力を!・・・・・・なんか予想以上にやっちゃったZE」 真っ昼間から倉庫相手に何やってるんだ俺は 我に帰ったとたん、凄く虚しくなった 「まったく君は、昼間から何をやってる」 こ、この声は! 「慧音・・・いつから其処に?」 「あまり調子に乗るなよ小僧、ぐらいから居たんだが・・・やはり気付いてなかったんだな」 ぐはっ!そんなに前から・・・orz もうだめだ、穴があったら入れtじゃなかった入りたい 「えっと・・・昼飯は食べたのか?」 「え?ああ、そういえば忘れてたな」 「そ、そうか・・・こいつが無駄にならずにすみそうだ」 「?」 慧音は右手に持った風呂敷に包まれた何かを高く上げて、俺に見せ付けた しかし俺はそれがなんだかさっぱり解らない 慧音は痺れを切らして、自らの口でその何か、の正体を 「べ、弁当だ!君が腹を減らしているのではないかと思って、その・・・」 ぐは、こ、これは なんと言う破壊力! 頬を染めてもじもじ+手作りの弁当=神をも凌駕する破壊力 ここで注目して欲しいのがこのうつむき加減だ! 完全に伏せてしまうのではなく、潤んだ目や赤い頬、また、耳までよく見えるベストな傾き加減だ! 作者の私見を言わせて貰うなら、これは恐らく自然に生み出された、究極の美であると言えよう 普段はお姐さん系の性格にも拘らず、ここぞと言うときにか弱い女の子に戻る、それによって生ずる威力は筆舌に尽くしがたい 「○○?」 「はっ!?い、今なんか変なナレーションが!??」 「・・・もしかして、食べたくないか?」 「何言ってる、食べたくてうずうずしてるんだぜ!(即答」 「そ、そうか・・・えと、じゃあ食べよう」 とりあえず座れるような場所を探して、玄関の段差に座る事にした …重箱? 2段の重箱?いや、上の段は二つに分かれて・・・ああなるほど、それがご飯ね ってことは下の段が、おかずか 卵焼きを一つ、食べてみた ~青年食事中~ こ、これは、シャッキリポンとry 口の中に残るほのかな甘味とry 舌触りはまさに官能的なry ~青年食事中~ 「・・ぷはぁ、ごちそーさま・・・美味かった」 「うむ、お粗末さまだ・・・いやぁ、アレだけ気持ちよく食べてもらうと、作った方としても嬉しいよ」 ただ食べただけなのだが、そう言ってもらえるとまぁ悪い気はしない しかし・・・料理が美味いと言うのはイイコトだな 料理が出来ない女の子は嫌い?と聞かれたら嫌いとはいえないがね むしろ下手でも一生懸命作ってくれるところに意味があるのではないかと つまり料理の上手下手は関係なく誰が為に作ろうとするかが重要なのではなかろうか 「○○、君はボーっとする癖があるようだな」 「え、いや、そんなことは無いぜ、うむ」 俺がほうけている間に片付けてしまったらしく、もって来た時のような風呂敷包みになっていた 「・・・この後さ、時間ある?」 「あ・・・すまない、午後からも少し授業があるんだ」 「いやちょっと聞いただけだ、別に用があったわけじゃ無い」 「そ、そうか・・・じゃあ私は行くよ」 「・・・ああ、いってらっしゃい、頑張れよー」 彼女は少し歩いていって、突然に振り返った 夜までには帰ってくるんだぞ、と 俺はそれに対して、手を上げて、解ったと告げた 「・・・帰ってこい、か」 慧音が行ってから少したって、一つ言葉を、零した 慧音は俺が今日も帰るものだと思っている 俺もそれをありがたく思って、今日もあの家に世話になるのだろう でもあそこは俺の家じゃ無い あくまでも彼女、慧音の家だ 「帰るべき、場所か・・・」 一週間近く誰も立ち入っていない家を、見た 前までは当たり前のようにここに帰っていたのに、今では 「・・・はぁ、めんどくせえ」 倉庫から釣り道具やらなんやらを引っ張り出して 時間をつぶす事に・・・したんだが 「おーまた釣れた、あんたって釣り巧いんだね」 なぜか隣に座るヤンキー、あらため妹紅 「・・・」 「もう8匹目だ、あと一匹で一人3匹食べれるじゃん」 いや、コイツが竹林にいると知ってれば、近くの川まで来なかったんだ ちょっと足を伸ばして湖まで行ったんだ 「・・・お前、見てて楽しいか?」 「ん?楽しいよ」 …初日とあまりに違うコイツの態度、馴れ馴れしげふんげふん、フレンドルィーな態度に、少し戸惑いつつも 「ほら、お前もやってみろよ」 「え?いや・・・わかんない」 こいつは釣りもしたこと無いのか しょうがないのでとりあえず 「餌はついてるから、ほら、竿持って」 とりあえず竿を持たせた だがほんとに何も知らないらしく、と言うか今まで横で見たただろ 「ほら、こうやって、下からゆっくりと、振り込みたいに」 「こ、こう?あ、おお・・・」 ぎこちないながらも何とか投げる事が出来たようだ 伸べ竿でこんなに苦戦する奴は始めてみたぜ 「あのウキをよく見て、沈んだら引っ張ってやれば」 「あっ・・・」 「?・・・あ、わ、悪い」 いつの間にか、と言うか最初からか 妹紅の腕を握って、いや、そういうつもりは無くただ純粋に教えようと思ってだなry 気にしてなかったのに、そういう態度を、とられると・・・余計に気になってしまうじゃ無いか 「・・・慧音の次は私のフラグ立てるつもりかって・・・」 「え?」 「な、なんでもないっ!」 なんなんだよまったく、ドイツもコイツもフランスもオランダもイタリアもセネガルも 「・・・妹紅、竿を立ててみろ」 「え?こ、こう?」 何も理解せず、ただ言われたまま竿を立てた妹紅 「う、わ!○○!?」 予想通り、上手く魚が掛かったようだ 「竿を高く上げて、手前に寄せろ」 竿が三日月のように曲がり、その引きは妹紅の手へと伝わっている、はずだ 「んー・・・よし、外れたぞ」 岸に引っ張りあげられた魚、針を外して妹紅に見せてやった 「・・・はは、人生で初めて魚を釣ったよ」 「お前長生きなんじゃないのかよ・・・釣りって、楽しいだろ?」 「うんっ!」 ああ、こいつの笑った顔、凄く可愛いんだな いつもしかめっ面でいるけど、やっぱ可愛いなぁ、女の子なんだなぁ やべ、妹ができたみたいな気持ちだ 釣った魚を手にはしゃぐを妹紅を眺めていて、妙な気分に陥った俺だった 「お、二人ともお帰り」 家に入ると慧音が出迎えてくれた 今から料理をしようというところだったのか、髪を後ろに束ねていた 「あ」 「ん?・・・あ・・・へ、変か?」 「いや・・・似合ってるな」 いかん、また変な方向に話しが行こうとしている いつもの爽やかな感じの髪もいいんだが、サッパリした今の髪も、なかなかどうして ごすっ いきなり妹紅に足を踏まれた 「づぁっ、てめ「慧音!魚を釣ってきたから、料理するなら手伝うよ!」 「あ、ああ」 「もう腸は出してあるから」 妹紅は慧音の背中を押して、急ぐように台所へと行ってしまった トビラ一枚向こうでは楽しそうな会話も聞こえて 「・・・今日は、疲れた」 でも、楽しかったな 慧音と昼飯を食べて、妹紅と釣りをして 「いかん、なんか馴染みはじめてるな・・・」 彼女たちがそういう性質なのもあるだろうが、俺もまたそれに甘んじている所もある 「・・・はぁ」 色々な思いを込めて、大きな溜息を吐いた 「びくとも、しないな」 俺はまた、俺の家にいた 相変わらず、なんと頑丈な事か 蹴っても叩いてもびくともしない 「長所だが短所だな」 冷蔵庫の中身が心配すぎる、出かけ際に机に置いた牛乳が怖い …ちょっと開けたくなくなった 「○○」 「ん、慧音か」 またここで、昼飯を食べる 変な習慣になっていた 彼女も家で食べればいいのに、ここにきて、俺と飯を食う 彼女がなぜそうするのか、なぜ俺がそれを嬉しく思っているのか 「なぁ○○、この後は暇か?」 「・・・俺は今お前にその質問をしようとした」 聞く前に聞かれるとは、少し驚いた しかし彼女の方から聞くということは、午後からは時間が有るんだろうな 「えと・・・暇なんだな?」 「ああ、暇だな」 「そう、か・・・だったら私に付き合ってくれ」 ほう、何処へ行こうと言うのか 買い物?荷物もち はて、この狭い世界じゃ皆目見当つかない 「買い物と・・・ちょっと人に会うだけだ」 「うん、これもいいな」 「・・・慧音さん、これはどういうことでしょう」 俺は今、服屋に居る 何でか知らんが、慧音は俺に色々な服をあてて、うんうんと 「こっちはどうだ?あー、何か違うな」 「慧音・・・なぜ俺が服を買う必要がある」 「何故って・・・お前が服を持たないからだ」 「いや、家には入れれば」 「入れる見込みが無いからこうして」 「金ないし」 「出してやる、食費にしか使わないからな、貯えはあるぞ」 ま、まてっ!衣食住、これ全てを彼女にゆだねると言うのか!? 否!断じて否!踏み越えてはならない最後の一線だ!そこまでさせてしまったら、俺は・・・俺は・・・ 唯の、ヒモじゃ無いかっ! 「そ、そうだ!俺用事を思い出してぐはげふっ」 慧音のレバーブローが、俺の横っ腹を貫いた 「・・・さぁ服を え ら ぼ う か 」 ~青年試着中~ 「ありがとーございましたー」 結局三着ほど、買わされ、買ってもらわされた 「もうお嫁にいけないめそめそ」 「何を言ってるんだ君は」 呆れたように、かのじょは 「ほら、まだ後一つ用事があるんだ」 俺の手を引いて、歩き出した これじゃあまるで、カップルのデートだ ぐは、恥ずかしすぎる、そんなの恥ずかしすぎる! ああ、慧音の手柔らかくて小さくて・・・しまった!変に意識したら 「・・・○○の手は、大きいな」 はにかんで、楽しそうに、笑った 俺はそこで、諦めた せっかくなのだから、この状況を存分に、楽しんだって罰は当たるまい 「慧音」 「ん?どうした」 「これじゃあまるで、俺たち・・・カップルみたいだな」 慧音は一瞬固まって、ぼんと音を立てて赤くなった 「ばばばばばばばばばかなここことをいって」 「手、離そうか?」 「なっ・・・・は、離さないで、くれ」 耳まで真っ赤にして、消え入るような声で、そう言った 俺はこの場で抱きしめてしまいたかったけど、人通りも多かったので、頑張って我慢した 「と、言うわけだ」 「・・・まぁ解ったが」 「なら、頼んだぞ、私はここで待ってるからな」 「・・・」 がらがら 「おじゃましまーす・・・」 小声で一応断りを入れて、屋敷に入った 慧音の言うとおりならば、ここに 「・・・どなたですか?」 「ああ、えっと・・・慧音の知り合い」 「ああ、先生の・・・それで、どういった御用で?」 かくかく しかじか 「ええとつまり、求聞史紀の内容が気に食わないので書き直せと」 「ええ、頭突きがどうのとか、角がどうのとかキモくないとかなんか言ってたけど・・・」 「あはは、どうやら噂で伝わってしまったようですね」 「ええと・・・」 「阿求と申します、稗田阿求」 「俺は○○、外から流れついたんだ」 彼女、稗田阿求と名乗った まだ10ぐらいの子供、だが大人びて・・・と言うより生き急ぐ様な 俺の能力ゆえか、彼女は長くないんだなぁと、感じてしまった 「貴方もこれに載せましょうか?異能を持った人間も載せてますよ」 見透かされて、と言うよりも、勘だな 今俺が少しだけ見せた驚きを、阿求は見逃さなかったらしい カマかけられるとは、俺の力も役立たずな 「・・・表で慧音が待ってるからね、もう行くよ」 「先生には検討だけはしてあげます、って伝えてください」 このまま話しつづければ茶でも出てきそうな気配なので、早々に退散する事にした 阿求ちゃんは、俺に 「○○さん、最後に一つ」 「・・・なんだい?」 「慧音先生とは、どういったご関係でしょうか?」 意図が、掴めない 最初に知り合いと名乗ったそれとは全く違う意味の、関係だろう だが俺には、明確にそれを指し示す事の出来る言葉を、持ち合わせていない 「・・・居候と、家主、ってところか、な?」 「・・・ふふ、また近いうちにきてくださいね、また同じ質問をしますから」 「?ああ、次はゆっくりと、お話でもしようか」 最後の、同じ質問を、と言う意味がまったく、解らない 彼女はいったい何を伝えようと言うのか 今の俺では、理解しようが無い 「お、お帰り○○」 「ああ」 入り口近くで、ぼうっと空を眺めていた 彼女は一人でいるときに何を考えていたのだろう 「どうだった?」 「検討だけはしておくとさ」 「そう、か・・・まぁ仕方無い」 慧音は俺に向かって、手を差し出した 帰ろう、と 今度は、その手を躊躇い無く握る事が、できた どういう、関係 財布をなくした事がきっかけで、家に入れず、ふらふらしていた所を 彼女、慧音に、世話になって、今・・・俺たちの関係、か 「なぁ慧音」 「・・・なんだ?」 「俺さ、お前の家で生活し始めて、変な違和感を感じてたんだ」 「・・・」 「だけどさ、今は・・・お前の所が帰る家になって、それもやっぱり違和感があって、なんで俺がここに居るのかなぁって」 人付き合いは苦手だった 彼女の所も、3日もすれば居心地が悪くなって出て行くんだと、考えてた 俺は所詮根無し草みたいな奴で なのになぜかそこは、居心地がよくて 「俺は、お前と一緒にいたいと、思っちまった、あの家から、お前の居る家から出て行きたくないな、何て思っちまった」 「○、○・・・それって」 「・・・お前が、好きなんだよ・・・これからも一緒にいたいんだ・・・慧音」 繋がっていた手、引き寄せて、抱きしめた 彼女の身体は、頼りないほどに軽く、柔らかかった 「私は、お前が・・・いつか出て行くんじゃないかと、出て行ったまま帰ってこないんじゃないかと、怖かった」 「・・・君が許すなら、ずっと傍に居る、いなくならない」 「・・・これからは毎日、君にお帰りなさいが言えるな」 「ははっ、そうだな、いってらっしゃいは俺が言わなきゃならないかな」 「このままヒモになるつもりか?」 「いやぁ流石にそれは・・・働くから安心してくれ」 きょろきょろと、周りに人が居ないのを確認して 「慧音」 「あ、んっ、んんっ・・・ぷぁっ」 唇を、重ねた ただ触れる程度のキス しかし、想いを伝えるには、十分だと、思う それからしばらく 正確に言えば日が暮れるまで 抱き合ったまま、お互いのぬくもりを感じていた 「お腹すいた・・・慧音も○○も帰ってこない・・・お腹、す、いt(バタッ」 次の次の日ぐらい 「やぁ、遊びに来たよ」 「思ったよりお早いお越しですね、○○さん」 稗田家、縁側 今日はゆっくりと話が出来ますねと、彼女・・・阿求は言った 外の話を聞きたかったらしく、熱心にメモを取ったりしていた 「・・・そろそろ、帰るとするよ」 縁側から腰を上げ、玄関に向かって歩き出すと 「・・・ところで・・・先生とは、どういう関係なのでしょうか?」 正直、彼女は未来予知でもできるのではないかと思ってしまった 心でも読めるのか、それとも勘がいいのか 「・・・慧音と俺は・・・そうだな、恋人・・・だな」 「そうですか・・・幸せそうですね、それはとてもいいことです」 それではまたきてください、そう言っていた、俺はもう歩き出していたので、そこまでしか聞き取れなかった きっと彼女は、あの質問の、正しい解答を知っていたのかも、しれない そして俺は、あの質問を、答える義務があった 「運命ってのは、信じないんだがな」 でも、落としてしまった鍵と、出会ってしまった俺と、慧音 そして 「恋人、か」 俺は彼女の声が効きたくなったので、ゆっくりと、歩いて帰ることにした 夕日が全てをオレンジ色に染めて まるで、彼女に誘われたときのようだ 「私の家に、泊まらないか?」 心臓が、止まるかと思った 「けい、ね?」 夕日を背に、彼女は であったときの、再演のように 「まだ一月ほどしか経っていないのにな、出会った日は、こんな夕焼けだったなと、思い出していた」 俺は、慧音より少し、先に行き 手を、差し出した 「帰ろうか」 「・・・ああ」 慧音は俺の手をにぎり、俺も握り返した 夕日に染まった道、二人で並び、ゆっくりと、歩いていった end うpろだ1095 「ここにいたか○○」 「慧音先生どうしたんですか?明日はお休みのはずでしたが……」 「いや、用事というわけではないんだが……」 「?」 「その……だな、わ、私とデートしないか?」 「デートですか……へっ!?お、俺と慧音先生がですか!?」 (コクリ) 「え、えーとですね……」 「わ、私じゃダメか……?」 「そんなことないです!行きましょうデート!」 「そ、そうか!嬉しいぞ○○!」 「で、どこに行きましょうか」 「いい場所を知っているんだがそこでいいかな?」 「あっ、はい!」 ~霧の湖~ 「涼しいですね慧音先生」 「ここは夏でも涼しいからな」 「……」 「……あのだな、○○一つお願いがあるんだがいいか?」 「何でしょう?」 「ふ、二人っきりのときは……その……慧音でいいぞ」 「慧音先生」 「むぅ」 「冗談ですよ慧音」 「ふふっ、嬉しいな名前で呼ばれると」 「……んっ寝てしまったのか」 「起きたか○○」 「慧音、顔が近いです……ってひざまくらですか」 「よっかかられた状態では辛そうだったからな、だからこの状態にしたが……ダメだったか?」 「いや、十分楽な姿勢ですよ慧音」 「そうだ耳掃除をしてやろう」 「あ、ありがとうです」 カリカリカリカリカリカリ 「なかなかたまっているな、教室は埃っぽいか?」 「掃除はしてるんですけどね」 「ほらっ左が終わったぞ、右を向いてくれ」 モフッ 「……」 カリカリカリカリカリカリ 「よし、終わったぞ○○」 「……」 「どうした○○?」 「いや、なんかこの気持ち懐かしいと思ってな……」 「そうか……」 「……慧音、もうすこしこうしてていいか?」 「ああ、いいぞ」 「……私が眠ってしまったか」 「……すーすー……」 「○○め、いつのまにか私がひざまくらされているではないか」 「う~ん慧音……」 「私が出てくる夢か、いったいどんな夢を見ているのだろうな……」 「慧音……好きだ~……」 「なっ、何だって!?」 「……むぅ……ん、また寝てしまったか」 「ま、○○!今言ったことは本当か!?」 「何か言いましたか俺?」 「いや、覚えてないならいい。はぁ……」 「慧音のことが好きって言っただけですよ」 「!? あ、あのな○○、そういうことは簡単に……」 「慧音だから言うんです、他の人になんか言いませんよ」 「そ、そうか……ありがとう○○、私もお前のことが好きだぞ」 「ありがとう慧音」 「その……さっきのはプロポーズということでいいんだな?」 「ああ、いつか言おうと思ってたし」 「ふふ、いつの間に敬語じゃなくなったな」 「先生だったからな、敬語を使う癖ができてるんだよ、きっと」 「だったから?」 「今は俺の愛する奥さんだろ?」 「う、うむ、そうだな」 「だったら慧音もそんな堅苦しい言葉遣いしなくてもいいんだ」 「そうか……○○、これからもよろしくな」 「ああ、よろしくな」 17スレ目 137 上白沢塾弐千八年度一学期期末試験 1、次の空欄に入る言葉を書き込みなさい。 ①、慧音先生の好きな人は( )である。 ②、慧音先生は○○を( )しています。 ③、○○と慧音先生は( )しあっています。 ④、二人は( )です。 ⑤、時々妹紅は( )になります。 ○○「何これ・・・」 慧音「おお○○、百点を取ったのはお前だけだぞ、おめでとう」 ○○「間違いなく皆呆れて何も書いてない筈だし俺も書いてない」 慧音「○○の答えなら空欄でも正解なのさ」 ○○「はぁ・・・大体解答欄に当て嵌まる様な関係はほとんど無いだろう? 俺も慧音が好きだけど、こういう行き過ぎた嘘は・・・」 慧音「大丈夫だ○○」 ○○「?」 慧音「今から事実にする」 ○○「や、ちょ、待って・・・ ていうか満月なんだからせめて掘るとかで許してアッー!」
https://w.atwiki.jp/orz1414/pages/249.html
真っ暗な闇の中。 青い髪の少女は幸せな顔で。 「好きだ」と。 言った。 そしてその目を。 ゆっくりと閉じた。 ◇◆◇ その少女は青い髪をしていた。 不思議な帽子を被っていて、村で先生をしていた。 俺は彼女に一目で恋をした。 人の世でも、こんな腐れた世の中にも美しい人はいるんだって。 俺は彼女に近づこうとした。 勉強をして、体を磨いて、己を磨いた。 だけど、まだまだ俺はガキだった。 そんな者に彼女が振り向いてくれるわけない。 まだだ。 まだだ。 彼女が振り向いてくれない。 なんでだ。どうして。 俺はこんなに頭がいいぞ。 俺はこんなに力があるぞ。 村を歩けば女共は俺の方を向くぞ。 なのにどうして。 お前は俺のほうを向いてくれない。 「お前は慢心が過ぎるな。少し、自分を見つめなおせ。恋だのなんだのいう話は、それからだな」 慢心が過ぎる? ふざけるな。こんなの認めないぞ。 ふざけるなふざけるなふざけるな。 こんな理不尽なことは認めない。 お前が俺を認めてくれないなら。 認めさせてやるさ。 俺は強いんだ。 力があるんだ。 ◇◆◇ 月のない夜。 俺は慧音を山に連れ込んだ。 妖怪がいるという、山。 強い妖怪だという。 それを俺が倒して見せれば。 慧音、お前は俺を振り向いてくれるだろう!? 登る登る。 山を登って、見つけた。 妖怪だ。俺よりも、慧音よりも、ずっと大きい。 蛇のような姿をしていた。 「あれか?」と慧音は訊ねる。 答えずに俺は飛び出した。 家から持ち出した刀剣を持って。 村長からもらったものだ。 妖怪を退治するといったら、くれたものだ。 「○○はほんに勇敢じゃのぅ」 村長は言った。そうさ、俺は勇敢なんだ。強いんだ。 慧音、お前にそれを見せてやる。 俺は飛び出した。 大声を上げて、刀剣を振り下ろした。 妖怪にそれは突き刺さる。 妖怪は悲鳴を上げて倒れこんだ。 「どうだ! 慧音! 俺は強いだろう! さあ、俺と結婚するといえ! 俺と一緒になれ! 一緒に暮らせ!」 「……○○っ! そこをどけぇっ!!」 何を言っているんだ。慧音! さあ、早く言わないか。俺と一緒になると! 何でそんな顔をするんだ。 何で俺に向かってそんな顔をするんだ。 頭がこんがらがって。真っ白になった。 強い衝撃が俺を襲った。 木にたたきつけられた。 肺から息が搾り出される。 心臓が止まった気がした。 かすかに辺りには血のにおいがした。 衝撃に閉じていた眼を開けると。 慧音が立っていた。 俺に背を向けて、両手を広げて。 その身体は、妖怪の口に半分以上飲み込まれていた。 傷口からは止めどなく血が溢れて、地面を汚している。 なんで。お前はそこに立っている。 俺は強いんだ。助けなんて必要ない。 何でお前は。俺を守るんだ。俺は強いんだ。 妖怪の攻撃なんて。見なくても避けられたのに。 何で。 「吹き飛べっ! 終符“幻想天皇”!!」 閃光に俺はまた目を閉じる。 轟音と絶叫と断末魔。 耳も閉じたかった。でも全ては一瞬の出来事で、そんな暇はなかった。 また目を開ければ閃光も妖怪も何もなく、青い髪の少女は地面に倒れ臥していた。 ◇◆◇ 「……ああ…………○○……無事だったか……。 ………………………………よかった…………」 何が良かっただ。そんなに血塗れになった。 何が良かっただ。俺は強いんだ。助けなんて必要なんてなかった。 勝手に助けて、そんなに血塗れになって。何が良かっただ。 「…………泣くな……………………○○…。 私がかっ…………てに…………した……ことだ」 泣く!? 俺がか!? こんなに強い俺がか!? 笑わせるな、俺は強いんだ! お前に守ってもらわなくてもいいんだ! 「そうだな……お前は…………強いな…。 しって…いる、ぞ。…………いつも…自分を磨いて…………いたな…」 そうだ! そうだそうだ!! だから!! そんな顔するなよ。 泣くなよ。 幸せそうにするなよ。 なんだよ、その顔。 幸せそうじゃないか。 だめだ、お前はこれから幸せになるんだ。 俺と一緒に幸せになるんだ。 やめろよ。その顔 まだお前は全然幸せじゃない。 だから泣くなよ。 幸せそうな顔するなよ。 まだ幸せじゃないだろ。 俺が幸せにするんだから。 嬉しそうにするなよ。 お前は俺が守るんだ。 守ってやるんだ。 その時に嬉しそうにしろよ。 俺が守ってないのに嬉しそうにするなんてずるいじゃないか。 「……わた…し……は。……しってい……る…………。 おま……え…………の……き、もち…………。 好き……だと…………むか…………し…、いっ……ていたな。 このさ……い…わたしも…………いっておこ…………う」 いうな! そんな言葉今聞きたくない! お前その言葉言ったらどうする気だよ!? 諦めるのか!? 許さないぞ!? お前は俺と幸せになるんだ。 それ以外認めない。認めない! 「……………………○○……」 黙れ黙れ黙れっ!! 「……好きだ…………………………………………」 うpろだ194 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「うーす、ただいまっと」 靴を脱ぎながら、家の奥にいるであろう慧音に話しかける 「今日の晩御飯は何だ?」 慧音は予想どうり居間にいた 「ああ○○、帰ってきたのか……」 少し元気がないように思えるが、それよりも台所からのおいしそうな においが気になった 「で、なんなんだ?」 「まぁ、その前にそこに座れ」 やはり少し変な感じだ、まさかこの前のちょっとした青春の暴走がばれたのだろうか、そうなると頭突きではすまないかもしれない 「で、どうかしたのか?」 俺は動揺を悟られないように普通を装った 慧音は少しためらいを見せてから 「今日はどこに行ってきたんだ?」 そう言った 「は?」 俺はかなり拍子抜けしたが 「いや、妹紅と山菜を取りにいっていたけど」 「そうかなら、昨日はどこに行っていた?」 「湖で釣りしてたけど、ああ確かチルノ達がいたな」 「なら一昨日はどうしてた?」 「神社に行ってたよ、それがどうかしたのか?」 結局慧音が何を言いたいのか分からない 「じゃあ、最後に私と出かけたのはいつか覚えているか?」 「あーー、最近出かけてないな一週間前ぐらいか?」 「十日前だ……」 ここでやっと何が言いたいのか分かった 「つまり、どこかに連れて行けと」 そういうと目に見えて慧音は動揺した 「な、なにもそうは言ってないぞ、まあその少しくらい二人の時間を……」 「じゃあ明日は二人でどこか行こうか?」 「だ、だから、別に催促してないぞ、それに明日は寺子屋があるし」 「じゃあ無理か、残念だなあ、慧音とデートしたかったんだけどなあ」 そう言いながら俺は立ち上がって台所のいい匂いの元に歩いていこうとした すると俺の服の裾をつかまれた 「あ、明後日は休みだ、だからその……」 俺は慧音がすごくかわいく見えて頭をポンと叩いて 「じゃあ、明後日は二人で出かけような」 と言った 慧音はうれしそうにうなずいた 「所で○○、さっき座らせた時に態度がおかしかったが 何か隠してないか?」 機嫌のよくなった慧音が食事中にたずねてきた 「ゲホッ!な、何もないよ」 煮物を噴出しそうになりながら俺は答えた 「そうか、私には言えない事か……」 さっきまで機嫌がよかったのにまた暗くなってしまった そこで俺は渡すものがあったのを思い出した 「ああそうだ、慧音にプレゼントがあるんだよ」 「え、本当か?」 何かすごく嬉しそうだ 「あぁ、これなんだが、ちょっと前に作ったんだが、忙しそうにしてたから 渡せなくてな」 そう言って俺は紙袋から洋服を取り出した 「俺が作ったからそんなに良いもんじゃないけど、それでももらってくれるんなら」 そういって渡すと慧音は胸に抱くように洋服を持ち 「もらうに決まっているだろう、せっかく○○が作ってくれたのだ。返せと言われても返さんぞ」 今までに見たこともないほどはしゃいでいた 「そんだけ喜んでもらえたらこっちも苦労した甲斐があるよ」 本当に苦労したからな、本当に 俺がちょっと苦労を思い出していると慧音は何か疑問に思ったらしく 聞いてきた 「ところでなんで○○は私の服のサイズを知っているんだ?教えた覚えはないが……」 空気が少し寒くなった、 「いやだなあ、教えてもらったよ。うんマジで」 俺は動揺がばれないように普通を装った 「……」 「……」 「……」 「……」 「○○」 「はい、すいませんでした、前に昼寝してるときにこっそり測りました」 俺は頭突き覚悟で答えた 「……まあいい、これのためと言うなら水に流してやろう」 「よかったぁ」 本気で頭突きじゃすまないかもって思っていたからな 「全く、私に聞けば済む話じゃないか」 「いやぁまあ、驚かしたいってのもあったし、後その立派な胸を測ってみたかったって言うのもあって……」 俺はまた空気が寒くなるのを感じた 「○○」 「はい」 「頭を出せ」 「はい……」 慧音の顔が近づいてくる 「いくぞ」 俺は目を閉じ衝撃に備えた が予想した衝撃は来ず、不思議に思い少し目を開けると 「……!」 唇に柔らかい感触が当たり、慧音と思いっきり目があった そして慧音は顔を引いて 「今回これで許してやる」 その後食事を再開したが二人して真っ赤なになってしまい会話もできなかった 7スレ目 600 610 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「全く、せっかく新しい服を着てきたというのに釣りとはな」 慧音が呆れたように呟く 今日は一昨日約束していたようにデートに来たのだが少し慧音が不機嫌だ 「まあいいじゃないか、俺は慧音がいればそれでいいぞ」 すると顔を赤くしながら 「それは私もそうだが……しかし」 「それにさ今日は別に目的もあるんだぞ」 「ほう」 何かまた不機嫌になったが 「この湖は新月の晩に怪物級の大物が釣れるらしいんだ」 「はあそれが本音か……まあお前の釣り好きは分かっていたがな」 慧音はあきらめたようにため息をついた そうこうしているうちに正午になった 「そういえばさ慧音、朝から弁当作っていたよな」 今日朝起きたらいい匂いしてたからな 「ふふ、期待していいぞ。今日は気合を入れて作ったからな」 そう言って慧音は誇らしげに包みを取り出した 「なんかでかくないか?」 明らかに二人分にしては大きすぎる 「そうか?まあ大丈夫だろこっちは夜食の分だし」 それでも多いと思うがな 包みを開けると色とりどりのおかずとおにぎりが並んでいた 「うまそうだな、さすが慧音だな」 慧音は照れたように 「いっぱいあるからな、腹いっぱい食べるといいぞ」 とうれしそうに言った すると上から声が聞こえてきた 「○○~!なにやってんの?」 チルノが俺たちを見つけて降りてきた 「ん、釣りだよ。んで今は食事中」 「ふ~ん、それおいしそうね」 チルノが俺の持っているおにぎりを指差して言った 俺は差し出しながら聞いた 「なんだ、食べたいのか?」 「いいの?」 「いいよな?慧音」 そう言いながら慧音をみると 「……ああかまわないぞ」 少し声のトーンが低かったが慧音はそう答えた 「ほらチルノ」 「ん、ありがとう○○、慧音」 チルノはうれしそうに大きく口を開けておにぎりをほうばった 「……」 「どうかしたか?慧音」 なんかまた少し機嫌が悪くなっている 「なんでもないぞ……」 「そうか?ってチルノ急いで食べすぎだ、ほうにご飯粒ついてるぞ」 そう言いつつ俺はご飯粒を取ってやった 「……!」 「ん……。ありがと○○」 「ああ、ん、慧音?」 何かなんかさらに機嫌が悪くなってる 「どうした?おにぎりの具で嫌いなものが当たったか?」 「……なんでもないって言ってる」 「?、まあいいけどな」 その後慧音が静かなまま昼食は終わった 何かやたらと慧音の頬にご飯粒がついていたけど 食事後不機嫌なままの慧音とチルノにはさまれながら釣りをして 「ねえ、○○まだ釣りするの?」 チルノが首にまとわりつきながら聞いてきた 「今回は夜が本番だからな、まだまだいるよ」 「ふーんあたいはお腹いっぱいで少し眠くなってきたよ」 「なら少し寝るか、ほらひざに乗っていいぞ」 「な……」 慧音何故か驚いていたけどチルノがひざに乗ってくる 「んふふ」 「なんだよチルノ」 ひざの上でチルノが変な声を出す 「○○のひざなんか気持ちいい」 「そうか?まあひざぐらいならいつでも貸してやるぞ」 「そうなのか!○○」 慧音が何かいきなり大きな声で聞いてきた 「ああ、って何で慧音そんなに驚いてるんだ?」 「い、いや別になんでもない」 慧音は平静を装うとしていた まあそんなこんな日が暮れてチルノは帰り本番の夜が来た 「なあ○○、少し寒くないか?」 確かに春とはいえ夜になると少し寒い 「ああ、ちょっとな」 すると慧音は少しためらったようだがこちらに近づいてきた 「○○ひざいいか?」 「は?」 一瞬頭が真っ白になった 「だからひざに座ってもいいか?と聞いたんだ」 「いやそれは……」 俺が答えに詰まっていると 「何故だ?チルノにはいいって言っていたじゃないか!」 慧音は少し声を大きくして聞いてきた 「チルノは子供だからであって、慧音は……」 そういって慧音を見ると少し涙ぐんでいるように思えた 俺はそれを見て 「わかった、ほら」 とひざをさし出して慧音を乗せてあげた 髪からはいい匂いがするしひざにはやわらかい感触がするしで 何かもう意識が持ってかれそうになるのを必死に食い止めた 「すまない、わがまま言って」 慧音は静かにそういった 「別にいいよ、そんな時もあるだろ」 「しかし、○○も悪いんだぞ、久しぶりのデートが釣りだし チルノの相手ばかりしてるし」 そう不機嫌そうに答えた 「そっか、すまんな。じゃあまた今度出かけようか? 次は慧音の行きたいところで」 すると慧音はうれしそうに頷き 「今度はちゃんと二人っきりになれるところでな」 そう答えた 「よし、じゃあ今日はもう帰ろうか?」 俺は巨大魚をあきらめそう言った 「いや、もう少しこのままがいい」 恥ずかしそうに慧音はそう答えた、 俺も異論はなかったのでそのまま慧音の体温を感じていた というわけで おしまい 7スレ目 623 625 ─────────────────────────────────────────────────────────── 彼女がそこにたどり着いたとき、それはもう手遅れだった 男はもう物言わぬ躯となってしまっていた 彼の名は○○、ワーハクタクの彼女が愛した男性だった 彼女はベッドに横たわる彼に泣きすがり、この事実を懸命に『なかったこと』 にしようとしていた しかしそれは叶わぬことだった、死者をよみがえらせることなどはできない それは彼女自身が最も理解していた、しかしそれでも一縷の望みを賭け 無駄だと理解している行為をやめようとはしなかった。 いややめることができなかった、止めてしまえば そのとき彼女は彼の死を受け入れてしまうことになる そしてその悲しみに自分の心がつぶされてしまうことが分かっていたからだ そうしているうちにどれだけの時間がたっただろうか 少なくとも彼女にはとても長い時間だっただろう 依然として彼は生き返ることはなかった、それは当然のことであった 彼女も理解せざる得なかった そして彼の死という事実も すでに彼女の精神は限界に来ていた、このままでは自分が悲しみ壊れてしまう そう彼女は思った そしてそうなってもいいかとも思った、彼がいないこの世に何の未練があろうか このまま狂ってしまうのも楽かもしれないそう思った しかしその時彼の顔が脳裏に浮かんだ そして自分がやらなくてはいけないことを思い出した それは人間を守ること 安全で平和な場所からきた彼は危険なこの世界に驚き そしてその危険から人間たちを守っている彼女の行為に賛同し協力してくれていた そんな彼のためにもこの精神状態から立ち直らなくてはいけなかった しかし彼の死はあまりに重かった、それは生前の彼への想いに比例していた 長い時間が過ぎ、彼女は決断した。彼との出会いを『なかったこと』にすること そうすることで自らの精神を保つことを 彼女は彼の顔近づけ口付けを交わした 「さようなら、○○。愛してる」 そして彼女は彼との思い出全てに別れを告げた 7スレ目 642 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「慧音、調子はどうだ」 「まあまあだ。だいぶ楽になってきたぞ」 布団から返ってきた声は割と元気だ。一先ずは安堵する。 昨夜に慧音が突然出してしまった熱。念のために呼び寄せた永遠亭の薬師が言うには、 「働きすぎ、か。半分人間だから過労はあるんだな」 「恥ずかしい限りだ。こんなに心配もかけてしまって……」 慧音が視線を向けた先には、籠に入れられた花を始め、多くの見舞い品が置かれている。 昼間、慧音のピンチヒッターに寺子屋に行った帰りに子供たちから渡された物だ。 「皆直接見舞いに来たがってたぞ。お前に言われたとおり断っておいたが……」 「来てくれたばかりに移してしまったら申し訳ないからな。これで良かったのさ」 なんとも慧音らしい気遣いだ。そこがもどかしくもあるのだが。 「それだけ慕われているってことさ。そうでなければ心配されることもない」 「……そうだな。本当にありがたいことだ」 慧音は感慨深いように呟き、こちらに顔を向けて言う。 「お前も、心配してくれたんだろう?」 「……当たり前だろ」 そうでなかったら看病なんてしていない。 助けて貰ったり居候させてもらっている恩も勿論あるが、何より好きな女を心配しない奴など居るはずがない。 慧音が向けてくる笑顔に気恥ずかしくなって、思わず頭をかいた。 ここで一旦会話をやめ、さっきから続けていた台所での作業に戻る。 作っているのは料理スキルゼロの俺でも作れる、病気のときの定番だ。 ……そういえば、こんな状況だからこそできる行為があったな。やってみる価値はあるか。 「ほれ、粥作ってやったぞ」 「ああすまない……何をやってるんだ」 掬った粥を吹いて冷ましていたら慧音に怪訝な顔をされた。そんなに怪しいもんかね。 どうやら俺の意図していることに気付いたらしく、 「……態々そんなことしなくてもいい。自分で食べられる」 「俺がしたいだけだから気にするな。ほれ、あーん」 気にせず粥を突きつけると、 「……あーん」 少し逡巡した後、それを口に含んだ。 慧音が飲み込むのを待ってから話しかける。 「意外だな。もうちょっと嫌がるもんかと思ってたんだが」 「……お前だからさせるんだ。妹紅にもさせんぞ、こんなこと」 「……それは俺に気があるのだと解釈してよろしいか」 「ば、馬鹿なことをいうな! そんな筈ないだろ……多分」 「多分ってなんだよ」 珍しくはっきりしない慧音の額を小突く。慧音は痛そうに額を押さえた。 曖昧に言われると変に希望を持ってしまうじゃないか。慧音みたいないい女が俺なんかに惚れる筈無いし。 「むぅ、それが病人に対してすることか?」 「悪い悪い。そら、続きだ」 「いや、後は自分で食べるから大丈夫だ」 「そうか? ならいいが」 せめてもう一回ぐらいは、という希望が頭を過ぎったがすぐに打ち消す。 病人に無理強いは良くないしな。一回やらせてもらっただけでも良しとしよう。 ゆっくりと粥を食べ終えた慧音は、食器をこちらに手渡すと軽い伸びをする。 「よし、この調子なら明日からまた寺子屋に行けそうだ」 おいおい、この半獣は。 「病み上がりで行く気か? 移したくなかったんじゃないのか」 「白沢を舐めないことだ。この程度の風邪ならば一晩で治る。永琳殿の薬もあるしな」 「いや、しかしな……」 確かに永琳さんの薬も効いているようで見た感じ元気そうに見えるが、それでも心配なものは心配だ。 そう思って頭を振ろうとすると、慧音のほうから、 「勿論体力は完全に戻ってないからな、そこでお前に手伝ってもらう」 「……本気ですか?」 「間違いなく本気だ。それともなにか不満でもあるのか?」 「不満というか……不安のほうだな。昼間行ってみて俺に教師の真似事が向かないことがよく判った」 遊び盛りの子供ばかりなので、皆騒がしかったり落ち着きが無かったりと席に着かせるのも大変だった。 あのわんぱくどもにいつも教えているというのだから、改めて慧音は凄いもんだと実感した。 「私のいるときだっていつも静かなわけではない。細かな話し声ぐらいは聞こえるさ。 子どもは元気が一番なわけで……と、それはともかく手伝ってくれるな?」 それに関しては実は異論ない。さっきはあんなこと言ったが、慧音の頼みという時点で断るつもりなどないのだから。 それでも一つだけ確認しなければならないことがある。 「別に構わんが……一応最終チェックな」 「チェック?」 ああ、と軽く答え、疑問符を浮かべたままの慧音に近づき、 額と額をくっつけた。 「なっ……!?」 慧音の顔が見る見るうちに赤くなる。これは…… 「まだ熱あるじゃないか。これじゃ明日は無理……っと、うおぉっ!? いきなり弾を飛ばすな! 鼻に掠ったじゃねえか!」 飛んできた弾を咄嗟に避けて文句を言うと、慧音のほうも言い返してきた。 「間近にまで顔を近づけるほうが有り得ないだろう!! 驚いたじゃないか!」 「なんだ、キスされるとでも思ったか? そいつは残念だったな! つーかさせてくれるんだったらむしろ喜んで!」 「寝ていろこの馬鹿者っ!!」 ――ドスンッッ!! 慧音の神速の頭突きが土手っ腹に突き立った。 「かはっ……!」 その場に膝を折る。準備動作すら視認できない、まさしく神速の突きだった。 「ぐっ……病み上がりでも威力は変わってない、か……!」 「当然だ。明日は絶対に手伝ってもらうからな、覚悟しておけ」 「言われなくても……あ、やば……」 その場に立ち上がることもできず、そのまま俺の意識は闇の中へと落ちていった。 「やれやれ……」 急に静寂が戻った室内に声を漏らす。さっきまでの喧騒が嘘のようだ。 「お~い、○○起きろ」 地面に崩れ落ちたまま動かない○○に呼びかける。が、反応はない。 ……本当に寝てしまったのか。自分でやったこととは言え、少々やりすぎた感がある。 朝になったら謝ろうかと思ったが、こいつがやった所業を思ったところでその考えは捨てた。お互い様というやつだ。 ……思い出したらまた恥ずかしくなってきた。顔が赤くなっているのが自分でも判る。 「お前にだったら口付けぐらい……」 無意識に口から出た邪な考えに、頭をブンブンと振る。 落ち着け、人間の本質は理性なのだ。この程度の感情も制御できずにどうする。 自分が半分妖怪であることは置いといて、とりあえず深呼吸。……よし、落ち着いた。 落ち着いたところで早く寝よう。予想外に騒いだので疲れてしまった。 あ、でもその前に○○の奴をどうにかしないと…… 「…………」 一つ妙なことを思いついてしまった。 頭に浮かんだそれを打ち消そうとするが、なかなか消えてくれない。 ……実行するしかないということなのか。最近○○の影響を受けすぎている気がする。 とりあえず○○を私の布団に入れて、体勢を変えて……こんなものか。 「これで○○の腕枕ができた、と……」 少しでも卑猥な想像をした者は正直に挙手しろ。先生がなかったことにしてやるから。 男女が同じ布団で寝ることが卑猥なのだ、と言われたらそれまでなのだが。 ええい、私はいつもこいつの馬鹿に付き合っているんだ! これぐらいのことは許されてしかるべきだろう。 強引に己を納得させてから、灯りを消して布団に潜り込んだ。 暗くて見えないがすぐ近くに○○の気配を感じる。 それが判っていても自分からしたことだからだろうか、先程のように慌てたりはしない。 冷静になって考えると、こんなことを思いつくということは私はこいつに好意を持っているのだろうか。 「……うん、きっとそうだな」 認めよう。私はこの人間のことが好きだ。 声に出して言い切れるほどではないが、それでも確かにそう思っている。 では○○のほうは私のことをどう思っているんだろう? 「心配してくれたということと、好きだということは別物なわけだし……」 ……不安だな。○○の気持ちが判らないというだけのことなのに。 勿論相手の気持ちを知ることなど、あのスキマ妖怪でもない限り不可能だとは理解している。 それだけ判っているというのに、自分の本当の気持ちを確認してみた途端にこの有様だ。 「長く生きてきたつもりだが……まだまだだな」 考えたところでどうにかなることでもないしな、そろそろ本当に寝よう。 だけど……その前に一つだけ願っておきたい。 お前がいつか、私の気持ちに答えてくれますように―――― うpろだ234 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ただいまっと」 と言いつつ俺はいつものように慧音の家のドアを開けた 「慧音いないのか?」 「……」 居間に行くと慧音がいた、返事をしてくれなかったみたいだ。 「慧音、ただいま」 「……お帰り」 やっと返ってきた答えなぜかものすごく不機嫌だった。 「なんか不機嫌だな、どうした?」 「さあな、朝起きていきなり 『昨日はすっげぇ雨だったから今行けば大物が釣れるかもしれない!』 などと言って寺子屋の手伝いもほっぽり出して釣竿持って飛び出してやつには わからんだろう」 とすげえ不機嫌そうに言った 「思いっきり理由いってるじゃな……」 「……」 なんか反論しようとしたら物凄い空気が重くなった。 このままだとさすがにやばいので用意しておいた物を取り出した 「悪かったって、ちゃんと土産も持ってきたぞ」 ドンッ!と音を立てて土産をちゃぶ台の上に置いた。 「……コレが土産か?」 「そうだ」 「なぁ○○確認しておくが、お前は釣りに行ったんだよな?」 「そうだ」 「ならなんで、土産が酒なんだ?」 「ん?慧音は酒嫌いだっけ?」 「いやそんなことはないが、むしろ結構好きだが」 「なら問題ないじゃないか?俺は酒は飲めないから 全部飲んでくれていいぞ」 「そうか?ならもらっとくが……しかし本当にどうしたんだコレ?」 「ああ、最初に釣りに行って結構早いうちに大物が釣れたんだよ」 「そうなのか?それなら昼までに戻って来い、私はちゃんとお前の弁当も作ってたんだぞ」 「それはすまんかった、んでその魚をさ橙がほしがってさ、あげんたんだよ」 「ふむ、そのお礼にコレをもらったとかか?」 「いや藍さんはお礼にっていなりずしを分けてくれたんだ、そしたら それを魔理沙に取られてかわりにキノコをもらって、そしたらそれを うどんげが使うって言ったから渡して、かわりに人参もらってそれで…」 「ちょっと待て」 俺がここまで言ったときに慧音が遮った。 「何だ?」 「酒はいつ出てくるんだ?」 「まだ結構先だな」 「お前はわらしべ長者か……もういい結局コレは誰にもらったんだ?」 「霊夢だ、確か米と交換したんだ」 「人参が米になったのか……」 「いや人参はたけのこと交換してそれを……」 「だからもういい……」 「そうか?」 「お前が私をほったらかしてそこらじゅうウロウロしてたのはよく分かった」 やっぱりまだ不機嫌だった 「それはすまなかったって言ってるじゃないか、ほらお酒飲むだろ 今晩は付きやってやるから、俺は飲めないけど」 そう言って晩酌の用意をしてやると慧音は渋々杯を持った 「ホラホラ、イッパイノンデヨ、シャチョサーン」 「なんだそれは……っ!○○この酒かなり強くないか?」 「俺に酒のこと聞かれてもわからんぜ」 「そうだったな、しかしうまいがやはりかなり強いぞこれは」 「ホラホラ、ツマミモアルヨ、シャチョサン」 「そのしゃべり方はやめろ……」 という感じで何とか慧音の怒りをしずめることに成功したのだが 三時間後俺は後悔の渦の中にいた 「だからだな、お前はもっと後先を考えた行動をだな……」 「ああそうだな」 あれから三時間俺がもらってきた酒は予想以上に強く 慧音は完全に絡み酒モードになっていた。いつもならこんなことはないのだが どうも酒が口当たりがよく飲みすぎてしまったらしい 「聞いているのか!○○」 「はいはい、聞いてるよ」 結果今の状態になったわけだ 「大体今日だって……」 この話も何度目かもう忘れた 「聞いてるのか!」 「はいはい」 もう俺も返事が適当になってきた 「私はちゃんとお前が来てもいいようにちゃんとお前の分も 弁当を作っておいたんだぞ」 「ああ、すまんかった」 「前からお前は私に対する思いやりが足りないんだ」 「ああわかったこれからは気をつけます」 「明日からはちゃんと思慮深く行動しろ!」 「はいはい」 「昼はちゃんと一緒に弁当を食べろ!」 「はいはい」 「明日からは手をつないで歩け!」 「はいはい……ん?」 なんか要求が変だった気が…… 「たまにはぎゅーーってしろ!」 「は?」 「朝はおはようのキスだ!」 「ちょっと待てって!」 「夜は一緒に寝ろ!」 「いやだから、なんかおかしいって慧音…」 「うるさい!わかったか!」 「いやだから…」 「分かったら返事は!」 「だから…」 「返事は!」 だめだ聞いてくれない、とりあえずここは 「わかったから、とにかく落ち着けって」 とにかく落ち着かせるのが先決だ、俺がそう答えると 「そうか、分かったならいいんだ」 そういってうれしそうに笑った 「ああ、やっと落ち着いてくれたか……」 「わかったのならさっそく」 そう言ってこっちに飛び込んできた 「ちょっ!なんだ、どうした?」 「今日は一緒に寝る」 「はぁ!なにいってんだよ、慧音!」 「さっきわかったと言ったぞ、お前は」 「それはそうだけど」 「だから今日は一緒に寝る」 そう言って俺の首に腕を回したまま目を閉じた。 「マジかよ……」 そのまま俺が動けずにいると寝息が聞こえてきた 「本当に寝たよ…どうしたらいいんだよ」 俺はとにかくこのままだと風邪を引きかねないので 慧音をぶらさげたまま布団を敷いたのだが どうしても慧音が首から外れずそのまま寝ることになったのだが だが慧音の寝息が気になって寝るまでにすごく時間がかかった 翌朝、起きてみると慧音はいなくなっていた 台所に行ってみると慧音は朝食の用意をしていた 「おはよう」 「お、おはよう」 慧音は明らかに動揺していた 「なぁ慧音」 「な、何だ?」 「昨日の事覚えているのか?」 すると顔がすごい勢いで赤くなった ああコレは覚えているんだな 「何のことダ?」 なんか声が裏返ってた まあまた不機嫌なられても困るしな 「そうか、ならいいんだが」 深く突っ込むのはやめた その後朝食を終えて寺子屋に行くことになった 今日は俺も手伝いについていく 「さ、慧音行こうぜ」 「あ、ああ」 まだ動揺したままだった、俺はそんなに慧音に手を差し出した 「……?」 「手をつないで行くんだろ?」 「なっ!」 「ほら、先生が遅刻したらシャレにならんだろ?」 そう言って慧音の手を握る 「ほら行くぞ」 「……ああ!」 慧音は俺の手をぎゅっと握り返してくれた うpろだ245 ─────────────────────────────────────────────────────────── 夏も本格的になり物凄く暑い日が続くなか 幻想郷の恋人たちは夏の暑さにも負けずにそれぞれに自分たちの熱い愛を 確かめ合っていた。 「それはかまわんのだが、さすがにこうも日が高いうちからというのは……」 私は先ほど訪れた妹紅、阿求の家のことを思い出していた 「さすがにアレはな」 夏の暑さに浮かされたようにも思えたがアレらも愛の形なのだろうか? 「私にはあそこまではできないな」 しかしそんなふうに考える一方少しうらやましいような気もしていた。 彼らのように素直に恋人に接したい。 この前の一日遅れの七夕の日からそんな気持ちは強くなっていった。 『このまま幻想郷で慧音と楽しい日々がおくれますように』 彼はあの七夕の夜、こんな願いを短冊に書いた。 それは彼が自分とともに生きることを誓ってくれた証だった。 今でもそのことを考えると顔がにやけてしまう、 そして私は早くその溢れてくる感情の実感を得るために ○○の待つ家へと急いだ。 「ただいま、○○!」 私は勢いよく家の戸を開けるといつも彼がいる部屋へ向かった。 「ああ、おかえりぃー」 彼の声が聞こえてくる、私の歩みはさらには早くなり彼の部屋へと入った。 ああ、とりあえず○○にどうしようか、それこそ阿求のように思いっきり ○○に飛び込んでしまおうか、私はそんないつもは考えないようなことを考えていた。 私も結構夏の暑さに当てられていたのかもしれない。 しかしそんなことを考えて部屋に入った私の目に飛び込んできたのは 下着一枚で仁王立ちした○○だった。 この暑さですっかり忘れていたが私の恋人も結構アレだったのだ。 「いきなり思いっきり頭突きってのはあんまりだと思うんだよ」 オデコをさすりながら○○はそんなことを言うが、明らかに自業自得だった。 さっき仁王立ちした○○を見た時私はとりあえず○○に頭突きをかましてから 浴衣を羽織らせたのだ。 「お前が女性の前に下着一枚で現れるのが悪い」 「そうか?」 「そうだ、全く何を考えているんだか……」 「そんなに怒らなくてもいいと思うんだけどな、なんか慧音今日機嫌悪くないか?」 「悪くない!」 そういって○○の反論を遮った、なんとなくさっきまで一人浮かれていた自分が 恥ずかしくなってきたからだ。 「大体何してたんだ○○は?」 「ああ、ちょっと考え事してたんだよ」 「お前は考え事する時に下着一枚で仁王立ちするのか?」 「たまに……、つーか考え事してたら暑くてさ」 「で、何をそんなに熱心に考えてたんだ?」 どうせまたバカなことなのだろうとたかをくくっていたら 「……それはだな慧音」 予想に反して○○は急に真面目な顔にこっちをじっと見てきた。 「あ、ああ……」 私はかなり意表をつかれてしまった。 いつも思うがこれは卑怯だと思う、人をからかっていたと思ったら 不意に真面目になったりして、そのギャップは私の心を大きく揺さぶる。 しかしそんな私の心境など露知らず、○○はすっと立ち上がり 「俺は魔法使いになることにした!」 と高らかに宣言した。 やはり私は早まったのだろうか、そんな気持ちが私の心を満たしていった。 続きます うpろだ265 ─────────────────────────────────────────────────────────── この世界に来てからどれ位時間が経ったのか。 俺は傍らに置いた掌より少しだけ大きい手記を手に取った。 パラパラ、と乾いた音を立ててページを捲る。 「・・・大体一ヶ月か」 パタン、と音を立て手記を閉じ、空に浮かんでいる白い月を見やった。 「やあ、ここにいたのか」 「・・・ああ、慧音先生」 そう言って縁側にやって来た女性は、名を 上白沢 慧音 という。 元いた世界から突然ここにやって来て難儀していた俺をこの村まで案内してくれた恩人だ。 「お疲れ様です」 「労いありがとう」 彼女はこの村で寺小屋の講師をやっている。 毎日元気の有り余っている子供たち相手に長時間労働しているのだから、さぞ疲れる事だろう。 「少し待っていて下さい、今お茶を淹れてきますから」 「いや、それは悪いからいい」 言葉だけでは何だしせめてお茶ぐらいだそうと思って立った俺に、彼女は苦笑しながら言った。 「いえ、先生は恩人ですから」 「だが・・・」 「丁度、俺も喉が渇いていたんです」 まだ何か言いたそうな表情をしていたけど、このままでは埒が空かないので少々ゴリ押しで納得してもらう。 彼女はよく俺の家にやって来る。 理由は簡単、俺が「外の世界」について様々な事を話すからだ。 彼女は割りと外の世界について興味があるらしく、一度お礼とばかりに元の世界での話をして見た事がある。 それ以来こうして時折仕事が終わった後に俺の家に寄ってくれるようになったのだ。 それに、とあるきっかけで知ったのだが彼女はワーハクタクという半獣らしい。 初めてその姿を見た時、彼女は「気持ち悪いだろう?」と自嘲気味言っていたけど、角が生えて髪の色がいきなり変わったぐらいだったので「そんな事無い」と俺は答えた。 というかその程度の事なら、俺は彼女に出会う前までの生活でかなりスプラッタな光景を目の当たりにしてきたので、そこまで驚くほどのものでは無かった。 それから彼女には「歴史を作る能力」と「歴史を喰らう能力」があるのだと言う、そう言った能力的な関係か彼女は俺の居た世界の歴史の話が特に好きなようだった。 「お待たせしました」 淹れ立てのお茶を二つ、木製の盆に置いて縁側に向かう。 「すまないな」 苦笑気味そう言って先生はお茶を受け取ってくれた。 「いえいえ・・・さて、今日はどんな歴史について話しましょうか?」 「そうだな・・・ 以前聞いた君の國の歴史についてもう少し詳しく知りたいが、良いかな?」 「ええ、構いませんよ」 そう言って俺は語りだす。 もっとも俺は別に日本史や世界史の教授やら研究者ではないので、所詮その知識にも限界というものがある。 いずれ、いや多分数日中くらいには自分が知り得る全ての世界史は語り尽してしまうだろう。 そうなったらどうなるのだろう。 もう、彼女はここには来ないのだろうか・・・・・・ 「なるほど・・・非常に興味深い。 君の國の文化形態は私達の世界の文化形態と共通点が多いようだな」 一時間と少しぐらいで本日の歴史語りは幕を閉じた。 彼女にとって歴史を知ることは本当に嬉しいことの様で、月明かりの元で微笑む先生は何となくいつもより生き生きしているような気がした。 ああ、もうすぐこうして彼女を喜ばせてやる事が出来なくなるのか。 そう思うと少しだけ物寂しいような気がした。 「? どうした、そんな顔をして」 どうやら心の内が表に出ていたようで、先生が声を掛けてくる。 「あ、いや・・・なんでもないです」 「いや、あるのだろう? 何せ、皆そう言って逃れようとするからな」 「・・・・・・敵いませんね」 おそらくは先生のことだから一度こぼしてしまったからには最後まで問い詰められそうだ。 本当に、心優しい人だと思う。 「どうした? 言ってみろ、私に出来る事なら力になろう」 先生は教え子を諭すように俺に言ってきた。 だから俺はそんな先生に逆らうことが出来ず、 「・・・・・・もう」 「もう?」 「もう、先生にお話できることはあまりないんです」 「え?」 言ってしまった。 「正確にはもう俺の知っている“外の”歴史はあまり無いんです」 「・・・・・・・・・・・・」 「先生は言いましたよね『自分の力は歴史を生み、喰らう事だ』って」 間を入れずに言葉を続ける。 「思ってたんです、先生がこうしてよく俺の家に来るのは俺が“外の”歴史について話せるからじゃないかって・・・」 「・・・・・・・・・・・・」 「だから俺が歴史について話せなくなったら、先生と話すような機会は少なくなるのかなって思って・・・」 この村の住人たちは異邦人である俺に対しても良くしてくれる。 それは嬉しいことだ。 でも、いつしか俺は欲を持ってしまっていた。 もっと彼女と関わりたい。 気が付かないうちに、俺は彼女との関わりを求めてしまっていた。 「・・・・・・・・・・・・」 俺の言葉を受けて、先生は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。 「ふ・・・ふふふ、ふふふふふ・・・・・・」 と思えば今度は急にさも可笑しいとばかりにクスクスと笑い始めた。 「あ、すいません・・・変な事を言いましたね」 「いや、違うよ」 まるで子供の駄々だ。 俺は自分の言った事の幼稚さに気が付いて急に恥ずかしくなり、慌ててお茶を口に含んでやり過ごそうとした。 先生は少しばかり笑いを収めるのに時間を掛けてから言った。 「いいか? 確かに私の力はお前の言うようなものだ、だが私は別にその能力ゆえにお前の語る“外の”歴史が聞きたかったんじゃないんだ」 「私はただ単にお前の語る事そのものに興味があったんだよ」 「・・・先生」 「別に歴史の話が尽きたならそれでもいい。 私にとってはお前が語る事自体が面白いのだからな。 それに・・・」 「それに?」 そこまで言って先生は一旦言葉を区切り、 「お前自身の語る事も、お前と言う人間が残した“歴史”とも言えなくはないか?」 花が開くような笑顔でそう言ってくれた。 「――――――」 言葉が出なかった。 それほどまでに、月光の中で微笑む先生の表情は美しかったのだ。 多分、今俺は大口を開けて大層間抜けな面をしているのだろう。 だが俺も男である以上、彼女の美しい笑顔に見惚れてもおかしくはないだろう。 「・・・はは、すまない。 少し気障な事を言ったな」 「いえ――」 バツが悪そうに頭を掻く先生に俺は返す。 「それならば語りましょう、俺と言う“歴史”を。 先生が満足するまで」 自分に出来るだけの最高の笑顔を作る。 でも内心「気持ち悪くないだろうか」などとビクビクしていたりするのだが。 「・・・ああ、よろしく頼むよ」 彼女もまた嬉しそうな表情で返してくれた。 「それから一つ提案があるのだが・・・」 「何でしょう?」 良かった良かった、とホッとしている俺に先生が声を掛けてきた。 「あの・・・な、その・・・お前は私の事を常に“先生”と呼ぶだろう?」 「ええ、そうですね」 「でも、ほらその、そろそろ私達の付き合いも長くなるだろう?」 「確かに一ヶ月は経ちましたからね」 妙にもじもじとしながら、らしくない様子で先生が言う。 「だからその、そろそろ名前で呼んでは、くれないか?」 身長差の影響で、必然的に先生は上目使いで俺に言葉を掛ける事になる。 正直、殺傷力が強すぎる。 直視し続けていると何だか邪な気持ちが湧き上がってきそうだった。 なので俺はなけなしの理性で衝動を押さえつけ、出来るだけ穏やかな表情で彼女のリクエストに答えることにした。 「じゃあ、その・・・慧音さん」 「○○・・・」 その時の慧音の笑顔は、俺が今まで見てきたどの笑顔をよりも美しく輝いて見えたような気がした。 ああ願わくば、この美しい人の笑顔をこれからも見つめていけますように。 8スレ目 879-881 うpろだ278 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「せんせー!向こうに誰か倒れてるよー」 生徒が騒がしいと思ったら、人がたおれてるのか、そうかそうか・・・倒れてるッ!? 「おい君!大丈夫か!?」 急いできてみればなんかその・・・死体 「うっ・・・」 あ、違った、生きてました 「おい君!大丈夫か?」 ・・・返事がない、ただの(ry 「うーん・・・しょうがない、家に運ぶか、よっ・・・っと」 おもい、流石に私も女だ、女だぞ? 「しょうがないな」 男の両足を持って、引きずっていくことにした 「ぐっ・・・此処は・・・」 「気がついたか、道端で垂れていたんだぞ、君は」 「痛っ・・・背中がひりひりする?」 それは私が引き摺ったせいだろう、申し訳ない 「・・・身体に異常はない、疲労が溜まっていたのだろう」 「せ、世話になったな、俺はもう行く」 「おい、もう少し休んで」 「これ以上迷惑はかけられない」 男の瞳、それは何か、訴えるような、悲しい目だった 障子を開け、コートを羽織り、男は 「ええい!待てと言ってるだろう!」 しょうがないので襟首掴んで布団に倒した 「な、なにを!?」 「どうやら君は外の人間のようだからな、色々教えてやる、どうやら訳有りのようだからな」 「・・・」 「私の名は慧音、ここで先生をやっているものだ」 男は観念したのか、布団の上に座って、此方を向いてくれた 男から聞いた話、男は殺人事件を起こし逃げ回っていた、逃亡中に森に入ったら迷ってしまってここに着いたと言う 私は此処が男のいた世界ではないので追われる心配はない、と言ったが半信半疑らしい 妖怪とかもまったく信じてないなぁ・・・困った 「おー慧音、食い倒れを拾ったって?」 「ああ妹紅、それを言うなら行き倒れだ・・・ああ、そうだ、イイコトを思いついた」 妹紅においでおいでした、訝しげに私のほうによって来た瞬間 青銅剣で、片腕を ぶぉん! 「うわっ!??ななななにする!?」 「ちょっとこの男にお前の回復力を見せてやって欲しいだけなんだ・・・すぐ済むから♪」 ひゅん 「そんな錆びたので斬られたら破傷風になるだろっ!」 「安心しろ、綺麗に両断してやる」 ぶんぶん、ひゅん、がちゃん、ばきばき このとき男は思った、こんな田舎の村でもキチガイはいるんだと 意やあれはキチガイと言うより、中二病? しっかsびちゃ、ぼと・・・ 「ぎゃぁぁぁぁ!!?」 いきなり面めがけて腕が飛んできた、腕が飛んできた、うでがとんで 「ほら、しっかり見ておきなさい」 さっき入ってきた女の腕が・・・あれ?今くっ付いた、ええええええ 「慧音、お前はお前で酷いな、非道いな」 「ああ、妹紅のせいで行き倒れ(仮)が気絶してしまったじゃ無いか」 「あんたのせいだ!」 「・・・あれ・・・よかった夢か」 そりゃそうだ、腕が簡単にくっ付いたりするはずが無いし、妖怪なんかいないし 「あ、目が覚めたか」 あ、さっきの帽子の女の人・・・ 「はい、何か悪い夢を見てしまったようで」 「夢じゃ無いといっても信じないんだろうなぁ、仕方ないから友人を呼んでい置いた」 「おっす!」 気付かなかったが幼女がいる、変なカッコの幼女・・・あれ・・・角?いやきっとへんな帽子だ 「私の友人の萃香だ、彼女こそ正真正銘の妖怪、鬼だ!」 バーン! 「・・・えっと・・・どこら辺が?」 「ええっ!?この角が見えないのっ!?」 ああ、やっぱりミッ○ーマ○スの耳帽子みたいなもんだろ? 「ミッシングパープルパワー!」 幼女が幼女のままでかくなった、と言う夢を見た、と思いたい 「もういいや、諦め疲れた」 今にも死にそうな顔で、というか倒れてたときより顔色が悪いが とりあえず、全てを信じることにしてみた、正直面倒になったといったほうがいい 自分の常識を信じるのが面倒になった、それだけだ、受け入れたわけじゃ無い 「さて、萃香も帰ったし・・・君は如何する?」 「俺は・・・」 ここに、この世界にいれば捕まる心配はない、どうせ帰っても死刑か終身刑か 「君が望むのなら、その・・・ここに住んでもかまわないぞ、放っておいて死なれても気分が悪い」 どうする、人殺しの俺を、泊めてくれるのか、ありがたい 久しぶりに、ヒトの優しさとかに触れた気がする、こんな人殺しを 「慧音さん、此処に住まわせてください、お願いします」 深く頭を下げた、餓鬼の頃のように、素直に頭を下げれた 「・・・ふふ、いいだろう君も悪い人間ではないようだし、私の仕事の手伝いにもなるだろうからな」 「俺は、ただの人殺しです、それでもいいんですか?」 男は、自分の罪を嘆いている、と言う感じではない、ただ受け入れられないのか、それとも 「目を見れば解る、君は堕ちてない・・・さて、色々と要り様だろうからな、買い物に行こう」 「は、はい・・・」 「なんだ、ぼさっとするな、行くぞ」 「は、はい!」 うむ、だいぶいい、返事だけは、な 「ああ、そういえば名前を聞いてなかった、うっかりしていたよ」 「俺は・・・○○って言います・・・○○で構いません」 「○○・・・そうか、○○か、いい名だな」 にこりと微笑む、彼女の笑顔に、優しい微笑みに、魅入ってしまった 「どうした?」 「い、いや、なんでもない、です」 「?・・・まぁいい、それじゃあ行こうか」 「はい」 彼女を追って、踏み出した 俺にとってこの一歩が、幻想郷に足を踏み入れた本当の瞬間だったのかもしれない ~おわり~ うpろだ345 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「慧音先生、おはようございます」 「○○さん、おはよう・・・今日は暑いなぁ」 「ですね、昼前だというのに30℃はありますから」 照るつける真夏の日差し、セミすら死んでしまうのではないかというような暑さ 夜も熱が残って寝苦しい日が続いているという・・・氷菓子は儲かっているらしい 「・・・慧音先生・・・午後から何か用事は?」 「いや、特に無いが・・・?」 「ならちょっと涼みにでも行きませんか?」 「いやぁ、こんなところがあるとは!」 「涼しいでしょう?湿気があるので住めないですけど、休憩するにはもってこいですよ」 此処は滝の裏の洞窟、、真夏だというのに気温は全然上がらない、むしろ寒かったりする ちょっと入ったところに岩を組んで砂利で隙間を埋めて、板張りにして 此処は俺の秘密のスポット、見つけて早半年、夏用に改造してきた甲斐があったぜ 「冬は入れなくなっちゃいますが・・・先生?」 「・・・」 「寝ちゃったのか・・・最近寝苦しかったからなぁ」 すやすやと、眠る慧音先生、滝の音は気にならないのか? しょうがないので置いてあったジャケットをかぶせて、そっとしておいた 「ん・・・あれ?」 心地よい振動、なんだろうか、ああそうか寝ちゃったんだったな せっかくいいところに案内してもらったというのに・・・失礼な事を 「あ、慧音先生、起きました」 あれ?何か声が近い 「え、え!?な」 ゆれると思ったのは、抱えられてるから 「全然起きないし、日も暮れてきたので・・・」 「だ、大丈夫だ、もうおろしてくれて」 「いやいや、せっかくですから家まで送りますよ、このまま」 お姫様抱っこで、人目の多い里を、歩くと、いうんですよ 「ちょ、ちょっとまってくれ!それはいくらなんでも恥ずかし過ぎる!」 「はっはっは」 慧音の叫びは虚しく、木霊するだけだった 里に入ってからは抵抗もせず、何となく いぢめたくなってしまった 困ってる慧音先生は、恥ずかしがってる慧音先生は、すごく、少女だ(失礼 「着きましたよ先生」 「あ、ありがとう・・・は、恥ずかしかった」 夕方だったので人目が多かった、しかもみんな興味心身で 「それじゃあ俺は帰ります」 「あ、待ってくれ・・・その・・・茶でも入れよう」 なんだかなぁ、いぢめ過ぎたか?説教されるのか そういえば人の嫌がることをするなと小一時間説教されたし、背が低いと莫迦にするなと怒られたし 背が高いからなんだと・・・あれは八つ当たり 靴を脱いであがろうと 慧音先生がバランスを、崩した こけた、いやその前に俺がナイスキャッチ 手を引いて、何とか抱きとめた 「大丈夫で、す、か?」 何やってんだ俺!?ちゃっかり、いやうっかり、抱きしめちゃってない!?この体勢は、ちょっと とくんとくん、俺の鼓動か、先生の鼓動か、判らない位近い 「あ、ああありがとう、その・・・もう・・・だいじょうぶだ、ぞ」 動くに動けない、いや固まっちまった俺 「たっだいまー慧音ー晩御飯な、に」 勢いよく妹紅参上、帰ってきて第一声が晩御飯に何って、小学生かお前は、ってそんなことじゃなくて 「も、妹紅!これはその、違うんだ、私「あ・・・えーと・・・邪魔したね、ごゆっくりどうぞっ」 やっぱりね、そうだろね、しんどいねぇ、未練だねぇ やっとこさ動けた 互いに気まずい、妹紅を追っかけてもしょうもないし 「あ、あの・・・俺やっぱり、帰りますね」 とりあえず帰ろう、混乱状態はなにをやらかすか解らないからな 「あ、明日っ!明日も・・・あそこに行くのか?」 いきなり何を行ってるのかと思った、少し間をおいて洞窟の事だと理解する 「え、ええ、あしたも昼前ぐらいには・・・」 「その・・・明日もお邪魔して・・・いいかな?」 「ど、どうぞ!じゃあ明日・・・待ってますね」 足早に慧音の家を出た あれ以上いたら緊張でのどから心臓がごぼちゃぁぁって出そうだ 「・・・でーと、なんてな、浮かれてんな」 足早に、スキップで、家まで帰った 明日をこれほど待ち遠しいと思ったのも、今日が初めてなのだろう ~蜜柑~ うpろだ367 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「なぁ○○」 「どうしたんです?慧音先生」 「最近妹紅が輝夜とばかり遊んでいてな」 「そうですね。殺し合いもしなくなりましたし、良い事じゃないですか」 「いや、良い事なんだが・・・」 「もしかして、妬いてますか?」 「ばっ、馬鹿なことを!! 私は輝夜なんかにっ」 「妬いてるんですか?」 「っ・・・・・・まぁ、違うと言えば嘘にはなる・・・」 「そうですか」 「なぁ○○、私はどうすればいいんだ?」 「任せてください。この○○に不可能は無いんです」 「で、具体的にどうすれば?」 「妹紅さんは蓬莱人とは言え女の子です。 女の子は『甘い言葉』に弱い、さらっとそんな事を言われれば絶対ズギューンです」 「確かに、不意をつかれればクラッとするだろうな」 「では手本を見せますんで慧音さんは妹紅さん役でお願いします」 「了解した」 「それじゃケース1、妹紅と迷いの竹林で会った時やろうか」 「・・・口調変わってないか」 「雰囲気の問題ですよ。さ、どうぞ」 「む、では・・・・・・あれ?○○じゃないか、こんな所でどうしたんだ?」 「永遠亭からの帰り道だったんだけど、どうやら道に迷ったみたいだ」 「しょうがないな・・・ほら、私に着いて来な。人里まで送ってやるよ」 「あぁ頼む」 「・・・・・・・・・・ほら着いたぞ」 「ありがとう、助かった。だけど・・・まだ迷い続けているみたいだ」 「なに?人里には無事に着いたじゃないか」 「そうじゃない。君に会った時から、僕の心は君と言う存在に迷わされていたんだよ」 「甘ぁぁぁぁぁぁぁい!!!甘い、甘いぞ○○!! 狐が自分の式に対する気持ちくらい甘いぞ!!」 「主に対しては激辛なのにね」 「頼む、もっと教えてくれ!」 「いーよぅ」 「ケース2、妹紅が輝夜との殺し合いで負けた時」 「了解・・・・・・あー悔しい!!あとちょっとだったのにぃぃ!!」 「どうしたんだ? また輝夜とでも殺し合いをしたのか」 「これで28571戦14283勝14288敗、最近負け越しが続くなぁ」 「そりゃあ良かった」 「・・・ひどくなぁぁぁぁぁい!!?私が負るのがそんなに嬉しいの!?」 「そうじゃない。負ければ負けただけ君を看病できて、一緒に居られる時間が長くなるんだからね」 「甘ぁぁぁぁぁぁぁい!!!甘すぎるよ○○!! イージー制覇した程度で調子乗ってノーマルの道中で被弾する奴くらい甘いよ!!」 「イージーモードが許されるのは小学生までだよね」 「あぁ全くその通りだ。 ん? そういえば妹紅は蓬莱人だから看病なんて必要ないんじゃないか?」 「形だけでもいいのさ。大切なのは、相手と居られる事なんだから」 「くっ、なんだかお前が別人のように見えるぞ・・・。次頼む」 「ケース3、もこたんにインする時」 「よしわか・・・って『もこたんに』!?『に』!? コレ絶対下ネタだろ!!」 「そうです」 「そうですじゃない!! 認めない、私は認めないぞ!!」 「俺のフジヤマがヴォルケイノしそうだ」 「だから下ネタ止めろ!!!」 「仕方ない。じゃケース4、もこたんがインした時」 「・・・今度は大丈夫だろうな」 「無問題」 「・・・・・・おいっす!もこたんインしたお!」 「・・・妹紅、勝手に人の家を改造しないでくれ」 「いやぁごめん」 「それと、大事な話があるんだ」 「ん、どうしたの?」 「もうやめにしないか」 「え」 「勝手に人の家改造して、押しかけて来て・・・こっちの身にもなれって」 「な、何言ってるの?」 「正直、うんざりだ。こんな関係止めだ」 「・・・・・・」 「それと、これ」 「・・・・・・何よこの紙切れ」 「見て解るだろ。婚姻届さ」 「・・・え?」 「これからは押しかけたりする必要なんて無い。これから、僕と一緒に不死鳥も妬くほどの熱い愛を育まないか?」 「甘ぁぁぁぁぁぁぁい!!!甘いよー、甘すぎるよー!! 毎日毎日無いと解っていながらも日に5回賽銭箱を確認している巫女くらい甘いよ!!」 「全く考えが甘い。余りにも不憫だから今度茶菓子でも持っていくことにするよ」 「あぁ、そうしてくれ」 「よし、これで妹紅が私のことをもっと見てくれるだろう」 「よかったですね、慧音さん」 「お、口調が元に戻ったな。ありがとう○○、感謝している」 「それじゃあ最後にとっておきの言葉を教えてあげましょう」 「とっておき?」 「好きです。慧音さん」 「え」 「貴女に会ったその瞬間、僕の歴史に恋と言う異変が起きました。 もしよろしければ、僕と一緒に、身も心も蕩けてしまうような歴史を創りませんか?」 「・・・・・・・・・」 「無理強いはしません。貴女には妹紅さんと言う大切な人が居るんですから。 嫌ならそれでかまいませ――――」 「そんなことない!!」 「慧音さん?」 「私も、○○のことが好きなんだ。だが、半分妖怪の私がお前に告白して、そして拒絶されるのが恐かったんだ。 だから、だから・・・」 「慧音さん・・・泣かないでください。別に貴女が悪いわけじゃない、その気持ちに気付いてあげれなかった僕が悪いんですから」 「ぅ・・・○○・・・」 「ほら涙を拭って、さぁ・・・僕達の歴史は始まったばかりです。 誰もが成し得なかった、誰もが羨むような、そんな歴史を創っていきましょう」 「・・・最後は、普通の台詞なんだな」 「すいません。詰めが甘かったようです」 「ふふっ、そんな終わり方もいいだろう」 うpろだ402 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「雨だな・・・」 縁側にて一人呟く 朝起きた時には降っていた雨は一向に止む気配はない 「雨にもちゃんとしたわけがあるんですよ?」 突然の呼びかけに驚いて振り向く、其処には良く見る奴が、一人 「○○か・・・ところでその訳とは?」 一拍おいて、噛み締めるようにこう謡った 「誰かの事を想うときには、零れる涙かくしてくれる・・・ってね」 「それは外の詩か?」 「ええ、私の好きな詩、です」 彼は続きを歌ってくれた どうせ雨だ、閉じこもって本を読むよりも、彼の歌を聴いているほうが 「慧音先生、今日は何をするんです?あいにくの雨ですが・・・」 「あ、ああ・・・特にする事はないな」 「まぁそうですよね、雨の日にする事なんてあんまりないですもんね」 「○○は何をしに来たんだ?君の好みそうな本はもうないが・・・」 彼の好みそうな本はもうない 彼は幻想郷の生態系を色々調べていたようだが残念な事に私の所有する本の中にそういった類のものはないのだ 稗田の家に行けばあるだろうが・・・私はあまり歓迎されない、阿求は別だが 「いや、そういうのではなくてですね・・・先生に会いに来たんです・・・よ?」 「え?そ、それは・・・その・・・あ、ありがとう?」 不意打ちを喰らって混乱してしまう、私に、会いに、わざわざこの雨の中 いや、深読みするな、この雨で暇だったのでたまたま、何となく此処に来ただけなのかもしれない でも、もしかして私の期待する、いや期待じゃないぞ!こうだったらいいなぁ~なんていうただの考えであって いや、でも、彼が此処に来た理由が・・・私に対してその・・・好意を抱いてくれているような理由であるならば・・・(赤面 「先生?何を赤くなってるんですか?」 「なななんでもない!気にするな」 いけない、へんな妄想に入り込んでいた、気をつけねば 彼が持ち込んできた少女まんがと言うものを読んでから・・・「恋する乙女状態」とやらだ もう何だか、彼を意識してしまって・・・ああ、もうなんだこれは 「○、○○・・・そういえば今日はなぜ私に会いにきたんだ?」 とりあえず確信を、期待しつつも期待してないふりで自分をごまかしつつも・・・ 「んーと・・・雨で、どうせ一日動けないなら、先生と過ごしたいなぁ、と思いまして・・・ご迷惑でしたか?」 「いや、そんなことは無い、今日は一緒にゆっくりするとしようか・・・ではちょっとお茶を入れてこよう」 そう言って、縁側から台所へ さらっと流したつもりだが、内心は動揺している、とても動揺している こんな雨の日に、わざわざ私の所へ来てくれた、それだけでも嬉しいと言うのに 一緒に過ごしたいとまで言ってくれた、手が震えてお茶が淹れられない とりあえず落ち着こう、ゆっくり湯が沸くのを待っていよう そうしてヤカンを眺めていた、なかなか遅いものだ 何分たったか知らないがもうそろそろかと思い湯の様子を見ようと思った時 いきなり目の前に腕が、その腕は優しく私を抱きしめた 「あ・・・・」 「先生・・・すいません・・・嫌なら言ってください、直ぐ離れますから」 「え、あ・・・」 突然の出来事に硬直、上手く声も出ない 「・・・先生?」 何が怒っているのか解ってはいるけども、脳の処理が追いつかないと言うか、なにがなんだか 「・・・離れますね」 彼の腕から開放された、寂しいと感じる辺り私の気持ちは確かなようだ 「○○」 振り返った彼女は、予想に反して、反してはいないが、不貞腐れたような、表情をして、こういった 「しょ、正面から・・・もう一度、その・・・ぎゅーってしてくれないか?」 怒られるか、嫌われたか、と思っていた、それが 「先生?その・・・いいですか?」 「も、もちろんだ、だからその・・・」 俺は先生を正面から抱きしめた、さっきよりも確実に、恐る恐るではない 頭が鳩尾辺りに来るぐらい、ちっちゃい先生 とても愛らしい先生 外が明るい、雨が止んで日が差してきたようだ 「・・・先生、雨が止みましたよ」 「そうか・・・」 「何処か出かけますか?」 「うん、それもいいな・・・でも」 「でも?」 彼女は、俺に抱きしめられたまま顔を上げて 「今は、このままでいたいな・・・」 だから俺は彼女を、抱きしめる 「そういえば君が歌ってくれた歌に、最高の天気は最高の口実に、とあったな、今日の雨はまさにそれか?」 「ええ・・・俺はどんな天気でもそれを口実に先生に会いに来ますよ」 「ふふ・・・ありがとう」 そうして二人で、湯が吹き零れるまでの間、抱き合っていた ~end~ うpろだ410 ─────────────────────────────────────────────────────────── ある日あぶなくてあったかい幻想郷に迷い込んだ俺。 そこで出会ったのは弁当っぽい帽子を被った女の子、上白沢慧音。 恋する俺。 紆余曲折をへて相思相愛な俺と彼女。 ある日彼女の親友も交えての三人だけの宴会。 飲む俺。 飲む妹紅。 舐める慧音。 楽しい時は過ぎ行くもの。 「じゃあ、またねー、慧音」と立ち去る妹紅。 二人きりのお家。 ほろ酔い気分の俺。 白い肌に朱が入った慧音。 片付けをする慧音に背中から抱きつく俺。 抵抗する(フリの)慧音。 一週間ぶりだもの、止まらないだろう俺たち。 「わっわっ、わわの忘れもの~♪」 戻ってきた妹紅。 慧音のうなじに顔をうずめる俺。 後手で俺の頭を抱える慧音。 止まる時。 どうすんの、どうすんの、どうすんの俺っ! どうすんのよー! 7スレ目 804 ─────────────────────────────────────────────────────────── 別に角があろうとなかろうと俺の好きな慧音なんだがな。 7スレ目 827 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○「慧音ってさ、俺にあんまり甘えてこないよな 慧「いきなりどうしたんだ○○、何か変な物でも食べたのか?」 ○「・・・気遣いありがとう、でも今はその気遣いがイタイ」(泣) 慧「で、甘えてくるのがどうしたって?」 ○「人が泣いてるのにスルーかよ、チクショウ・・・」 慧「話が進まないんだが?」 ○「分かったよ、で、話の続きだけどいつも俺が慧音に甘えてばっかりで慧音が俺に甘えるのってないじゃん」 慧「まあそうだな」 ○「なんで?」 慧「○○こそなんでそんな事と聞くんだ?私に甘えるのが嫌いなのか?」 ○「いや、只単に薄っぺらい俺のプライドの問題だ 慧音が俺に甘えてくれないから俺ってそんなに器の小さい男なのかなー?なんて思っちゃうわけよ ・・・・・・すまん、今の聞かなかった事にしてくれ」 慧「そんな事思ってたのか・・・私の方こそすまない ○○の気持ち分からなくて」 ○「だから聞かなかった事にしてくれっt」 ぽすっ ○「け、けけけけけ慧音!?」 慧「甘えて、欲しいんだろ?だったら少し眠たいから肩を貸してくれないか?」 ○「・・・・・この体制結構きついから膝枕でもいいか?////」 慧「ああ、タップリと甘えさせてくれ」 7スレ目872 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ただいま」 帰ってくると家の中に明かりが一つもついていなかった。 こんなことは今までになく、しっかり者の慧音にしては非常に珍しいことだった。 買い物の荷物を手にしたまま、記憶と手探りを頼りに家の中を進んでいく。 居間の縁側に慧音はいた。 真っ暗な家の中で、そこだけが月の光を浴びて青白い明かりに包まれていた。 「どうした慧音」 声を掛けると慧音がゆっくりと振り向いた。 「今まで何処に行っていた?」 妙に刺々しい声で言い、冷たい目で俺を睨んだ。 いつもより遅く帰ってきたことで心配させてしまったようだ。 夜は妖怪の領分だ。里の中とはいえ完全に安心できるわけではない。 「すまん、遅くなったな。買い物に行ってたんだ」 両手に抱えた荷物を見せる。 「霊夢と話をしていたな」 敵意というよりも、殺意を感じる言い方にぞっとする。 背中を嫌な感じで声が滑り落ちていく。 「通りがかりに挨拶くらいするだろ」 「他にもいろんな女と話をしていたじゃないか」 そう言って、俺が今日話した女性全員の名前を挙げていく。 その一人一人に、先ほど霊夢の名前を呼んだときと同じように殺意をこめて。 「お前は……私のこと好きだよな?」 「あ、あぁ、もちろん」 「じゃぁ……どうして、他の女と楽しそうに話をするんだ? 私が好きなら、他のヤツと話をする必要なんてないじゃないかっ!!」 「ちょ、ちょっと落ち着けよ」 「落ち着いてるさ!!」 「落ち着いてねぇ!」 「私だけを見て欲しいんだ!! 私の事だけを考えて欲しいんだ!!」 泣き顔の慧音が圧しかかってくる。 「私はお前だけがいればいい」 慧音はそのまま俺を押し倒して唇をおしあてた。 口の中に舌を捩じ込み、荒々しく口腔をかき回す。 息苦しくなってもお構いなしにその行為は続けられ、肺の空気が全部搾り出される寸前で唇が離れる。 その瞬間、 「……ッ!!」 右足に激痛。悲鳴を上げることさえ出来ないほどの痛みが走る。 いつの間にか太ももの辺りに剣が生えていた。それを確認してからようやく悲鳴が上がる。 「心配するな。私がきちんと治療してやる。だから我慢しろ」 傷つけた本人はむしろ酷く優しい声で言った。 そうしてもう一振り剣を取り出す。 「や、やめ……ろ」 「大丈夫。お前が私だけを見てくれるようにするだけだ」 二度目も容赦がなかった。 「私たち二人だけの歴史を創ろう」 目の前では満月の光を浴びて異形と化した慧音が優しく微笑んでいた。 「ただいま」 「あぁ、おかえり慧音」 私が横になる○○の隣に座り微笑むと、○○も同じように笑みを返してくれる。 「具合はどうだ?」 こんなことを言うとお前は『俺みたいなやつといてもお前が不幸になる』といって怒るだろう。 でも、私は今すごく幸せだ。 「最近は痛みも引いた。それでも時々なくなった場所が痛むけどな」 誰の邪魔も入ることがなく。 「だ、大丈夫なのか?」 「はは、心配しすぎだ」 お前がどこかに行く心配をすることもなく。 「そ、そうか……」 お前を私一人で世話する。 「それにしても毎日毎日すまん。こんな足でさえなければ……」 「そんなこと気にするな」 「ありがとう」 これほど幸せなことはない。 「そういえば、誰か来たか?」 「? 変なこと聞くな。俺には慧音以外知り合いなんて誰もいないじゃないか」 「そう……だな」 だが、この幸せを邪魔することが出来る妖怪が少なからずいる。 「あぁ、いつまでも私が……私だけがお前の面倒を見てやる」 「女の子の台詞じゃないな。でもありがとう」 「気にするなと言ってるだろう。私はお前が笑ってくれるだけで嬉しい」 「俺もだよ。慧音」 絶対誰にも邪魔はさせない。 絶対に…… うpろだ502 ─────────────────────────────────────────────────────────── 幻想郷のとある人里の寺子屋にて。 「というわけで、コレはこうなるんだ。わかるか?」 「はーい!」 年端もゆかぬ子供達に学問と呼ばれる類のモノ(とは言え年齢に沿った内容だが)を教えている女性――上白沢慧音を眺める。 本来ならば授業が終わる頃合に来る予定だったのだが、仕事が思ったよりも早く片付いてしまった。 前々から見たいと思っていたが(慧音からは「見に来るな!」と言われていた為控えていた) 時間が余っては仕方ないということで、堂々と寺子屋の壁にもたれて野望を果たしている。 …時々慧音のこめかみがぴくぴくとしているのは気のせいだということにしておこう。 「よし、じゃあ今日はここまでだ。宿題はちゃんとやってくるんだぞ!」 「…はーい」 何故だろう、心なしか子供達の顔が一瞬硬くなる。 疑問を抱いたのも束の間、次の瞬間には笑顔に戻り外へと駆け出す子供達。 「さよーなら、けーねせんせー!」 (…あれくらいの歳ならまだ遊び盛りだろうしなぁ…やれやれ) 苦笑を浮かべながら開け放されたままの戸を閉めようと手を伸ばした所で 「ぐぇ」 首根っこを掴まれた。 「何故、お前が、こんな時間に、ここに、いるんだ?」 軽く掴まれているだけなのだが、ちょっと動いた程度では振りほどけそうもない。雰囲気とか。 我らが里の代表こと慧音様はご立腹のようだった。 (…意外に力強いぞ、なんてこった) 逃げ出すことは溜息と共に諦めて、手をかけていた戸を閉める。 「いやぁなに、今日の仕事が思ったよりも早く片付いたもんで」 「片付いたから、何だ?」 嗚呼、掴んでる力が上がった…痛い、痛いぞ慧音。 「一度くらいは、お前の授業している姿を見たいなー…なんて」 「なんて、じゃないだろう○○! あれだけ見に来るな、と言っていたのに…」 なんとか動かせる範囲で振り向くと、慧音は心なしか恥ずかしそうにしている。 「ん、どうした?」 「なんでもない!」 顔を見ている事に気づいたのか、物凄い勢いで顔をそらされた。 と同時に、首の圧力からも開放される。 (見に来るな、と言っていたのは恥ずかしかったから…か) あえて言及はしないが、恐らくは正解であろう予測を胸に仕舞う。 「ま、いいか…それじゃ、そろそろ帰ろうか」 「あ、ああ、そうだな!帰るとしよう」 「戸締りはちゃんとなー」 この小屋の管理もしている慧音に後を任せ、一人裏口から先に出る。 程なくして慧音も鍵束を持って出てきた。 裏口にも鍵をかけ、二人並んで帰路につく。 「…しかし、早いものだな」 「んー?」 「○○を助けてから丁度1ヶ月だ」 「そうだったっけか」 「あれからどうだ?少しは何か思い出したか?」 「いや、全然」 俺こと○○には少しばかり前から記憶がない。 豪雨の日に里の近くの川岸に倒れていたのを、氾濫しそうか否かの様子を見に来た慧音が見つけて家に運んだらしい。 目が覚めた時には常識程度の知識はあったものの、名前やら思い出といったものが丸々と消えていた。 見知らぬ女性の家に居座るわけにはいかない、と滞在を断ったのだが、 住処はどうする、食べ物は、着るものはどうするつもりだ(以下略)…としつこく説得を受け、結局お言葉に甘えている。 いい意味でも悪い意味でもおせっかい焼きのようだ。 名前に関してはその時着ていた服の懐にあった"パスポート"というものから分かった…というのは慧音談。 「…俺は別に記憶なんぞ戻らなくてもいいけどなぁ」 「ど、どうしてだ?お前の今まで生きてきた"歴史"が分からないんだぞ?怖くはないのか?」 何気ない一言であったのに慧音はひどく驚いたように見えた。 「…記憶が戻らなくても生きてはいけるし。それに… 俺は今の暮らしにとても満足してるからさ。 今はそれでいいじゃないか」 俺は今の暮らしに満足している。 そりゃ名前しか分からないし、それすらも正しいのか自分で確かめる術も無い。 …でも、今こうして生きている。話せる奴もいる。それで十分だ。 「…慧音には感謝してる。名前も定かじゃなかった俺に部屋も貸してくれたし、仕事も紹介してくれたし」 色々考えた末に、月並みな感謝の言葉を述べる。 本来ならもうちょっと気の利いた言葉でも投げかけるべきなのだろうが、そこまで思いつくほど甲斐性はない。 「わ、私は人間が好きだからな。…仕事とかそういうのも、それ故だ。別に○○が好きだからと言う訳では…」 「そっか。うん、でも…ありがとう」 「ああ」 そういって俺を見た彼女の顔は柔らかく微笑んでいた。 若干頬が赤かったのは夕陽のせいだろう。 「…ああ、そうだ。今日の晩飯何がいい?確か俺当番だったよな?」 「夕餉か…いつぞや作ってくれた牛の乳で出来た焼き物を作ってくれないか。アレは美味かった」 「グラタンね。了解」 (確かチーズは保存庫にまだあるよな。野菜も申し分なし、と。…よし) 食材の残りを考えた上で希望が叶えられることを確認する。 「あれは手間がかかるからな…さっさと帰ろうぜ!」 喋りこんでいたせいで少し遅くなっていた歩調を戻す。 「お、おい、置いていくな○○!」 夜も覗き始めた夕刻。 茜色の小径に並ぶ影が今日も二つ。 10スレ目 724 ─────────────────────────────────────────────────────────── あれは必然だったのだろうか。 ただの偶然であったかもしれない。 いずれにせよ、いつかは来る問題だったのかもしれない。 そしてそれは、俺達の関係を確実に変化させた。 「おお……今日は満月だったか。キレイだな」 夏の終わりとはいえ、夜はまだ少々暑い。 用を足しに起きたついでに涼みも兼ねて、夜の散歩と洒落込む事にした。 慧音宅は里の外れに位置しているのもあってか、比較的大きかった。 この家で暮らしているとは言えど、まだ一ヶ月。見知らぬ箇所もある。 そういった箇所を潰していこうというわけである。 ちなみに現在知っている場所は…正門から行ける土間、慧音の寝室、書斎、俺があてがわれた部屋、 それに生活に必要な台所なんかの空間くらいか。 「まずは外をぐるっと回ってみるか……」 そんな事をひとりごち、草履をつっかけて歩き始める。 ~10分後~ 「ちょ、ちょっと待て…いくらなんでも広すぎるぞ!」 正門から探索を始めて…今ようやく裏庭といった所。 新しい発見がある度に歩みを止めていたせいもあるが、如何せん広すぎる。 普段は家の広さなど気にしていなかったため広さ云々まであまり気にしたことはなかったが 恐らくは割と裕福な一族が住んでいた屋敷なのではないだろうか。 里の代表という扱いを受けているのだから、この位もあって然るべきなのかもしれない、が (……一人暮らしには……ちょっとどころじゃなく広いよなぁ) 慧音はずっと一人でここに住んでいたのだろうか? (だとしたら寂しすぎるぞ、慧音) 裏庭には大層な樹齢の桜の樹が生えていた。 どれほど生きているのかは知らないが、腰掛けて一息いれるには丁度いい。 樹の幹に背をもたれ、夜空を見上げる。 満点の星空に、明かりを不要とするほど明るく輝く満月。 (酒と肴でもあれば最高の月見になるんだがなー) アイツはそういったものを嫌うのか、倉にはそれに類するものはなかった。 曰く「あそこの山の神社にでも行けば全てがあるはずだからな」とのこと。 何があるのかは検討が付かないが、いつか行ってみようと思う。 「~~ちょっと冷えてきたかな……そろそろ戻……ん?」 月のあるはずの方向とはまた別の方向に明るさを感じる。 ふと見やると、そこには 緑色の髪に、角が生えた、見知った顔が。 そう、確かに所々おかしい点はあるが(尻尾とか生えてるし)、間違いない。 命の恩人を、見間違えるはずはない。彼女は俺のよく知る上白沢慧音だ。 「……慧、音……?」 思わず出てしまった、誰何の声。 予想などしてもいなかったのだろう、振り向いて俺の顔を確認するや、慧音は驚愕の顔のまま固まってしまった。 「○……○……どうして、そこに?」 「………」 「…そうか、見られてしまったか、とうとう」 できれば知られたくなかった。そんな口調で俺に語りかける慧音。 「御覧の通りだ。私はワーハクタク。"人"と"妖怪"の中間のような存在だ。 従って、人間では、ない」 ――人間と"妖怪"は争うもの―― 仕事場で色々と聞いた与太話の一つとして記憶していた言葉が思い出される。 (あいつは妖怪……なのか?) だけど普段は人間そのものだ。……話し方は少しどころじゃなく可愛げがないし、すぐに俺の事を怒るけど。 それに妖怪ならば何故人里にいる? 何故人を襲わない? 何故人間に優しくするんだ? 俺の中では解決しないまま次々と疑問が浮かんでくる。 目の前にいる彼女にぶつければそれもすぐに解決するのだろうが、 俺は、辛そうな顔をして俯く目の前の少女にそんな事は出来なかった。 「怖がるのも無理はないな。今まで騙していたようなものだ。 それに関しては謝る。すまない」 俺が黙っているのを恐怖と見て取ったのか、慧音はそのまま話を続ける。 「……私がこんな存在であると知ったからには、もう一緒にはいたくないだろう? 明日になる頃には私のことも忘れている……安心してくれ。 それに、住む場所も用意しておこう。ココではないどこかに」 (……何を、言ってるんだ?) 恐らく妖怪ならではの能力でも発揮して、俺の記憶を消す、ということなのだろうか。 そして聞き捨てならない事も言いやがった。それだけは止めなければならない。 知らないうちに震えていた身体に鞭を打ち、立ち上がる。 「逃げるのか? それはそれで、いいのかもしれないな。 何処へなりとも逃げるがいいよ」 半ば投げやりに言った後、俺に背を向ける彼女。 いつもより少し、背中が小さく見えた。 少しずつ、少しずつ。 逸る気持ちを抑え、俺は足を動かす。 (……ったく、誰が怖いっつったよ。そりゃ足は震えてたけどさ) 言いたいことを、少しずつ、頭の中で纏めながら、足を動かす。 (妖怪とか……人間じゃないとか……どうでもいいや、もう) 先ほどまで頭を渦巻いていた疑問を今だけは、少なくとも今だけは押しやる。 そんな事よりも大事な事を、言わなければならない事が出来た。 さっきよりも近づいた慧音の背は、少し震えている。尻尾も元気がない。 俺に襲い掛かるのを抑えているのか、それとも。 (まったく、一人で言いたいことばっか言いやがって、この) もう、手が届く範囲にいる。 一度、深呼吸。 よし、落ち着いた。 「なぁ」 びく、と震える背中。 「ビビったことは謝る。お前がそういうモンだって、知らなかったからさ」 「……」 「何だよ、そういう事なら早く言って欲しかったんだがな」 「……すまない」 声が震えてるぞ、慧音。 「だけど、俺は出て行かないよ。あと、記憶を消されるのもまっぴら御免だ」 「!?」 震える背中を、そっと抱きしめた。 「な、何を……」 彼女にとっては予想外の出来事だったのだろうか。驚愕の気配と、堅くなる身体。 「俺はさ」 構わず続ける。 「こんなに辛そうな顔してる奴を、放ってはおけないんだ。それに」 言いたかったことを、言ってやろう。 「綺麗で、頭もよくて、優しくて、でもちょっと抜けてて。そんな慧音が、俺は好きだ」 「―――っ! ……だ、だが私は妖怪なんだぞ。寿命とか、人とは違――」 「そんなの関係ないな。俺は俺。お前はお前。ただそれだけじゃないか。 お前が永遠を生きるというのなら、俺もそうであるように頑張るさ。 里の近くには永遠に生きる元人間も居るって話だしな、そいつに方法を聞きにいくさ。 だから、出ていけなんていうなよ。後、そんな辛そうな顔もやめようぜ。 俺は、里の人と楽しそうに笑いあうお前だから好きになったんだぞ?」 言いたいことを言いたい放題に言ってやる。 さっきやられたんだから、コレでおあいこだ。 「こんな……」 俺の方を向いた慧音の顔は、涙でボロボロだった。 「こんな、私でもか?」 「ああ」 「人間じゃ、ないのに?」 「そんなの関係ないって言ったじゃないか」 もう一度抱きしめる。 今度は、彼女の顔を胸に埋めさせる形で。 「――っうわああああああああ!!」 腕の中で泣きじゃくる少女の心が、少しでも晴れる事を祈って。 より強く、抱きしめた。 落ち着いてきた頃を見計らって、もう一度言ってやる。 「改めて、言わせてくれ。 慧音、好きだ。愛してる。 ……一緒に、いさせて、くれないか?」 ちょっと卑怯かな? と思わなくも無いが 今逃したらもうチャンスがなさそうな気がする。 「……それは、こちらが言いたい台詞だよ。 一緒に、生きてくれないか? ○○」 「お安い御用だ」 二人の想いは、一つ。 前にそびえる壁は、分厚く、高く。 でも、それがどうした。 俺達なら、きっと乗り越えられる。 そんな、気がした。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ どうも、長文お疲れ様です。 妖怪(半妖)と人間の恋愛って相当覚悟がいるものだと思うので (寿命やら、生き方等) それらを踏まえた上で慧音に色々行動取らせてみました。 ○○? あいつぁ記憶がないからかえって大胆に動けるっていう事で。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ うpろだ548 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/tamakagura/pages/127.html
コダマ名 HP 攻撃 防御 特攻 特防 速度 合計 属性1 属性2 攻撃属性 弱点 耐性 スキル1 スキル2 必要アイテム ちびけいね 105 20 55 90 55 55 380 理 - 理地 虫霊闇 闘理 知識と歴史の半獣 - 慧音カード A慧音 140 130 80 40 90 65 545 岩 地 地岩理 闘地鋼氷樹水 無風岩炎毒雷 知識と歴史の半獣 歴史を創る程度の能力 力の霊珠 S慧音 120 115 80 50 80 100 545 岩 無 無岩理地 樹地鋼水闘 無毒風炎霊 知識と歴史の半獣 歴史を創る程度の能力 疾風の霊珠 H慧音 120 30 80 115 105 80 530 理 - 理地炎 虫霊闇 闘理 知識と歴史の半獣 歴史を食べる程度の能力 祝福の霊珠 D慧音 105 30 90 105 120 80 530 理 地 地理炎 樹虫霊水氷闇 闘毒岩理雷 知識と歴史の半獣 歴史を食べる程度の能力 守の霊珠 ※太文字のみは禁呪、青文字は属性一致、赤文字は重複弱点、緑文字は重複耐性、灰色は無効、(括弧内)はスキル効果あり ちびけいね A慧音 S慧音 H慧音 D慧音 スキル 1.知識と歴史の半獣(LV25習得) 怯みません。 2.歴史を食べる程度の能力(LV50習得) ターン終了時、相手のスキルをどちらか無効化します。 ただし「スキル無効化」の効果を持つスキルは無効化することができません。 2.歴史を創る程度の能力(LV50習得) ターン開始時、相手のスキルのどちらかをコピーします。 スペル スペル名 属性 分類 威力 命中 消費 詳細 ちびけいね A慧音 S慧音 H慧音 D慧音 幻想天皇 理 特殊 70 100 0 - 初期 - - 初期 初期 旧秘境史 岩 物理 70 100 5 10%の確率で、相手を眠らせます。 - 初期 初期 - - ファーストピラミッド 地 特殊 80 100 10 30%の確率で、自分の防御が1段階上がります。 15 - - 15 15 邪馬台の国 地 物理 80 100 10 30%の確率で、自分の防御が1段階上がります。 - 15 15 - - 三種の神器 鏡 鋼 特殊 - 100 20 後攻になります。相手が特殊攻撃を仕掛けてきた場合、相手に受けたダメージの2倍のダメージを与えます。属性、スキル、アイテムなどではダメージが変動しません。 20 20 20 20 20 幻想郷伝説 理 特殊 100 100 25 30%の確率で、相手のスペルを1つ封じます。 レンタル限定 - - 30 30 新幻想史 岩 物理 100 100 30 30%の確率で、自分の攻撃が1段階上がります。 - 30 35 - - 無何有浄化 無 物理 120 100 30 30%の確率で、相手のどちらかの装備を無効化します。 - - 30 - - 一条戻り橋 地 物理 100 100 30 与えたダメージの1/3、自分のVPが回復します。 - 35 40 - - 三種の神器 玉 鋼 変化 - - 20 5ターンの間、物理攻撃を半減します。交代しても効果は継続します。 - - - - 35 三種の神器 剣 鋼 変化 - - 15 自分の攻撃、特攻を2段階上げます。 - 40 - 60 - 高天原 地 特殊 100 100 25 30%の確率で、自分の特攻が1段階上がります。 - - - 40 40 エフェメラリティ137 理 物理 90 100 20 - - 60 60 - - 三種の神器 郷 鋼 物理 - 100 20 後攻になります。相手が物理攻撃を仕掛けてきた場合、相手に受けたダメージの2倍のダメージを与えます。属性、スキル、アイテムなどではダメージが変動しません。 - 禁呪 禁呪 35 60 日出づる国の天子 炎 特殊 100 100 25 20%の確率で、相手を火傷させます。 - - - 禁呪 禁呪 カード効果 アイテム名 装備時効果 契約コダマ 入手(金額) 備考 慧音カード 理属性スペルで与えるダメージが25%上昇します。 ちびけいね 永夜の福袋美月堂(3,000,000)
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/858.html
慧音5 うpろだ402 「なぁ○○」 「どうしたんです?慧音先生」 「最近妹紅が輝夜とばかり遊んでいてな」 「そうですね。殺し合いもしなくなりましたし、良い事じゃないですか」 「いや、良い事なんだが・・・」 「もしかして、妬いてますか?」 「ばっ、馬鹿なことを!! 私は輝夜なんかにっ」 「妬いてるんですか?」 「っ・・・・・・まぁ、違うと言えば嘘にはなる・・・」 「そうですか」 「なぁ○○、私はどうすればいいんだ?」 「任せてください。この○○に不可能は無いんです」 「で、具体的にどうすれば?」 「妹紅さんは蓬莱人とは言え女の子です。 女の子は『甘い言葉』に弱い、さらっとそんな事を言われれば絶対ズギューンです」 「確かに、不意をつかれればクラッとするだろうな」 「では手本を見せますんで慧音さんは妹紅さん役でお願いします」 「了解した」 「それじゃケース1、妹紅と迷いの竹林で会った時やろうか」 「・・・口調変わってないか」 「雰囲気の問題ですよ。さ、どうぞ」 「む、では・・・・・・あれ?○○じゃないか、こんな所でどうしたんだ?」 「永遠亭からの帰り道だったんだけど、どうやら道に迷ったみたいだ」 「しょうがないな・・・ほら、私に着いて来な。人里まで送ってやるよ」 「あぁ頼む」 「・・・・・・・・・・ほら着いたぞ」 「ありがとう、助かった。だけど・・・まだ迷い続けているみたいだ」 「なに?人里には無事に着いたじゃないか」 「そうじゃない。君に会った時から、僕の心は君と言う存在に迷わされていたんだよ」 「甘ぁぁぁぁぁぁぁい!!!甘い、甘いぞ○○!! 狐が自分の式に対する気持ちくらい甘いぞ!!」 「主に対しては激辛なのにね」 「頼む、もっと教えてくれ!」 「いーよぅ」 「ケース2、妹紅が輝夜との殺し合いで負けた時」 「了解・・・・・・あー悔しい!!あとちょっとだったのにぃぃ!!」 「どうしたんだ? また輝夜とでも殺し合いをしたのか」 「これで28571戦14283勝14288敗、最近負け越しが続くなぁ」 「そりゃあ良かった」 「・・・ひどくなぁぁぁぁぁい!!?私が負るのがそんなに嬉しいの!?」 「そうじゃない。負ければ負けただけ君を看病できて、一緒に居られる時間が長くなるんだからね」 「甘ぁぁぁぁぁぁぁい!!!甘すぎるよ○○!! イージー制覇した程度で調子乗ってノーマルの道中で被弾する奴くらい甘いよ!!」 「イージーモードが許されるのは小学生までだよね」 「あぁ全くその通りだ。 ん? そういえば妹紅は蓬莱人だから看病なんて必要ないんじゃないか?」 「形だけでもいいのさ。大切なのは、相手と居られる事なんだから」 「くっ、なんだかお前が別人のように見えるぞ・・・。次頼む」 「ケース3、もこたんにインする時」 「よしわか・・・って『もこたんに』!?『に』!? コレ絶対下ネタだろ!!」 「そうです」 「そうですじゃない!! 認めない、私は認めないぞ!!」 「俺のフジヤマがヴォルケイノしそうだ」 「だから下ネタ止めろ!!!」 「仕方ない。じゃケース4、もこたんがインした時」 「・・・今度は大丈夫だろうな」 「無問題」 「・・・・・・おいっす!もこたんインしたお!」 「・・・妹紅、勝手に人の家を改造しないでくれ」 「いやぁごめん」 「それと、大事な話があるんだ」 「ん、どうしたの?」 「もうやめにしないか」 「え」 「勝手に人の家改造して、押しかけて来て・・・こっちの身にもなれって」 「な、何言ってるの?」 「正直、うんざりだ。こんな関係止めだ」 「・・・・・・」 「それと、これ」 「・・・・・・何よこの紙切れ」 「見て解るだろ。婚姻届さ」 「・・・え?」 「これからは押しかけたりする必要なんて無い。これから、僕と一緒に不死鳥も妬くほどの熱い愛を育まないか?」 「甘ぁぁぁぁぁぁぁい!!!甘いよー、甘すぎるよー!! 毎日毎日無いと解っていながらも日に5回賽銭箱を確認している巫女くらい甘いよ!!」 「全く考えが甘い。余りにも不憫だから今度茶菓子でも持っていくことにするよ」 「あぁ、そうしてくれ」 「よし、これで妹紅が私のことをもっと見てくれるだろう」 「よかったですね、慧音さん」 「お、口調が元に戻ったな。ありがとう○○、感謝している」 「それじゃあ最後にとっておきの言葉を教えてあげましょう」 「とっておき?」 「好きです。慧音さん」 「え」 「貴女に会ったその瞬間、僕の歴史に恋と言う異変が起きました。 もしよろしければ、僕と一緒に、身も心も蕩けてしまうような歴史を創りませんか?」 「・・・・・・・・・」 「無理強いはしません。貴女には妹紅さんと言う大切な人が居るんですから。 嫌ならそれでかまいませ――――」 「そんなことない!!」 「慧音さん?」 「私も、○○のことが好きなんだ。だが、半分妖怪の私がお前に告白して、そして拒絶されるのが恐かったんだ。 だから、だから・・・」 「慧音さん・・・泣かないでください。別に貴女が悪いわけじゃない、その気持ちに気付いてあげれなかった僕が悪いんですから」 「ぅ・・・○○・・・」 「ほら涙を拭って、さぁ・・・僕達の歴史は始まったばかりです。 誰もが成し得なかった、誰もが羨むような、そんな歴史を創っていきましょう」 「・・・最後は、普通の台詞なんだな」 「すいません。詰めが甘かったようです」 「ふふっ、そんな終わり方もいいだろう」 うpろだ410 「雨だな・・・」 縁側にて一人呟く 朝起きた時には降っていた雨は一向に止む気配はない 「雨にもちゃんとしたわけがあるんですよ?」 突然の呼びかけに驚いて振り向く、其処には良く見る奴が、一人 「○○か・・・ところでその訳とは?」 一拍おいて、噛み締めるようにこう謡った 「誰かの事を想うときには、零れる涙かくしてくれる・・・ってね」 「それは外の詩か?」 「ええ、私の好きな詩、です」 彼は続きを歌ってくれた どうせ雨だ、閉じこもって本を読むよりも、彼の歌を聴いているほうが 「慧音先生、今日は何をするんです?あいにくの雨ですが・・・」 「あ、ああ・・・特にする事はないな」 「まぁそうですよね、雨の日にする事なんてあんまりないですもんね」 「○○は何をしに来たんだ?君の好みそうな本はもうないが・・・」 彼の好みそうな本はもうない 彼は幻想郷の生態系を色々調べていたようだが残念な事に私の所有する本の中にそういった類のものはないのだ 稗田の家に行けばあるだろうが・・・私はあまり歓迎されない、阿求は別だが 「いや、そういうのではなくてですね・・・先生に会いに来たんです・・・よ?」 「え?そ、それは・・・その・・・あ、ありがとう?」 不意打ちを喰らって混乱してしまう、私に、会いに、わざわざこの雨の中 いや、深読みするな、この雨で暇だったのでたまたま、何となく此処に来ただけなのかもしれない でも、もしかして私の期待する、いや期待じゃないぞ!こうだったらいいなぁ~なんていうただの考えであって いや、でも、彼が此処に来た理由が・・・私に対してその・・・好意を抱いてくれているような理由であるならば・・・(赤面 「先生?何を赤くなってるんですか?」 「なななんでもない!気にするな」 いけない、へんな妄想に入り込んでいた、気をつけねば 彼が持ち込んできた少女まんがと言うものを読んでから・・・「恋する乙女状態」とやらだ もう何だか、彼を意識してしまって・・・ああ、もうなんだこれは 「○、○○・・・そういえば今日はなぜ私に会いにきたんだ?」 とりあえず確信を、期待しつつも期待してないふりで自分をごまかしつつも・・・ 「んーと・・・雨で、どうせ一日動けないなら、先生と過ごしたいなぁ、と思いまして・・・ご迷惑でしたか?」 「いや、そんなことは無い、今日は一緒にゆっくりするとしようか・・・ではちょっとお茶を入れてこよう」 そう言って、縁側から台所へ さらっと流したつもりだが、内心は動揺している、とても動揺している こんな雨の日に、わざわざ私の所へ来てくれた、それだけでも嬉しいと言うのに 一緒に過ごしたいとまで言ってくれた、手が震えてお茶が淹れられない とりあえず落ち着こう、ゆっくり湯が沸くのを待っていよう そうしてヤカンを眺めていた、なかなか遅いものだ 何分たったか知らないがもうそろそろかと思い湯の様子を見ようと思った時 いきなり目の前に腕が、その腕は優しく私を抱きしめた 「あ・・・・」 「先生・・・すいません・・・嫌なら言ってください、直ぐ離れますから」 「え、あ・・・」 突然の出来事に硬直、上手く声も出ない 「・・・先生?」 何が怒っているのか解ってはいるけども、脳の処理が追いつかないと言うか、なにがなんだか 「・・・離れますね」 彼の腕から開放された、寂しいと感じる辺り私の気持ちは確かなようだ 「○○」 振り返った彼女は、予想に反して、反してはいないが、不貞腐れたような、表情をして、こういった 「しょ、正面から・・・もう一度、その・・・ぎゅーってしてくれないか?」 怒られるか、嫌われたか、と思っていた、それが 「先生?その・・・いいですか?」 「も、もちろんだ、だからその・・・」 俺は先生を正面から抱きしめた、さっきよりも確実に、恐る恐るではない 頭が鳩尾辺りに来るぐらい、ちっちゃい先生 とても愛らしい先生 外が明るい、雨が止んで日が差してきたようだ 「・・・先生、雨が止みましたよ」 「そうか・・・」 「何処か出かけますか?」 「うん、それもいいな・・・でも」 「でも?」 彼女は、俺に抱きしめられたまま顔を上げて 「今は、このままでいたいな・・・」 だから俺は彼女を、抱きしめる 「そういえば君が歌ってくれた歌に、最高の天気は最高の口実に、とあったな、今日の雨はまさにそれか?」 「ええ・・・俺はどんな天気でもそれを口実に先生に会いに来ますよ」 「ふふ・・・ありがとう」 そうして二人で、湯が吹き零れるまでの間、抱き合っていた ~end~ 7スレ目 804 ある日あぶなくてあったかい幻想郷に迷い込んだ俺。 そこで出会ったのは弁当っぽい帽子を被った女の子、上白沢慧音。 恋する俺。 紆余曲折をへて相思相愛な俺と彼女。 ある日彼女の親友も交えての三人だけの宴会。 飲む俺。 飲む妹紅。 舐める慧音。 楽しい時は過ぎ行くもの。 「じゃあ、またねー、慧音」と立ち去る妹紅。 二人きりのお家。 ほろ酔い気分の俺。 白い肌に朱が入った慧音。 片付けをする慧音に背中から抱きつく俺。 抵抗する(フリの)慧音。 一週間ぶりだもの、止まらないだろう俺たち。 「わっわっ、わわの忘れもの~♪」 戻ってきた妹紅。 慧音のうなじに顔をうずめる俺。 後手で俺の頭を抱える慧音。 止まる時。 どうすんの、どうすんの、どうすんの俺っ! どうすんのよー! 7スレ目 827 別に角があろうとなかろうと俺の好きな慧音なんだがな。 7スレ目872 ○「慧音ってさ、俺にあんまり甘えてこないよな 慧「いきなりどうしたんだ○○、何か変な物でも食べたのか?」 ○「・・・気遣いありがとう、でも今はその気遣いがイタイ」(泣) 慧「で、甘えてくるのがどうしたって?」 ○「人が泣いてるのにスルーかよ、チクショウ・・・」 慧「話が進まないんだが?」 ○「分かったよ、で、話の続きだけどいつも俺が慧音に甘えてばっかりで慧音が俺に甘えるのってないじゃん」 慧「まあそうだな」 ○「なんで?」 慧「○○こそなんでそんな事と聞くんだ?私に甘えるのが嫌いなのか?」 ○「いや、只単に薄っぺらい俺のプライドの問題だ 慧音が俺に甘えてくれないから俺ってそんなに器の小さい男なのかなー?なんて思っちゃうわけよ ・・・・・・すまん、今の聞かなかった事にしてくれ」 慧「そんな事思ってたのか・・・私の方こそすまない ○○の気持ち分からなくて」 ○「だから聞かなかった事にしてくれっt」 ぽすっ ○「け、けけけけけ慧音!?」 慧「甘えて、欲しいんだろ?だったら少し眠たいから肩を貸してくれないか?」 ○「・・・・・この体制結構きついから膝枕でもいいか?////」 慧「ああ、タップリと甘えさせてくれ」 10スレ目 724 幻想郷のとある人里の寺子屋にて。 「というわけで、コレはこうなるんだ。わかるか?」 「はーい!」 年端もゆかぬ子供達に学問と呼ばれる類のモノ(とは言え年齢に沿った内容だが)を教えている女性――上白沢慧音を眺める。 本来ならば授業が終わる頃合に来る予定だったのだが、仕事が思ったよりも早く片付いてしまった。 前々から見たいと思っていたが(慧音からは「見に来るな!」と言われていた為控えていた) 時間が余っては仕方ないということで、堂々と寺子屋の壁にもたれて野望を果たしている。 …時々慧音のこめかみがぴくぴくとしているのは気のせいだということにしておこう。 「よし、じゃあ今日はここまでだ。宿題はちゃんとやってくるんだぞ!」 「…はーい」 何故だろう、心なしか子供達の顔が一瞬硬くなる。 疑問を抱いたのも束の間、次の瞬間には笑顔に戻り外へと駆け出す子供達。 「さよーなら、けーねせんせー!」 (…あれくらいの歳ならまだ遊び盛りだろうしなぁ…やれやれ) 苦笑を浮かべながら開け放されたままの戸を閉めようと手を伸ばした所で 「ぐぇ」 首根っこを掴まれた。 「何故、お前が、こんな時間に、ここに、いるんだ?」 軽く掴まれているだけなのだが、ちょっと動いた程度では振りほどけそうもない。雰囲気とか。 我らが里の代表こと慧音様はご立腹のようだった。 (…意外に力強いぞ、なんてこった) 逃げ出すことは溜息と共に諦めて、手をかけていた戸を閉める。 「いやぁなに、今日の仕事が思ったよりも早く片付いたもんで」 「片付いたから、何だ?」 嗚呼、掴んでる力が上がった…痛い、痛いぞ慧音。 「一度くらいは、お前の授業している姿を見たいなー…なんて」 「なんて、じゃないだろう○○! あれだけ見に来るな、と言っていたのに…」 なんとか動かせる範囲で振り向くと、慧音は心なしか恥ずかしそうにしている。 「ん、どうした?」 「なんでもない!」 顔を見ている事に気づいたのか、物凄い勢いで顔をそらされた。 と同時に、首の圧力からも開放される。 (見に来るな、と言っていたのは恥ずかしかったから…か) あえて言及はしないが、恐らくは正解であろう予測を胸に仕舞う。 「ま、いいか…それじゃ、そろそろ帰ろうか」 「あ、ああ、そうだな!帰るとしよう」 「戸締りはちゃんとなー」 この小屋の管理もしている慧音に後を任せ、一人裏口から先に出る。 程なくして慧音も鍵束を持って出てきた。 裏口にも鍵をかけ、二人並んで帰路につく。 「…しかし、早いものだな」 「んー?」 「○○を助けてから丁度1ヶ月だ」 「そうだったっけか」 「あれからどうだ?少しは何か思い出したか?」 「いや、全然」 俺こと○○には少しばかり前から記憶がない。 豪雨の日に里の近くの川岸に倒れていたのを、氾濫しそうか否かの様子を見に来た慧音が見つけて家に運んだらしい。 目が覚めた時には常識程度の知識はあったものの、名前やら思い出といったものが丸々と消えていた。 見知らぬ女性の家に居座るわけにはいかない、と滞在を断ったのだが、 住処はどうする、食べ物は、着るものはどうするつもりだ(以下略)…としつこく説得を受け、結局お言葉に甘えている。 いい意味でも悪い意味でもおせっかい焼きのようだ。 名前に関してはその時着ていた服の懐にあった"パスポート"というものから分かった…というのは慧音談。 「…俺は別に記憶なんぞ戻らなくてもいいけどなぁ」 「ど、どうしてだ?お前の今まで生きてきた"歴史"が分からないんだぞ?怖くはないのか?」 何気ない一言であったのに慧音はひどく驚いたように見えた。 「…記憶が戻らなくても生きてはいけるし。それに… 俺は今の暮らしにとても満足してるからさ。 今はそれでいいじゃないか」 俺は今の暮らしに満足している。 そりゃ名前しか分からないし、それすらも正しいのか自分で確かめる術も無い。 …でも、今こうして生きている。話せる奴もいる。それで十分だ。 「…慧音には感謝してる。名前も定かじゃなかった俺に部屋も貸してくれたし、仕事も紹介してくれたし」 色々考えた末に、月並みな感謝の言葉を述べる。 本来ならもうちょっと気の利いた言葉でも投げかけるべきなのだろうが、そこまで思いつくほど甲斐性はない。 「わ、私は人間が好きだからな。…仕事とかそういうのも、それ故だ。別に○○が好きだからと言う訳では…」 「そっか。うん、でも…ありがとう」 「ああ」 そういって俺を見た彼女の顔は柔らかく微笑んでいた。 若干頬が赤かったのは夕陽のせいだろう。 「…ああ、そうだ。今日の晩飯何がいい?確か俺当番だったよな?」 「夕餉か…いつぞや作ってくれた牛の乳で出来た焼き物を作ってくれないか。アレは美味かった」 「グラタンね。了解」 (確かチーズは保存庫にまだあるよな。野菜も申し分なし、と。…よし) 食材の残りを考えた上で希望が叶えられることを確認する。 「あれは手間がかかるからな…さっさと帰ろうぜ!」 喋りこんでいたせいで少し遅くなっていた歩調を戻す。 「お、おい、置いていくな○○!」 夜も覗き始めた夕刻。 茜色の小径に並ぶ影が今日も二つ。 うpろだ548 あれは必然だったのだろうか。 ただの偶然であったかもしれない。 いずれにせよ、いつかは来る問題だったのかもしれない。 そしてそれは、俺達の関係を確実に変化させた。 「おお……今日は満月だったか。キレイだな」 夏の終わりとはいえ、夜はまだ少々暑い。 用を足しに起きたついでに涼みも兼ねて、夜の散歩と洒落込む事にした。 慧音宅は里の外れに位置しているのもあってか、比較的大きかった。 この家で暮らしているとは言えど、まだ一ヶ月。見知らぬ箇所もある。 そういった箇所を潰していこうというわけである。 ちなみに現在知っている場所は…正門から行ける土間、慧音の寝室、書斎、俺があてがわれた部屋、 それに生活に必要な台所なんかの空間くらいか。 「まずは外をぐるっと回ってみるか……」 そんな事をひとりごち、草履をつっかけて歩き始める。 ~10分後~ 「ちょ、ちょっと待て…いくらなんでも広すぎるぞ!」 正門から探索を始めて…今ようやく裏庭といった所。 新しい発見がある度に歩みを止めていたせいもあるが、如何せん広すぎる。 普段は家の広さなど気にしていなかったため広さ云々まであまり気にしたことはなかったが 恐らくは割と裕福な一族が住んでいた屋敷なのではないだろうか。 里の代表という扱いを受けているのだから、この位もあって然るべきなのかもしれない、が (……一人暮らしには……ちょっとどころじゃなく広いよなぁ) 慧音はずっと一人でここに住んでいたのだろうか? (だとしたら寂しすぎるぞ、慧音) 裏庭には大層な樹齢の桜の樹が生えていた。 どれほど生きているのかは知らないが、腰掛けて一息いれるには丁度いい。 樹の幹に背をもたれ、夜空を見上げる。 満点の星空に、明かりを不要とするほど明るく輝く満月。 (酒と肴でもあれば最高の月見になるんだがなー) アイツはそういったものを嫌うのか、倉にはそれに類するものはなかった。 曰く「あそこの山の神社にでも行けば全てがあるはずだからな」とのこと。 何があるのかは検討が付かないが、いつか行ってみようと思う。 「~~ちょっと冷えてきたかな……そろそろ戻……ん?」 月のあるはずの方向とはまた別の方向に明るさを感じる。 ふと見やると、そこには 緑色の髪に、角が生えた、見知った顔が。 そう、確かに所々おかしい点はあるが(尻尾とか生えてるし)、間違いない。 命の恩人を、見間違えるはずはない。彼女は俺のよく知る上白沢慧音だ。 「……慧、音……?」 思わず出てしまった、誰何の声。 予想などしてもいなかったのだろう、振り向いて俺の顔を確認するや、慧音は驚愕の顔のまま固まってしまった。 「○……○……どうして、そこに?」 「………」 「…そうか、見られてしまったか、とうとう」 できれば知られたくなかった。そんな口調で俺に語りかける慧音。 「御覧の通りだ。私はワーハクタク。"人"と"妖怪"の中間のような存在だ。 従って、人間では、ない」 ――人間と"妖怪"は争うもの―― 仕事場で色々と聞いた与太話の一つとして記憶していた言葉が思い出される。 (あいつは妖怪……なのか?) だけど普段は人間そのものだ。……話し方は少しどころじゃなく可愛げがないし、すぐに俺の事を怒るけど。 それに妖怪ならば何故人里にいる? 何故人を襲わない? 何故人間に優しくするんだ? 俺の中では解決しないまま次々と疑問が浮かんでくる。 目の前にいる彼女にぶつければそれもすぐに解決するのだろうが、 俺は、辛そうな顔をして俯く目の前の少女にそんな事は出来なかった。 「怖がるのも無理はないな。今まで騙していたようなものだ。 それに関しては謝る。すまない」 俺が黙っているのを恐怖と見て取ったのか、慧音はそのまま話を続ける。 「……私がこんな存在であると知ったからには、もう一緒にはいたくないだろう? 明日になる頃には私のことも忘れている……安心してくれ。 それに、住む場所も用意しておこう。ココではないどこかに」 (……何を、言ってるんだ?) 恐らく妖怪ならではの能力でも発揮して、俺の記憶を消す、ということなのだろうか。 そして聞き捨てならない事も言いやがった。それだけは止めなければならない。 知らないうちに震えていた身体に鞭を打ち、立ち上がる。 「逃げるのか? それはそれで、いいのかもしれないな。 何処へなりとも逃げるがいいよ」 半ば投げやりに言った後、俺に背を向ける彼女。 いつもより少し、背中が小さく見えた。 少しずつ、少しずつ。 逸る気持ちを抑え、俺は足を動かす。 (……ったく、誰が怖いっつったよ。そりゃ足は震えてたけどさ) 言いたいことを、少しずつ、頭の中で纏めながら、足を動かす。 (妖怪とか……人間じゃないとか……どうでもいいや、もう) 先ほどまで頭を渦巻いていた疑問を今だけは、少なくとも今だけは押しやる。 そんな事よりも大事な事を、言わなければならない事が出来た。 さっきよりも近づいた慧音の背は、少し震えている。尻尾も元気がない。 俺に襲い掛かるのを抑えているのか、それとも。 (まったく、一人で言いたいことばっか言いやがって、この) もう、手が届く範囲にいる。 一度、深呼吸。 よし、落ち着いた。 「なぁ」 びく、と震える背中。 「ビビったことは謝る。お前がそういうモンだって、知らなかったからさ」 「……」 「何だよ、そういう事なら早く言って欲しかったんだがな」 「……すまない」 声が震えてるぞ、慧音。 「だけど、俺は出て行かないよ。あと、記憶を消されるのもまっぴら御免だ」 「!?」 震える背中を、そっと抱きしめた。 「な、何を……」 彼女にとっては予想外の出来事だったのだろうか。驚愕の気配と、堅くなる身体。 「俺はさ」 構わず続ける。 「こんなに辛そうな顔してる奴を、放ってはおけないんだ。それに」 言いたかったことを、言ってやろう。 「綺麗で、頭もよくて、優しくて、でもちょっと抜けてて。そんな慧音が、俺は好きだ」 「―――っ! ……だ、だが私は妖怪なんだぞ。寿命とか、人とは違――」 「そんなの関係ないな。俺は俺。お前はお前。ただそれだけじゃないか。 お前が永遠を生きるというのなら、俺もそうであるように頑張るさ。 里の近くには永遠に生きる元人間も居るって話だしな、そいつに方法を聞きにいくさ。 だから、出ていけなんていうなよ。後、そんな辛そうな顔もやめようぜ。 俺は、里の人と楽しそうに笑いあうお前だから好きになったんだぞ?」 言いたいことを言いたい放題に言ってやる。 さっきやられたんだから、コレでおあいこだ。 「こんな……」 俺の方を向いた慧音の顔は、涙でボロボロだった。 「こんな、私でもか?」 「ああ」 「人間じゃ、ないのに?」 「そんなの関係ないって言ったじゃないか」 もう一度抱きしめる。 今度は、彼女の顔を胸に埋めさせる形で。 「――っうわああああああああ!!」 腕の中で泣きじゃくる少女の心が、少しでも晴れる事を祈って。 より強く、抱きしめた。 落ち着いてきた頃を見計らって、もう一度言ってやる。 「改めて、言わせてくれ。 慧音、好きだ。愛してる。 ……一緒に、いさせて、くれないか?」 ちょっと卑怯かな? と思わなくも無いが 今逃したらもうチャンスがなさそうな気がする。 「……それは、こちらが言いたい台詞だよ。 一緒に、生きてくれないか? ○○」 「お安い御用だ」 二人の想いは、一つ。 前にそびえる壁は、分厚く、高く。 でも、それがどうした。 俺達なら、きっと乗り越えられる。 そんな、気がした。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ どうも、長文お疲れ様です。 妖怪(半妖)と人間の恋愛って相当覚悟がいるものだと思うので (寿命やら、生き方等) それらを踏まえた上で慧音に色々行動取らせてみました。 ○○? あいつぁ記憶がないからかえって大胆に動けるっていう事で。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 紅魔館執事日誌(8スレ目 38) 紅魔館執事日誌 ○月闇日 注文していた物が今日届いた。 休みはすでに後日とる予定があるので 自分で買いに行く暇がなかったからだ。 配達を頼んだら若い男性が配達にきた。 自分と年が近かったせいか、門番に 「仕事に戻らないとナイフが飛んできますよ。」 とたしなめられるまで話し込んでしまった。 反省 しかし最近のカップルはすごいな、まさか頭を彼女にかじらせて 尚且つコミュニケーションをとるとは、今度メイド長に進言してみようと思う。 ○月こぁ日 今日は湿気が高いため除湿作業に追われていた。 外の世界なら除湿機やらで終わるのだが機械などあるはずもなく 人間である自分には結構辛い作業だ。 紅魔館では主に風魔法による除湿をしているので 魔法の使えない何人かの使用人には魔女特性の魔法石を渡された。 ほどなく作業は完了、本日は何事もなく終了。 と思いきや図書館勤務の男が一人湖までふっとんだ。 ちょうど玄関担当だったので帰ってきた男から話が聞けた。 曰く司書と仲良く仕事をしていた時私の同僚から例の石を借りたらしい。 図書館には除湿は必要ないはずだが?と聞き返したら 「風の魔法はスカートめくりに使うのが男のロマンだろ!」と熱弁された。 実行のあと司書のジャイアントスイングにより ふっとんでしまったらしい。 司書とはすでに結婚しているはずなのに、いまだに バカップルのごとくラブラブな二人を見ていると ため息半分羨ましさがあったのは日誌だけの秘密だ。 しかし湖までふっとんだのにピンピンしているのはなぜだろう? ○月妹日 妹様大暴走。 いつもいっしょにいる家庭教師が風邪で寝込んだことを知ると 「あいつの所に行くー!」 とのこと。 図書館の主人の魔法にて迅速な消火がされたが館はずぶぬれ。 あの妹様にここまで慕われる家庭教師は幸せものだと思う。 そんなことを考えながらずぶぬれになった館を掃除していたら、 メイド長が妹様に拉致られていた。 おそらく慣れない看病のヘルパーとしてつれていったのだろう。 南無 ○月パ日 メイド長が帰ってこなかった。 今日配達された新聞によると、 とある宅配の仕事をしている男が本日誕生日らしい。 接点は知らないがメイド長は顔見知りらしく いつもは着ない私服で出かけていった。 しかし、日付が変わっても帰ってこなかった。 お嬢様曰くほおっておけとのこと。 ○月ッ日 メイド長帰宅。 メイド隊はほっ、と一安心、門番は鼻水たらして抱きつきていた。 私服ではなくいつものメイド服なのと時々 「烏に月人め…。」 と呟いていたは気になったが、清掃部門も一安心だ。 今日は白黒の侵入もなく平和だった。 ○月ド日 メイド長が毎晩屋敷を空けるようになった。 以前の男の家に通い妻をしている。 泊まってくるときもあるので屋敷一同で式の準備をしていた。 もう少し書きたいがまだ作業が残っているのでここで切り上げることにする。 ○月暦日 今日のことはあまり覚えていない。 明日は待ちに待った休暇だ、緊張で仕事に身が入らなかった。 先月までに貯めた三ヶ月分の給料で頼んでいた指輪を 一日中握り締めていたら同僚に笑われてしまった。 司書夫妻には夫婦漫才で激励された。 いまはそんな気遣いがありがたい。 私には幻想郷に迷い込む際、世話になった恩人がいる。 別に日誌書く必要はないのだが、なにかしていないと落ち着かない。 その恩人に告白したのは三ヶ月前だ。 その時は酒でよった勢いなので保留になってしまった。 三ヶ月待つのは辛かったが、指輪くらい甲斐性をみせるのは ちっぽけなプライドである。 だから明日君に言うよ 結婚しよう、慧音 8スレ目 48 「よしっ!今日の仕事はおわりっと」 昼を少し過ぎたとき俺は慧音に頼まれた寺子屋の教材を まとめる作業を終えた 向こうの世界でそれなりに勉強していただけだが こういった雑用をすることで居候させてもらっているので あっちでの勉強も無駄ではなかったのだと思う 今日は夕方から妹紅が来るので慧音は買出しに行った つまり今は家には俺しかいない 「というわけで今日いつもできないことをゆっくりとさせてもらおう」 俺は押入れから枕を二個を取り出して縁側に向かった 俺は昼寝が好きだ、それこそ『の○太君』のように一日中寝ていることも可能だ 特に縁側で日を浴びながらまどろむのは天国にいるような時間だと思う しかしこっちに来てからあまりできなくなっていた なぜなら慧音がだらしないとか風邪を引くといってさせてくれないのだ もちろんこちらのことを考えて言っているのはよく分かるのだが 昼寝を生きがいにしていた俺にはかなり厳しかった 「慧音はまだ帰ってこないだろうしゆっくり寝れるな」 そう独り言を言っていつものように枕一つおいてもう一個を腕に抱いて眠った 枕を腕に抱くのは昔からの癖だ、慧音にも最初かなり笑われたが こればっかりはどうにもならない まぶたを閉じると暖かな日差しとともにゆっくりと眠気が意識を覆っていった 数時間後 今日は妹紅が来る日だから腕によりをかけて夕食を作ろうと思ったが 少し○○に雑用押し付けすぎたかもしれんな まああいつが好きだというコレも買ってきたし大丈夫か と考えつつ私は家に急いでいた そうこうするうちに家が見えてきたのだが縁側に誰かがいるようだ 「ん、妹紅か?」 近づくと確かに妹紅だった 「早かったんだな、今夕しょ…ん?」 こちらに気づいた妹紅はなにやら指を口元に立てている 「何だどうかしたのか?」 声を小さくして尋ねてみると 妹紅が縁側を指差した そっちを見れば○○が昼寝をしていた 全くいつものことだが少々呆れてしまった 「○○こんなところで寝ると風邪を…」 と私が○○の肩をゆすろうとしたが その手を妹紅に止められた そして妹紅は○○の腕から枕を抜き取り少し離れたところに置いた すると○○は寝たまま手探りで枕を見つけまたそれを大事そうに抱え込み 安心した子供のような顔で眠り続ける なんだか小さな子供のようでかわいく思えた 「おもしろいでしょ?何回やってもこうなるんだ」 妹紅が○○を指差して笑う 「確かにそうだな、まったく○○はどうも子供っぽいとこがあるからな」 私も笑いながらもう一度枕を遠くにおいてみる やはり○○はさっきと同じように手を伸ばし腕の中に抱え込んだ その時私はあることを思いついた 「どうかしたの?慧音」 不自然に動きを止めた私に妹紅が聞いてくる 「い、いやなんでもない。……すまない妹紅、卵を買い忘れてしまったから 買ってきてくれないか?」 「ん、ああいいよ。じゃあちょっと行ってくる」 そう言って村のほうへと向かっていった その姿が見えなくなったのを確認してから私は○○の腕から 枕を奪い部屋の中に放り投げた そして○○の正面に寝そべって目を閉じた 程なくして肩に暖かさを感じそのまま眠ってしまった なんだかすごくいいにおいがして目が覚めた 目を開けるとそこにはなんというか『特盛り』な物体があった そしてその向こうになんか紅い鳥が見えた ここで記憶は途切れた 8スレ目 218 「じゃ、俺そろそろ行くよ」 「ああ、○○。気をつけて行けよ」 「わかってるって。何時までも慧音は心配性だなぁ。 俺だっていつまでもガキじゃないんだからさ、大丈夫だって」 「…そうだな。今のは私が悪かった、すまない」 「謝るなって。心配してくれる人がいるのは、嬉しいことさ」 「私の役目は終わりだ。早く行ってやれ」 「……ああ。その…慧音、今までありがとな」 「…………早く行け。奥さんが待ってるぞ」 「なんだよ、棘があるなぁ。まさか嫉妬してるとか?」 「ははは、ばれたか。さっさと彼女のところに行ってやれ。 さもないと私は○○を殴りかねん」 「そりゃあ恐ろしい。さっさと退散するよ。……じゃあな!」 「ああ。…………元気でな」 「……おーい、慧音。居るか?」 「…妹紅か。ちょうど暇になったところだ」 「うわ……酒臭いな。どうしたんだ、いきなり酒盛りなんか始めて。 ……いや、ヤケ酒か」 「そういうときもあるさ。放って置いてくれ」 「また…………ダメだったのか」 「……………………」 「何でお前はそう、○○に固執するんだ? 先代のときも、その前も、その前も ダメだったろう?」 「それでも…………」 「どうしてだ。諦めろよ。○○以外にもいい男はごまんといるだろう? 大体、お前を見捨てて他の女に乗り換える男なんざ――」 「それでもっ! 私は!!」 「……………………」 「…………○○が好きなんだ」 「……はぁ、わかったわかった、そう怒るな。なら、また待てばいいさ。 私たちの寿命は長い。100年やそこら、短いもんだ」 「…………妹紅、ありがとう……」 「ああ、もう、泣くな泣くな。今日は飲み明かそう、明日からまた頑張ればいいだろう?」 「『また、100年後、○○に会えると信じて』」 「『今度は、○○と一緒になれるといいな』 ……100年前も同じ台詞言ったのな、私たち」 「もう忘れたさ、そんなこと。……さあ、飲もう! 今日はつぶれるまで飲むぞ!」 「望む所だ。途中で寝るなよ、慧音!」 8スレ目 269 今日は慧音が昼寝を許してくれた、いつもなら だらしないとか言って寝てると枕を引き抜かれたりするのだが 今日は俺が眠そうにしていると 「そんなに眠いのなら寝ればいいじゃないか…」 となんか不機嫌ながら言ってくれたのでお言葉に甘えて 昼寝させてもらったのだが、なんとなく視線を感じた まぁ別にそんなことが気になって眠れなくなるほど デリケートな人間でもないのでさっさと寝たのだが さっき起きてみたら何か妙に唇に違和感を感じる 鏡を見に行くときにすれ違った慧音の様子もおかしかったし まぁなんとなく察しはついたのだが、ちょっとカマかけてみることにした 俺は居間に戻って慧音に 「なぁ俺が寝てるときになんかしたか?」 と聞いてみたら 「な、何もするわけはないだろう」 そんなふうに動揺を隠そうとしながら答えた 「そっか、なんか鏡見たら口紅がついていたんだが?」 「そんなわけないだろう!ちゃんと化粧は落としてから……あ」 分かりやすいな、いや本当に 「で、落としてから何したんだ?」 「いや…それはその……」 そういって口ごもった 「まぁ、別にいいんだけどさ。そういうのは起きてる時にしてくれ なんか損した気分だ」 「あ、ああ…」 顔がもう真っ赤だった 「とりあえず何回したんだ?」 「い、一回だけだ!」 「そっかじゃあ俺も一回だけ…」 そう言って俺は慧音の口をふさいだ 「いきなり何を!?」 「慧音が一回したんだからコレでおあいこだろ?」 「……回だ」 小さな声で聞き取れなかった 「ん?」 「本当は二回したんだ、だから…」 そう言ってこっちをみつめてくる 「そうか、じゃあもう一回…」 「ん…」 そういってもう一度したのだが その後慧音の『本当にした回数』はどんどん増えていった 8スレ目 279 「で、コレはいったいなんなんだ?」 慧音が俺が持ってきたモノを指差しながら言った 「コレはトランシーバーっていうモノだ」 「トランシーバー?」 「そう俺の世界の機械、まぁこっちで言う式みたいなもんだよ バイト先で入荷してたから買ってきたんだ」 「お前のバイト先というとあの店か、大丈夫なのか?」 「大丈夫!、というわけではいこれ」 俺はトランシーバーの片方を慧音にわたした 「ん?くれるのか、しかし何に使うんだコレは?」 慧音が珍しそうに見ながら尋ねてくる 「これを使うとだな、なんと遠くにいても会話することができるんだ!」 「何!?」 「だからコレを使えば何か用があったとしてすぐに連絡がつくから いちいち会いに行ったりしなくても済むんだよ」 「…そうか」 「便利だろコレ」 俺はそう言ったがどうも慧音はひっかかることがあるらしい 「便利かもしれないが…私は要らないな」 そう言ってトランシーバーを机に置いた 「ん、何でだ?」 「逆に聞くが○○は私に顔を合わしたくないのか?」 「質問を質問でぇ…じゃなくてそんな訳ないだろう」 「しかしそれを使うと用事を顔を会わさないで済ましてしまうのだろう?」 ここまで聞いて慧音が何を言いたいのかが分かった 「つまり慧音はコレを使うと俺が会いにこなくなるからいやだと?」 「……」 顔を紅くしながら慧音は小さくうなづいた 俺は慧音がとてもかわいく思えて抱きしめた 終わり 「でもさ、夜寝る前とかさ。ちょっと話したりとかもできて便利だと思うんだけどなぁ」 「そ、それなら…わ、私の家に泊まっていけばいい」 「(゚д゚)」 本当に終わり 8スレ目 336 「い、いやだっ……見るな! 見ないでくれっ!!」 初めて見る彼女の本当の姿。 「……けーね……君は」 妖怪だったのか? 「お願いだから………いやだっ…嫌いにならないでくれっ………おまえに嫌われてしまったら…私はっ……」 いつも凛としていた彼女が、今、俺の目の前でポロポロと涙を流していた。 そして、近くにあった頭から布団を被った。 “人では無いモノ”と化した自分の姿を必死で見られないようにしている。 「いいや、見せてくれ、けーね。」 俺は、彼女が纏っている布団の…彼女の頭の部分だけを優しくはぎ取る。 「ひっ……」 彼女はカタカタと震えていた。 否、怯えている。 俺に『本当の姿を見られて、嫌われてしまう』ということに。 「……」 「……?」 数秒間の沈黙…そして 「すごく、かわいいよ、けーね」 俺は満面の笑みを浮かべて彼女に言った。 それが、俺の素直な感想。 「おまえは…こんな姿の私でも……」 けーねの瞳から、次第に次第に恐怖の感情が消え去っていく。 「愛しているさ。むしろ、惚れなおしているくらいだ。」 彼女の恐怖からくる涙が、一瞬で歓喜の涙にすり替わる。 そして、気づけば、彼女は俺の胸に飛び込んでいた。 「私は……幻想郷一の幸せ者だ」 「……はは、大袈裟だな」 大袈裟なんかじゃないと、けーねは言う。 「私は、もう お前を離したくない……いいや、離さない。」 「ふふ……」 普段の彼女が見せない、もう一つの姿。 「だから、私から、離れないでくれ……」 「もちろんだよ」 それは、人間でない姿と…こんな風に俺に寄りかかってくる姿。 「私は、もう お前なしでは、生きていられないカラダになってしまったから…」 8スレ目 337 けーね依存症候群? 「くはははは・・・みぃぃぃたぁぁぁなぁぁぁ」 「……けーね……君は」 牛だったのか? Grave!! 「・・・俺は、もう 君なしでは、生きていられないカラダになってしまったから…」